【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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 ▽月◎日 晴れ

 

 始解を覚えてから、バカでかい斬魄刀に悩まされることはなくなった。

 これで始末書の山から解放されるとか思ったけど、そんなことはなかったぜ。

 紅鯉(アカリ)の能力は霊力を食った分だけデカくなる霊気の塊(要するに霊丸)をぶっ放すというものなんだけど、最初に実戦で使ったら霊力食わせ過ぎて山が抉れた――。

 

 良く考えたら、浅打と比べて霊圧の高さをより反映させるんだから破壊の規模がデカくなるのは当たり前だ。

 始解を手に入れたメリットはサイズが小さくなったことくらい。近距離戦も、今まで素手でぶん殴ってたのが、バットでぶん殴るようになったからより凶悪になっちゃったし。

 

 この前、研修中の後輩を連れて行ったら、(ホロウ)があまりにもグロテスクなやられ方をしたもんだから、肉料理が食えなくなったと苦情を言われた。最近の若い子は繊細なんだな……。

 

 どうでもいい話だが、紅鯉(アカリ)は現世にプロ野球というものが存在しないことに腹を立てていた。ならばせめて、尸魂界に球団を作れと喚き散らす。

 ウチの斬魄刀はアホの子なのかもしれない……。見た目は茶髪のショートボブの女の子でとても可愛らしい感じなんだけど……。

 

「尸魂界でドラフト会議をしたいんじゃけど。ペナントレースが見たいけぇ」

 

 三番隊副隊長の射場千鉄さんみたいな広島弁で訳のわからんことを熱弁する紅鯉。ドラフト会議ってなんだよ……。

 あと百年ちょっとくらい待ってくれと言っても全然聞いてくれない。夢の中で“それ行けカープ”をエンドレスで歌われて最近ノイローゼ気味だ。

 これなら始解を覚えない方が良かったかもしれない……。なんか、最近上手く行かないことだらけだなー。

 

 

 ◇月◎日 くもり

 

 マジか! 出世だ、大出世! 今日から第八席だって、第八席! これはグッドニュースだ。

 始解を覚えたこととがプラスとして働いたのかと思ったけど、そのせいでますます現世の被害が拡大するという苦情を受けたから……ということらしい。

 簡単に言っちゃえば現世に迷惑かけるから尸魂界の護衛の方の戦力に回されたってこと。始解も使えるし戦闘力的にもそっちの方が適任だから、さっさと出世させて現世からの厄介払いをしたんだって。

 

 いよいよ、破壊行為のマイナスの方が(ホロウ)討伐のプラスを上回ってきたらしい……。霊感のない人間からすると天災扱いされてるみたいだからな……。私の担当地区があまりにもな状況過ぎて……。

 

 こうして私は第八席……。兄貴は第三席。そして夜一様は二番隊の隊長となった。

 さらに夜一様は二番隊隊長と兼任して隠密機動総司令官及び、同第一分隊“刑軍”総括軍団長とか長ったらしい肩書がつく。というのも彼女はその類稀なる才が認められて、だいぶ前に四楓院家の22代目の当主となっていたのだ。彼女は四楓院家において初めての女性当主である。

 だから二番隊の隊長になることも何年も前から決まってたんだけど、この人が仕事したくないとゴネまくって就任が遅れていたという状況だった。

 

 ちなみに兄貴は隠密機動第三分隊“檻理隊”に入っている。そのうち分隊長を任せるつもりとか夜一様は仰ってた。

 

 だから私も今更ながら隠密機動に入らなくても良いのかと夜一様に尋ねてみるも――。

 

 「隠密など、お主に一番向いとらんじゃろう」

 

 当たり前のような顔をしてそう言われ、私の意見は一蹴された。

 彼女の意志もそうだが、それ以外にも隠密機動で主に私と組手をしたことがあるメンバーにあの獅子女は入れないでくれとか言われていたみたいだ。そういえば、兄貴がしきりに死神になることを勧めてきたのはあの渾名が付いたときぐらいだった気がする……。

 なんか、夜一様にも兄貴にも気を遣わせてるんだな……。

 

 まぁ、二番隊の要職には兄貴や副隊長の大前田希ノ進さんみたいに隠密機動も兼任してる人が多いから、二番隊イコール隠密機動みたいな見方をされてるけど、あくまでも別組織だもんな。だから、無理して入らなくてもいいんだろうけど……。

 そもそも、私が現世駐在の死神になったのって隠密機動に入れないためだったんだな……。

 

