【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

6 / 27
日間ランキング1位に入ってました。これが投稿されるときにはどうなってるかわかりませんが……。
読んで頂いた皆さんのおかげです!ありがとうございます!



六ページ目と藍染惣右介の考察

 ▲月◇日 くもり

 

 あの銀髪は市丸ギンだった。本人が二番隊の隊舎にいる私のところを訪ねて来たから間違いない。

 始解のコントロールにミスったからとか何とか関西弁で言い訳してきて謝ってきやがった。饅頭の手土産を持参して。わざとらしい……。

 ここで私はやらかしてしまう。ついうっかり、「藍染に頼まれたんだと思った」とか思ってることを口にしてしまったのだ。

 ハッとしたけど、遅かった。だってはっきり声に出してるもん。

 市丸はニタァと笑って「なんでそこで藍染副隊長の名前が出ますのん」と嘯く。

 あの笑顔はちょっと不気味だった。だっていきなり市丸が死角から不意討ちしてきたなんて漫画を読んでたら藍染の仕業だと思っちゃうじゃない。それを正直に言ったのはバカだけど……。

 

 「そういえば、何で逃げるとき瞬歩使わへんかったんですかぁ?」とか「力を隠してる理由を教えて下さいよ」とか「ボクにトドメを刺さなかったのはなんでですか」とか――あの狐目、私が動揺しまくっているのを良いことに質問攻めにしてくる。つーか、こいつ気絶したフリしてたのかよ。かなり加減したはずだから、またコントロールをミスったと思ったじゃないか。

 

 おまけに最後は「藍染副隊長は知ってはりますよ。陽葵さんのこと、色々と……」ときたもんだ。

 何のことかと尋ねてもニコニコして教えてくれない。「また来ます」じゃねーよ。お前、五番隊だろ? 平子さんに告げ口するぞ。

 

 

 ☆月◎日 くもり

 

 二番隊に他の隊からの密偵がいるのではという噂が立った。何やらウチの隊の情報が入った書類が紛失したということらしい。

 隠密機動も多い二番隊でスパイを働くとはなかなかいい度胸である。いや、それだからこそか……。

 恐らく狙いは隠密機動の抱えている機密だろう。腹を探られて困る連中が多いからな……。

 

 砕蜂など怒り心頭でスパイは自分が捕まえてみせると鼻息を荒くしていた。結構大きな声だったけど、そのスパイに聞かれてはいないだろうか……。

 

 しかし、ああ見えて夜一様は警戒心が強い方だし、簡単に機密なんて盗まれやしない。スパイとやらは相当の手練と見て間違いないだろう。

 砕蜂ではないが、私も注意して周りを観察せねば……。

 あわよくば、スパイを見つけて夜一様に褒めて貰おう。

 

 

 

 ◆月◎日 晴れ

 

 最近、任務に出かけるたびに大虚(メノスグランデ)に出くわす。ギリアンばかりだけど。

 大虚(メノス)もちょっと離れた位置から攻撃してきたり、行動パターンがいつもと違っているので不気味な感じだ。

 二番隊の他の隊士も近くにいることが多いので、巻き添えを食らわせないように動かないとならないから、かなり面倒である。

 あいつら、意外とすばしっこい奴もいるからぶん殴るのも大変なんだよね。でも、紅鯉の力で霊丸ぶち当てる方が難しいから結局ぶん殴って倒す羽目になるっていう。

 

 最近、マジでこんなんばっかり。避けられると確実に地面に底の見えない穴が空くから、殴るのに神経すり減らしてる。

 これ、今はいいけど破面とか相手にするようになったらどうなることやら……。

 

 夜一様から被害を出さないように任務を遂行し続けられれば第三席まで上げてもらえるみたいなことを言われてるから、かなり気を付けてるんだけど――素早い大虚(メノス)相手だとそうもいかなくなる。始末書の山から解放されたと思ってたのに……。また、出世が遠のいた……。

 藍染のことで悩んでるのに、まったくツイてない。

 

 

 ♧月*日

 

 ここんところ、毎晩砕蜂と酒を飲んでる。彼女との付き合いもそろそろ長くなってきたな。初めて会ったときは初々しかったけど、今は頼もしい感じに成長してる。

 私の席次も追い抜いちゃったし……。やっぱり妹みたいに思ってたからそれはちょっぴり悔しいかな……。

 

 「将来的には陽葵さんが三席となり、私が副隊長になるので、二人で夜一様を支えていきましょう」

 

 ――うん、砕蜂の中ではこれからもずっと私の上司でいるつもりみたいだ。まぁ、上の立場になったからとて飲みの席では敬語で話してくれるんだから、彼女は礼節を重んじてくれるいい子なんだけど……。

 

 しかし、こんないい子が性格変わっちゃうんだよな。夜一様が兄貴と居なくなったから……。

 彼女の夜一様への気持ちを考えるとそれもわかる気がする。あの人はいつも眩しくて……私たちの太陽のような人だから――。

 

 

 ◎月○日 雨のちくもり

 

 今日は兄貴に久しぶりに会った。彼が十二番隊に行ってから中々会えない日々が続いていたから……。

 

 「大虚(メノスグランデ)の出現率が陽葵ちゃんが任務に出たときだけ100倍に上がっているんスけど、何か心当たりあるっスか?」

 

