「例え、運命に離されても…わたしは君のところに戻ってみせるから」   作:ルキネーター777

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こんちわ!ルキネーター777っす!初投稿っす!

いろいろと、初めてだったり。更新も決まっていなく…
話が長めだとは思うので…不安ばかりっすけど…
とりあえず…書き上げる事を第一の目標として、やってみるっス!

あ、ルキネーターの777は「せぶんすりー」っすよ?間違えないでくださいっすね?


それでは、本編スタートっす!




0話「道標」

 

 

 

 

 

 

時間、世界、未来、過去

 

そういったものには必ず別の人物や別時間世界や別世界、異世界などのものが存在している。

 

あの時、こうしとけばよかったな。が、別世界の自分ではやらなければよかったな。と、

 

様々な時間の選択による見えない糸の繋がりで世界は出来ている…だが

 

必ず、この世には…例外が存在する…

 

見えないはずの時間の糸を別世界と繋いでしまう…存在、とか…な。

 

今、これから始まる物語は…様々な人の物語が溢れるいろんな異世界で

 

一人の少年の周りに不運な事が起こり…そして、不運な事は少年の罪となってしまい…

 

やがて、罪は少年の運命を神の手によって変えられしまった…

 

この物語は…そんな神に運命を変えられ

 

自分もまた運命を自らの手で変えてまで、少年が…いや

 

少年の姿ではなく…少年の心が少女を愛していた所に戻るまでの物語である…。

 

 

 

 

「ラスカー!」

 

 

 

 

「…ん、んうう……」

今日も誰かの声が、ベッドで目を覚ますと共に聞こえてくる…

「ほら、ラスカー?もう朝よ?」

「……お嬢様…?」

窓のカーテンを広げ、朝日の光が女性の揺れる白い髪を照らす。

………ボクが何時も仕えて、ボクに怯えず…助けてくれて

そして、何時も隣に…ずっと居る。アーネアの姿だ

「どうしたの?そんなにぼーっとして…また変な夢でも見てたの?」

「あ、い、いえ…!?…」

彼女の姿を何時も朝から見る。それを見て、ボクは胸が何時も何かに押し潰されそうな

変な感覚に襲われてしまう。儚い姿なのに…意思と行動、何をしても強く…綺麗な彼女…

 

……けど、内心は……辛いんですよね……

 

「ふっふふ。相変わらず女の子みたいね。ほら、朝ごはんを食べたら仕事の時間よ?」

「わ、わかってますよぉ…国のお姫様なのに、わざわざ何時もボクを起こすんですから…」

「あら?私に起こされるの、嫌い?」

「そ、そうじゃなくて…」

そして、なにより…意地悪。ボクの困ってる表情を見て楽しんで微笑む

でもそれがなんだか…嬉しく、居心地がとてもいいと思えるのはなぜなんだろう…?

 

 お嬢様の言葉でベッドから起き上がり、軽く顔を洗い…

お嬢様が作ってくれたスクランブルエッグとベーコンなどの軽い朝食を食べて

その後に服を脱ぎ……お嬢様の視線が気になりながらも…

アーネアが初めてボクが生まれてプレゼントを受け取り…

彼女がボクを初めて仕える騎士として認めてくれた騎士の白い正装を着こなし

また今日も新たな一日が始まろうとする。

「今日は外交もあるみたいだから、また護衛をよろしくね。ラスカー」

「は、はい!アーネアお嬢様!」

「…まだもう少し仕事に行くまでの時間もあるし。今はアーネアって呼んでもいいのよ?」

「そ、それはやめておきます…万が一、誰かに見られたら……」

「幼なじみの仲なんだし。いいじゃない?ラスカーは何時も緊張し過ぎよ。私がほぐしてあげないと」

少しずつ顔を近づけてくる…

緊張とは違い。彼女の顔が近づいてくると今度は焦って、なぜか恥ずかしい気持ちになってしまう。

「い、良いですから!?…それに、もし呼び捨てで呼ぶところを誰かに見られたら…お嬢様とボクとが…い、いかがわしい関係だと思われるかもしれませんし……」

「あら?私とラスカーがいかがわしい関係って…どんな関係かしら?顔も赤くして…ふっふふ」

本当はわかってる癖に、何時も意地悪。

心臓の鼓動が早くなって…恥ずかしくて寿命が縮んじゃいそうになる…

「も、もう…!?赤くなってませんから!!…ほ、ほら…は、はやく行きましょうよ!」

「はいはい。わかったわよ」

 

 

 部屋を出て、廊下をお嬢様の横を歩きながら…ふと、廊下の窓を見ると…

過去に起きたことや、この世界と国の事を記憶と風景で描きながら思い出す。

 

この世界は大陸が四つに別れ…大陸の中に沢山の国や村、原住民などなどが住んでいて…

今、ボクやお嬢様達が暮らしているアクディロナの国もその一つ。

 

でも、大陸に住んでいるのは人間だけじゃない。…動物から変異した怪物の存在や

 

 

 

魔女と呼ばれたある一族の存在が居た

 

 

 

ボクが育ったのはアクディロナの国の周辺の森、その森で10年前は暮らしていました。

 

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15年前、アクディロナの周辺の森…

 

 

森に住んでいたある一族は、新たなに誕生する命を一族の皆で迎え入れようとした時だった。

 

「オギャー!!オギャー!!」

 

ある家から赤ちゃんの鳴き声が聞こえてくる。

「はぁ…はぁ…ど、どう…?」

「もう大丈夫だ!スリア!無事に産まれたぞ!」

「おお……ついに産まれよったかい……」

 

一人の水色の長い髪の女性が家のベッドで横たわり、その女性の周りには

黒いポニーテールの女性や…腰が低く、老いた背の低い白髪のおばあさん…

その他にも沢山の女性がベッドの周りを囲んで水色の長い髪の女性…スリアを見守っていました

とても……今は、皆が嬉しそうに…。

「どれ…見せてごらんなさい……」

「はい。おばあ様…!」

スリアはその赤ちゃんをおばあさんにへと渡し、おばあさんは赤ちゃんを抱っこして赤ん坊の顔を覗く。

「ババア、その子を床に落とすなよ?スリアとオレの子なんだからな?」

 

この村の一族は、男女同士が結婚するのではなく…

女と女が結婚しある秘薬を使って「必ず女の子」を産むという風習があり…

この村に住んでいた人達は全員が女性ばかりでした。

 

「ふんっ。ラデュカ…ワシとて老いたが、そこまでのヘマはしないさね…さて、どれどれ…」

赤ちゃんはスリアと同じ水色の髪で、姿や外観は少し男の子ぽいラデュカのような外観でした。

「これはこれは…ラデュカみたいに生意気で活発な子のような気がするねぇ…」

「おいこら、勝手に決めんな!あと、遠回しにオレも馬鹿にしてんだろ!!」

「いいじゃない。そこがラデュカの良いところなんだから…!」

「……べ、べ、別にー…」

「冗談さね。まぁラデュカは元から馬鹿じゃが……ぬ?」

「っておいこら!馬鹿じゃねぇし!!…ん?どうしたババア?」

「…こ、この赤ん坊の股にある物は……ま、まさか…!?」

 

先程の賑やかだった雰囲気がおばあさんの様子を見て皆が静まりかえる。

おばあちゃんが見たのは……この一族の子供には、本来ないはずのもの…

女性にはついてないはずの…

 

「なぜ男のモツがあるのじゃ…!?」

 

 

 男の証があったのだから。

 

 

その場に居た全員が慌ただしくなる。

本来ならあり得ないはずの、男が産まれてきた。そんな現状に皆は混乱し、その子を冷たい目線で見る。

 

「男が産まれるとは…これはよからぬことが起きそうじゃ…!」

「ち、ちょっと待ってください!?男の子が産まれることに何が…」

「そうだ!べ、別に男でも良いだろ!?秘薬の効果が効かなく、それで男が産まれた可能性だってあるし…それに村に一人ぐらい、男が居てもいいだろ!?」

「忘れたか!!何万年も前から、我ら一族は男に対しての不幸ばかりが我らに降り積もってきた事を!お主らとて、忘れたわけではなかろう!!あの日のスリアの事とて…!」

「…っ!あの時の事を口に出すなよ!」

「ラデュカ、いいのよ…!…あれは…」

 

止めようとしたスリアの声を聞かず、ラデュカとおばあさんの二人は口論と喧嘩になってしまう。

今も、なぜこの一族が男を恐れていのかはわからない…

そして、なによりも…「あの日」とは、この三人に一体、何があったのだろうか?

 

 

 しばらくして、二人は落ち着きを取り戻し…互いに一呼吸をして、再び話を再開する。

 

「…我ら一族に伝わる魔の力、それは生まれつき自然や因果や概念を操る事のできる力を持った者達であり魔の力がある物には体の何処かに「龍のような形の痣」が表れる…。一見見たら、万能、無限の力…生き方の改革や生活をラクに出来ると思う話じゃが…周囲の人間たちは魔の力を恐れた。それもそうじゃ、そんな他の人間にはない力を我らは持っておったのじゃし、力を使えばワシみたいに1000年は長生きをし。もっと力を扱えれば若々しく生きることも可能じゃが…普通の人は老いて亡くなる。じゃからこそ…人にはない物や力を恐れて当然じゃ。…そして、我らを恐れた人間達は団結し…我らの祖先らを火炙りにして処刑していった…」

 

 

おばあさんとその抱いていた赤ちゃんの方に体や顔を向け…皆は静かに話を聞き出す…。

 

 

「生き残った祖先達はバラバラになりながらも、それぞれの場所で密かに生活する者達も居れば、人間達に復讐をしようとする者達までと、一族は完全にバラバラになってしもうた…」

 

「そして、一族はそこから分かれ…主に2種類の魔女の者達が居る。我らみたいに密かに森や洞窟などで自給自足と暮らす者、ネイティブウィッチ達…。そして、人々に復讐しようと自ら騎士団を創り、各地の大陸を移動しては国を侵略し、通った大地を人々の血で赤く染め上げるリベンジウィッチ達…」

 

「じゃがな…どの魔女達も、男嫌いという共通点では繋がっておった。なぜか?それは、我ら魔女の一族はどの時代でも男が災いを起こしておったからじゃ。我々を処刑しようとした連中も、我々を支配しようとした指導者も。全てが男じゃ!そして、この村でもじゃ…昔は外から来た旅人を迎えてはおったが…ある旅人の男が、この村の女と魔の力を研究したく無理やり女達を寝ている隙に襲って女達を捕らえた。…男は捕らえた一人の魔女の血を飲むと…男には魔の力が宿ったが、力を抑えられず魔の力に魅いられ、暴走してもうた…その事に気づいた後、村の者達でその男は始末したがの…」

 

「このような話ばかりが昔から魔女の間では継がれておる…。人間の男とは我らのような存在、いやそもそも女という存在を道具としか見ておらぬ…。そして、当時の魔法使い達も皮肉なことに、人間と同じように男の魔法使いを火炙りにして処刑し、後に女の魔法使いだけが残り…最後は人間からは魔女、と呼ばれるようになったわけじゃよ…。魔女は男の子孫を産まぬように、女同士でも産めるようにと、今にも伝わる魔女の秘薬を作り…それを飲み。愛する者と子を作り、女をまた産む…」

 

「…どうじゃ?これでわかったじゃろ…昔から、我ら一族は男には不幸の縁ばかりじゃとな…。この赤ん坊もどうかは知らぬが…きっと、また良からぬ事が起こる…。残念じゃが…この子は捨てるべきじゃ」

 

 

おばあさんは口ではこうは言ってたもの、赤ちゃんの頭を暖かい手で優しく撫でていて…

赤ちゃんをまるで、おばあさんは「ごめんよ…」と許るしをこうかのような辛そうな目で見ていました。

 

一方で話を聞いていた皆は、頷いたりする人も居れば

訳がわからなそうにする人。怯えている人。などなどに分かれていて

それは赤ちゃんを産んでくれた母親の二人のスリアとラデュカも、現状に混乱していたようでした。

 

「…で、でもよ。ババア…なんで男がそんなにいけないんだ?オレらの一族が男に対してヤバイことばかりあったことはわかったぜ?…けど、なんで一族以外の女まで道具扱いされなきゃいけないんだ?そこからの話の流れがわからねぇぞ…ババア…」

 

「今までの時代、女とは何処かで酷使され続けておる…。貴族では女は男として育てられた者…騎士では女だからと周りの騎士達に見下された者…国の土地の支配で村などを焼かれ、男は殺され女だけは奴隷になった者達…」

 

「人とは何処かで誰かや物を差別化しておる…。それはワシらもじゃが…男とは昔からじゃ…。どの時代でも、男が主導権を握るような独裁者の国ばかり…なぜか?女では力不足…とでも言いたいのじゃろう」

 

「別に、全員の男が女を道具扱いなんてせずに男女で愛し合う者達だって居るじゃろう…。本来ならそれが普通じゃ…。じゃが、このような国同士や大陸同士の争いの中、そのような関係を持った者など一握り居るかどうかもわからぬし…そもそも、最近の者は恋愛というのを知らぬ者が多すぎるのじゃ。ワシらはこうして密かに暮らし、愛し合って生きてるだけでも…此所はまだ平和な方じゃ…」

 

差別、罵倒、奴隷、強制。何時の時代、どの時代でも人とは安心を手に入れる為に何かを殺す。

それが例え…本当に殺すという意味でなくても、人は何かを強制されてしまうと

何時かは精神的に滅び、そして肉体的に滅びることに繋がる。

 

戦争、独裁、政治、支配、国。一体、導く存在とは何処に向かうのだろう?

 

人とは常に愚かで正しくあろうとする生き物。自分が正しく、もしくは集団で口を揃える生き物。

 

何時の時代、何処の時代、未来も過去も。人は常に争う。安心感を得る為に、快感を得る為に

 

自分達が正しくあろうとする為に、口と武器と権力を揃える。

 

「…さて、この子の処分じゃが。何処か、山や川に捨てるべきじゃろうな……」

「待ってください!?…お願いです。その子を育てさせてください…」

 

スリアはそれでもなお、育てさせてください。と頼み、おばあさんや皆の前で頭を下げる。

 

「オレからも!…頼む。ババア……やっと、いろんな苦難があってようやく産まれたオレとスリアの子供なんだ…ババアだってわかるよな…頼むよ。もうスリアから何かを奪わないでくれよ…」

 

ラデュカも皆の前で頭を下げ、プライドを捨ててまでおばあさんに頼み込む…。

 

「…ワシだって辛い…じゃが、もしもこの子が…皆に破滅や不幸をもたらすならば…」

「なら、その子を男としてではなく、女として育てたらいいのですか…!?」

「女として…か。正気か?スリア…本当に、育てると言うのか?…またお主のする事も、強制じゃぞ」

「…でも、死ぬより……辛くはないだろ?…」

 

おばあさんは頭を抱え、頭のシワを寄せてしばらくその場で考え込む…

 

今までのスリアとラデュカの過去に起きた出来事

それは二人にとっては苦しく、何もかもを奪われ、失った日々と時間…

その日々を乗り越えた二人にとって、ようやく産まれた赤ちゃんはどれだけ希望だったかを。

 

 

そして、数分後。ようやくおばあさんの口から、言葉が出てくる。

「人間とは無限の可能性の感情ある生き物じゃ。…じゃが、その一つの可能性に大勢を犠牲にするような事はあってはならん。……だが、良いじゃろう。今回だけじゃ…ワシらだってその可能性を奪うことなど本来なら出来ぬのじゃからな…」

「…!……それって…おばあ様!」

「…ババア…!」

「なっ…おばあ様!?よろしいのですか!?」

その発言に対し、周りで話を聞いていた皆は驚きと納得の出来ない顔や

 

ガヤガヤと皆は「おかしい!」「納得できない!」「捨てるべきです!」と言ったりと

静かな時間は終わり、先程とは違い。一気に別の意味で騒がしくなっていきました。

「お主らとて、二人に何があったか…わかっておるじゃろ?これ以上、ワシらが二人の大切な物を奪うのはいけぬ…」

その言葉を聞き、皆は納得せざるおえなかった。

それだけ、おばあさんの言葉と二人に起きたことは皆でも納得しなければいけない程の

出来事が…過去に起きていたのだろうか。

 

「ほれ…受けとるがよい…」

 

赤ちゃんはようやく、元のスリアとラデュカの二人の手と胸の中にへと受け渡されていく。

渡された後、赤ちゃんは笑顔で笑って泣き出し。二人も涙を流しながら

「「産まれてきてくれてありがとう…」」と赤ちゃんに感謝の言葉を述べ…

そのまま、二人も嬉しそうに…安心して笑いながら、赤ちゃんを迎え入れることが出来ました…。

 

「じゃがよいな。スリア・アーレスト。ラデュカ・アーレスト。もしも、その子に不穏な傾向があれば…その時は…」

 

「私達が、この子を大事に育てます!…」

「……ああ。絶対に、こいつを死なせるかよ…!」

「…して……その子の名はどうするのじゃ…?」

「名前…か。もう実は、考えていたんだぜ」

「うん。私の名前のスとラデュカのラとカをとって…」

 

 

 

 

この子はラスカー。ラスカー・アーレストよ

 

 

 

 

 

 

 

 時は経ち。5年後…赤ちゃんだったラスカーは女として育てられ、平穏な暮らしではないものの

日々の生活に驚きや新たな発見などを見つけ、堪能して生活していました。

 

しかし、ラスカーには他の魔女とは違い。いや、全ての魔女との差があると言ってもよいほど

ラスカーと一族の魔女との差には決定的な差があった…それは。

 

「おばあー様!家の修理に使う森の大木、採ってきましたー!」

「……ラスカー…お主も知らぬ間に成長したのぉ…」

 

空中に浮かぶ巨大な大木、その下には幼きラスカーの姿と

それを見て唖然としていたおばあさんの姿が見えました。

 

「ラスカーの魔の力。要塞のように大きい木を五歳でもう浮かせるとは…これほどまでの魔の力。魔女の中では前代未聞の力じゃ…」

 

魔の力。それは自然の摂理に干渉し、力を使う…。水を何もない場所から沸かせたり

火を自由自在に操れたり。時には天候を操り…雷や嵐を起こす者達…

そして、才能のある者次第では魔女の歴史に

「別次元や時間、宇宙や概念への干渉」「未来や過去を変えて因果を無かったことにするような行為」

などの事が出来た者達も居た……が、しかし。

 

その魔女達のほとんどが、そこまでの領域となると…それは命を代償としてしまう為に…

全ての自分の魔の力を思う存分に扱える者など、誰も居なかった…けれど

ラスカーは五歳でその全てを、命を削らず…扱えてしまった。

 

どんな大きさの物も手を使わず少し力を使えば関係なく持ち上げ…

うっかりと隕石を落としたり…天候も思うがまま…

時間を加速させたり、遅くさせたり、巻き戻すことも、時にはしていたようだ。

それだけの魔女達にとって前代未聞の事をやってしまうラスカーは…

「神に近いと思われる存在」へと魔女の皆からはそう認識されてもいた…。

しかし、そんな存在が持つ。大いなる力が…はたして、ただ信仰されるだけなのだろうか?

