【本編完結】とあるTS女死神のオサレとは程遠い日記   作:ルピーの指輪

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 ◇月◎日 晴れ

 

 ヤバい……! ネムがかわいい。可愛いじゃなくて、かわいい。小さいときの自分みたい……。いや、小さいときの自分が可愛かったとは思ってないけど。

 二番隊に配属されて、彼女はすぐに我が隊のアイドルになってちやほやされてる。

 私もだけど、特に砕蜂はそれ以上に猫可愛がりしていた。物覚えが私の細胞を使ったとは思えないほど良くて、何でもすぐに修得するので、砕蜂はかわいい弟子が出来たと喜んで色々と技を教えたりしてる。

 

 ええ……、私が出来ない瞬歩など速攻で覚えてるし、白打の高等な技も修得済だ。霊圧のコントロールが多少苦手なのは私と似てるみたいだけど……立つ瀬がない。

 

 

 隊長の砕蜂には……ネムが二番隊に入るにあたって「技術開発局が無から生み出した被造死神なんだって」みたいな説明をして、私の細胞の情報も使われてるということも話した。

 彼女は「なるほど……」と腕組みをしながら言っていたけど、絶対に理解してない。

 長年の付き合いの私にはわかる。目が泳いでたから。

 

 

 「またようわからんことを。十二番隊と結託して何を企んではりますのん? 目的を探れって藍染隊長がうるさくて敵わんわ。おもろいからええんですけど。ヒントくらいは教えてもらわんと」

 

 市丸はネムの頭を撫でながら、私にそんなことを聞いてきた。

 藍染は私の性質を受け継いだネムを自らの希望でマユリさんに造らせたと思ってるみたいだな……。んなわけねーだろ。

 ていうか、なんで市丸までネムを可愛がってんだよ。そんなキャラだったっけ……。

 

 「何かすぐにオレより強くなりそうなんっすけど、強さで席次が決まる十一番隊みたいなことしないですよね?」

 

 希千代くんだけ、ネムの存在に不満げだった。未だに四席なのに、席次が落ちる可能性がないかと焦ってるようだ。

 砕蜂が彼女をかわいがってることが怖いとも言ってた。とりあえず彼にはネムは将来的には十二番隊に戻る予定だから……、と告げておく。

 

 「陽葵様の戦闘の基本は打撃ですか? 他の方と違って特に急所を狙っているようには見えませんが……目的は何なのでしょう?」

 

 私の戦闘データを採取する命令を受けてるネムは基本的に私についてくる。まさか、寝室まで付いてくるとは……。どこまで忠実なんだ……。

 

 とりあえず、難しいことは考えずにどこでも良いから当てることにだけ集中してるって答えておいた。ネムはよく意味が分からないのか首を傾げる。マユリさんは合理主義っぽいから私の脳筋っぷりと思考パターンが合わないんだろうな。

 つーか、この子を脳筋の私と隊長に預けて大丈夫なんだろうか……。私が教えたのって霊力込めた右ストレートぐらいなんだが。

 

 

 ★月☆日

 

 なんか、市丸が巨乳の姉ちゃんと話してたから、絡みに行ってみる。相手はやっぱり松本乱菊ちゃんだった。

 つまり市丸の想い人だ。こいつのすげーところはこの人の為にずぅーっと自分を殺して牙を研いでいたところなんだよな。その根性がヤバい。

 

 「ボクの怖〜い上司や」みたいな感じで彼は私を乱菊ちゃんに紹介した。誰が怖い上司だ。誰よりも優しいだろーが。そう言って市丸の頭を小突くと乱菊ちゃんはクスリと笑って、漫画どおり彼女は気さくな感じで十番隊にいると自己紹介してくれる。

 そういや、最近だよな。十番隊の隊長に志波一心くんがなったのは。主人公一護の父親には一度会ってみたいなー。

 乱菊ちゃんは近々副隊長になる予定だと言ってた。市丸の席次を抜くと胸を文字通り張っていたけど、こいつも近々隊長になるから……。

 

 ともあれ、最近は妙に平和な日々が続いてくれて何よりだ。

 

 

 ◇月☆日 晴れのち雨

 