 ひゃ、百倍? そ、そんなに大虚って出ないの? それも私の時だけ……明らかに異常じゃねーか。

 いやー、心当たりって言われても……やっぱり藍染が何か企んでるからなんかな? 大虚を私にけしかける意味とか全然分かんないけど……。

 でも、そんなことを言ったら色々と変な事になるし……。分からないって答えておこう。

 

 兄貴は「そっスか」とだけ答えて二番隊隊舎から去っていった。うーん、兄貴のことだから私が嘘ついてることも分かってんだろうな。

 でも、余計なことは言わんほうが良いと思うんだよ。私は……。

 

 それにしても、これが本当に藍染の仕業として、やつは一体何を考えているのだろうか……。

 

 

 

 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 「浦原喜助が妹にようやく接触したか……。ほう、そして彼女は心当たりがないと答えたと……。面白い……」

 

 二番隊に潜ませている密偵からの報告を聞き、私は彼女について考察する。

 

 ――浦原陽葵(うらはらひまり)、これほど一人の人物に興味を惹かれたのは初めての経験かもしれない。私の叡智を以ってしても推し量ることが出来ない人物がまさか護廷十三隊などに居ようとは。

 私が天を握るにあたって警戒すべきは総隊長の山本元柳斎くらいだと思っていたのだが……。

 あの浦原喜助の妹は読めないという点で彼を遥かに凌駕するほどの危険因子だ。山本元柳斎など、如何に力があろうとも対策は幾通りも思いつくのだから。

 

 最初に彼女を知ったのは平子真子が雑談をしている様子を背後から見ていたときだ。ただならぬ潜在能力を内に秘めた金髪の女はどこか既視感があった。

 聞けば、二番隊の第八席だという。私としたことが思わず聞き返してしまった。この実力でなぜ八席なのかと。

 隊長格にも勝るとも劣らない霊圧の大きさ……どこの隊でも三席以上は任せられて然るべきだろう。彼女は始末書を幾つも書くほどの不祥事を起こしているからだと答えたが、私の目は誤魔化せない。その内に秘められた野心を……。

 その証拠に初対面の私をあれほど警戒してみせており、しきりに斬魄刀に意識を集中していた。認めたくはないが、同類の臭いを感じ取ったのだろう。私と同様に……。

 

 その後、私は彼女について調査をした。そして予感は確信に変わる。あの女はあの浦原喜助の妹であった。

 浦原喜助――唯一、私が頭脳において自身を凌駕すると認めた存在。野心がない腑抜けだと思っていたが、あの兄妹は揃って曲者を演じ、野心をずっと隠していたのだ。私とは異なる方法で……。

 

 浦原喜助は確かに切れ者で愚鈍な連中の中では有能と言っても差し支えない人物であるが、所詮は想定内に収まる程度の人物だ。

 

 妹の陽葵は違う。調べれば調べるほど不可解さが増す。

 破壊行為によって出世を無理矢理遅らせていることは解る。しかし、瞬歩をはじめとする技術や鬼道を一切使わないことには何の目的があるのだろうか……。

 

 無能を過剰に演じているというならば、わざわざ卍解を使っていると主張するかの如く霊圧を噴出させるような行為の説明がつかなくなる。

 

 さらに、もう一つ大きな疑問がある。私の鏡花水月が効いていないということだ。気が付いたのは、市丸ギンを彼女にけしかけた時のことである。

 

 私は浦原陽葵の霊的な感知能力もすべて含めて別方向からの攻撃だと錯覚するように催眠を仕掛けた。しかし、こともあろうことに彼女は市丸ギンの神槍を掴んだ。

 霊圧差によって弾いたなら予想の範囲内だった。催眠状態にあって、高速で迫る斬魄刀を掴むという行為は私の予想を覆してくれた。

 ここに一つの結論が生まれる。浦原陽葵には鏡花水月が効いていない。つまり、それは見せたと思っていた始解の解放を見ていなかったことを意味する。

 市丸ギンからの報告だと、彼をけしかけたのが私だということを知っているらしい。それをわざわざ伝えたのは何か狙いがあってのことなのか……。それとも私に対する挑戦なのか……。

 

 この日を境に、彼女の観察をさらに強化した。大虚(メノスグランデ)との戦闘データの採取から、真央霊術院時代の成績表を入手まで徹底的に浦原陽葵について探りを入れた。奴も天を握ろうと野心を持っているならば、何らかの痕跡が残っているはず……。

 

 しかし、私の欲しい答えは一切手に入らなかった――。

 

 いいだろう。不確定要素があることもまた一興だ。一つのことに縛られて大義が果たせぬならば、私はそこまでの存在だったということだ。

 計画は予定通り実行する。浦原陽葵を侮るつもりは無いし、浦原喜助が何かに勘付いたとしても、私には彼らを無力化する手段があるのだから――。

 

 ▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽

 

 

 

 ◆月☆日

 

 魂魄消失事件が発生した。そして、69こと六車拳西率いる九番隊が調査に乗り出すこととなった。漫画と同じ流れである。

 さて、私はどう立ち振る舞えば良い? 兄貴たちを信じて静観すべきか……それとも……。

 

 

 

 




何話かに一回くらいはこうやって誰かの語りみたいなのを入れようと思います。
多分、本当の藍染はもっと小難しい言葉を使うと思うんですけど、クオリティ低くてすみません。作者の語彙力の問題です。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。