 

 数分後、ラスカーはおばあさんと共にボロボロに壊れた家に行き

その家の近くに大木を置いているところでした。

 

「よいしょっと…これでいいですか?おばあ様?」

「ああ。これだけあれば材料は足りる。家を直せるじゃろう…もう自分の家に戻るかその辺りでゆっくりしておってよいぞ…」

「はい!」

 

その後、ラスカーはおばあさんの用事から解放され、ラスカーは村を歩き回ることにした。

「ねえねえ!かくれんぼしてあそばない?」

「うん!あそぼ!」

歩き回っていた最中に、偶然にもラスカーは他の女の子の子供を見つけ、その子達に近寄り…

「ね、ねえ!私も一緒に遊んでいいかな?」

と訪ねると…

「……むー…らすかーとはあそんじゃだめって、おかあさんいってた」

「うん。らすかーにはちかづいたらふこうがおとずれるって」

村の大人達はラスカーの事を良くは思っておらず。ラスカーの才能に対し、危険視や

子供達には不幸や差別的発言をし、ラスカーを遠ざけようとしていました。

「……そっか…うん。ならいいよ」

その事をラスカー本人も知っており、二人に悪気がないんだと知った上で納得し。その場を離れる…。

「ごめんね…らすかぁー…」

「わたしたちも、あそびたい…けど、あそんだらおかあさんたちにおこられる…」

「だ、大丈夫だよ!それじゃ、私は行く…ね」

 

同年代の子供達はラスカーには誰も関わらず。

周囲の大人達は男の不幸の話や、密かに悪口を誰かと話し合う。

唯一、救いだったのが。ラスカーと関わった一部の者達…

ラスカーの性格と彼に助けてもらった人達のみが、彼の意思を知り…

彼女達の口からラスカーの悪口が出ることは一度もなかった。

 

ラスカーは自分の家へと戻ると。家の中では…とても、甘くていい匂いが香り漂ってくる。

その匂いを嗅ぐと…ホッと安心し、匂いが流れてくる台所へと足を運ぶと…。

「あ、ラスカー。おかえりなさい」

「ただいま!スリアお母さん!」

「今、ラスカーの好きなパイを作っているから、もう少し待っててね」

 

台所では、様々な異世界での採れた果物をナイフで切ったり煮たり…

小麦粉などを練ってかまどで焼くスリアの姿がありました。

「はい!…あの、スリアお母さん」

「何かしら?」

「…どうして、魔の力って宿ったのかな?なんで、村の皆って魔の力があるのかな?お母さんにも…」

 

ラスカーは度々、思うことがあった。

それは…もし、力が無ければ、いろんな人と話し合いが出来たり友達になれたのかと

でも、力があるからこそ誰かを助けることも出来たラスカーにはこの時から既に迷いがあり…

遠回しに直接、自分の力のことではなく…魔の力についての事をスリアに訪ねてみる。

 

「昔、おばあ様から聞いた話だけど…私達の体の何処かには、龍みたいな痣があるでしょ?ラスカーにも額に…もしかしたら、一族は龍の末裔。なんて何の証拠も根拠もない話になるんだけど…」

 

「実はね。この大陸の古い時代から…ある「槍の伝説」があってね」

「槍の伝説?」

 

「そう。ある日、大陸は崩壊しかけるようなとてつもない地震が起きた。地震で大地は崩れ、人々は恐怖し国も地震だけで滅びるような揺れ…人々は異常な揺れに世界の終わりだと思い、絶望した」

 

「けれど…その揺れの中で突然、空が輝きだす。輝きの中から「龍のような雄叫び」が響き渡ると同時に、一つの槍が空から大地に降ってきて…槍は揺れる大地に刺さると、大地は空と同じように輝きに包まれ…揺れていた大地は揺れが静まり、大陸は四つに分断されただけに収まった」

 

「その後、突き刺さった槍が何処に行ったのかはわかんないけど…人々は槍を崇め、平和になった。という伝説の話よ。この話に出てくる龍のような雄叫びと槍の不思議な力が…もしかしたら魔女の一族の魔の力と痣に関係してるのかもしれない。かもっておばあ様達が言ってたわ」

 

まだこの時のラスカーにはよくわからず。ただ「へ~…」とだけ答えてしまった。

 

「あっ出来たみたいね」

 

かまどを見ると、じっくりと焼け…いい焦げ目と美味しそうなパイが焼けており

スリアはパイをかまどから出し、皿に盛り付けをして机へと運ぶ。

部屋からは甘い匂いがさらに漂い、ラスカーの腹と食欲を唸らせる…。

 

「ラスカー、外に居るラディカを呼んできてくれないかしら?一緒にパイを食べよって」

「…はーい!」

 

もう一人のお母さんのラディカを呼びに、ラスカーは再び外に出てラディカを探しに行く…

「……ラスカーも、不安なのよね…」

 

外に出た後、ふと思ったことをラスカーは呟く。

「私の魔の力、どうしてこんなに皆と違っておかしいのかな…」

どんなに力が強くあろうとも、力とは人々の使い方次第で力は形を変える。

ラスカーはずっと不安だった。けど、希望も秘めていた。

これからもお母さん達と一緒なら、友達が居なくてもいい。それに、力で誰かを助けれるなら…と。

 

 

「はあっ!…せやっ!!」

その後、ラスカーは剣で木を斬りつけて技の練習をしていたラディカを見つけ、大声で呼ぶ。

「ラディカおかあーさん!スリアお母さんがパイを一緒に食べようって言ってるよー!」

「…ん?ラスカー?…もうそんな時間だったのか…よし、今向かう!」

ラディカは剣を鞘に収めた後、ラスカーと共に手を繋ぎ。家まで来た道を歩く途中で

あることを思い、ラディカもまた何かを訪ねる。

「ねえ。ラディカお母さん?どうして、お母さん達って胸がそんなに大きいの?」

「へ?あ、い、いやこれは…ぼ、母性?つうか、どうして急に胸のことを聞くんだ?」

「だって…気になるから…それに、私には股に皆とは違って変なのが付いてるし…」

「き、気にするな。そのうち、ラスカーの胸も大きくなるさ!」

 

男であるラスカーがそのようになるような事などないと知っているラディカ…

何時まで隠し通せるかと、ラディカも不安と焦りを感じていたり…

村の一族の大人がラスカーの悪口を言ってることや

家に石をぶつけたり、悪さなどをしていたりと…村の人々の悪事に対しての怒りも感じていました。

 

「…さて、とりあえず。帰……ん?あそこに居るのは…

道中、ラデュカとラスカーは同じく。誰かが木で戦いの練習をしている人を見つける…。

 

「……すぅ…」

その人は、ラスカーが運んでいた木よりも何倍も大きく

城のような城壁の厚い壁のようであり、雲に届きそうな程に太くて大きい木を

弓矢で狙いをつけており…一呼吸をし、矢を放つと…

 

 

ドゴオオォォーン!!!

 

 

矢は飛んでもない力で弓矢が放たされた音さえかき消すほど早く飛び…

そして、大木まで矢が到達すると…異常な音と共に、矢は厚い壁の大木を

一気に貫通し。さらに、後ろの同じ大木を5つも貫通してしまい。

6つ目からようやく、矢は木に刺さって勢いが止まったようだ。

 

「どうすればいい…何を私はしているのだ」

 

「おーい!リベリア!また騒がしくやってんな~!」

「…!?ら、ら、ラデュカ!?」

リベリアという女性は、ラデュカに気づくと慌てた表情と挙動をする

何か、考え事もしていたようだ。

「こんにちわ!リベリアさん!」

「!?……あ、あぁ。ラスカーもか…」

「ん?どうした?なんか、あったのか?リベリア?」

ラスカーを見て、さらに慌てていた様子を見ると…

その様子が気になったのか、ラデュカが質問をしてくる。

「まぁ……ちょっとな…」

「あんたにはいろいろと世話になったんだ。力になれるなら、なってやるぜ?」

「い、いや……すまない。今はその…一人にさせてくれないか?」

「…そうか、わかったよ。でも、何かあったら言ってくれよ?オレもだが、スリアも力を貸してくれると思うぜ!」

「……ああ…」

 

 

 

 

 

 

リベリアという女性を後にし…二人は家に戻り、時間が経つと

アーレスト一家はパイや他にもスリアが作ってくれた食事を三人で集まり

食べている最中でした。もう外は夜で暗く、とても静か…。

「おいしぃ~…♡」

「本当に、ラスカーはパイが好きなのね!」

「うん!」

嬉しそうにパイを口に入れ、頬張り…仕草するその姿は、女の子そのものではあった。

外観だけ見たら、女の子なんだよなぁ…」

 

「…ねえ。スリアお母さん。ラデュカお母さん?」

「なにかしら?ラスカー?」

「誰かを好きになるってどんな気持ちになの?お母さん達って互いに愛し合っているんでしょ?」

「ま、また急な質問だなおい……そうだなぁ。なんだろう?…凄く胸が苦しくて…」

「それで、心臓の鼓動が早くなり息も荒くなってしまう。それで苦しいはずなのに、暖かい気持ちになって…」

「……なんというか。自然と隣に居て…手を…取ってしまう…そんな感じかな?」

いつの間にか、二人は互いに手を取り合い。握り…

体や胸などを隣に合わせながら抱きつくような状態になる。

「…って、い、今はダメよ!?ラデュカ!?」

「あ、いや!?これはその!?…け、けど……」

「……もう。相変わらず、こういう時は恥ずかしがり屋さんなんだから」

スリアはさらに身を寄せ、ラデュカの体にくっつく…

「う、うわあああっ!?///…ら、ラスカーの前なんだからやめろよすりあぁぁ…///…」

「……????…お母さん達、変なの~…」

 

 

こうして、お腹いっぱいに食べながら会話をしている時は…嫌なことを忘れ、心が癒されていく

しかし……平和な一時(ひととき)と満足感は…

これで最期となるとは、ラスカーは…思ってもいなかった。

 

 

 

夜で辺りは静かで、村の人々は家に入っているはずなのに

静かな夜から…なにやら周りが騒がしく、複数人の足音が家の周りから聞こえてくる。

「そういえば…変ね。皆、それぞれの家で夕食を食べているかもう寝ている時間帯のはずなのに……」

 

 

「スリア!ラディカ!大変じゃ!!」

 

 

裏口から、おばあさんが年寄りとは思えない力で勢いよく扉を開け

呼吸を荒くし…焦った様子でアーレスト家の家に入ってくる。

その様子を見た三人は、何かの異変を感じとり、おばあさんに何があったのかと語りかける

「ば、ババア…!?」

「……何かあったのですか?おばあ様…」

一度、すーっと息を吸って吐き、冷静になってからおばあさんは何があったのかを説明しだすと…

「村の皆がラスカーを火炙りにしようと、松明や斧を片手にこっちに迫ってきておる!…」

「なっ…!?どうして!?」

「やはり…ラスカーが「男」じゃと言う事と…ラスカーの力を皆が恐れたのじゃろう…!」

「……おとこ?…」

 

男とは魔女の一族にとって不吉と不幸と災厄の存在、そう言われて今まで教わって生きてきた…

二人が自分の存在を隠していた事を知ってしまったラスカーは…

 

自分が皆にとって都合の悪い存在だと、今まで避けられていたのは自分が男だったからなのだと

なによりも…皆と体が違うのは自分が男だったからなのだと

おばあさんの発言で全てを悟り、全てを知ってしまった…。

「……私が……男…だった…から…今まで………」

「…ラスカー……」

「くそ!…どうしてどいつもこいつも、なんでスリアの大切な存在を奪おうとするんだよ…!」

 

 

ドンドンドンッ!

 

 

会話をしているうちに、扉を叩く音が激しく聞こえて響いてくる…

 

「……いろいろとワシも悪いが…ともかく、今はさっさと裏口から逃げるのじゃ…!」

 

扉を叩く音が時間がないことを焦らせ…もはや、何かを考えてる暇などなかった…。

「…持てる道具を持って、ラデュカ…」

「わかった…。すぐに出よう…また、逃亡生活になりそうだな…」

ラデュカは剣を用い、スリアは様々な調合をした薬などを鞄に入れて逃げる準備をする。

「お、お母さん…おばあ様……」

 

急な事で戸惑いを隠せないラスカーと

慣れた手つきと冷静な行動で逃げる準備を行うスリアとラデュカ…

過去に二人はこのような事が何度も起きていたのだろうか?今になってはその真相も不明。

 

「大丈夫。お母さん達が一緒よ…おばあ様」

ラスカーを安心させるように、温もりのある手でスリアはラスカーの手を繋ぎ…

準備を終わらせた後、ラデュカと共に裏口の扉の前へと立ち。

おばあ様の方向を向いてスリアは頭を下げて、礼をする…。

「……ああ。いろいろとあったが…元気でな…」

「…あばよ。ババア」

 

こっそりと裏口の扉を開けると、辺りは暗くて深い闇の夜の森…

危険で何が潜んでいるかわからない…

それでも、三人は走って逃げないといけず…

どうなるかわからない、行き先もわからない、森にへと駆け出して…向かった。

 

 

暗闇の何処からか……何かの生物の呻き声や鳴き声が森から聞こえてくる。

走っていた道なき道をラスカーは走りながら振り返ると

住んでいた家の周りには明るく…

その明るさは皆がラスカーを殺そうとした殺意と皆の不安と不満と恐怖などの象徴でもある。

 

ラスカーを殺さないといけない感情。自分の身を守らないといけない感情。

 

誰かを守らないといけない感情。

 

 

殺されてしまうかもしれない恐怖。何か良からぬ事が起きてしまうかもしれない不安。

 

松明の火から…ラスカーからはそう見えてしまい……感じ取れてしまっていた…。

 

 

「居たわ!!あっちで逃げているわ!!」

 

 

「…くそ!見つかった!!」

それでもなりふり構わず。今は逃げることだけに専念をしなければいけなかった。

 

 

 

運命に足掻き、生きるために…

 

 

 

しばらく走ると、追いかけて来ていた魔女の姿はなく。他の誰かの足音も聞こえず…

ようやく…追うことを諦め、追っ手を撒けたかと三人は走るのを止めて歩くことにし

少しの間だけ、歩きながら休憩することにした。

 

「…お母さん。男って存在がいけないんだよね?…お母さん達が日々、悪口やイタズラとかもされていたのって……全て、私のせいなんだよね…」

「今は何も考えなくていいわ…大丈夫。大丈夫よ…」

 

自分の存在への正体を知り、スリアとラデュカに罪悪感を抱いていた。

二人が日々、受けていた嫌がらせや…

あまり二人が他のおばあさん以外の魔女との関わりがないのも…

全て、自分のせいだった事に…

 

「この後、何処に行く?…」

「そうね。また村や国への流れ流れ…かしら」

「……そうだよな」

 

しかし、ほんの少しの休憩も……すぐに終わり、三人の所へ何かが

風を切り裂いてラスカーの所へと、向かって飛んでくる音が聞こえてくる…。

 

「…!」

それを察知したラデュカはスリアとラスカーの後ろへと周り、剣を抜き…

飛んできた何かを弾き、二人を守る。

 

「ありがとう!ラデュカ…!」

「平気だ!…けど、これは……」

弾き返し、地面へと落ちて刺さっていたのは……一つの矢…

「辺りに人の気配はなし。いや、もしくは消しているのか。ただ…こんな危険で暗い森中でも真っ直ぐに矢を射ててこちらを認識し…活動の出来る奴は……まさか!」

 

 

「その、まさかだ…」

 

 

近くの木の上から女性の声が聞こえ、その声の主は木の上から地面へと降り、着地し…

矢を射った声の主は…姿を露にする…。

「……リベリア…やっぱり、あんたしか居ないよな…」

「ああ。このような再会など、望まなかったのだがな…」

降りてきた女性は…昼間の弓矢の女性の…あのリベリアであり

顔つきが女性というよりは男性ぽくて、美しく…背も高くて

髪色は黒く、髪は短くて後ろ髪を一つ、三つ編みにしている。

軽装の軽い鎧を胸や腰などに身に付け、片手には先程のラスカーを狙って射ったらしき

弓矢も持っており、その他にも腰には剣をぶら下げてもいた。

「……なんで、あんたが…」

「リベリアさん……どうして…」

「……すまない…」

 

互いに悲しそうな顔をしているが、それ以外にも何かが感じ取れ…

過去にこの三人は何処かで知り合っていたらしく

発言からしても過去にリベリアはスリアとラデュカの二人の仲間だった……

 

それ今は…なぜかはわからない。だが、一時は仲間だった彼女は…

 

「…知っての通り。私は元、リベンジウォッチだ。人間を殺すことには慣れているが…魔女を殺すことには慣れていない。…頼む。その子だけ渡してくれ…そうしたら、お前達を傷つけずに済む…」

 

弓矢をその場で手放し、今度は腰に吊り下げていた剣を抜き…刃を向けてくる。

 

「……渡せません…それに…」

「もしかして……あんた、昼間の時のあの様子…何かあったのか?」

「!……言うな!何も聞かないでくれ!…」

しかし、その刃と手元は震えており、何かの迷いがあった。

『お前達を傷つけずに済む』

あくまでも、彼女の狙いはスリアでもラデュカでもなく、ラスカーのみ。

恐らく…リベリアは二人と戦いたくなく。出来ることなら…被害を最小限に収めたく…

なによりも、この時は誰かにラスカーを殺すことを強制されていたのだろうか?

「さっきの矢…オレがあんたの攻撃を防げるなんて、出来るはずがない。あんたの力、国を一人で滅ぼせる「国殺し(くにごろし)のリベリア」の力はそんなもんじゃない。あんたは明らかに手加減以下の力で矢を放った。……本当は…殺す気なんてなかったんだろ?…」

「リベリア、何があったのかわかりませんが…今は、剣を収めてくださいませんか?…」

「…無理だ。それに、その子だけ渡したら終わる話なんだぞ?どうして渡さない…!?」

「渡さないも何も、渡したらラスカーを火炙りにするんだろ…!?」

「……それは、私にもわからない。だが、少なくとも…二人はその子をさえ渡してくれたら村の皆も「あの人も」二人を傷つけないはずだ!…それに、子供はまた作ればいい話、今度は女の子で、力も皆から信頼される魔の力を持った子供を…!!」

「…嫌!」

 

今のリベリアの発言で何かが吹っ切れたのか

スリアの言葉がハッキリとしており、声も大きくなる…。

「どんな理由でも…どんな形でも、どんな姿でも…その子が生まれてきた命であること…その命に代わりなんて誰も居ない。それはどんな生物でもそう…だから、この子は…ラスカーは…私とラデュカの最初の子供!同じ命なんて…二度と生まれて来ない…だからこそ、私は自分の命に変えても、ラスカーを守り抜くわ!!生きることを…私は絶対に諦めない!例え…」

 

 

 

それが、運命(うんめい)だとしても…最期の瞬間まで、足掻くわ!

 

 

 

ラデュカとラスカーの目の前で、スリアは庇うように立ち…

勝てないとわかっている相手なのに、彼女は全く恐れず、微動にもしない覚悟を見せつけ

二人の前で両手を広げ、そのまま立つ…。

「……スリア…」

「お母さん……」

「やはり、変わらないな。もし、私にも…貴女のような決死の覚悟があれば…」

「今からでもリベリアも変われるわよ。どんな人でもそう。だから……剣を…収めて…」

「………わかった」

スリアの決死の覚悟を見せつけられて、リベリアは自分の震えた剣を見ながら

自分は二人を殺せる覚悟など出来ていないことを見て、考え直し…剣を下げる。

「リベリアさん…!」

「とうせ、その子を捕らえた後に、私はこの村を出ていくつもりだった。それに、その子のように…私の力も皆からは恐れられていたからな。ただ、本来ならその子を捕らえ、ある人に渡してから…あることをし、出ていくつもりだった」

「…あることってなんだ?そうや、さっきも…ある人とかって…」

「二人とも…気をつけろ。私を脅してきた奴らは村の住民を利用し、その子を狙っている…」

 

突然の内容で、二人は驚きながらも。二人は冷静になり、リベリアの話を聞いてみる…

「リベリア程の使い手を脅せるなんて…どんな野郎だ?…しかも、村の奴等を利用って…」

 

「村の裏切り者だ。私に接触してきた奴は国と手を組み、ラスカーの力を狙っていたようだった。本来なら、そいつらを殺せたが…村の全員を裏で密かに人質にとられ、その気になれば何時でも村を滅ぼせる。私には…村の村長のおばば様には居候をさせてくれた恩もあり、無闇に動くことは出来ず。唯一、その子の力に対抗し、二人との仲が良くて接触もしやすかった私だからこそ、私を脅迫し…奴等の命令に従う他なかった…すまない」

 

三人の目の前で頭を下げ、謝罪を行うリベリア。

しかし、その裏切り者とは一体、誰だったのだろうか?

 

「昼間はだからあんなにオレとラスカーを見て焦って…でも、まじかよ…。国と魔女が組むなんて、その国はかなりやべぇし…その魔女もヤバイぞ…」

「…その事を村の皆さんは知っているのですか?」

「知らないさ…密かに人質にとれていることも…何時も見られていたこともな」

「では、ラスカーを狙った人の名前は?…」

「私を脅迫し、国と共に村を利用し、ラスカーを狙った者の名は……」

 

 

 

 

 

 

ドンッ!