 「まぁ、お主が居なくとも大丈夫じゃ。現世に居てばかりだったお主は知らんと思うが……最近、面白い奴も入ったしのう。そうじゃ、今度お主にも会わせよう」

 

 色々と忙しくなっている夜一様と世間話をする時間は貴重だった。しかし、私も尸魂界勤務になったことだし夜一様だけではなく、こっちの人々と交流する機会がこれから増えるかもしれない。

 

 

 ◎月◎日 晴れ

 

 今日は夜一様が新しい側近として最近可愛がっているという隠密機動の子と会った。

 あー、このおかっぱ頭知ってる。砕蜂じゃん。そっか、ようやく彼女が隠密機動に入ってきたか……。随分と私や夜一様と歳が離れてたんだな。

 何か漫画だと夜一様以外にはツンツンなイメージだけど、今はさすがに初々しい感じだ。どうやら夜一様は私を友人として紹介してるみたい。恐れ多いなぁ……。

 

 「砕蜂はお主と最初に会ったときと感じが似ておってな。おまけに堅苦しい呼び方までも同じときてる。気が合うと思ってのう」

 

 ああ、あれか。百合の波動でも感じ取ったのか……。砕蜂といえば……だもんなー。

 そういや、初めて夜一様と会ったとき「夜一さんでいい」みたいなこと言われて兄貴はそれに従って、あたしは「姫様」から「夜一様」にシフトチェンジしたんだっけ。

 意識してないけど、砕蜂と似たような経緯で「夜一様」呼びになったのか……。

 

 「よ、夜一様から二番隊で最も信頼している()()()の持ち主だと聞いています。お会い出来て光栄です」

 

 砕蜂は私なんかにも緊張しながら喋っていた。「隠密機動では私の悪口ばっかり聞いてたんじゃないの?」って質問したら困った顔をしてたけど……。私は彼女と違って隠密機動に入れないからちょっぴり羨ましい。

 

 んで、夜一様の見立てどおり割と気が合ってしまう。彼女には失礼かもしれないけど、二人とも脳筋タイプだからかもしれない。夜一様の幼いときの話や好きな料理などの話を興味深そうに聞いてくれた。意外にも素直ないい子でびっくりした。

 可愛い妹分が出来た感じだ。将来的に兄貴が蛇蝎の如く嫌われるのは知っているが、彼女とは仲良くしたい。

 

 

 

 ◇月△日 くもり

 

 うわああああっ! 覚悟してたけど遂にあのヨン様と話す日が来てしまった。

 数年前に平子さんが隊長になったから近々こうなるだろうなーって思ってた矢先の出来事だ。さすがに鏡花水月を唐突に使うなんてことは無かったから良かったけど。

 平子さんの後ろからジロジロと観察されてるみたいで不快だった。藍染のこと知ってるからこその過剰反応なのかもしれないが……。

 

 「この方、この霊圧の大きさで本当に第八席なんですか?」とか聞いてんじゃねーよ。嫌味かよ! エリートコースを歩んでたこいつは始末書王だった私のことを本当に知らなかった可能性はあるけど……。

 かなり抑えていたのに、あの反応は潜在してる霊圧量まで測られたっぽいな。

 

 とはいえ、私なんか霊圧だけしか能のない脳筋ってことはすぐに分かるだろうし、兄貴とか平子さんの方が警戒に値するだろうから目を付けられることはないだろう。さすがの藍染だって私が転生者で漫画を読んで彼の計画を知ってるなんて予想も出来ないだろうし……。

 しかし、やっぱり藍染はすげー奴だ。何も知らなかったら普通にイイヤツだって思っちゃうもんな。絶対に。

 

 現状こいつを止めることは無理だ。だってあいつは尻尾を掴ませないだろうし、信じてくれそうな兄貴や夜一様じゃ恐らく返り討ちに遭う。

 それにそれで藍染が警戒しだしたらどう動くか読めなくなる分、私の未来を知ってるという優位が無くなるのも怖い。

 

 考えとかなきゃいけないのは、兄貴と夜一様と一緒に現世に行くのか、それとも尸魂界(こっち)に残るか、だ。

 現世ルートの場合は100年くらい何もすることがないけど、最初から主人公の一護の仲間としてサポートが出来る。藍染たちからも離れられるし……。安全かもしれない。

 尸魂界ルートだと藍染たちの動きを監視出来るし、一護たちがやって来たとき絶妙のタイミングで味方になれる。鍛錬も出来るし、戦闘の経験も積める。

 デメリットはこっちの方が風当たりが強くなるということ。あの二人の関係者である私は疎んじられるかもしれない。

 あと、兄貴や夜一様がいない……無能が1人残っても無力なのではとも思ったりする……。

 

 もちろん、考えたところでそのとおりになるかは分からないけど、少しずつ覚悟を決めたほうが良い時期に来てるかもしれない――。

 

 

 ◆月□日 くもり

 

 うわああああっ! 覚悟してなかったトラブルが発生してしまったぁ!

