【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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お久しぶりです。最終回も沢山の感想をありがとうございます。
ここからは蛇足かもしれませんが、書きたいように書いていきます。

活動報告にも書いたのですが、感想欄でのツッコミを受けて前話の霊王の代わりの下りをカット、そして斬魄刀封印して基本的に拳で戦うという下りを変更しました。

あと、月島さんのカープ優勝記憶挟み込みは、彼がカープに入団して先発投手になって25完封くらいして優勝に導いた過去を紅鯉に挟み込んだということで……。
月島☆カープ☆優勝の下りはカットしたくないので、何とかこれで納得してもらえると嬉しいです。
なので、紅鯉の中では月島さんはカープのレジェンドですね。



番外篇
後日談 其の一


 ◇月◎日 くもり

 

 ユーハバッハとの戦いを終えても私は鍛錬を欠かさなかった。

 そして――ついに……出来るようになったんだ。

 

 

 「――瞬歩ォォォォォッ!」

 

 

 そう。私は瞬歩を遂にマスターした。ずっと、ずっと練習してた。何だったら幼い時から練習した分、卍解と比べ物にならないぐらい長いこと練習してる。

 

 兄貴は匙を投げ。夜一様も諦めムードを醸し出していた。

 当然だ。走術の中でも基本に位置するこの歩法を練習するたびに地面に穴を空けてたんだから。最近まで二番隊に居たのに……。

 

 こんな私に砕蜂は実に根気よく瞬歩を教えてくれた。「出来る、出来る、絶対出来る! 自分を信じろ!」と某テニスコーチのような彼女の指導のおかげで私はようやくこの日を迎えたのである――。

 

 「瞬歩って叫んでる人……初めて見たぞ」

 「それだけ感極まってるということです。瞬歩の習得は陽葵様の悲願でしたから」

 

 兄貴の設計した最新鋭の鍛錬場で一緒に訓練してた阿散井くんとネムが私の瞬歩を見て感想を述べていた。

 君らは良いよな。才能ある側の死神なんだから。この嬉しみは本当にやばい。

 

 そんじゃ、もう一回――瞬歩ォォォォォ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 調子に乗ってたら、力加減をミスって、体が吹っ飛び――鍛錬場の近くの一番隊舎の屋根を突き破ってしまった。

 踏み出す瞬間に足に霊力を集中するんだけど、やり過ぎちゃったみたい……。「マスターした」は言い過ぎだった……。

 

 

 

 「莫迦者(ぶぁっかもん)ッッッッ!」

 

 総隊長の雷が私を襲う。その後、私は三時間ほど説教を受けて、始末書を片手に家に戻った。

 

 

 

 「だから、あれほど覚えたてのときは霊圧を抑えて、尚かつ歩幅を小さくと言ったのだ。総隊長殿は本気で瞬歩禁止と言い出しかねなかったぞ」

 

 せっかく覚えた瞬歩を禁止にされるところだったお話。

 

 

 ■月♡日 晴れ

 

 引っ越してからというもの来訪者も増えた。私たちがいつでも夜一様が来ても大丈夫なようにやたらと居心地が良くなるようにしてるからかもしれんけど。

 特に桃ちゃんや乱菊ちゃんはよく家に遊びにくる。乱菊ちゃんは市丸を連れてくることも多い。あとはネムもよく泊まりに来るな……。

 

 

 ――しかし、今日は久しぶりに砕蜂と二人きりの夜だった。

 

 私らもなんか酒がいつもよりも進んで、気付いたらお互いに寄り添ってて――。

 

 「陽葵さん……、今更だが……一緒に住む提案を何故受け入れてくれたんだ?」

  

 いや、そりゃあ砕蜂みたいな可愛い子が一緒に住みたいって言ったら二つ返事に決まってるだろ。

 

 「か、可愛い……? まったく、私を子供扱いしないでくれ」

 

 頭を撫でながら可愛いと口にすると、彼女は口を尖らせて不満を言う。そうは言っても長年上司だったけど、後輩感が抜けないのよ。ずっと昔からあんまり変わってないから。

 

 「でも、嬉しい。寂しい夜とは無縁となったから」

  