 

 

 

 

 

「…え?……あれ…………ごめんなさい…リベ…リア……もう一度、言ってくれない…かしら?」

名前を言いかけた瞬間、突如と静かな森に…短く大きな音が響く…

そして、その音が響いた直後……スリアの体が震え出す…。

「……なっ!?…」

スリアの体の胸元には……ぽっくりと穴が空いており、そこから血が出ており…

震えた直後、スリアは地面へと横に倒れてしまう…。

「すりあああああ!?」

「お母さん!?…おかあさん!?」

それに気づき、横に倒れたスリアに寄り添うラデュカとラスカー…

「…まさか!」

 

何かに気づき、後ろを振り向くリベリア…振り向いた矢先には…

「……何をやっているの?リベリアさん。貴女、あの魔女の子供の回収は?」

 

そこには、二人の頭の鎧がユニコーンのように尖ったなどの鎧を纏った人達の真ん中に…

右手に小さな銃を持った金髪の長い髪でドレスと鎧を纏った女性の姿があった…。

「…フォルデーラ!」

「まさか、あいつが……?」

「ああ。奴が…私を脅迫し、村を利用してラスカーを狙った。魔女の裏切り者、フォルデーラだ…!」

 

金髪の女は、まだ幼く。10歳ぐらいの女性ではあったもの。10歳とは思えない程に

背が高く、美しく…大人のような雰囲気が目立っていた。

「フォルデーラ様、あそこに居る水色の髪の子供が例の魔女かと」

「ええ。わかっているわ。ラスカー…だったかしら?」

フォルデーラの持っていた銃の銃口からは

火薬の煙と臭いが漂い…まだ、撃ってから時間は経っていない…。

 

「……そうか!お前が…貴様がスリアを撃ったのかあああああぁ!!」

大声で叫んだと同時に、走りながら再び剣を抜き

スリアを撃ったことによる怒りでラデュカは我を忘れて、フォルデーラ達の近くにへと走り…

そのまま飛び、フォルデーラを頭上から剣で振り降ろそうとしてくる。

「よせっ!ラデュカ!」

「近寄るな。貴様の力が目的ではない…!」

フォルデーラに剣を上から降ろそうとするラデュカに対して

その横に居た二人の鎧を頭から全身に纏った重装備の騎士達がラデュカの接近を

左に居た騎士が持っていた大盾でラデュカの振り降ろされた剣を弾き

右に居た騎士がそのまま剣を弾かれ、地面へと落ち体制の崩れたラデュカを大槍で首に突きつける。

 

「ぐっ!?…」

「ネイティブウォッチ程度の魔女に遅れなどとらん!」

「拘束させてもらう!」

 

そのまま突きつけられた後、ラデュカをそのまま横に倒し、首には

騎士達の二つの槍をクロスさせ、再び首の左右に突きつけて…地面へと固定され動けなくなってしまう。

「…く、くそぉ!お前らのその鎧の頭の尖った特徴。アクディロナの国と敵対してた奴等か!…」

「ええ。そうね」

 

騎士達の力は強く…頭が地面へとくっつき動けなくなり

ただ冷たい地面から…血が流れ、倒れていたスリアを眺めることしか出来なかった。

 

「なぜだ!村の者にはあの子さえ渡せば傷はつけないと約束したはずだ!」

 

「ええ。そうよ。けど…貴女、子供を捕まえずになに親との会話をしているわけ?そしてそこから子供は捕まえず、私の事をバラそうともする。約束はしたけど、子供を捕まえるという前提条件から…先に約束を破ったのはどちらかしらね?」

 

「……くっ!」

「でも貴女にチャンスを与えるわ」

今度は、銃を拘束されたラデュカの頭上に銃口をグリグリ、と額に押し突きつける…。

「て、てめぇ!!…」

 

「さて、この暴れん坊ちゃんの頭まで弾け飛ぶ前に。30秒以内にその子を渡してちょうだい?それが、最後の約束。渡してくれたらこの子まで月まで飛ばさなくてもいいし、そこに倒れてる子の二の舞を踏まずに済むでしょう?。後で貴女に見返りも返すし…悪い話ではないと思うのだけれど…それとも、貴女の魔の力と私の弾。どちらが早く抜くのか、やってみるかしら?…ねえ、国殺しさん?」

 

まだ中身が幼い子とは思えないほどに、肝と覚悟が座っており。頭の回転と社交での口車…

しかも、魔女であるのに関わらず、魔の力を使わずに。勝てない相手に今、勝とうとしており…

誰と誰が何の関係なのか。誰に何の過去があったのか。何が使えるのか。

状況はどうか。兵士はどれだけか。協力者は誰なのか。全ての状況を把握し尽くし…

 

 

己の頭脳と行動力、そして武器で、彼女は今…どん底から成り上がろうとしていた。

 

 

「………スリア……ラデュカ…!」

「1、2、3…」

あの世へのカウントダウンが始まる。

取引に応じれば、ラデュカの命は助かるが…ラスカーがどうなるかわからない…

「お母さん!…おかぁさん…!」

 

膝をついて…地面に泣き崩れ、完全に冷静を失ってしまったラスカー。

本来なら…時を戻したり、傷を癒したり、騎士達を吹き飛ばす…などなど

この絶望を乗り越える方法などいくらでもあった…しかし

幼き子供が、自分の目の前で母親が崩れ…冷静でいられるわけがなかった。

 

「やだ!……やだよぉ!…こんなの…一人ぼっちは…いやだぁぁ………」

「8、9、10…」

考える暇などなく、10秒が経過する…。

 

「ちくしょおおお!!!オレのことはいい!ラスカーが助かることをスリアだって望むはずだ!…リベリア!オレごとこいつらを殺せええええええ!!!」

「だが、同時にスリアはお前が生きることも望むはずだ!!…何か、何か手段は…!」

 

 

「13、14、15…」

二人が何かをやろうと会話をしていても

彼女はカウントダウンを止めることはせず、そのまま冷静でなに食わぬ顔で数えている。

 

「…いやだよ………お母さん…」

 

ラスカーはスリアの手を握り…ただ泣いている…。

三人とも何も出来ず、時間が迫ると共に…ただ絶望してしまう

……たった一人を覗いて…。

 

「……らす…か…」

微かな弱った声が、ラスカーの近くから聞こえる…

「!……お母さん!?…」

それは…もはや、手からは少しの温もりの弱った体温…

濁り、苦しく今にでも死にそうな声…

まだ、スリアは辛うじて生きており、ラスカーに語りかける…。

「ごめんなさい……お母さん………私のせいで……私にこんな力があったから…男だから…」

 

全てを招いてしまった罪悪感。自分という存在と膨大な力……

後悔をしていた。なんでこんな形で生まれてきてしまったのだろうと…

ただ、平和に皆と暮らしたかっただけなのに…と

 

「…ラスカー、聞いて。私もラデュカも…貴方が男だからって…皆と違う力があるからって、私達は貴方の事を嫌ったりなんてしなかったわ。だって……生まれてきた、たった一人の命であり…最初の私達の子供、生まれてきた時は本当に、嬉しくて幸せで…後悔なんてしてないわ。誰かと何かが違ってもいいじゃない……皆が皆、同じなんてないし。誰かと合わせなくなっていいのだから、貴方は貴方であり自分」

 

「だから…ごめんなさい。今まで、貴方を偽り。男の子だったという事に嘘をついて……でも、ラスカー…これからは、今の自分を受け止めて…向き合い、貴方は生きなくてはいけないわ…」

「でも、お母さん達は?…」

 

「…いいのよ。子供が親より先に死ぬなんて、絶対のあってはならないこと。せっかく生まれてきた命が、まだ何も…人生の優しさ、辛さ、悲しさ、温かさを…何も経験せずに死ぬなんて…「人間」として何も生きれてないのと一緒。ラスカー」

 

「貴方は生きるのよ。例え、貴方の存在、貴方の生き方、貴方の力が運命で縛られていたとしても…それすら振り払い、自分の道で誰かと生きるのよ。大丈夫、世界は私達が思うよりずっと広いわ。きっと、魔女という事も何も気にせず…貴方の隣に居てくれる人達が絶対に居るわ」

 

「でも……でも…」

 

彼女は上半身だけ起き上がると、そのままラスカーの手を握る…

「あの魔女、生きていたの!?…」

「スリア!?」

「…無事だったか!」

 

「……お母さん…?」

そして、ラスカーの手を強く…強く握り…何かの行動をとる…

「ラスカー…」

 

 

 

生きていることを…生きることを諦めないで…!

 

 

 

強く握り、「これからの」ラスカーの人生を変えた言葉を残すと…

スリアは手を離し、勢いよくラスカーを押すと…

風を魔の力で操り、ラスカーを空高く打ち上げ…何処か、遠い場所へと飛ばした…。

 

「おかあさああああああああん!?!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後…アクディロナの森近くの砦付近で、ひとつの馬車が森を通る…

「まさか、お嬢様が砦の視察中に、こんなところで敵軍が来ていたとは…予想外だ」

 

「予想外なのも仕方ないさ隊長。しかし、なぜだろうな?まだ、西側の領地と砦は5ヶ月にかけて砦の略奪中の最中なのに…なぜ、こんな所を今に攻めてきた?あっちの戦闘は決着もついてないし、終わってないんだろ?なんで、アクディロナの奥の領地にわざわざ攻めてきた?こんなの自殺行為なのに…何が目的だ?」

 

「この道は敵軍が通ったという情報は確認されていません。比較的に安全だと思いますが…」

「ともかく、万が一だ。砦は何時、戦場となるかわからない…早く、今のうちにお嬢様を城へと還さねば…」

 

馬車の他にも、馬車の周囲には馬に乗り、鎧を纏った騎士達が馬車を守るように

馬で馬車を囲みながら、森の道を進んでいた。

 

「まさかとは思うが、この森にも魔女が潜むと言われてる。あの国の連中はただ密かに住んで暮らしているネイティブウォッチの魔女達を捕らえ、人体実験を行っては新たな兵器を生み出したり…あるいは洗脳で殺戮兵器として戦わせる…いくら戦争であり、魔女だからといい…人間のやることではない」

「隊長殿は森に住んでいる魔女が奴等の目的と睨んでいるので?」

 

「…ああ。魔女一人で戦争をひっくり返せるやもしれん。もう何年も噂を聞いてないが、国殺しのリベリアの件がその例だ。魔女一人で戦争をひっくり返すのと、魔女を捕らえる多数の兵士達…戦争を一人でひっくり返し勝てるなら、捕らえるための兵士の命などゴミ程度しか見てないような連中だろう」

 

「まぁ人間のやることではないって…リベンジウォッチの魔女にも言えるケド…」

「仕方ありませんよ…。人間達は彼女達に恨まれて当然の事をやってきた訳ですし…さらに、先程も言われていたように、仲間を人体実験にもされていたりするのですから…」

「そうだな…。……リベンジウォッチは幸いにも、今はこの大陸には居らず。北の大陸拠点へと帰っているようだ」

 

「ほんと、それがあっちの敵さんにも俺らにも唯一の救いだよな。あそこの奴らは5万の魔女達、少数精鋭の魔女の騎士達。ありえない力と魔女なのにずば抜けた剣技、あいつらをだし抜くには一人を殺すのに、兵士が100万人でも足りませんからね」

 

「なにより、その魔女の騎士団の団長…「血狂い(ちぐるい)のブレイズ」は…やろうと思えば、そもそも世界ごと抹消出来るような化け物なのに…なんで、わざわざ国を略奪するのでしょうか…」

 

「魔女の国でも作ってるんじゃねぇーの?つうか、あいつらこの調子だと、国で子を作り。遠い未来に5万人どころかそのうち無限の魔女達の兵士が来まっせ?女同士でも子を作れるとか、どういう体なのやら」

 

「ともあれだ。その魔女達を打倒するために、最近ではどの大陸の全ての国が、対魔女用の兵器を開発中とも聞く。人間側が反撃する機会も来るだろう。まぁ…その兵器もどうせ人間同士に使うことになるのだろうがな…」

 

魔女の事や戦争や国の事の話を騎士の三人達は話していると…

 

「…ん?ちょ隊長!あそこの川、誰かが川の中にある岩に引っ掛かって気絶しているぞ!」

若き騎士が川の方向へと指を指して、場所を示す。

「ありゃ背的にも子供だな…おいおい。この辺りに村ってあったっけか?」

「ど、どうするのですか?…」

「…助けたいが、今はお嬢様を………」

 

 

「いえ、構わないわ。助けてあげて」

 

 

馬車の中から女性の声が聞こえ、周りの騎士達にその子を助けろと命令を下す

「…ありがとうございます、お嬢様。馬車を停めてくれ。子供を迅速に助けるぞ」

 

馬車と馬を停め、騎士達はその子供が流されそうになっている川へと行き

騎士達は子供を引き上げると、地面に倒し。体の異常を調べる…。

「服が破れ、血も付着してるな…。けど、この子は怪我をしていない…別の誰かの血痕か?」

「…熱は……ん?」

騎士の隊長がその子の髪をまくり、額を触ろうとすると…

そこには、龍のような痣が…肌に描かれていた。

「た、隊長。この人……ま、魔女の子供です!?」

「おいおい…どうすんだ?…親は?村は?…なんでこんな所に…?」

 

「お、あかぁさん……おかあさん………」

その子の正体は、数日間…村から遠くへと飛ばされ、川へと流れついた後に

気絶し、体力も力尽き…あの日の事でうなされていたラスカーであった…。

「…この様子、隊長の予想が当たってそうだな」

「まだ決まったわけではない…それに、当たって欲しくない予想だったのだが…。ともかく、この魔女の子と親に何かあったのは決まりだ」

「で、でも。この子をどうするのですか?…」

 

「保護してあげて」

 

騎士達の後ろから声がし、振り返ってみると…

そこには、白髪の長い髪の女の子がこちらに歩きながら、ラスカーの元へと近づいていました。

「お、おい!?そりゃヤバイんじゃないか?魔女って人間を嫌ってて…特に男は見ただけで首を吹き飛ばすような奴らだぜ?…」

「もうそんな古い発想は捨てなさい。もしかしたら、って可能性もあるでしょう?」

ラスカーの額をその女性は触り、頭を撫でながら話す…

「熱があるわね」

「しかし…魔女を助けるのは、王が許さないのではないでしょうか?」

「あの人が人を助けることに反対なんてした?…それに」

 

 

 

 

どんな人でも、死ぬのは辛いでしょ?

 

 

 

 

「……ん、んうう……ここは?」

ラスカーは目が覚めると、見覚えのない白い天井が見えた。

「ようやく、気がついたようね」

そして、感じたことのないふかふかなベッドの上にラスカーは横になっており…

その隣には…あの時の白髪のお嬢様が椅子に座って、ラスカーのことを見ていました。

「だ、だれですか!?…」

それに気づくと、飛び上がるように起き上がり…その人の方へと顔を向ける。

そして、起き上がった事で布団が落ちると…ラスカーは村で着ていた服とは違い

別の着心地がいい白い服を着せられてもいたようだ。

「…こ、この服…それに此所は……一体…」

「此所は私達の領地であり本拠地のアクディロナ王国、此所はその城の部屋…」

部屋はとても広く、家具を置けるスペースなどがまだまだ空いていたりしている。

 

 

「そして、私はアーネア・アルテネアよ。貴方を保護させてもらった一人ね」

 

そうラスカーを保護した一人こそが、当時、同い年であり

幼くありながら、砦を回っていた幼なじみのアーネアであったのだった。

「……しかし、貴方…額に痣があって魔女なのに、男…なのね。私が普段から着てる服を着せた時に股に付いてる「あれ」を見たけれど…男というより、女にしか見えないわね。あそこを見るまで、女の子にしか見えなかったし。髪も長いし。服も似合ってるわね」

「え?ち、ちょっと待ってください?私の体を見たのですか!?///」

「ん?ええ。見たわよ?」

平然と何も気にしないアーネアの様子を見て、余計に体を見られたことが恥ずかしいラスカーは

布団を手に取り、自分の体を覆うように布団で体を隠す…。そして

同時にあることにも気にするようになる…。

「…助けてくれたことには本当に感謝しています。で、でも…なんで私を助けたのですか?ま、魔女で…しかも、貴女の言うように…こんな外観なのに、男なの…ですよ?どうして…」

「だって、貴方の顔。生きたそうにしていたもの」

 

それだけだった。たったそれだけの一言で彼女は彼を救った。

「……私が魔女で、怖い人かもしれない…のにですか?」

「そんなの、貴女が起きて話してみてからじゃないとどんな人間なのか、わからないわよ」

また冷静に言葉を返される。

「具合はどう?」

「と、とくには……」

「そう。…なら、早速で悪いんだけど…ん?」

 

アーネアが何かをラスカーに訪ねようとすると、ノックが部屋の扉から聞こえ

「入っていいわよ」とアーネアが言うと、部屋の扉が開き…

三人の鎧を身につけた者達が、部屋に入ってくる。

 

「失礼します。アーネアお嬢様」

「おっ、目覚めたんだな。そいつ」

「え、えっとぉぉぉ……どうも?…」

「…!?」

急に人が増え、ラスカーは怯えた態度と挙動をする。

それもそうだった。なぜなら、村を利用した者の中に、鎧を身につけた者達が居たのだから。

「…来ないで!?」

あの時、ラデュカを捕らえた者達と勘違いし、ラスカーは魔の力を使うために

槍を持っていた若き騎士の男性に手を向け、魔の力を使ってしまう…。

「ぐっ!?…」

「ど、どうしたのですか…!?」

「な、な、な…なん…………か……息が………出来………ねぇ……」

「魔の力か!?…」

魔の力を使い。ラスカーは空気などを操り、若き騎士の呼吸のみを乱す…。

「待って。その人達は貴方が川で流れ、気絶しているところを引き上げてくれた人達よ」

「………え?」

その言葉を聞き、ラスカーは魔の力を使うのを止める。

「ふ、ふぅ…ま、まじで死にかけたぜ…つうか、なんで俺だけ……」

「いくら魔女でも、自然を操る手際が早すぎるな…」

「しかも、範囲も特定の人物だけっていうのも…」

 

ギリギリのところで空気を操るのを止め、若き騎士は呼吸をし体制を整えながら

ラスカーはその人の顔を向け、頭を下げる。

「そ、その……ごめんなさい…その変な棒が怖くて…」

「……ん?俺の持ってるこの槍がか?…待て。槍だけが怖かったのか?」

「武器を持っているのはこいつだけではないのに、槍だけを恐れたって…まさか」

「……アーネアお嬢様」

「ええ、わかっているわ。今から私も聞こうと思っていたところ…ねえ。貴方、何があったのかを話してくれないかしら?」

「………は、はい…」

 

 

ラスカーは村で起きた出来事、国のこと、魔女のこと、自分のこと

それら全てを彼ら達に話すと…。

 

「なるほどね。村の人々に恐れられ…貴方は火炙りされそうなところを、家族と共に逃げていたら。角付きの鎧を纏った騎士と魔女の裏切り者に狙われ…そいつらから逃げるために、貴方だけを母親達は逃がした…と」

「……はい」

「…やっぱりな。お前の村を狙ったのは「クレフルド教軍」の国の奴らだろうぜ」

「そして、その鎧の角と大型の槍…となると」

「村に居たその二人はクレフルド教軍の最高上級騎士の「ユニコーン・ヘッド」かと思います…」

「ユニコーン…ヘッド?」

「頭の角が妄想話とか絵本の物語に出てくるユニコーンみたいだから、俺らはユニコーン・ヘッドって呼んでいるぜ。実際の名前は知らねぇけど、あいつらは相当な実力者だから俺らは奴らを危険視してるぜ」

 

「ただ、その裏切りの魔女…フォルデーラだったか。その魔女の話は戦場では名も噂も聞いたことがないが…きっと、その子もクレフルド教軍の者らに洗脳をされた可能性が高いだろう」

 

話を省略すると…どうやら、クレフルド教軍は魔女と共に他国などの領地を支配しようとしており

アクディロナ側の情報によれば、彼らは魔女達を捕まえては兵士として洗脳したり

魔女達を何らかの兵器の為に人体実験をしたりと、非道な真似をしているようだ。

恐らく、今回もラスカーを狙ったのもその膨大な魔の力を実験と兵器と戦争に使いたいが為だろう。

 

領地はかなりの大規模であり、しかしなおそれでもアクディロナ王国を含めて…

その他の敵の国や、アクディロナ王国との同盟の国さえも支配しようと狙っているようだ。

国同士の戦いがどこも起こっている。まさに、全面戦争と言える状況だろう。

 

「とりあえず、連中が此所に来た目的がこの子だと言うことはわかったぜ。話を聞く限り、お前は魔女の中では才能があり過ぎて危険視され、さらに不運で魔女では最悪な存在の男として生まれたが為に殺されたかけ…さらにさらにクレフルド教軍の奴等に捕獲されかけたりと。はぁ…いろいろと踏んだり蹴ったりだなこりゃ」

「あ、あの…他人事みたいな言い方は良くないかと……」

「他人事とは思ってねぇーよ」

「二人とも……。ともかくだ…アーネアお嬢様、どうなさるので?それに、貴方も…」

 

「……これから、私はどうすれば…」

自分以外の全てが失ってしまったラスカー…

急な環境の変化と見たことのない人達と出会い、初めて他の男性や女性を見たり

戦争とか国とかわからず、何がどうなのかさえ、今は何もわからなかった。

 