 去年くらいから、二番隊に振られる仕事の割合が隠密機動関係よりも虚殲滅が多くなってきた。

 市丸曰く、ネムの加入により藍染が彼女のことも調査するために例によって大虚(メノスグランデ)の出現率を操作してるかららしい。

 その上、山本総隊長も二番隊の戦力が増してると判断してるからなのか、優先的にこちらに荒っぽい仕事を回すようになってきた。

 

 ネムは私をよく観察している。攻撃を受けそうになると反射的に霊圧を高めて防御しつつ反撃する技術を私以上の精度で身につけた。目隠し特訓もしてないのに……。

 斬魄刀を持たない彼女の右ストレートはすでに大虚をも圧倒する程に成長していた。それどころか、砕蜂の白打と瞬歩、市丸の天才的な戦闘技術までも学んでいる。希千代くんからは――いち早く逃げる危険察知能力かな……。

 

 そんなネムの加入でさらに砕蜂はやる気になった。

 隠密機動の関係であまり好きでないと言ってた卍解(ミサイル)雀蜂雷公鞭(じゃくほうらいこうべん)を惜しみなく使うようになり、一発が限度だったこの卍解の使用制限が最近上がったとのことだ。2発以上撃つと体に負担がかかったりしてたのは使う回数が極めて少なかったからだったんだな……。

 

 市丸もえげつないスピードでめちゃめちゃ伸びる卍解・神殺鎗(かみしにのやり)を私に見せつけるようにして使ったりすることも多かった。なにそれ、挑発のつもり? だから、本当に卍解出来ないんだってばよ。

 

 そんな出撃がしばらく続き、変な噂が瀞霊廷内で広まった。護廷十三番隊で最強の戦闘狂集団は十一番隊でなく、二番隊なのでは?という噂だ。

 二番隊の隊士からしてみれば迷惑な噂だったみたい。血の気の多い十一番隊の隊士に絡まれたりして……。

 そんで、そこから最悪の事件は起こる。あの戦闘狂の中の戦闘狂と出会ってしまったのだ。

 

 十一番隊隊士が多勢でうちの隊士にイチャモンつけてるところを見て、私はやんわり止めようとしたんだけど、ネムがちょっとやんちゃしちゃって……。その場にいた十一番隊隊士をボコボコにしてしまって……放って置くわけにもいかずにそいつらを担いで十一番隊の隊舎に連れて行ったんだ。

 

 まずはハゲ頭の男が出てきた。んで、めっちゃ切れてた。十一番隊の隊士たちに。小さな女の子に喧嘩で負けるなんて情けないって。こいつ、斑目一角だろ……。

 んで、ナルシストっぽい優男が美しくないとか何とか文句つけてきたところで、私は退散しようとしたんだけど、ネムよりも小さなピンクの髪をした女の子がどこからともなく出てきて、「剣ちゃん、この人、すっごく強いよ〜」とか私を指差して言ってきた。この子は草鹿やちるかな……。

 

 すでに嫌な予感はしていたが、眼帯ウニ頭が出てきやがった。十一番隊隊長――更木剣八が……。

 こいつは長く戦いたいっていう訳がわからん理由で眼帯で霊圧を抑えてるヤバい奴。なんでやちるちゃん、私を指差して煽るようなことを言うんだよ……。

 

 「わかる……。お前は俺と同族だ。比べてみようぜ。どっちが強えか!」

 

 ありえねーだろ。この人……。私にいきなり斬りかかってきやがった。私は反射的に紅鯉(アカリ)で刀を受け止めて、弾き返す。

 

 そこから地獄みたいな時間が流れた。ドンドン強く鋭くなる剣八の刀を受けたり避けたりしながらどうやって逃げようかと思案する。

 あっ……! こいつ眼帯外しやがった。霊圧が急上昇するのを感じた私は眼前に迫る刃を見て、リストバンドの抑制量を1/5に変化させる。

 ――そして、無意識にありったけの霊力を込めた巨大な霊丸を上空から襲ってくる剣八にぶっ放してた。

 