 今日はヤケに酔ってるな。いつの間にか砕蜂は私の膝を枕にしてるし。こんなに甘えることなんて珍しい。

 そもそも、半同棲みたいな生活してたんだから、こうなっても私としてはあまり違和感ないんだよね。

 

 でも、確かに一緒に住むようになって寂しさとは無縁の生活になったよな〜。

 

 さて、そろそろ寝るとするか。彼女もかなり酔ってるし……。

 

 

 

 ――と、思ってたんだけど。

 

 

 「むっ……、誰か来たみたいだな。このような時間に……。この霊圧は――」

 

 

 気配に人一倍敏感な砕蜂は来訪者にいち早く気付く。

 しかし、こんな夜遅くに誰だ……。

 

 

 「夜分遅くに申し訳ない」

 

 現れたのはルキアちゃんとその娘の苺花ちゃんだった。苺花ちゃん、見るたびに大きくなってるなぁ。ちょっと前まで赤ちゃんだったのに。

 

 どうしてこんな時間に子連れでやって来たのか尋ねると――阿散井くんと喧嘩したらしい。

 おいおい、痴話喧嘩の延長でウチに来たのかよ。白哉くんの家に行ったほうが良いんじゃない……?

 

 「兄様の所より、こちらの方が行きやすかったのです。下手をすれば、兄様は恋次の味方になるやもしませんので」

 

 まぁ、白哉くんも妹と部下の喧嘩の仲裁が出来るような器用な子じゃないもんな。

 つーか、私も器用じゃないし、砕蜂も……。

 

 「お邪魔します。陽葵()()()、砕蜂()()()

 

 礼儀正しく躾けられている苺花ちゃんは丁寧にお辞儀してウチに上がった。

 ううっ……、私は()()()で砕蜂は()()()なのね……。子供って時に残酷じゃないか。

 

 この前、こっそりと空座第一高校の制服を着てみたけど、割とまだイケる気がしたんだけどなぁ。

 

 まぁ鏡の前で「皆んなのアイドル陽葵ちゃんだよー」ってピースしてポーズ決めてたら砕蜂に見られて死にたくなったけど……。

 

 で、とりあえず話を聞いた。要約すると苺花ちゃんの教育方針で揉めてるみたい。

 真央霊術院に入れる時期とかそんな話で……。

 うーん。あそこもあそこで私らが通ってた頃とは違うもんね。隊士不足で死神見習い制度なんて出来たから早めに現場入りするようになったし。

 

 お互いがお互いに家族を想い合って喧嘩か。なんか、羨ましい話だよ。

 

 結局、深夜になった頃に恋次くんがウチに来て……ルキアちゃんも頭が冷えたみたいでお互いに謝り合って帰って行った。

 

 こんな感じで引っ越してからというもの毎日、なかなか騒がしい日が多い。

 

 

 ▽月◎日 晴れ

 

 「いいですか、浦原隊長。絶対に黙っててくださいよ。市丸隊長が何を聞いても」

 

 私は吉良くんにキツく念押しをされる。

 

 実は市丸と乱菊ちゃん、結婚したのは良いけど特に結婚式みたいなことはしなかった。

 いわゆる地味婚ってやつだ。乱菊ちゃんなんて盛大にああいうことするタイプかと思ってたんだけど、市丸がなんか嫌がったみたい。

 

 そんで、吉良くんが幹事でサプライズパーティーを開くことになったんだけど……どうやら彼は私から漏れることを恐れたみたい。

 

 いやいや、私ってば口は固い方だよ。そりゃあ、使ってない市丸の卍解の能力とか口を滑らせたことはあったけれど。

 

 彼の計画でパーティーは最近出来た大きな飲み屋を貸し切って行うことになった。そして、二人をそこに連れて行く役目を私が担うことになったのである。

 

 「浦原隊長、自然にですよ。自然に……。一度、僕で練習してみますか?」

 

 あー、練習すんの? 市丸と乱菊ちゃんを飲みに誘う……。まぁ……良いけど……。

 

 練習だと、軽く見ていた私が阿呆だった。

 

 「どうして目が泳ぐんですか?」

 「一言目で噛んでるじゃないですか……!」

 「はぁ……。これじゃ、市丸隊長どころか阿散井くんも騙せませんよ……!」

 

 思った以上に完璧主義な吉良くんにダメ出しされまくる私。

 演技とか苦手なんだよ〜〜。前に桃ちゃんに探りを入れたのとかバレバレだったし……。

 

 「はぁ、はぁ……、そ、それでは頼みましたよ……」

 

 しっかし、こんなに熱くなる吉良くん初めて見たかも。市丸のことでこんなに一生懸命になるんだ。

 

 よし、これだけ練習したんだ。自然な感じでイケるぞ!