「貴方は母親に自分を受け止めること、生きることを諦めてはいけない。と言われたのでしょう?なら、やることは簡単にして苦難、貴方は生きるのよ」

「でも…どうやってですか?……わ、私は……皆さんから見たら怖い人なのですよね…?…それに、私は魔女なのに男なのですよ?…不幸の存在の私が生きても、皆さんの迷惑にしかなりません…」

 

まだ自分が母親達を傷つけ、さらにラスカーは自分を見放し殺そうとした

村の人達が利用されてしまった事さえも、自分のせいだと思っており

 

皆の迷惑になるぐらいなら…もう生きていたくない、そう思ってしまった。

「怖い人って…そうに見えるか?まぁ力は聞くだけなら恐ろしいと思ったがよ?」

「怖い人には見えませんよね。だって…そうやって考えれてる時点で…」

 

「…それに、貴方。さっき魔の力を止めたわよね?」

「それは…この人達が私を助けてくれた人ならと…貴女に止めろと言われたから……」

「あら?私は「待って」とは言ったけど、止めろなんて一言も言ってないわよ」

「え?ちょそれ止めなかったから俺、死んでたんじゃ…」

「君はあの時、自分の意思で俺の部下を救ってくれた。その善意の気持ちが怖いわけがない。それに、あくまで力は力。その力を何に使うかは自分次第であり…君はその力をよくわかった上でその行動とやってはいけない事をわかっているんだ。あとはその力で君がどう生きてどう進むかだ。違うだろうか?」

「………」

 

皆に何を言われようと、励まし助言の言葉にはならず

村に戻ることも出来ないし、その後にスリアとラデュカ、リベリアやおばあさん…

そして、フォルデーラなど。一体、どうなったのか?と他のことを考えてしまう。

なによりも…これから一人でどう生きればと、不安や新たな環境で怖くて頭がいっぱいになってしまう。

 

「つうか、村に戻れば焼き肉にされちまうだろうし。かと言っていくらすげぇ力があっても、住むとこねぇといけねぇ。けど、魔女を受け入れてくれる人が居るわけねぇだろうし…どうすんだ?この子を助けたのはいいが、この先のこと…王にはこの子の事を報告したが…出ていけなんて言われるか、もしくは此所でも焼き肉パーティーになるか…」

「ち、ちょっと…!そんな物騒な事を言わないでくださいよぉ…!?」

「だが、事実だろ?どうする?いくら魔の力があっても、この子の体は子供だろ?仮に国から放り出され、寒くて怪物だらけの夜を一人で過ごすとなるなら、幼い体で何日持つ?」

「事実でもこの子の前で不安にさせることを言わないでください!!」

「やめるんだ二人とも…それに言っていることに一理ある。ふむ……俺の提案として、魔女の素性を隠し、何処かの貴族の養子にさせると言うのは?」

「それもいいけど、お父様はこの子を追い払いはしないわよ。こうして助けることを迎え入れてくれた時点でね。追い払うなら、そもそも国に入れたり、助けることすらも歓迎されていないわ。そして…貴方は?これは貴方のこれからの人生に影響する。だから貴方が自分で決めるべきよ」

 

どうすればいいかわからず、ただ沈黙する…

しかし、もし仮に決めるなら…

ラスカーは一人で生き、誰にも迷惑にならないように生きようかと思ってしまったようだ。

 

「…もし、誰かの迷惑にならない為に一人で生きようと考えているなら、それはやめておきなさい。そんなことを母が望んだのかしら?」

「!?…」

 

考えていたことを当てられ、驚いた顔を思わずしてしまう…

「はぁ…図星なのね」

「…え、えっと……その…」

生きる目的がない。

家族を失い。存在を失い。生きる目的や、自分がやってきたことも否定され失い。全てを失い…

何をすればいいのかと、ラスカーにはわからなかった。

 

「…生きる目的がないなら、貴方。私のメイド…というより、執事になって此所に住まない?」

 

そのアーネアからの誘いに、ラスカーは驚いてしまい、戸惑いが隠せない。

本当に…魔女が、怖くないのか…と

 

「お、そりゃいいな。まぁその外観だと似合うのはメイド服だろうが…ひとまず、戦争に加担したり。城に居たら流石のクレフルドの奴等も狙いのは来ねぇだろうしな」

「今回は同感です!……騎士になったら、いつ死ぬかわかりませんし。人殺しをするような真似は多くありますからね…」

「君はまだ幼い子供だ…子供に人殺しになれとは言わん。そして、この誘いを受けるかは君次第だ。どうする?」

 

彼らはラスカーを人間として見ており、そして人生の選択をラスカーに委ねる…。

「私は…」

母親の言葉を、ラスカーは思い出す。

生きていることを、生きることを諦めないで。誰かが隣に居るから。

 

もしかしたら…ラスカーはこの人達こそが、隣に居てくれる人達ではないか?と

そう思うようになってしまう。そしてなによりも…

今、自分がこうして生きてこの場に居るのは、母親達とこの人達のおかげであり…恩がある。

もしも…そのメイドというものになってアーネアやこの人達を助けれることが出来て…

彼らがなってもいいのと言うのならば……なら、ラスカーの答えは…

 

「私、なってみます。…まだ、不安ばかりですけど…」

「本当に…それでいいのだね?」

「答えはまだ見つかっていません。けど…私、生きないと…!」

答えが見つかっていない。なによりも人の恩。

…ラスカーはこの時、自分の意思で生きてみようとは思ってはいたようだが

母が望むこと、それは生きること。

この時、ラスカーは自分の意思よりも、母の言葉やアーネア達を優先してしまった…。

 

 

 

ラスカーは自分の意思ではなく、誰かの意思で生きようと行動をしてしまったのだった。

 

 

 

「………そう。なら、まずはお父様に会いに行きましょうか。…そういえば、貴方の名前は?」

「……ラスカー・アーレストと言います」

「じゃあ…ラスカー。こっちよ」

 

アーネアはラスカーの手を握り、そのまま連れられるがままに走ることになりました。

「え…!?」

こんなにも接してくれることに、また驚きながらも

ラスカー達は王様に会いに行くために、その場を後にした。

 

 

 

 

 

 ラスカーはアーネア達に城内を案内され、そして謁見の間へと足を運ぶと

「…して、アーネアよ。それが例の子供か?」

「はい。王よ」

 

先程の意地悪そうな笑いとは違い。

今は表情を隠し、王座の前で膝を着き…真剣な顔で王座に座っていた老人と話している。

周りには沢山の警備の騎士達や

老人の隣にはメガネを掛け、身長が高い男性の騎士らしき人も居た。

 

「どなさるので?報告によれば、その子は魔女のようですが…」

メガネの男は白くて少し長い髪であり、軽装の鎧と

青い騎士の正装を合わせながら身を包み。身長が高くて体つきがよく…

そして、ラスカーの目を見ながら、警戒をしていた様子だった。

 

「はい。ただ、彼は道中で騎士団長の部下を救ってくれた者。リベンジウォッチの魔女達とは違い。彼は自分の力の使い方をわかっています。部下を救ってくれたこの恩の見返りに、どうかこの子に新たな寝床と暖かな食べ物、そして仕事を与えて欲しいです。王よ」

 

「…良いだろう。アーネア嬢。ただし、示してもらおう」

 

白い髪に少し髭の生やした王は立ち上がり、アーネアとラスカーの近づく。

「元々、この国は自然の動物が君達の魔女と魔の力を食らい。変異し生まれた獣、獣魔(じゅうま)を討伐すべく。民達を守り。我々は戦争などから程遠い暮らしをしていた。しかし、今や辺り一面の国は支配か食料問題なのかのと…争いの火は広がり、このアクディロナ王国の大地にまでも、奴等は火の灯火を広げようとしている」

 

「…それは戦争を行っているリベンジウォッチ達もそうだ。魔女や戦争の火は国民を不安にさせる…。そこで、君に示してもらうのは、信頼だ。国民を安心させる為に…ある事をしてもらいたい。報告にあった魔の力を使ってな…その問題を解決し、信頼をとれば…見返りを返そう」

 

 

 

ラスカーはアーネア達とメガネの男性の案内の元で、街でのある場所へと案内される。

「こちらです」

案内されながら、周囲にある家などを見たり…見たことのない物を見て驚きながら

メガネの男性が案内をした場所を見てみると。

その場所とは、様々な国の騎士達が武器や防具などを作るため…雇ったり、または開発したり

日々、ハンマーで鉄を叩く音や、錆の臭いや汗臭いが染み渡り…

本当なら暑く、広い鍛治屋へとラスカー達は連れてこられた。

 

「此所は…なんですか?」

「鍛治屋です。簡単に言えば、私達が普段から戦争などで使う剣などを作る場所です。この鍛治屋のおじいさん達は私達の手に馴染むように作られており、腕があり、信頼のある職人です。ただ…」

 

周りを見てみると、壁や床が穴が空いていたり、瓦礫に埋もれていたり

辺りに壊れた剣や鎧が床にほったらかしにされていたりと

酷く荒れており今は鉄を叩く音も…汗臭い臭いも、何も響くような感覚が起きていない。

「…それにしては……誰も、居ませんけど……」

「はっ、そりゃそうだ。今はこの通り、このザマなんだからよ」

 

鍛治屋の奥からハンマーを用い。

とても髭を生やした老人とは思えない程の筋肉が鎧と化しているかのうなおじいさんが

ラスカー達の目の前へと姿を表す。

「で、そんな荒れた鍛治屋に…国の皆様とアクディロナ最強のグローゼム将軍がわざわざ来るとは…一体、揃いも揃って、今回は何の用なのやら」

「こんにちは。ラーバルトおじい様」

 

「生きたのかよじいさん!」

「だからそういう事を言うのは良くないです!!」

「二人ともやめるんだ!…ここからは、静かにしておくぞ」

 

 

グローゼム・ラーレアン。それがメガネの男性の名前のようだ

 

「わざわざって、ラーバルトさん。私は毎日来てますよ。あと、最強とかではありませんから…」

「ま、それもそうか。ただ、常連がこんなに客を引き連れ…さらに国のお嬢さんまで来たんだ。一体、何をしに来たんだ?さっき、王から此所に来るようにと呼ばれはしたが…」

 

ラーバルト・ロレント。鍛治屋の店長であり、王国での武器や防具を製作してる人物。

 

「今回のご用件は…その、先日の始末と言うべき……ですか…その」

「あぁ。お前さんらのあのガキが勝手に押し寄せ、魔具だとかどうとか言いながら、変な武器を作ろうとし、俺らの道具を勝手に扱い。そして扱いがおかしかったせいか爆発してこのザマだ。俺らはおかげで別の場所で物を作る事になるが、やっぱり慣れた場所じゃねぇと俺もあいつらもやる気が出やしねぇ。今は何とか首が繋がっているが…早く此所を修理してもらわねぇと国の戦力も俺らもあんたらもやべぇだろ?」

 

さらによく見れば、何ヵ所かは修理された跡もあり…

新しい壁や床に取り替えられているものの

爆発が大きかったのか、まだまだ修理には時間が掛かりそうだ。

 

「此所が頑丈だったからいいが…頑丈じゃなかったら、此所だけじゃねぇ。辺りの建物も巻き添えを食らってたぞ」

「すみません…」

「ま、お前さんはそれでも来てくれる常連だ。その常連の要求や客の要求に出来るだけ応えれるように、今の俺らが出来る事をやってやるさ。このご時世、戦争屋どものとばっちりを受けてお前さんも忙しいんだろうからな。さて…長話はここまでにして、俺は何をやりゃあいい?」

「いえ、今回は武器などの話ではなく…お店の修理の件でこちらに来ました」

「…ん?どういうこった?」

 

どういう事なのかと、ラーバルトは困惑しながらも

グローゼムはラスカーを見ながら、話を続ける。

 

「こちらに居るこの子はラスカー・アーレスト。魔女であり、私の部下が救助し。部下を救助してくれた恩人でもあります」

「…魔女だと?いや、それ以前に助けたのに助けられただ??どういうことかわかんねぇな」

「ま、まぁその辺りの話は……ともかく、この子の為に部屋を用意したいのですが…ラーバルトさん。貴方は魔女についてどう思いますか?」

「どうって…居たらマズイだろ?魔女は昔からやべーやつらと人間は教えられているんだ。それがこんな国の中に居てこいつの事を知られたら、あんたらにとっても国民にとってもマズイんじゃねぇか?…まぁその子の目玉を見る限り、とてもやばい奴には見えはしねぇが」

 

「ラーバルトおじい様の言う通り、魔女とは古き時代から厄災を起こす象徴とし、人間達に語り継がれてきたわ。その魔女が今、国の中に居て…恐らく、その事がバレれば…国民達に混乱を招くことになるでしょうね。しかし、魔女は魔女でも、同じ人間です…彼は住む場所や家族を失いながら、信じられる存在も居ないのに。それでも自らの意思で私の部下を救ってくれました」

 

「私としては、こんな事をしなくても見返りの部屋と食事と仕事を返したいところですが…隠されたことはいずれは気づく。だからでしょうか…その前に、国民からの信頼を彼が得て、そして信頼を私のお父様に示せば、お父様は見返りを約束してくれました。…その信頼を示すために…ラーバルトおじい様のご協力が必要です」

 

グローゼムとアーネアは説明などをすると、ラーバルトは納得した様子でラスカーの顔を見る。

「わ、私に出来ることならやります!…」

「そうかい………で、具体的には。この子に何をさせるって言うんだ?」

「魔の力を使い。この鍛治屋の修復と自分は王から聞いていますが…」

「…なるほどな。確かに、信頼のあった鍛治屋が今は動けない状態になっちまっている。それをその子が修復し人間に信頼を示せば…不安は少し和らぐ…と。だが、その子にそれほどの力があるのか?」

 

納得はしたものの、やはりまだラスカーの事を警戒してる様子であり

そもそも、いくら信頼を示す為とはいえ、子供にそんな事をやらせるのかと。思ってもいたようだ。

 

武器は争う為に作られたのだから。鍛治屋は戦争と何かを殺める為の道具を作る場所であり…

鍛治屋を修復することはラスカーが戦争に加担するのでは…と。

 

…人を殺すのは武器ではなく、扱う人間次第とも言うが、果たしてそうなのだろうか?

 

「やってみます!いえ、やらせてください!…」

「……まぁ、やってみろ。ただ、無理ならやるな。別の方法で信頼を勝ち取れ」

 

ラスカーは鍛治屋の中心へと立つと…目を閉じ、意識を集中させる。

「……すぅ…」

此所での生活、此所での時間、此所での景色、此所での暮らし…

その場での様々な記憶を読み取り、何が何処にあったかを思い浮かべる…

「はぁぁ…!」

手を前に出し、静かに力を引き出して行くと

その場は光に包まれ…少しずつ、床や壁などが元の形へと「時間」が戻っていく…。

 

力をその場の全員が目にすると、アーネア以外は皆が驚いていた…

そもそも、時間などを操作し

戻すことには。命を使うはずなのに、なぜ平気そうな顔をしているのかと。

「…本当にやりやがった」

ラーバルトは修復された鍛治屋の部屋を見て、ただただ驚く

本来なら嬉しいはずなのに、それよりも感情が修復したことに対して

驚きにより口を開いたまま顔を固めてしまい、唖然となってしまう。

 

「な、なぁ…?…今したのって…時間を戻したってことだよな?…」

「……そう、ですね…」

そして、またラスカーも…なぜか修復し人助けをし、さらに信頼も示したというのに

嬉しそうな顔はせず、ある事を思い出す。

 

時を戻した事…もしもあの時、「世界」の時間を戻せていたのなら

あの村での出来事を食い止めれてたのに、母親達が傷つかずに済んだのに、と

自分さえ犠牲になれば、いい。なによりも…今からでも時間は戻せる…しかし

今…母達の行動と言葉があったからこそ、この人達と出会えた事もあり

ラスカーは時間を戻すべきなのかと、迷いがあり…時を戻す事がやはり出来なかった。

 

「鍛治屋を直してくれたことを感謝はしてるが…お前さん。大丈夫なのか?魔女は概念や時間を操る時には寿命を削ると聞いたが…どうなんだ?まさかその顔、無理をしてるって言うなら素直に喜べやしねぇ」

「あ、え、えっと。私のおばあ様からも、命を削ると言われましたけど…私にはそんな感覚は起きていません」

 

どうやら、表情に迷いと悩みの事が出ていたらしく。無理をしていることは本当だったものの

答えたのはあくまで魔女の命についての事だけを答えた。

「命を削る必要がないほど、君の魔の力は高い…というわけですか。アーネアお嬢様の報告を聞いた通り…大きな物を手を使わず軽々と浮かせて運んだり、正確に何かを捕らえたりと…これはリベンジウォッチの騎士団のブレイズ達と同格ぐらいの力でしょうか…?」

「奴等とその子を比べるな。戦争屋と子供をよ」

 

それもそうですね…すみません。とグローゼムが謝ると

今の現状を皆が確認にし、ラスカーのことを考えていると…

 

「おお!?か、鍛治屋が治っているぞ!?」

「さっきまではボロボロだったのにか!?」

 

「どうなってんだ?…俺達の鍛治屋が光に包まれたと思ったら、なんか綺麗になってやがる!?」

「オヤジと皆に知らせようぜ!家が奮起したってな!!ヤッホォイー!!」

 

外から聞こえてきたのは、鍛治屋がいつの間にか直っていたことに驚いていた国民達の声や

そして、他にも…ラーバルトと同じ鍛治屋の人達も、その場をたまたま見ていたようであり

驚きながらも、喜んでいたようだった。

 

「あんがとよ。野郎共も職場が直って喜んでやがる」

「い、いえ…助かったのならそれでいいです」

浮かない顔をしながらも、ラスカーにとっては人助けで誰かが嬉しいのなら満足だった。

しかしそれでも…どうしてもあの時の記憶が、ラスカーの頭から離れることがなかった

 

 

 

…なによりも

 

 

 

既にラスカーはこの先の現在、そしてさらに先の未来に起こる出来事とその行い全てに…

 

 

ラスカーはもう、運命に縛られていたのだから…

 

 

自分自身の性格故に…そして、自分を繋げ、自分を生かしてくれた

 

 

あの言葉によって…

 

 

 

 

 

 ラスカーの事については鍛治屋の件以来、噂は広まっていたようだ。

人助けをする青い髪の少女♂の魔女が居ると。

国民からの信頼はまだほんの少しではあるものの。この時に魔女という存在そのものに

一歩の進歩が進んだことに変わりはなく、ラスカーが行った行動は他の魔女の存在にも影響を与えた。

 

 

その後にラスカーは王様から認められ、見返りを貰い。

部屋と食事、そして仕事を貰ったのだった…のだが

 

「……し、しょ…その……あ、アーネアお、おじょう…さまぁ………」

「いいじゃない。似合ってるわよ」

 

ラスカーは今、アーネアによりメイド服を着せられていた。

それがとても似合っており…アーネアは気に入ったのか、また意地悪な笑みを浮かべていた。

「こ、これがメイドという人達が仕事をする際に着る服…なんですよね」

「ええ、そうよ。恥ずかしいの?」

「ふ、服を着ること自体はその…いいですよ?で、でも…どうしてアーネアお嬢様がわざわざ私に服を着せるのですか!?しかも、他の人が着せるのを手伝ってくれると言ってたのにそれを断ってまでどうして!?」

「うーん。歳が近かったからかしら…まぁそれに、あの人達にはいろいろとね」

「え?」

 

意外な返答と、何かを言いかけた事に疑問を感じながらも、ラスカーはメイド服を着ると

もうそれは既に着こなせていたように、可愛く儚げな姿だった。男という点を省けば

「なんだろう。男って言ってしまえば筋肉質…とか「ただの」美形とかばかりだと思っていたりしたのだけれど…貴方みたいな人も居るのね」

「私は気づかず、お母さん達からは女の子として育てられましたから…。というか、男の人ってそういう人達ばかりなのですか?」

ラスカーからすれば、また男という存在を見るのは経験が少なく。

まだどういった人達が居るのかもわからなかった。

おばあ様から聞いた話では、男とは独裁者ばかりであり厄災の存在と聞かされていたが

自分以外の男の存在がその通りであるのか?果たして本当なのだろうか?