 隠し持っていたエロ小説を落として拾われてしまったぁ! 八番隊の副隊長――矢胴丸リサさんに! 一生の不覚!

 

 「なんやのこれ? 女の子同士て」

 

 しかもガチ百合の内容なのも読まれてしまったぁ! つーか、なんで読むの! エッチスケッチワンタッチ! このドスケベが! 興奮のあまり猛烈に抗議すると、「スケベやない! 興味津々なだけや」と返される。

 せっかく砕蜂に貸してやろうと思ったのに、この仕打ちである。

 

 ちなみにこの後、砕蜂にこれを見せたら、すっげー顔を赤くして「ふ、不潔です」って怒られた。

 でも、これを自分と夜一様に置き換えて使うものだと伝えると……恥ずかしそうな表情をしつつも持って帰りよった。やっぱり趣味は合うみたいだ。

 

 あっ! やべー! 矢胴丸さんが後日砕蜂に借りに行くことを伝えてなかったな。あの人、二番隊隊舎で「エロ本貸して」とか大声で言わないよな……。

 

 そういえば、砕蜂と知り合ってそれなりに時間が経ったけど、私は“陽葵さん”なのに兄貴は“浦原”って呼ばれてた。

 やっぱり夜一様と特別っぽい仲の彼が気に食わないらしい……。

 

 

 ☆月○日 雨

 

 ちょっと前に、久しぶりにあの温厚な兄貴に怒られた。ことの発端は彼が夜一様との修行用に作ったという双極の下の修行場に連れていってもらったことだ。

 主人公である一護の卍解の修得も行われた回復温泉があるところね。つーか、あいつたったの数日で卍解覚えたんだよな。訳わからん……。

 

 兄貴は卍解を自分が修得したから、私にも覚えて欲しいみたいなことを言っていた。

 いやいや、始解修得に何年かかったと思ってんの? 卍解なんて、何十年かかるかわからない。つーか、あのカープ女子を具現化させても外れ能力になる未来しか見えない。

 卍解って、結構使い勝手が悪い能力多いんだよな……。平子さんの卍解なんて特に……。

 

 「とにかく、今の陽葵ちゃんの全力が見たいんで、リストバンドを外してください」

 

 兄貴にそう言われて私はすっかり存在を忘れていたリストバンドをある()()()を言って取り外す。

 このとき、私は特に何も考えずにリストバンドを外してしまった。これがいけなかった――。

 

 吹き荒れる霊力の嵐。私の霊力は兄貴の作った修行場の天井を簡単に貫いて、天空まで立ち昇る。

 「早く霊圧を抑えるっス! このままじゃ、双極が崩れ落ちる! 早く!」と兄貴は吹き飛ばされながら大声を上げるも、久しぶりに全霊力を解放したので私も訳がわからなくなり霊圧をコントロールすることが出来ない……。

 結局、兄貴は卍解を使用して何とか踏みとどまり、私の体を一時的に霊圧が抑えられるように造り変えて、そのスキにリストバンドをつけてくれた。

 

 兄貴の卍解――“観音開紅姫改メ”を初めて見た。やっぱ、すげーな。迫力もそうだけど、その能力もチートも良いところだ。一時的だけど、自分の体が自分じゃないみたいに強化されて完璧な霊気のコントロールが可能になったもん。

 

 しかし、兄貴はそれくらいは自分で出来るようになってると思ってたみたいだ。始解を修得してるのだから……。

 いや、リストバンドで抑えた霊圧のコントロールをギリギリで何とかしてるだけだったんだけど……。

 結果、兄貴の自慢の修行場を荒らしただけじゃなくて、双極付近で発生した異常な量の霊圧がちょっとした事件になってしまい、それを誤魔化すためにかなり彼は神経を擦り減らしたらしい。秘密の修行場のことはバレなかったみたいだけど……。

 

 とりあえず、だらしない妹で済まぬ……。

 

 しかし、この日からやたらと変な視線を感じるんだよなー。藍染もそうだけど、何か色んな人から――。

 




陽葵の霊圧上がり過ぎ問題。
浦原の補助がないとまともにコントロールも出来なくなるほど巨大になってしまった。
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