 

 

 

 

 「陽葵さん、何を隠しとるん? イヅルが影でコソコソ動いとったけど、それのことなん?」

 

 「…………」

 

 一発目でアウトでした〜〜。つーか、吉良くんのこともバレとるやないか!

 どーしよ。こうなったら、力づくで……。

 

 

 

 「あー、陽葵さん、あれでしょ? サプライズパーティーのことでしょ。あれ、楽しみにしてたんだ。大丈夫よ。あたしもギンも知らなかったフリくらい出来るから……」

 

 乱菊ちゃんにも筒抜けじゃねーか……。

 

 てことで、市丸と乱菊ちゃんの完璧な演技のおかげでサプライズパーティーは大成功だった。

 

 今はビンゴ大会の景品でもらったビール飲みながらこれ書いてる。

 

 

 ◎月✕日 晴れ

 

 しかし、あれだな。隊長になると戦闘に駆り出されることがめっきり減ったな。

 

 よく考えりゃ、藍染のバカが大虚を大量に呼び寄せてたんだから、隊長格が出張らなきゃいけない案件って本来は少ないんだろう。

 

 「とはいえ、油断してはいけないですよね。陽葵さんに限ってそんなことはないと思いますが。――ああ、今でも思い出してしまいます。あの日、殺されかけた私を守ってくれたこと」

 

 いつものようにランチタイムになると、いち早く十三番隊舎に来てくれる桃ちゃんは目を輝かせながらそんなことを言う。

 

 油断してはいないけど、隊長が出るのって部下の子たちのピンチのときってわけじゃん。

 桃ちゃんのときは都合よく駆けつけることが出来たけど……。不安ではある。砕蜂みたいな機動力があれば良いんだけど……。

 

 「でも、瞬歩を覚えられたんですよね? それで十分じゃないですか?」

 

 そうなんだけど、私って霊子を固めて足場を作るのも下手くそなんだよね。

 その上を瞬歩するって――嫌な予感しかしねぇ。

 いや、待てよ。()()()()か……。

 

 

 

 ――いいこと考えた。これは画期的な方法かも。兄貴の天才的な頭脳が私にも宿った的な――。

 

 「画期的な方法ですか? 陽葵殿……」

 「どんな方法か教えてください」

 

 一緒にランチに来てたルキアちゃんと桃ちゃんは私が面白い方法を考えついたと口にすると、興味を持ってくれた。

 

 

 

 

 

 

 私は森で木を一本引き抜いて、それをぶん投げる。

 そして、瞬歩で追いつき木の上に飛び乗った。つまり【桃白白(タオパイパイ)】の真似をしたんだ。

 

 「ひ、陽葵殿……空をあんな方法で飛ぶなんて――」

 「素敵……」

 「いや、素敵……ではないような」

 

 やった上手くいった。これで颯爽と空から駆けつけるオサレな隊長になれるぞ。

 あれ……? でも、これどうやって止めれば良いんだ……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「莫迦者(ぶぁっかもん)ッッッッ! おぬしは一番隊に恨みでもあるのか!」

  

 一番隊舎のど真ん前に不時着してちょっとした騒ぎになってしまった。

 総隊長にまたもや、めちゃめちゃ叱られちゃう私。

 

 「いやぁ、山じいの怒鳴り声を聞くと若返った気がするねぇ」

 

 ちょうどこちらに来ていた京楽さんは楽しそうな顔をして私を見ていた。

 

 結局、私の編み出した桃白白方式の移動法は禁止にされてしまう。うーん、頭が良い方法だと思ったんだけどな。

 

 もしかして私はまだバカなのかもしれん――。

 




日常に戻ると陽葵の無能さが際立つ……。こいつ隊長にして良かったんだろうか……。
吉良イヅルが何気に初セリフ。まさか苺花よりも後になるなんて……。

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