あの時に助けてくれた三人の騎士達のうち、二人は男だったのだから

ラスカーはいろいろと男という存在に疑問があった。

 

「まぁそうね。世界は貴方のお母様が言った通り、広いからわからないけど。少なくとも、私が見てきた男達は…どいつもこいつも金か権力ばかりね。何処かの国の王様は欲望に走ったり…別の大陸では征服王なんて人も居るしね」

「…そうなのですか?」

「貴方は違うわよ?ただ、この世には差別とか権力とか…何かしらの争いがないと生きていけないみたいだから。まぁ男だけに限らず、女も女で体を使っていろいろと…はぁ…」

 

難しい話であり、今のラスカーにはほとんど理解が出来なかった。

 

「さて、それでは早速。メイドの仕事をやってみましょうか」

「は、はい!?」

 

 

数分後、ラスカーとアーネアは城の厨房へと来た。

「なんだか、いい臭いがしますね」

「此所は貴方視点から言えば、大きい台所だからね。日々、いろんな高級食材とかが調理され、提供されたりしてるわ……まぁあまりあれは好きではないのだけれど」

今は何も起きていないものの、普段は此所で様々な調理人が大勢集まり

食事の時間前になると、いろんな生物の肉や野菜などを使って、料理を作っており

その臭いと光景が、ラスカーからは感じ取れて、少し楽しそうだったようだ。

「こ、高級食材??」

ただし、今のラスカーにはこのような場所には当然、同じ台所でも広い場所には馴染めなく

置いてある道具すらも見たことがないものばかりであり、ソワソワしていた。

 

「よー、アーネアお嬢~。呼び出しってなんだ?」

 

少しすると、背の高く。黒いポニーテールであり…同じメイド服を着ていて

スタイルのいい女性が二人の所へと来た。

「どうも、レノン。ちょっと、また頼みたい事があって呼ばせてもらったわ」

「おー、今回の頼みってなになに?また何か教えてほしいことでもあるのか~?」

「今日は私ではなく、私の隣に居る人に教えてほしいのよ」

「んー?ん?ーん?ん、ん?…あぁ~!もしかして、こいつが例の魔女娘か!」

「あ、あの…アーネアお嬢様。この人は?」

「自己紹介、お願い出来るかしら?」

 

「うーい。私はレノン・パーラ。王の専属メイドをやってる感じかなぁ」

 

他の人達とは違って、敬語などは使わず…気が軽そうに二人に自己紹介をする。

ラスカーが魔女だとわかっていても、あまり気にしてもいないようだ。

「えーっと、君かラスカーだっけ?うんうん。言われてた通り、可愛いねぇ~」

「は、はぁ…?」

今までに見たことも会ったことのない性格の女性に会い。戸惑いを隠せないラスカー

けれど、このレノンという人の髪型に…何処か、ラディカの面影を一瞬だけ感じてしまう…。

「……違うよね」

「んー?なーにが?」

「あ、い、いえ!何でもありません!?」

「とりあえず…レノン、ラスカーにメイドの仕事について教えてあげてくれないかしら?」

「あー。だから君はメイド服を着てるわけね。いいよいいよ」

 

どうやら、アーネアが彼女を呼んだ理由はラスカーにメイドの仕事を教える為らしい

しかし、先程の二人の会話からは

なにやら以前にアーネアが何かをレノンから教えてもらっていたようだ。

…この時、ラスカーは何かの違和感を抱く。王の専属……

「とりあえず、まずは簡単に皿洗いとかを進めてみたらどうだろうと、此所に連れてきたのだけれど」

「お~いいね。どう、やれそう?メイドっていろんなのを洗ってあげないといけないからね~」

「あ、洗い物でしたら…経験はあります!」

 

そう言いながら、いろいろと準備した後に…

「よ~いっしょと。はい、これ今日の洗い物ね~」

台所には沢山の食べ残しやソースなどの汚れが付着した皿やフォークなどの食器が置かれており

その量は城の中であってなのか、ものすこい量がごちゃごちゃに積まれていた。

兵士達や城内に住んでいる者の分のもあるのだろうか?

 

ちなみに、ラスカーは背的に台所の前に立つのは無理があるため

足場などを置かれ、その上に立っていた。

「あ~そうだ。経験あるなら、お手本は別にいい?代わりに、いろいろと指摘とかするからさ」

「は、はい。わかりました」

ひとまず、ラスカーは今ある皿などを見る…

皿もどれも見たことのないばかりで驚いてはいたようだ。

そして、少し見たあとは…手を前に出すと…

「ん~?なにしてるの~?」

「……なんだか、嫌な予感が…」

 

その嫌な予感というのは、言った直後から当たってしまい…

「えい!」

ラスカーは手から水を出し、皿などや手から出した水さえも空中に浮かせ

汚れた物を自分の水で皿などを空中で洗い流し…仕上げに風を出して乾かせてしまった。

「……ど、どうですか?」

「あーうん。ダメだわ。というかさ…やり方が根本的に違うんだけど?」

「え?…で、でも……これは…」

「……あ~……もしかして…それって魔女での…常識?」

「………あ、…そう…ですね」

今、自分が何をしたかを理解したラスカー

いくら村から出てしまったとはいえ…生まれの教えは魔女。

人間では人間の常識。魔女では魔女の常識。

ラスカーは改めて自覚し考え直す。

メイドになるために、恩を返すために、母の言葉通りに生きるために

新たに学ばなければ…と…。

「あ、あの…教えてください。人間での常識を」

「まぁ~いいけど、常識とかってまぁ考えない方が身のためかもね~」

「え?」

「……あ、いや。別に?な~んでもないよ。さっさ、洗い方を教えてあげるよ~」

一瞬だけだったが、明らかに表情と口調が変わっていた。

 

 

常識は常識!……常識とはある意味、命令であり奴隷のようでもあり強制でもある。

一体、誰が常識と定め、決め…認識したのだろうか?

 

 

「さあ~さあ~!次は洗濯!!というか信頼とか私はどーだっていいけど、君が信頼を望むなら、いっそのこと魔の力を使って洗ってもらってもいいことにしたよ。魔の力を使ってやれば噂も広がるだろうし?ただし、人間でのやり方も覚えてもらうけど」

「は、はい!!??」

 

今度は、沢山の汚れた服。シミや何かが付着した布団や枕…

それらが山積みされ…ラスカーはレノンに教えられるがままに

時間を掛け、人間での洗濯も学んだ。

 

「ふぎゃあああああっ///!?!?お、おっきいぱんつ…こ、これが男の人の…み、見てると恥ずかしくなっちゃいますね…。あ……これは…こ、こんなに大きい……む、胸が大きい方々が多いのかな?//…いいなぁ…//」

「あ~うん。そういうのは気にしない方がいいよ。そのうち、何時ものことか~って見飽きるから」

 

「…なんだろう。いろいろと間違えてないかしら?感情のツッコミが逆な気がするんだけれど…男の娘という利点、生かしてるのかしら?これ……男の娘というより、少女♂?……混乱してきたわ」

 

「ほへぇ~!?君、男の子だったの!?…あれれ?というと…さっきのいいなぁ…って……え?…」

「……それこそ、気にしたら負けよ」

 

 

 

 

 

「よ~し!次は掃除!結構、細かいことを指摘するうるさいジジイとか居るから。床から天井から窓から………あああああっ!!…めーーんどくさい!…おっほん、まぁやってみようね」

「え?あ、はい???…」

発言に疑問を抱えながらも、掃除も水や風などを操り、魔の力と手作業の両方を駆使し

いろんな部屋を綺麗にした。

「それにしても…広いですね」

「そりゃね~。あのジジイは広い方が好きみたいだからさ」

「あぁ…レンベルトお爺様の事ね」

「…れんべると?」

「レンベルト・ルドレアン。本が好きなおじさんで元馬乗りの騎士で、今では前線の騎士達の指揮をグローゼムと共に、お父様から任されているわ」

「そ~そ~。ほら、そこの棚にも本がずっしり~と置かれてるでしょ?」

「……本ですか?」

 

レノンが顔を向いていた方向を見ると、そこには棚に沢山の本が引き詰められていた。

歴史の本、作家の本、様々な大陸での英雄達の活躍が書かれた本、などなど

難しい本ばかりが揃えられていた。

かなり古く、汚れている箇所もあるが…比較的綺麗であり…持ち主は大切に扱っているようだ。

「………」

その持ち主の本の扱いに興味が沸いたのか。ラスカーは掃除をしていた手を止めて

本棚の前に立ち。難しい本を適当に手に取ってみる。

「え、えっと…なんて…読むんだろう?」

手にとって本を開いたが、どれもこれも知らない字ばかりであり

そもそも村ではあまり本や字を使った交流などはほとんどなかったため

字を使った事にも、あまり詳しくなく、学んでいなかった。

「…村に本なんてなかったから、あまり字なんて覚えてないや…せめて本の名前だけでも……」

 

「…聖職者の守り騎士(せいしょくしゃのまもりきし)…?」

 

 

 

 

「聖職者の守り騎士、二人の女性の聖職者と男装をした女性の騎士が。戦争の中、自分らが住んでいる教会に様々な人が戦争から逃げるために訪れた人を迎え入れたり…祈りを捧げたり、時に誰かを天国まで見送ったり、時には争いの火から教会を守るために人を殺す。そんな二人の人生…教会を守り通し続け、何が最期に待っているか…二人の最期とは…。さて、その話が気になるのかね?」

 

部屋の扉が開く音が聞こえ、誰かが語りながら…ラスカーの所へと歩いてくる。

「げっ!?れ、レンベルト!?」

白い顎髭が生え、メガネを掛け…こちらも老いてるとは思えないほどの大きな体型をした男性

どうやら…この人が例のレンベルト・ルドレアンのようだ。

ラーバルトといい、老人も鍛えればあのような体になるのだろうか?

「…ほう。「黒猫」か…珍しく今日はきっちりと掃除をしておるな」

「は、ははは…お、お褒めに言葉をありがとうございまーす…」

「ごきげんよう。レンベルトお爺様。おかえりになさっていたのですね」

「アーネアお嬢。久しいですな…しかし、なぜワシの部屋に?…この黒猫めが居る理由はわかりますが、貴女からワシの部屋に来られるとは、何かご用でも?」

「いいえ、ただ…今日は、そこで本を読んでいるメイド見習いの子を見守っています」

「……あ…」

レンベルトの険しい表情を見て、ラスカーは怒られると思い。本をすぐに元の場所へとしまい

彼の方向を向き、頭を深く下げた。

「す、すみません!勝手に見てしまい…」

「…ほう。お主が例の報告の魔女か……本に興味があるのかね?」

「え?…は、はい…」

サボっていた事と本を勝手に見たことで怒られると思っていたラスカーであったが

意外な質問に困惑する。

「本に興味があるのならば、また仕事が終わったときにでも遊びに来るといい。…それに、君はあの黒猫より、働いておるな」

レンベルトはラスカーの汚れた手と、レノンの手を比べると…レノンの手はあまり汚れてはいなく…

逆に、ラスカーの手は道具の持ち手の痕が手の平に残っていたり、埃などで汚れていた。

「あ、あ~えっとぉ…そ、その……し、新人くんの実力を見なきゃいけないでしょ!?ほ、ほらさ。先輩の私がほとんどしちゃったら新人くんの実力も見れないから~……ね?」

「まぁいい。今日はまだ働いておるから見逃すが……次は」

「お、おお~!こんなところに埃がいっぱい!掃除しなくちゃ!」

そう言いながら、レノンは埃がまだ残っているところを掃除し初め、話から逃れた。

「ふん……黒猫が…」

「黒猫?…なぜ、黒猫なのですか?」

「奴は闇の中から人の隙を見つけては奪う。目を光らす猫じゃよ。…お主もそうなるのかね?」

「…へ?」

また、訳のわからない会話でラスカーは混乱する。

「……レンベルト、ラスカーには関係ないよ」

「…なんじゃ。そうか…その方がいい…」

 

レノンも伸ばすような気軽な口調をやめ、真剣な顔で何かをラスカーから避けるかのうに

二人とも会話を途中で切らせた。

「さて、ラスカーと言ったか。本や歴史に興味があるなら、また見せてあげよう」

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

「きょ~はこれで最後!料理!経験はあるの?」

「あ、あまり…」

「そーか。なら、まずは簡単に卵でも焼いてみよっか」

 

再び厨房へと戻り、今日でやることは最後。最後は料理に挑戦をすることにした。

「あ~そーだ。おさらいで作ったあとは皿もまた洗ってみようね」

「わかりました!」

ラスカーはまた台に乗り、台所の前に立ち。フライパンと油を用意する。

「あ~そうだ。火の付け方はこれね」

そう言うと、レノンは火打ち石を取り出し。台所のコンロ部分に置いてあった薪などに

火打ち石を近くで叩き、薪に着火させた。

「こーんな感じ。さっ、やってみて」

「は、はい!?………どうやってついたんだろ?…」

まだ理解しきれてないものの、レノンからもう一つの火打ち石を渡され

ラスカーは別の台所でレノンがやっていた事を見よう見まねで…火打ち石を叩く…が

「……あれ?つきません…」

何度叩いたり擦ったりしても、薪に着火することはなく

「まぁ~そこは慣れだよね~別に今日に出来なくとも、ゆっくり覚えていけばいいよ」

「うーん…でも……いっそ、魔の力で燃えるかなぁ…?」

と思いながら…再び、叩くと……

 

 

ボオオオオオッー!!

 

 

火打ち石が本来なら燃えるはずのない火力まで一気に燃えだしてしまい

…炎は天井まで昇り、逆立ち…台所を真っ黒に燃やしかけてしまう。

 

「あっつ!?って、うわああああっ!?」

慌ててラスカーは水を手から出し、燃える炎に水をかけて鎮火する…

「ラスカー!?だ、大丈夫!?」

「は、はい…アーネアお嬢様……それと、すみません…ち、厨房を燃やしてしまい」

「命があるならいいわよ」

「そ~だな。けど…君も大変だなぁ。その力って扱いとか、制御しにくそうだしさ~」

「制御しにくいというか……感情に左右…されてしまうことが多いですね…。普段なら上手く使えるのに…使いたいときに使えないときとか……よくありますから…」

「…仕方ないわよ。感情なんて生まれつき皆にあるものだし。とりあえず、手を冷やしておきなさい?」

「そ、そうさせてもらいます…」

 

 

 

良くも悪くも、今日の1日…ラスカーは様々な事を教えてもらった。

 

洗い物、洗濯、掃除、軽い料理。まずはこのぐらい

 

 

まだまだ沢山…これからも覚える事が山ほどあるものの…

個人でラスカーは今までの事を考え…

水の力をさらに扱えるように、特訓することにした。村での出来事や、今回の出来事で

ラスカー的には、水が生活などに重要だと感じ。魔の力をもっと扱えるように練習するついでに

水についての重要視を置いた。

 

 

特に……炎を消すために……最期の…

 

 

 

 

 …そして、辺りは少しずつ暗くなり、夕焼けが窓から廊下を照らす…

そんな時に…ラスカーは…ふと、あることを思ってしまう。

「あのー…アーネアお嬢様…」

「…ん?なにかしら?」

レノンとは今日は別れ、ラスカーとアーネアは城の廊下で自分らの部屋に戻っている最中だった。

 

「あの…朝の時の話ですけど…独裁者、というのは言い方はとても悪いですけど、それでも王というか支配者的な存在なのですよね?」

「…ああ。あの時の…ええ、まぁそうね。まぁ独裁者は政治的に自分に都合の悪いことを潰し、自分にとって良い国を作る人達だけど…それがどうかしたの?」

 

「あの…アーネアお嬢様のお母さん…じゃなく、おとう…さんでしたっけ?王様がアーネアお嬢様のお父様なのですよね?…昔、おばあ様から聞きましたけど…王様の息子や娘、というのは王子や王女…なんて呼ばれると聞きました」

 

「でも、アーネアお嬢様は…皆さんからはお嬢様と呼ばれてますよね…。その、本当に細かいところですけど…何か、聞いた話と違うような…?」

 

何時も、アーネアは王様の実の娘なのにも関わらず、「お嬢様」と呼ばれている。

そもそも…王の娘なのに、いくら領地の奥で比較的安全ではあるものの

あの時の川での出来事の時は、護衛がたったの三人だけ。

領地の奥ではあるが、何かしらのトラブルも起こる可能性も考えられたりするのに…

さらには王様の娘という重要な護衛すべき人物でもあるはずなのに…

アーネアを守っていた護衛は三人だけ、いろいろとあの時からおかしいところだらけだった。

 

「……はぁ…まさか、それを聞いてくるなんてね。でも、いいわ。いずれは話す予定だったから」

「え?は、話すこと?…」

単純にラスカーは聞いてみただけであり、アーネアにその質問をしてみたら

真剣な顔になってしまい。何か重く、触れてはいけないことに触れてしまったのかと

ラスカーはアーネアを傷つけてしまったのかと、不安になってしまった。

「魔女での話、確か…貴方の居た村では、男は独裁者だって教えられたのでしょう?」

「は、はい…で、でもお嬢様のお父様が独裁者とは思ってはいませんよ!?」

「そうじゃなく。要するに…私はふさわしくないののよ」

「………ふさわしく?…」

 

「王とか何かと統治をする人って、なぜか男なのよ。まぁ男の方が頼れるし、強いからね。けれど、私は女。王の娘だからって…私にはお父様ほどの頼れる存在じゃないから…皆からは王女様とかではなく、お嬢様と呼ばれてるのよ」

「……それは…レノンさんやグローゼムさんやレンベルトおじさんやラーバルトおじさんも…?」

「あの四人や他の皆は別にそういう意味でお嬢様と嫌味や皮肉で言ってはないわよ。それに、そう言うように決めたのはお父様だから…」

 

話ながら歩いていたらいつの間にか…アーネアの部屋まで戻っていて

部屋に入り、そこで話を詳しくすることにし…ソファーに座り、話を再開する。

 

もう辺りは夜……月の光が部屋に居る二人を照らす…

 

「なぜ、お父様がそのような…事を?…」

「試しているのよ。私が王にふさわしいのかどうかをね」

 

「器だけの王なんて要らない。だから、お父様は厳しいけど…私を思って、試しているのよ」

 

「部下を従えれるか。統治は出来るのか。取引は出来るのか。駆け引きは出来るのか。心理戦は出来るのか。戦争を見通すことは出来るのか」

 

「…要するに、王としての活動が出来るのか。王が器だけだと…国は滅びちゃうからね。だから、私は王にふさわしいのか。どうかを試されているのよ私は…」

 

「…もし、私がお父様から「王女」っと呼ばれたら…私はお父様に認められた存在になる。私はそれを目指して…日々を国に捧げては……いるわ」

 

「けど、今は従ってくれる部下も…貴方を助けた三人の騎士達…それ以外は手で数えれる程しか、今は居ないのよ。まぁ…王女として認められない限り、私は護衛する価値もないからね…」

 

いろんな事を話していくたび…アーネアは遠くを見つめるような悲しい目で…窓を見る。

確かに、認められれば彼女は王女となる。しかし、それまでの道のり……

 

「…もしかして…朝の私に服を着せてあげようとしたメイドさん達って…それに、レノンさんのあの時の会話も……」

「本来なら、レノンも他のメイド達も…お父様のメイド。私にはメイドも執事も居ない。王女として認められるまではね。…だから、私は代わりに…自分で掃除とか料理をする為に…レノンに教えてもらったのよ。貴方と同じようにね……生まれてきたのに」

 

「だから…珍しかったのよ。あのメイド達が貴方に服を着させようとするのがね…。きっと、もう貴方はお父様から行動で認められているのね」

 

「……」

彼女は現在の未来では…何をしても完璧だった。

 

しかし、その裏では…友達も居なく。従ってくれる部下も居らず。孤独ばかり…

儚いのに強い。それは彼女が今まで、一人でやるしかなかったからこそ出来た

完璧という名の努力と時間での骨組み……

 

「そんな悲しそうな顔をしなくていいのよ。それが貴方にとっては良いことなんだから」

「…でも……今まで……一人だったの…ですよね……」

「…そうね…貴方に服を着せたのも、正直に言えば…寂しかったのよ。同じ歳の友達が……居なかったから……でも、服を着せたり…見守ったり…せめて、何か貴方にしてあげたくてね…」

「………」

 

自分と似てる境遇…。今まで一人……何をしても一人……

 

「…生まれてきたのに、私は何をしているんだろう…」

「……あ、あの!…わ、わたし…居ますから!…」

「…え?」

「わ、私も…一人だったから……寂しかったから……で、でも…貴女が…アーネアが私を人間として見てくれて…魔女で男だと言うのに、救ってくれて…一人だったのを……だ、だから!今度は私も…隣に居ますから…!」

「……あ、あなた…」

 

そう言いながら、ラスカーはいつの間にかアーネアの両手を握っており…

…それに気づくと…ラスカーは思わず、自分から言い…握ったのにも関わらず

顔が赤くなってしまい。自分は何を勝手に言ってるのだと焦ってしまった。

「あ、い、いや……こ、これは……その……」

「………」

「……アーネア……お嬢…様?」

手が冷たい。

 

見てみると…手には水が垂れていた。その垂れる先を辿ると…

水は……涙は、アーネアの目元から流れ出ていた…。

「ご、ご、ごめんなさい!?…わ、私……一人で勝手なことを…」

「ち、違うのよ。…そ、その……嬉しくて……こんなことを言ってくれたのが…まさか、私のことを…人間として見てくれて…」

彼女は誰かの目の前で…初めて、本音を口から出し…寂しさ…孤独…

そして、彼女の言葉の意味。死ぬことは辛い…

それは今まで…彼女がまだこの時は五歳だと言うのにもうこの頃から…

一人でずっと必死で生きてきた言葉の意味も…あったのだろう。

「……こっちに来て」

「は、はい!?…」

 

涙を手で拭き、アーネアはラスカーを手で引っ張り…ある場所へと連れていく

 

 

 二人は城の裏から王国の外に出ると…広く開けた草花がある所へと到着する。

「此所は…?」

「此所は…私が何か、寂しく…困ったり悩んだりした時に、何時も此所で気分転換しに来るのよ」

 

その開けた場所には…一つの大きな木が…立っていて

二人もまた、その木の前に立つ。

 

「この木も…なんだか一人ボッチみたいでしょ?だからかな…私、寂しい時はこの木に独り言の喋り相手になってもらっているのよ。この事、他の皆には内緒ね」

「…は、はい?」

「……その…ね。此所に連れてきたのは……貴方だって仕事ばかりだと…疲れちゃうでしょ?息抜きでも出来る場所があった方がいいと思うし…それに…あ、貴方と……何処かで遊んでみたい…というか…」

「…!?……ぜ、全然、いいですよ!?…わ、私……初めて誰かから誘われました…」

「!…ふっふふ…そう。私も、初めて誘いを受け取ってくれる人と会えたわ」

 

しばらく、二人は木の付近で座り…そこでいろんな事を二人は誰かと初めて話し合う。

 

 

 

「あっ流石にもう帰らないと…」

「そうですね……その、こんなに楽しい事は…私、初めてです!」

「…うん。私も本当に楽しかったわ…こんなに1日で誰かと二人きりで話したのは初めて…」

「はい!…また、此所で話せるときがあれば話しましょう。…それでは、今日は……」

「そうだ。ちょっと待って……その…」

 

 

「仕事の時とかは…アーネアお嬢って呼んでくれていいけど……もし良ければ、貴方にだけは…此所に来たときや仕事が終わった時とかでいいから……私のことは、アーネアと呼んでくれないかしら?」

 

「…はい!…アーネア!」

「……これから、よろしくね。…ラスカー!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

そして、現在…ボクはあの日、その白髪の女性。アーネアによって助けられ

王国でいろんな事を学び、力が変で魔女なのに男だと言うのに…怖がらずに接してくれて

何時も…隣に居る。そして、仕事以外では…今でも、いろんな事を笑いながら二人で話せる。

それが暖かくて…ボクは……私は大好き。

 

……この10年間、ボクはメイドの仕事だけでなく

アーネアお嬢様や皆を守るために…ボクはある人から剣術も学んだ。

 

他にも、いろんな日常を見てきて。ボクは日常には水が必要なのかな?