 剣八は吹き飛ばされて森の中に落下したみたい……。うわぁ……、やり過ぎた……。だ、大丈夫かな……? 私は心配して急いでそっちまで行ったけど、逃げたら良かった。

 私が側に来るとムクッと起き上がり、ニヤリと笑いながら刀を振るったのである。

 そこからまた地獄再開であった。何時間もの間、剣八の刀を必死で弾き返す作業をしてたのだから――。

 しかし、その地獄は夜が明けて明るくなった頃に唐突に終わりを告げる……。剣八が斬りつける動作をピタリと止めたのだ。そして、私の紅鯉(アカリ)をジィーっと見つめて口を開いた。

 

 「よく見たら、お前……金属バット(それ)じゃ斬り合えねぇじゃねーか。道理でつまんねーわけだぜ」

 

 そんな当たり前のことを言って首をコキコキ鳴らしながら何事もなかったように十一番隊隊舎の中に戻っていった。これには見物していた十一番隊の隊士たちも唖然である。

 あー、怖かった。あの人……まだまだ強くなりそうだったし……下手したら殺されてたかも……。

 

 そっから、うちの隊員は絡まれなくなった。そして、十一番隊の隊士とすれ違うとうるさいくらいデカい声で挨拶されるようになる。

 とりあえず、剣八とは二度と戦いたくないな……。

 

 

 ♧月◇日

 

 ついにネムが十二番隊に戻ってしまった……。

 悲しくて仕方がない……。砕蜂など、「大前田の四席などくれてやるから、ていうか大前田を差し出すから残ってくれ」と涙目になって抗議していた。本当に涙目になって良いのは希千代くんだと思う。

 

 さらにしばらくしたら市丸も三番隊の隊長になる予定だし……。隠密機動に似合わないくらい賑やかだった二番隊も元通り静かになるかもしれないと私は思っていた。

 

 そんな十二番隊の隊長である涅マユリさんにまた私は呼び出される。行ってみると包帯を腕と足に巻いたマユリさんが不機嫌そうに苦情を言ってきた。

 

 「君は何をネムに教えたのだネ?」

 

 私は特にネムに教えたことなどない。敢えて言えば右ストレートくらいである。

 そう説明すると彼はネムにお仕置きをしようと手を出すと反射的に霊圧を急上昇させてガードする上にカウンターまで仕掛けてくると口を尖らせる。どうやら、その怪我はネムに噛みつかれたからみたいだ……。

 そういえば、こいつそういう奴だったな……。漫画と違って私の反射的な行動を学習してるから返り討ちに遭ってるのか……。

 

 「まったく、信じられない脳筋だヨ! 君のせいでまるで野蛮な獣じゃないか!」

 

 呆れて物が言えないという表情で私を見てくる。うるさいな。あんたが勝手に人の細胞を使って、造ったんじゃないか。こっちに預けたのも半ば強引だったし……。

 

 「まぁ、戦闘力だけは予測の1.75倍まで上がっていたけどネ。そこだけは感謝しておいてやるヨ」

 

 ネムが予想以上に強くなっていたこと自体は嬉しかったらしい。

 こっから、この子がどんな風に成長するのかわからないけど……応援してる。私は彼女の頭を撫でながらそう思った。

 

 「というわけで、もうしばらくこの野蛮なのを、君たちのところに送っておくことにするからネ」

 

 マユリさんはまたおかしなことを言い出して、私は首を傾げた。

 どうやら、ネムの成長率が二番隊にいるときの方が顕著に高かったので、研究のためにもっと長い間こちらに預けたいということらしい。

 ウチは、まぁ……構わないと思うけど……。

 

 砕蜂は歓喜! 希千代くんは今度こそ席次が奪われるのか戦々恐々! 市丸は何考えてるか分からなかった。

 

 もうちょっとの間……二番隊は騒がしくなりそうである……。

 

 




前回の話を書くまではネムがメインキャラになる予定はなかったのに……書いてみたら可愛くて仕方なくなり今回はずっと出ずっぱり。
野生と理性を併せ持つヤバい奴になってる。
剣八については、陽葵の得物がバットだったので斬り合いが出来ないと気付いて萎えたみたいな話にしました。じゃないと瀞霊廷が吹き飛ぶまでやりかねないので……。

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