と水の力も自分で考えて…学んでもみた。

 

水は勿論…飲むこともそうだけど…

何かを作ったり、何かに塗ったり、何かと混ぜたり、何かを固めたり…

時には、火を消すことに…時には、誰かを助けることに…

 

きっと、皆の何かの役に立てるんじゃないかと。ボクは水の力を学んでみた。

 

 

…学んではみたものの、ボクはまだ……ボク自身が生きる答えが見つかっていません。

 

確かに、アーネアと居るのはボクは楽しいし嬉しい…。それはアーネアもだと……思います。

けど……ボク自身が、生きる理由……幼い頃、ボクは人助けがしたかった。

それは今も変わらず。……けど、本当にそれでいいのかな?…と

何時も自分に自問自答…ボクに力があるから、人を助けたかった?

……ううん。ボクは…単純に、困ってる人を見過ごせなく。その人達を助け…

その人達の笑顔が見たかったのかもしれない。

 

……でも、力があるのにも関わらず、ボクはスリアお母さんを助けれなかった。

もう10年が経つ。村は…スリアお母さん…ラデュカお母さん、おばあ様……

リベリアさんや…あの金髪の女性も……どうなったんだろう?

今は…もうわからない。

確かめようにも、今更…村に行くことも…出来ず、ずっと迷ってしまう。

 

それに…スリアお母さんの言葉………

 

スリアお母さんが言っていた…側に居てくれる人と言うのは、アーネア…なのかな?

「ラスカー?どうしたの?窓なんか眺めて…何か見えるの?」

「………あ、い、いえ。少し…昔のことを思い出していたんです」

「そうなの?…昔…ね。ラスカーは相変わらず、変わらないわね」

「え?そ、そうでしょうか?…ぼ、ボク……かなり変わったかと思うのですが…」

「そうじゃないわよ…」

「そ、そう言う事を言うのでしたら……アーネアお嬢様も…アーネアも…変わっていませんよ」

 

アーネアは…姿だけ見れば、背も高く…髪も長く……む、胸も…膨らんで……

儚い美しさで…ボクはどうしてこの人と話すことが出来るんだろうと?

喋り掛けることさえ息苦しくなりそうなのに、ボクは普通に彼女と話すことが出来てしまう。

 

…でも、それって。アーネアの内心が…変わってない…から

彼女と…ずっと居て、慣れていたのだから…なのかな??…

 

「だから…まぁそれはそれで嬉しいけど、やっぱり…ラスカーは変わらないわね…ほら」

アーネアはボクの方向を向くと…いきなり、ボクを廊下の壁まで押し倒し…!?

「あ、あ、アーネア…//!?」

「ね?こういう所も相変わらず…ふっふふ」

「も、もう!!…だ、誰かに見られてもボクは知りませんからね!」

「いっそ、見られてみる?」

「や め て お き ま す !」

 

…けど、変わった事と言えば……

昔は、こんなに近くても全然、平気だったのに…

今は……なぜか、心臓の鼓動が早くなって…胸が苦しくなる。これって…何かの…病気?…

「…ほ、ほら!行きますよ!」

「え、ええ。…そうね」

 

 

 ボクとアーネアやアーネアに仕えている騎士隊も…出来ることが幅広くなっていて…

今では、王様からは外交の交渉から取引などまでも任されるようになっている。

此処まで来れたのは、皆の力や…アーネアの力なんだと思う。ボクも…力になれたかな?

 

「ラスカー、馬車に乗……ん?」

他国との取引に向かうため、外に出て馬車に乗ろうとしていると…

「どうも。アーネアお嬢様」

「…グローゼム将軍。どうして貴方が?…」

そこには、本来なら最前線に居るはずのグローゼム将軍が近くに来ていた。

…どうしたんだろう?何か、アーネアに用事でもあるのかな?

 

「こんにちは。グローゼムさん」

「あっ…ラスカーくん。こんにちは。どう?料理は進歩しましたか?」

ちなみにグローゼムさんとはあれからは前線から帰ってきた時とかに

戦争がどういう事なのか。王国とは何なのか。といろいろと話を聞いたりしたり

たまに、一緒に料理を作ったりしました!

 

グローゼムさんって…皆からある事が理由で「脳筋メガネ」って言われていますけど

そういうのにも関わらず、手先も器用で…料理が凄く上手なんですよね。

いいなぁ…ボクも、もっといろんな料理が作れるように練習しないと…!

「まだまだです…」

「そっか……今度に自分で良ければ、また教えてあげますよ!ラスカーくん」

昔とは違い。交流してからわかったのですけど…

外観だけで言ってしまえば、何時も厳しく…静かな雰囲気がありますけど

内心は凄く、ノリの良い方で。単純に戦争の都合などであんな態度になっており

戦闘が終わった時とかはお酒も飲んだり、意外とさらけ出しちゃう人です!

 

「それで…グローゼム将軍。何か、私達に用事があったのでは?…それに、貴方が城に戻るなんて…」

「ええ。今回の取引、それに同行しろと王から…何でも、今回の取引は魔具(まぐ)の件らしく。それを最前線に常に立ち…戦いの経験がある自分が、それが戦いにどう影響するかを…視察し、見てこいとのことです。あ、前線の指揮は一時的に部下に任せてはあるので…それに、運よく押し返せたので、時間も空いたので問題ありません」

 

魔具?……そういえば、昔にラーバルトさんが…

あの娘と魔具のせいで鍛冶屋が爆発したとか!…とか何とか、言ってたような?

「聞いた話だと例、例の何年も前から言われていた…魔女を打破するための武器ね。五年前に試作が完成し…今日は完成品が見れるとか」

「……魔女の打破…」

「…ごめんなさい。ラスカーには…複雑よね」

「い、いいえ!気にしないでください!?」

リベンジウォッチ…彼女達が今でも大陸を支配しようと争いを続けている。

…止めるためには、その魔具という武器が必要なのでしょうけど……

何とか、話で解決……していたら、もう争っていませんよね…。

 

「とりあえず、自分は馬でついて行きますので。お二人は馬車へどうぞ」

 

 

 

 

 

 

 ボクとアーネアは馬車に乗りながら、外の景色を見て

待ち合わせの砦までの移動の時間の暇潰しをしていて…

馬車の付近ではグローゼムさんが馬車に合わせて馬に乗って移動をしていた、

「…それにしても、今回の取引って何なのでしょうか?」

「さぁね。向こうから取引がしたいと手紙を送ってきたそうだけど…」

アーネアはその送られてきた手紙をポケットから出し、内容をもう一度見てみる。

 

 

 同盟国アクディロナの王、アレク・アルテネアへ。

今回、この手紙を送ったのは魔具の件についてお話したいことがあり、送らせてもらいました。

 

そちらから派遣されたルペシア様のおかげもあり、魔具の開発は最終段階まで進みましたが

問題は生産について…魔具の量産をするためには莫大な量の素材が必要となります。

鉱石などの素材ではなく…とても、特別であり手に入りにくく…

それはアクディロナの皆さんだからこそ、揃えれるかと思える素材となりますが…

 

いくら貴方達とはいえ、このような戦争の渦の中…

素材を揃える為には…危険と共に、多くの犠牲が……必要となるでしょう。

 

しかし、量産に成功すればリベンジウォッチの勢いを

止めれることが出来ることを我々は保証します。

 

それを確認するために、この手紙と共に送られてきた地図に印された砦に来てもらいたい。

そこで魔具の完成品の力をお見せしましょう。

集まる時間は○月○○の昼に…

砦には私が信頼する部下に魔具を持たせて待機させておきます。

そして…部下から力を確認した次第、力をお借しするかはそちらにお任せします…

 

判断はそちらに委ねます……どうか、我々と貴方達の…お力を。

 

 

         同盟国サーラレアの王、オーレン・シュルターより

 

 

 

 

手紙と共に、砦が印された小さな規模の地図も送られてきており

今はその取引に応じるために、地図の通りに同盟国の砦へと向かっていました。

 

サーラレア王国、アクディロナ王国とは同盟関係であり

平和に暮らしていたのに…他国の国から攻められ被害を受けた事により、戦争に加わってしまい。

アクディロナ王国と境遇が同じなこともあり、同盟関係が結ばれた。

それに、戦争をする前から外交や獣魔の討伐で協力をしていたなどもあり

元から友好な関係があったみたいです。

ただ、それなのに戦争が始まる前は同盟を結んでいなく。

今回、結んだのは…お互いに戦争に巻き込まれた。というきっかけもあり

改めて互いに協力をしよう。という姿勢と戦友という意味が込められているらしいですね…。

 

同盟という言葉と名前ではなく、この二つの国は本当に繋がっているのかな?

 

「この手紙に書いてある通り…何かの素材の取引なのでしょうけど…」

「アクディロナの人達だからこそ集められる素材…うーん…?」

その魔具に使われる素材って何だろう?

 

「…あれ?そういえば、今日は騎士隊の皆さんは?」

窓を見たときに、居るのはグローゼムさんだけ…

何時もなら何人かのアーネアに仕えている騎士の皆さんが居るのに…どうしたんだろう?

「皆には別の件で城に待機をね。とは言っても、休暇なんだけど…」

「休暇ですか?」

「ええ。この前の戦いの事が原因で皆は疲れてるし…何か命令が来るまでは休ませているわ」

「なるほど…けど、グローゼムさんとボクだけ…ですか…」

「大丈夫よ。何かあっても…グローゼム将軍はアクディロナ最強と言われるだけの強さはあるし。…それに、ラスカーが隣に居るもの」

「…そ、そこまで言われると緊張しちゃいます…」

「なら、ほぐしてあげないとね」

 

そう言うと、アーネアはボクの両手を握ってくれる…

……暖かい。けど…なんでこんなに、心臓と呼吸が苦しくなるんだろう?…

「ありがとうございます。アーネアお嬢様!…絶対に、何があっても隣に居ます!」

「ありがとう。それに…私もラスカーのサポートをしたいから…ね」

 

あれ?…一瞬だけ、顔が赤かったような?…

そういえば、壁に押し倒されたときも…自分からやってきたのに、変に動揺していましたし…

大丈夫…かな?風邪ではなさそうですけど…

 

 何時間か経ち。ようやく目的地の砦へと到着しました。

「此所がサーラレアの領地の砦ね。待ち合わせは…合ってるわ」

馬車は砦の門まで向かうと、砦の門の前には警備の騎士の二人が立っており

門を守っている様子でした。

 

「アクディロナ王国の使いだ。外交の為、此所を通してもらいたい!」

外ではグローゼムさんが二人の警備の騎士に話し掛けてるみたいですね…。

アーネアもだけど…グローゼムさんも戦いと休みの時では、やっぱり違うなぁ…

裏表の…使い分け?

「あなた達がアクディロナの使いですね。お待ちしておりました。お入りくだ…貴方はグローゼム将軍!?」

「お、お会い出来て光栄です!!この中で皆さんを待っている人達が居ます!お入りください!」

「わかりました。…もう馬車を移動させて大丈夫です!」

 

 

「門を開けろおおお!!!」

門が開き、馬車は砦の中へと招かれていき…砦の中で馬車を停め…

そして…馬車の扉を開け、ボクとアーネアは馬車から出て…砦の地面に立ちました。

 

「こちらです。砦の内部のご案内をします」

砦の内部には、鎧を着た騎士の皆様ばかり…

 

10年が経った今でも、戦争は続いている。

…皆、鎧を着て…武器を手に取り、守るために…奪うために…支配するために…争う

 

ボクはやっぱり、戦争は嫌い。皆もそうだと思うし、早く終わって欲しいと毎日思っています…

…この魔の力で…一気に戦争を終わらせることも考えてみたけれど……

使ったとして、どうやって人と人を止めさせるんだろう?

 

皆殺し?…洗脳…?…支配?…君臨…?それとも、戦争がなかった時代まで時間を戻す?…

 

……戦争を止めるための方法が…ボクにはわかりません……

その止めるための方法を考えるだけでも…自分を見失い、怖くて考えれなくなります…。

…少なくとも、今自分が出来ることは……皆とアーネアを守ること…

 

 

 

砦の内部をかなりの重装備でマントを羽織った案内役の騎士の人に案内され

ボク達はサーラレアの王が向かわせたという部下の方が待っている部屋の前へと来ました。

「ハーレ様。アクディロナの使いがご到着しました」

案内の騎士の人が扉をノックし、扉を開けると…

 

「やあやあ。こんなところまで来てくれてありがとう。そちらの席に座ってくれたまえ」

 

そこには…き、金髪………

…緑色の服と帽子を被り…上着を肩に掛けていて…

金髪でツインテールの小柄な女性がソファーに座って待っていました……。

「ら、ラスカー…体が震えてるけど……もしかして……」

「…す、すみません…アーネアお嬢様……き、金髪の女性の方は……ちょっと苦手で……」

「……やっぱりね…」

昔のあのフォルデーラの事もあり…

ボクは金髪の女性の方と関わるのが苦手で…

どうしても、金髪の女性を見てしまうと…あの人の事を思い出してしまいます…

「あ、あれ?…ぼ、ボクの顔に何か?」

「そ、そ、そうではなく…こ、こちちの…事ですので…お構い無く…」

「では、皆さん。ごゆっくり。ハーレ様。私は砦の外の様子を見てきます」

「ああ。頼んだよ……気をつけてね」

「……ええ」

 

 

「改めて、ボクがサーラレアの魔具の開発者のハーレ・サルフェルだ。よろしくね」

その後は向かい側のソファーにアーネアとグローゼムさんは座り…

ハーレさんの話を聞くこととなり…

一方で、ボクは辺りに不審な人や問題が起きないかと、窓側に立って見張ることとしました。

 

「しかし、まさかアクディロナ最強と言われるグローゼム将軍が来るとは、驚きものだね」

「最強ではありませんよ…。それに、自分は為すべきことをやったまで。ですから」

「そうかい。けど…確かにそちらの王が貴方を向かわせたのも納得だ。何年も戦いを見てきて経験豊富な君が魔具を見てくれたら、戦力として何が有利で何が不利なのか。そういったのがわかると思うからね」

「その為に、此所へ来ました。祖国と民を守るために……そういえば、ルペシアは元気ですか?」

「……あーアクディロナ側の開発者のあの子ね……元気だよ。本当に元気過ぎるぐらいに…」

「は、ははは……なんというか、彼女が何か建物を壊したのなら…すみません」

「いやいや。とんでもないよ。というか物とかじゃなく、もう建物と言っちゃうんだね…。まぁ彼女の頭脳と行動力は凄いし、彼女のおかげで魔具の開発も進んだから、感謝してるよ。ただ……一週間に部屋を一つ壊すのは…ある意味、才能だね…」

「こっちでは鍛治屋や、幼い頃には教会も壊しちゃった子ですから…」

「………凄いね…呆れるの通り越して凄いよ…」

 

「さて…そしてアーネア様だったけ?…なんというか、大変そうだね」

「この戦争の中ですから、大変なのはどこも一緒です」

「そうじゃなくさ。王の娘なのに、護衛の兵も居ないし。王からは厳しくされてるんでしょ?ボクは王族の娘とかじゃないから知らないけどさ。大変じゃない?男女差別とか、あるしさ」

「それは貴女もでは?貴女は王族ではないと言いましたが、これだけの兵士の指揮…先程の案内役の騎士は外見からしてもかなりの階級の騎士。その人らを従えてるなんて……貴女が王族でも貴族でもないなら、どれだけの時間と努力を費やし…あの人達に命令をくだせるまでにどこまで出世をしたのか…そちらの王も貴女に信頼をしている様子ですし」

「まぁ、ね。得意な事があったから出世出来ただけだよ」

「…そう。得意な事と言うのは?」

「手先が器用で物作りが出来て、頭が良かったことさ。今回の出世出来た理由は魔具の開発と…ま、五年前にちょっとね」

「…五年前?」

 

 

「そういえば、そこに居る君は……例の魔女騎士ラスカーだっけ?」

「え?あ、はい?…そう呼ばれていたりもします」

まさか…自分に話し掛けられるとは思わず。動揺してしまいました…

……ってあれ?…この人の左手の手の平……刃物で斬ったかのような跡が…あるけど…

「魔女…ね。魔具って魔女と戦うために作ったけど…なんか、ごめんね」

「あ、い、いいえ!?気にしなくて構いません。戦争…ですから」

「そうだね…。しかし、相変わらずリベンジウォッチの目的がわからないよ。支配したいなら概念変えるなり人間を魔の力すり潰したり、いっそ大陸を浮かせて浮遊城でも作ればいいのに。なんで圧倒的な力を存分に振るわずに…ある一定の月日で元の北の大陸の拠点へと戻り…子を作る。なぜだろう?正直、戦争してる人間のほとんどを魔女一人で蹂躙出来ちゃうのにさ」

「なぜでしょうかね…」

「君、何かわからない?元魔女みたいなんだし」

「すみません…ボクにも…」

「そっか。じゃあ、せめて…どうして君達って女の子同士で子を作れるんだい?」

「………」

「…あれ?やっぱり、失礼だった?」

「ラスカーは男よ…」

「そうですね。ラスカーくんは男で男装しているので、いろいろと勘違いされていますね」

「……あれ?…魔女なんだから女の子で、その服装はてっきり男装してるのかと……え?…男の子なら…なんで、男装する必要があるのかな…???」

 

 

 

…三人で個人の話を終え、ようやく…話の本題へと話が切り替わる。

 

「まぁいいや…さて、本題だけど…これが、君達に見せる…魔女を倒すために開発し、完成した…。我々の切り札、魔具さ」

 

 

机に置かれたのは…それは……

 

「「「………ランタン?…」」」

 

 

ハーレさんが取り出し、机に置いたのは…何の変哲もない。ただのランタンでした。

 

これが魔具?なぜランタン?

と困惑して思わず、三人同時で口を揃えてランタンの名前を言ってしまう。

「あの…これが、魔具なので?武器などではないようですが…」

「そうさ、見た目はね」

「……中身は違うと?」

 

グローゼムさんがどういうことなのかと質問しながら…ハーレさんがランタンについての説明をする。

 

「まず、ランタンにした理由は。今回の件で、まだ魔具の存在を他国の連中などに目立たせたくなかったから、何処にでもあるランタンを情報操作の為のカモフラージュとして使ったよ。まさかこれが魔具?だなんて、今みたいに気が抜けた声を出してしまうでしょ?」

 

「次に、ランタンの形を採用した理由はもう一つあって、それは奴らリベンジウォッチが最も好む戦場。夜さ…奴らはどういう訓練をしたのか。夜でも目がよく…矢もほとんど頭に当ててくる。人間は対して、夜じゃ目が働かず。視界も悪い…だからこそ、せめてその助けとして。夜でも活動出来るように、明るいランタンを採用したわけさ」

 

「……なるほど…」

「ま、あとは。運用と量産の目的で、このぐらいの大きさの方が運用もしやすいし。他の剣とか槍だと重たいし使われる素材の都合上的に、集める素材と資金の削減も兼ねて、ランタンの大きさが偶然にもちょうど良かったのもあったんだけどね」

 

様々な目的と理由を聞き、首を傾げながら…何かを考え込む様子で…

少し考えた様子で…指で眼鏡をくいっとして、グローゼムさんの口が開く。

 

「まだその魔具の力を見てないのでその辺りは何とも言えませんが。それ以外の事で意見を言うのでしたら。確かに、コンセプトや量産と素材と資金削減。量産にも適してるとは思いますが…」

 

「戦いなどで見ると。ランタンはある意味、自殺道具でもあります」

 

「砦などの防衛戦などではランタンは必須かと思いますが…奇襲などをする際。仮に相手が人間だとして時刻は夜の真夜中…相手の国の建物に向かい…そこでそのランタンを使うとすれば…ランタンの光が目立ち。警備の者に見つかります」

 

「それがさらに、もしも魔女なら…光だけで相手の位置を確認し。矢を放ち…頭を貫かれるでしょう」

 

 

「なるほどなるほど…確かに自殺道具だ。考えれるね…常に前線に立ってる君と話せてよかったよ。おかげで新たな案も浮かんだ」

「ただ…問題は、その魔具の力は?今のはあくまで、普通のランタンでの話です。けど、それは普通のランタンではなく。魔具なのですから」

 

常に戦場で騎士の皆さんに指示をしているグローゼムさん。

もし、そんな人が何か過ちを犯してしまったなら…どうなるんだろう?…

……ボクは過ちを犯してしまったけど…グローゼムさんは………

…あまり、考えない方がいいかな…。

 

「そうだね。なら、今度は魔具の力を…地下で試すとしようか」

「わかりました。そこで改めて、グローゼム将軍に力を見てもらい次第…あとは私が」

 

……あれ?

何か、天井から変な生命力が……騎士の皆さんが居るのかな?

でも…それにしては、何か違うような…?

 

「あの、ハーレさん」

「ん?なんだい?」

「此所って二階もあるんですよね?…」

「そうだね。砦ではあるけど、設備とかはそれなりに整ってるし。兵士達が寝れる部屋も揃ってるよ。で、二階がどうかした?」

「い、いえ…」

 

二階があるなら…やっぱり、騎士の皆さんが居るのかな…?

…でも、さっき砦に入った時の全員の生命力と今現在の生命力が違うし数も…。

最初と変わっている…。何かが混ざっているのかな…?誰かが砦に来た?…それとも……

 

「ラスカー?地下に行くわよ?」

「え?あ、は、はい!?」

 

今は確かめようもなく、ボクは三人について行き…地下の階段を降りた。

 

 

 

 

 地下に降りると、地下はなぜか松明が灯されていないから暗く…

部屋の奥には巨大な岩が置かれていました…。

「あの岩は兵士達に運ばせ、設置させてもらったよ」

「その岩をどうするの?」

「これで…壊すのさ」

 

ハーレさんの左手にはランタンを持っており…それを前へと出していた。

このランタンでどうやってあの岩を壊すんだろう…?かなり頑丈そうだけど…

……それに、おかしいよ。

 

あのランタン……かなり使い込まれてる。傷を直してる箇所もあるけど…

隠せてない傷があります…。

作ってる途中で傷ついたのでしょうか?…でも、それにしては荒いような…?

 

「その前に、まずはこの地下を明るくするとしよう」

 

持ち手を握り、カランカラン…っと…ランタンを揺らすと…

ランタンの照らす箇所が光りだし…その光が玉のように3つに別れ…

光の玉は3つともバラバラに天井へと散らばり、地下を全面的に照らす。

 

「凄いわね…でも、この力って…」

アーネアはボクを見ながら、ランタンについての事を考える。

……たぶん、アーネアも同じことを考えてると思う。この力って…!?

「この光………!…そうか!採って欲しい素材と言うのは…」

「グローゼム将軍はもうわかったみたいだね。では…放とうか!」

 

再び、ランタンを振るうと…天井に打ち上げられていた3つの光の玉から

雷のような光が流れだし…その光の光線は岩へと同時に命中し…岩を粉砕してしまう。

 

 

ドゴォォォーン!!

 

 

「なるほど…光を広げてしまえば、魔女も光で居場所がバレて行動がしにくくなり。なおかつ光の玉から光線が様々な場所から発射され、一方的に攻撃が出来る……凄い力ですね。この力なら、魔女も重装備の騎士の鎧も一撃で破れるでしょう」

「あんな巨大な岩を粉々に…でも、そのランタンの力って…」

「……………魔女が使う魔の力……ですよね」

「お察しの通り。これは魔の力さ」

 

「本来なら、山ぐらいなら一撃で破壊できる程の火力が出るけど。量産するとなると、危ないだろうから、火力が出るのはこのランタンだけ。他にも、このランタンが出来ることは…一時的な催眠。負傷した味方の傷を癒す。光をあらやる物へと形を変えれる。などなど、出来るよ。後でまた見せるけど…」

 

「でも、そのランタンの魔の力……ハーレさんからは魔の力を感じません。あくまでランタンだけから魔の力を感じます。人ではなく物から…そのランタンに使われている素材って…何なのですか?」

「それはね…グローゼム将軍、お答えを」

「……獣魔、ですね」

 

獣魔…動物が魔女を食べ…動物が魔の力を得て、進化した姿…

野生の本能はさらに活性化し…他の動物や人間を食らい…とても危険で…

さらに、その本能なのか習性なのか…彼らもまた、特殊な魔の力を使ってきます…。

……人間が獣魔の肉などを食べることは出来ず…食べたら、発狂し…ほとんどの人が死ぬ。

 

けど、まさか…その獣魔を素材として…?

 

「手紙に書いてあったアクディロナだからこそ危険だが揃えれる素材…。そういうこと…アクディロナは古き時代から獣魔を狩り…民を守り続けた国…獣魔の狩りには経験豊富。なるほどね…素材を集めるにはアクディロナの力が必要というわけね。けど、その魔具の仕組みはどうなっているのよ?まさか、獣魔の力を使うなんて…前代未聞だわ」

 

「魔具の仕組みは。適された獣魔の素材を使うことで、いろんな魔の力を一時的に使えるようになる。このランタンなら光や雷などを本能的に出すような獣魔の素材を使っているよ」

 

「そういった獣魔の素材を組み合わせ…獣魔の習性や本能によっては他にも、炎を纏える魔具なんかも出来るかも?…ただ、魔具の使用には注意がある」

 

そう言いながら…左手で握っていたランタンを右手へと持ち変え…

左手の平を開いて、ボク達の方向へと左手を向け、手の平を見せると……

その左手の平には…さっきも見た刃物のような痕から、血が流れ出ており…

しかも、その刃物のような痕は新しい傷痕もつけられていました…。

いつの間に……一体…どうして?

 

「ランタンの持ち手も、見てみなよ」

 

今度は両手でランタンの持ち手以外の場所を持ち、ハーレさんはランタンを見せつけて

言われた通りに…ランタンの持ち手部分をよく見ると…

持ち手には、血のついた小さな刃が横一線で持ち手の隙間に仕込まれていました…。

「一体、なぜ持ち手に刃を仕込む必要が?」

「血だよ。この魔具には血が必要なのさ。大抵の人間や生物には、血がないと生きていけない。けれど、その魔具に使われている素材の獣魔はどうだろう?もう死んでいるし。形すらもない」

 

「当然、そんな状態じゃあ…魔の力を使うことは出来ない。だって死んでいるんだからね…」

 

「けど、そこに血を与えたらどうだろう?…ほんの少しでも、血を与えたことで…素材は血で潤い。渇きが癒され、魔の力を使えるところまで素材は息をする」

 

「つまり、魔具に血を与えることで。獣魔に宿る魔の力を一時的に呼び覚まし…魔の力が使うことが出来るわけ」

 

「……となると、常時…血を与えないと、魔の力は使えなくなる。しかも、血を与えすぎると自分が貧血か大量出血で倒れ…最悪、亡くなってしまう可能性もあると…」

「そうだね。まぁ常時ってわけでもないし…血を与えるのも少量でいいから。ただまぁ…まだまだ改良する点はあるなぁ…今はこの血の消費についてが悩ましいところだよ」

 

なんだろう…魔具には魔女と獣魔の一部を通して力を使っているのですよね…

…死んでいるのに、血を与えられ、生きた屍のように…道具として今では扱われている…。

 

獣魔は強力な魔の力を使って、人々や他の動物を襲うからこんな扱いになるのかな?…

………戦争、そしてなによりも魔女を打破するための兵器なのだから…

こんな事になるのは仕方ないとは思います…。だけど…それでも…

 

いくら獣魔が人や動物や魔女を襲うからって…彼らも元は地を共に生きた動物…

人や魔女だって、生きるために動物を食べるように…獣魔や動物も人間や何かを食べる…

……せめて、戦争が終わったら…魔具も使われなくなって…

戦争に使われ、魔具になってしまった獣魔達が天国へと旅立つ事が出来たら……

 

この先の未来、戦争が終わったら…いいですね。

 

「さてさて、まだまだこのランタンの力も見せたいし…次は…」

 

一瞬、天井から何か…火花が飛び散るような音が聞こえる。

……嫌な予感が…!

 

 

ドゴゴゴゴゴッ!!

 

 

嫌な予感は的中し…

その場の地下の天井が爆発音と共に崩れ、その下に居たボク達は

爆発で崩れた建物の天井に踏み潰されそうになっていました…!

 

「天井が!?…敵襲なの!?…」

「ちょ…なんだいこれは…!?」

「ラスカーくん!君はアーネアお嬢様を!」

「わかりました!!皆さん!!避けて!!」

 

ボクはアーネアの所へ飛び込み。グローゼムさんはハーレさんの所に飛び込み。

飛び込んだ勢いで崩れ落ちてくる天井の外へと…移れました。

 

「た、た、助かったわ…ラスカー…」

「怪我はありませんか!?」

ボクはアーネアを押し倒しながら、辺りの状況とグローゼムさんとハーレさんを確認する…

「え、え、ええ…どこも…ラスカーこそ、怪我はない!?…」

「ボクも大丈夫です!…良かったぁ…でも、なんで天井が…!」

 

「あいたたた…」

「大丈夫ですか?お怪我などは?」

「怪我はないし助けてくれてありがたいんだけどさ………君の体…重いんだけど…」

「……あ、す、すみません…これが最善策だと思ったので…」

 

 

グローゼムさんとハーレさんも大丈夫そうですね…。

…さっきも、天井から異変を感じたけど…今度は…一体…

 

「ふんっ!…」

 

天井の穴から、黒いフードと仮面のような頭の鎧と軽い鎧を纏った人達が次々に降りてくる。

この人達の生命力……さっきの異変の時に感じた生命力…!

砦に侵入したのはこの人達…だったんだ!…

「その仮面の鎧…ナイトアサシンか…!」

「………」

 

 

ナイトアサシン。そう彼らは名乗って立ち上がった者達

リベンジウォッチと同じく、騎士団で国との戦争をしてる暗殺者の集まり…

 

クレフルド教軍と敵対していて、その騎士達や権力者などを暗殺している。

そして、彼らの素顔を見た者は居なく。素性もわからない…

 

…けど、そのナイトアサシンがどうしてこんなところに!?…

「……爆発音で普通なら騒ぎになるはずなのに。これで誰も来ないのは……もうサーラレア側の砦を守っていた騎士達は殺されたのかしら?…けど、殺されたなら…」

 

殺されたのなら、ボクが生命力を見通して感知するはずだとアーネアは思っているみたい…

…本来なら、爆発する前に誰かの生命力が途絶えたのなら…それを感知出来たはずです…

でも、騎士達の生命力は感じたところ、途絶えていません…。

「…たぶん、気絶しているんだと思います」

 

「……ああ、そうだ。余計な殺生をする気ない。安心しろ…彼らは気絶しているだけだ。だが、今の発言……そうか。お前がアクディロナ側の魔女…か」

 

ナイトアサシン側で、一人だけ仮面の形と鎧が違う人がボク達の前に立って言葉を喋る。

「なせだ!ナイトアサシンよ!アクディロナとサーラレアの国には、今まで手を出していなかったはずだ!この行為、我々の同盟国との敵対とお見受けするぞ!!」

「…ふんっ……失望したぞ。…サーラレア…貴様達も野蛮人に堕ちたか…アクディロナ、貴様らも…」

 

たぶん、外観もだけど…他のナイトアサシンの様子からしても、あの感じはたぶん彼らの隊長…

でも、どういう意味なんだろう?…野蛮人って…何か誤解でもされてるの…!?

「…どういう意味だ。お前達の目的はなんだ!」

「………」

グローゼムさんが何かを問いただしても、彼らは何も答えませんでした…。

そして、そのまま彼らは腰に身につけていた剣と短剣を左右で抜いて構える…

「…ふーん。答えなくてもわかるよ。こんな重要拠点でもないし奥の領地の砦に来るなんて危険過ぎるし何の得もない。なのに君達は来た。そしてなにより、君達はサーラレアとだけ言っていた。隣にはアクディロナのお嬢様やアクディロナの騎士達も居るのに…となると、狙いはサーラレア側…ボクか。それとも、この魔具…かな?」

 

ハーレさんはランタンをナイトアサシン達の方へと向けながら訪ねてみる。

しかし、それでも彼らは答えない。けど…そう考えると、恐らく狙いはハーレさんと魔具だよね…。

「ラスカーくん!君はハーレさんとアーネアお嬢様を連れて砦の外へ!此所は自分が食い止める!」

 

「……アーネア?」

 

グローゼムさんは体と全く合わない予備の剣を抜き、ナイトアサシン達にへと構える。

「おいおい。その剣で大丈夫なのかい?…君、聞いてた話だと大剣を使うって聞いたけど」

「流石に取引にまで目立つものは持ってこれませんよ!!とにかく、早く!」

 

 

「行きましょう。ハーレさん!」

「そうね。グローゼム将軍なら大丈夫だと思うしね」

「……なに?グローゼムだと…?」

 

グローゼムさんの名前を聞いて、ナイトアサシン達は少し慌てた様子で取り乱す。

戦場でグローゼムさんの強さは世界で轟いているため…

聞いただけでも、兵士のを誰もが恐れてしまう程…。

しかし、ただ一人だけ…例の異なる仮面のナイトアサシンは、何か別の事を気にしていた様子だった。

「なぜアクディロナ最強のグローゼムが!…」

「この領地は戦闘もないのに…!」

「あいつは前線に居たんじゃないのか…!?」

 

 

「…怯むな。狙うのはあの金髪女だけでいい…排除した次第、砦から脱出し。集合場所に集まるぞ」

「…はっ!」

 

しかし、仮面が異なるナイトアサシンの声により、体制を整えてから…再び構え…

「………行くぞ!」

一斉にハーレさんへと接近していました…!やっぱり狙いはハーレさんなのですね…!

 

「……君達二人は彼の事を信じているようだけど。本当に彼一人でいいのかい?あいつらも、一人で1000人は殺せる化け物集団だよ?それに、集団戦にも長けている。どうなのさ?」

「彼なら大丈夫よ。脳筋メガネだし」

「そ、そうですね……は、ははは…」

 

グローゼム将軍なら大丈夫。ボクはあの人の事を…信じていますから

 

 

 

 

「通しはしない!」

その前にグローゼムはひとつの剣と体の腕や足を駆使して

相手の数の攻撃の方が有利なのに…それでも全員の剣と短剣を受け止め、進行を阻止する。

「こいつ!?」

「足と腕で剣を止めただと…!?」

 

「はああっ!」

そのまま、一気に受け止めていた体と剣で勢いよく押し上げて

横に剣と体を回転させるように。囲んでいたナイトアサシン達を切り払ってしまう。

「ぐあっ!?」

「…くそ。粗末な剣でよくやる…」

何人か負傷し、引き下がったナイトアサシン達に対し…

先程の異なったナイトアサシンは斬られる前に後ろへ下がり、避ける。

……しかし…

「…!」

グローゼムの使っていた予備の剣は、刃が欠けるより先に

まさかの剣を握っていた持ち手部分がたった一回で割れてしまい

剣を握れなくなってしまった…。

「力に剣が耐えれなかったか…!」

 

「武器がないなら…グローゼムといえ!」

一人のナイトアサシンが、武器がないグローゼムの隙を見て剣を握り…

そのままグローゼムの腹を刺そうと走ってくる…。

「待て。冷静になれ…!お前一人ではどうこうなる相手ではない!…戻れ!」

 

突撃するナイトアサシンに対し、異なるナイトアサシンが声をかけ

戻らせようと警告するも…

 

「はああああっ!!…」

 

ついにグローゼムの目前…剣を強く握り、刺そうと前に突き出す…が

 

 

「……剣がなければ…拳を使い戦うまで!!」

 

 

ドゴォォォォォォーン!!

 

 

 

まさかの、グローゼムは剣がなかろうとそのまま戦いを続け

ナイトアサシンの剣より先に右拳を前にだし…

そのまま相手の剣を殴りながら…刃先から拳で壊してしまい

「しまっ!?…」

「逃げろ!…」

 

剣が壊され、拳はナイトアサシンの体に直撃する直前に…

異なったナイトアサシンが仲間を庇うために仲間のナイトアサシンを蹴って飛ばし

「…なっ!?仲間を…!?」

「くっ!…避けれないか!…」

 

庇った後に、自分も避けようと後ろに下がろうとしたが…間に合わなく

そのまま庇ったナイトアサシンはグローゼムの拳を腹に直撃してしまう…

「ぐっ…ああああああああああっ!!!???」

 

骨が砕け、折れる生々しい音が地下に響き…

ナイトアサシンはそのまま地下の壁へと叩きつけられた。

 

 

脳筋メガネ。その由来は知能的に見えて…その彼の本質は己の力で押し通すタフさのあだ名。

 

「……アレス!?…しっかりしろ!?」

「俺に構うな…!上で奴を殺せ!……」

仮面の隙間から血が首から下へと流れ出て…咳も発し、息はもう出来なくなっていた。

 

「……アレスを連れて行け!残った者は上で合流し、あいつを叩くぞ!」

 

「そうはさせない!…此所で君達は足止めさせてもらう!」

 

 

 

 

 

 

 

人が死ぬのも、殺し合うのも……ボクは嫌いです…。

グローゼムさんやアーネアも…何かを守るために、戦っていますけれど…

……なんで、戦争って起きるのでしょうか?…

 

「見て…これは…」

アーネアが見ていた辺りを見ると、そこには先程の一階に居た騎士達が

彼の言った通り…気絶し、床に倒れていました。

「……あれだけの兵士達をボクらが地下に行っていた短い間に音もなく…」

「居たぞ!」

二階からや別の方向からナイトアサシン達がボクらを見つけ、こちらに迫ってくる…。

 

「どうするのさ。魔具を人間相手に使用しちゃう?」

「……ごめん。ラスカー…」

「…構いません。此所はボクが戦います」

 

…戦いは嫌いだし。殺すのも嫌です。

けれど、皆や…アーネアを守るためなら……ボクは戦います…!

 

アーネアからプレゼントされた騎士の剣を抜き…構える。

「二人には近づけさせません!」

「あいつ、例の魔女騎士か…!」

「魔の力を使わせる前にやるぞ!…お前ら、死ぬなよ!」

「万能だからって何でもかんでも好きにさせるかよおおお!戦争屋あああああっ!!」

「もう一人で地獄なら見てきたさあああ!!」

 

彼らは決死の覚悟でボクを殺す気で刃を向け、迫ってくる…

……魔女の力。便利そうに見えて、便利ではありません。

 

「……来ないでください!」

 

魔の力でその場の空気を操り、彼らの全身を空気で体を動けないように固定し…

「こ、こいつ!?…リベンジウォッチと同じことが!?…」

「戦争屋どもが!……くそおおおおお!!!」

そのまま壁へと空気を操りながら飛ばし、張り付けにして気絶させました……。

 

私はこの数年。手で何かに傾けなくても…直感のように頭や体で感じとれば

魔の力を使えるようになっていました。

 

体の成長と共に、さらに魔の力も活性化し…成長していく。

出来ることも増えました。……宇宙ぐらいなら簡単に操れます。

 

概念の操作は勿論…生命力の操作。因果の操作。自然の操作。

 

形なき無から何かを作ったり…想像で全てを変えたり…また新たに誕生させたり…

ほとんど、人間にも魔女にも出来ないことを私は大体は出来るようになってしまいました…。

 

けど…出来ることは増えても、それを何に使ったらいいのかわかりません…

勿論、アーネアや皆を守るために使います。ただ…怖い…力を使うのが…誰かを殺すのが…

 

やっぱり、やっぱり……力を使うたびに…お母さん達の事を思い出すのです……

それに……力が成長し、おばあ様のある言葉を思い出しました…。

 

不老不死……

何らかの事故とか殺人などが起こらない限り、魔女は普通の寿命では死ななくなる…。

普通、それは魔の力で体を維持していないと起こりませんが……

 

私の場合…魔の力をコントロールし、体から消費させるということが

体内にある無限に近い量の魔の力でいくら消費しても体から魔の力が無くなることはなく…

私は強制的に不老不死となっています…。

 

……嫌だよ…。死ぬことは嫌だけど…アーネアと共に死ぬまで隣に居れないのが…

居れなくなるのが嫌だよ…一緒に、老いて死にたいよ………。

 

「くそ!グローゼムとあの魔女騎士が居たことが、最大の予想外であり。誤算だった!…」

 

まだまだ、彼らは何人も居る…あとは剣で何とかしよう。

「ラスカー。私もやるわ。貴方にだけ無理はさせないし…見てるって言うのは嫌なの」

「アーネア!?…」

「ボクも手伝うよ。君、人を殺したことなさそうだし。というかボクって研究者とか隊長とかって割りに合わないし。冒険してる方がいいのでね」

 

二人も、戦いに加わってしまい…アーネアは剣を、ハーレさんはランタンを構える。

「あの金髪を殺せ!…同志達の為に!」

「我らの命で、戦争の火種が消えるならば…!!」

 

「うわぁ…なんか、凄い殺意……」

「…戦争なんて、こっちもごめんね」

 

……なんだろう。あの人達も…何かの目的の為に…戦っているんだよね…。

「ラスカーは真ん中の連中を。ハーレ様は右の連中を。お願いできるかしら?」

「わ、わかりました!…」

 

 

 

 

「さて、人間相手に使うのは嫌だけど。言ってられないよね…」

ハーレはランタンをナイトアサシンらに構え、血を魔具にへと注ぎ…

カランカラン、と音を鳴らしながらランタンは振るわれる。

 

ランタンからは今度は剣の形をした光が彼女の周りに複数、召喚され…

さらにランタンを鳴らすと…光の剣は一斉にナイトアサシンらに刃を向け、飛んでいく。

「それぐらい!…」

ナイトアサシン達は何とか飛んできた剣を避けるものの…

 

ザシュ!

 

彼らの足はいつの間にか刃物で斬られた痕がある。剣は避けたはずなのに何かに斬られていた…

「なっ!?…足が…!?」

何かに斬られ、その斬られたことにより…足が崩れ、転んでしまう。

「残念、これ追尾も出来るんだよ」

 

まさかの、先程の避けた光の剣が方向を変え、彼らの背中側から迫り…彼らの足を斬っていた。

「くそ…やはり、人間相手にそれを使うか野蛮人め!」

 

魔具という兵器。それはあくまで魔女の魔の力に打破と対抗するために作られた存在…しかし

魔の力を持ち合わせてない人間相手に使用してしまったら、それはもう一方的な殺しか虐殺だろう。

 

「殺しはしないけどさ。正当防衛になるのも、仕方なくない?」

「……くっ…」

 

 

一方で、アーネアの方はというと…

「はあっ!!」

剣の刃があまりの速さで消え、肉眼では見えない程の剣技でナイトアサシンらを圧倒し

彼らを押してはいたようだ。

「くっ!…この女、なんて剣技だ!…」

「なるほどね。確かに…一人で敵地に乗り込んで1000人を倒すほどの実力者達の集団…相手がラスカーやグローゼム将軍、魔具を使っているハーレ様だと、相手の相性が悪すぎる。けど、相手がただの剣士なら…やっぱり、耐えるわね…」

 

しかし、アーネアの剣技に対し…彼らも剣技を受け流しつつ、耐えてはいた。

 

「そんなあなた達がこんなに複数人で来るなんて、狙いはやっぱり魔具?」

「…くっ……ただの王族娘に…」

 

 

 

「……器だけの存在は要らない。私をただの厄介者お嬢様と見ないことね」

「そうか…お前…アクディロナの王のアレクの娘か…となると……お前はあいつらの…」

「あいつら?…誰のこと?…」

「手元が止まっているぞ!!!」

「…しまっ!?」

話の隙に、アーネアは後ろから別のナイトアサシンに短剣を突き刺されそうになってしまう。

「アーネア!!!」

 

 

 

 

 

 

アーネアが刺されそうになっているところを戦っている最中に見たボクは

彼らの剣を受け止めていたのを、剣で押し返し。そのままアーネアの所へと行き…

彼女の背後に背を合わせるように周って…

 

背中を刺そうとしたナイトアサシンの短剣の持ち手を下から蹴って

短剣を吹き飛ばし…そのまま、急所ではない箇所の腕と足を斬り払いました。

「こ、こいつ!…」

そのまま、負傷し。後ろへと下がっていく…

少しずつだけど…彼らの人数も減ってきました。

 

「ありがとう…!ラスカー!」

「いえ…!それより、まだ来ます!」

 

彼らはどうしてハーレさんと魔具を狙っているんだろう?…

やっぱり、重要な兵器とそれを造った人物だから…?

……だとしても…どうしてナイトアサシンの皆さんがわざわざ狙う必要が?

 

「…なに?アレスが!?……全員、撤退だ!アレスが地下で負傷した!…悔しいが、これ以上は戦っても無駄だ!…予定の場所に逃げるぞ!」

「これだけの数をたった四人で俺らを圧倒したのかよ!!…くそおおおお!!!」

 

 

どうやら、彼らの隊長らしき人がグローゼムさんに倒されたそうですね…。

たぶん…さっきの一人だけ変な仮面をつけていた人だと思うけど…

 

「負傷した者を連れて逃げるぞ!逃げるときに煙玉を床に投げろ!」

 

彼らは負傷した人達に肩を貸して連れ、煙玉を投げてボクらの目を眩ます…

「…ゴホッ!ゴホッ!…あぁもう…目が痒いじゃないか……」

「ラスカー。彼らはもう逃げた?」

 

目を瞑り、ナイトアサシン達の生命力が何処にあるのかを感じとると…

彼らは既に。城壁の外へと、もう逃げたようです…。

 

「…はい。もう砦の外に移動したみたいです」

「どうするの?これは一応、サーラレア側の砦なんだし。追撃するかは任せるわよ」

「やめとくよ。先に兵士達を確認させてもらうかな」

「それがいいわね…。それにしても、どうやって彼らは誰にも気づかれずに此所まで来たのかしら…?」

「さぁね。抜け目がなさそうな連中だし…潜入するルートも事前に確認していたんだろうし」

 

「それに、今回は助かったよ。いくら魔具を持ってるボクでも…これ近接的な武器が想定されてなかったから、君達が居なかったら…数の暴力で負けてたよ」

 

「こちらも、酷い取引を経験したわ。とりあえず、この件は一旦、落ち着いてから決めないとね」

 

 

 

 砦のあちこちが戦いで荒れて…瓦礫なとを片付けたり…

そして、ボク達は協力しながら気絶したサーラレアの騎士の皆さんを一ヶ所に集め

全員が居るかどうかを確かめていました。

 

「どうやら、誰も死んでいないようだね」

「なら良かったわ」

 

「皆さん。ご無事ですか!」

 

地下の階段から、グローゼムさんが登ってきて…こちらへと合流する。

傷もないみたいだし。良かったぁ……。

 

「大丈夫ですか?グローゼムさん?」

「ああ、平気だよ。ラスカーくんや二人は?」

「ボクも何とか大丈夫です!」

「私も大丈夫だわ。ラスカーのおかげで命拾いもしたし」

「そんな軽々しく言わないでくださいよ!?」

「はいはい。でも、助かったわよ。ラスカー」

「……もう」

ひとまず、休めそうですけど… 

彼らの目的と狙いは魔具とハーレさんだった。

でも…ハーレさんは目立たないようにランタンで魔具を目立たないようにしたり…

そもそも、まだ魔具は今のランタン型だけ…

今回の取引が魔具の件だって知っているのは同盟国のボクらだけだし…。そもそも、取引自体も…

一体…どうやって彼らは此所に魔具がある事とハーレさんが居ることを知ったんだろう?…

知っていないと、今回の奇襲も出来るはずがありません…。

……なんだか、嫌な予感がします。

 

「さてさて、今日はこんな事があった後だし…今日はこの砦に泊まっていた方がいいんじゃないかな?」

「そうね。お父様には3日ぐらい掛かるかもとは言ってたし。大丈夫よ」

「そうですね…。まだ砦の外もどうなっているのかわかりませんから…」

「グローゼム将軍もどうだい?」

「ええ。ラスカーくんの言った通り。今動くのは危険です。ひとまず今日は砦に残り。明日に出発しましょう。あと、自分は砦の外壁の辺りを見てこようと思います」

「そうだね。その時に、ボクの部下を連れて行くといいよ。君ならボクより任せられるしね」

「ありがとうございます」

 

こうして、今夜は砦に泊まることが決まりました。

あんな事があった後、誰も死んでいなかったからいいけれど…胸騒ぎが…

……明日は…大丈夫かな?

 

 

 

 

 

 時間は過ぎて…もう辺りはすっかり暗くなり…月の光が照らす真夜中…

ボクはアーネアと一緒の部屋に置いておった2つのベッドのうち

部屋の右側のベッドの上で寝ていました。

「………」

…アーネアは部屋の左側のベッドで横たわり、もうすっかり寝ている様子…かな?

こんな戦闘経験、アーネアにとっては初めてのはずですし…疲れているからかな…。

ボクは……今日と明日の事で胸が騒ぎ、落ち着かず…寝れないや。

「…はぁ……」

 

少し歩けば疲れて寝れるかな?と…

ベッドから立ち上がり、部屋の扉を開け…砦の中を歩いてみる。

そういえば、今でもグローゼムさんは外に居るのかな?…

 

「…夜ってやっぱり怖い……」

夜は怖いし。昔の事を思い出す。

今でも、夜の森で何があったのかを鮮明に覚えているし…

それに…お母さん達のこと以外でも、ボクは魔の力のおかげで…

強制的にいろんな事を記憶してしまっています…。

覚えておきたい記憶も、覚えておきたくない記憶も…。

 

砦を歩き。ボクは魔具を体験し

そして戦いが起こり…ナイトアサシン達と出会った地下へと降りる。

 

此所で起きた出来事も……細かく覚えています。

天井が爆発する音。瓦礫が落ちてくる瞬間。魔具に付着した血。

……そして、聞いても見てもないないはずなのに聞こえてくる…男の叫び声…。

「……はぁ…」

 

ずっと、記憶が良くも悪くも…頭から離れない。ずっと、昨日のことかのように頭から流れる…。

人には忘れたい記憶だってあります…。

ボクは忘れることが出来ません。…皆さんは時間で忘れれることも出来ると思います

でも、この力でアーネアとの毎日やお母さん達との短かったけど…毎日の記憶が…

ずっと記憶に残ってて…それが、とても嬉しいです…。

 

「…そろそろ…部屋に戻ってみようかな」

 

 

 

「ああ。うん…そうだね。こっちは少し、進展が起きたところだよ」

…?部屋に戻ろうと、階段を登ろうとしたら…地下の部屋から誰かの声が聞こえてくる?…

でも、あの声って……

 

ボクはその声が聞こえてくる方向を見ると…

地下の部屋の扉の隙間から見えたのは…ハーレさん?…

誰かと会話?…けど、部屋には誰もいない……誰と話しているんだろう?

それに…手に「板みたいな薄い物」を…手で握り、耳に傾けている…?

 

「うん。こっちの「世界線の物語」は比較的、安全だよ。とは言っても、戦争はまだまだ続いて。ボクも何時死ぬかわかんないや。今日も殺されかけたし…」

 

「……え?彼らが?……そう。ついに動いたんだね。……ああ、いや、ごめん。ボクは五年もそっちに居たんだし。流石に今回はボクは行かないよ?訪ねるなら、他の人に頼んでよ」

 

「それに、ボクは願いなら叶えたんだ。……え?……あ、ああ?確かに、彼なら今日来たけど……彼の力を?…ま、確かに…彼の力を使えば、世界の歪みは取り除かれるかもね」

 

「でも、どうやって彼をそっちに入れるの?…はぁ…今は見守る…ねぇ。でも、もし入れるとしても…彼は別の世界線の彼ら達。君が言うには、どれも絶望そのものじゃなかったの?まぁ此所の彼を見る限り、今はそんな雰囲気ではないけど……顔から迷いがあったのはボクもわかったよ。あの迷いにより、彼は複数の世界線が生まれている。そんな彼を、見守っていいの?」

 

「……………あっそう。もう好きにしてよ。ボクはそこまで暇人じゃないんだから。ボクはそこまで絶対に待てないね。じゃあ、これで話は終わり。もう切るよ」

 

 

ハーレは板みたいな薄い物を懐にしまい…そのままこっちを向いている…

「……そこ、誰か見ているんでしょ?」

「あっ……」

どうやら、話を盗み聞きしたいたことがバレていたらしく…

ボクはそのまま…扉を開き。姿を正直に表す。

「…あれ?君だったの?」

「す、すみません…。寝れなかったから気分転換しようと散歩をしていて此所にも来たのですけど…そしたら、話声がき、聞こえて……盗み聞くつもりはなかったのですが…その…すみません」

「二回も謝らなくていいよ。ま、別にいいしさ」

「……あの…さっき、誰と話をしていたのですか?」

「うーん?…神様とお話かも」

「え?」

「なんてね。冗談だよ。じゃ、ボクは寝るから。君も明日は早いんだし。早めに寝なよ。おやすみ」

 

そう言いながら、ハーレさんは何気ない表情のまま…一階に戻ってしまった。

…神様とお話。あれは本当に冗談なのかな…?

しかも、また五年前?…五年前って魔具の試作が出来た時だよね?…

なんだろう。神様という存在はわからないけど…あの会話からして…嘘を言っていたようには…

でも神様なんて本当に…?……今はもう寝よう。考えても…流石にわからない。

 

ボクは、部屋に戻り…布団を被り、目を瞑り…寝ようとする。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?此所は何処だろう?」

目を瞑った後に……ボクは…森のどこかに立っていた。

また…夢の中?…それにしては…まるで、現実みたいな…

 

 

 

 

 

自然は怒りを抱いた。誰も愛しはしなかった…彼らは自然を殺し、発展のみを考えた。

 

 

 

 

 

「…なに!?」

 

突然、少女のような声が森に響き…辺りは森は炎に包まれ、燃え…

森の木や草花は炎で炭へと変わり果て…自然は消え去った。

「…どういうことなの!?」

 

 

 

今度は、辺りの風景が変わり……何処かの荒れ果てた地にボクは立っていました。

また…変わった!?…

 

 

 

 

彼らは何も行動しない。あるのは罵倒と無知だ。助けたのになぜ?…

 

 

 

次は男性の声が荒い地に響く…そして、今度は大砲の弾が

空から流星の如く降り注ぎ…荒い地に大きな穴を作り出す。

 

 

 

また、風景が変わり……今度は暗い森や村などがある場所へと変わる。

 

 

 

 

呪い?運命?…くっくく……違うよ。それはお前の化身だ。お前が招いた結果だとも

 

 

 

 

今度は低い声で笑う女性の声が聞こえ……

その後、森からは何かの異質な形をした化け物が…ボクを囲んで…

 

「グギャアアアアアアアアア!!!」

 

飛びかかる直前に……また風景が次々に変わりながら……声も流れてくる。

 

 

 

 

見放された。この世界と物語から…!…なぜ俺達の物語は語られなかった…!

 

 

 

 

なんで私や皆は見放されたのよ!ただ、居場所が欲しかっただけなのに!

 

 

 

 

運命なんて…俺様は大嫌いだね。その運命を押しつける支配者つうのもな…

 

 

 

 

やらなきゃいけなかった。やらないと生き残れなかったから、だから殺したんだ

 

 

 

 

何処に行っていたんだよ!…なぁ!…私を…置いていかないでくれ……!

 

 

 

 

正義も悪も関係ない。あるのは人と人の意思だ…違うか?

 

 

 

 

無力な人間など存在しない。それがどんなにクズでも…行動し、変われると信じている

 

 

 

 

 

「……何が、何が起きているの!?これは…夢なんですか!?…」

 

 

 

 

 

私は復讐する。あいつらに……!

 

 

 

 

 

「……ほう。君は……他の世界の物語に……干渉が出来るのかね?」

 

最後に聞いた声が終わった後……全ての風景が一面、全てが真っ白な光となり…

そして、後ろから…ボクに問いかけるように…声が聞こえ

振り向くと…長く黒い帽子に、白い仮面をつけた謎の人物が、その場に立っていました。

 

「だ、誰なんですか!?…此所は!?これは夢なんですよね!?干渉って…!?」

「…さあどうだろう?…これは夢ではなく、物語だよ。君自身や全ての人の…」

 

 

「そう。今見ている……君達(読者)もね…。おや?気づかなかったのかね?先程の第三者からの視点全てが、ただの文字の解説とでも?私は居るんだよ。君達をずっと見ている」

 

 

「……な、何をあなたは言っているのですか!?あなたは……誰なのですか!?」

「…さて、もしも君がこのまま物語に干渉するのであれば…あるいは、物語が始まるのであればまた私と会えるかも…しれないね」

 

仮面の人は後ろに振り返り、光の先へと歩く…

「待ってください!?あなたは…あなたは!?…」

 

 

 

「ラスカー!!」

 

 

「……はっ!?」

 

 

次に目が覚めた時は……ベッドの上で天井とアーネアの姿が視界に入る…

「…大丈夫?もう朝よ?…酷く、うなされていたけど…酷い夢でも見たの?」

「……す、すみません。……そんな…感じです…」

「…そう。ごめん。休ませてあげたいけど…城に戻るわよ」

「………わかりました」

 

 

 

 

 

 あの夢はなんだったんだろう?そもそも、夢だったのかもわかりません。

次々と変わる辺りの風景。その風景から聞こえてくる謎の声。

 

そして、最後に出てきた仮面の人物……

……あれが夢だったとは思えません。本当に、あの人物と会っていたような感覚があります。

なのに…夢と感じてしまう。感覚が…おかしくなっている。

 

………頭が痛い。胸もずっと苦しく。胸騒ぎもします。

 

 

それに、物語の干渉や始まりって……なんだろう…?

……全て訳がわからず。頭が混乱し…頭痛が激しくなる。

「ラスカー。私からお父様に取引の事は話すし…今日は休んでいなさい」

「……す、すみません…すぐに体調を治しますから…」

今は城に戻り……アーネアの部屋に居ました。

ただ立ち尽くしていたボクに…心配した様子で顔を覗くアーネア……。

「…酷い顔ね。……今日、夜に秘密の場所に行こっか…それに、そこで貴方と二人きりで話しておきたいことも…あるし」

「……!…あ、アーネア……」

手を握りしめ…見つめてくる。

……痛い。また胸が苦しいのに……暖かくて……おかしくなりそう…

「大丈夫よ。私も……ラスカーの隣に居るから……」

「……はい!」

その後、少しの気まずい間が空き……アーネアからこんなことを言われる。

 

「…あ、そうそう。ラスカー…レンベルトおじい様が砦での防衛戦が無事に終わり。帰ってきているわよ。ラスカーってレンベルトおじい様とは本を読む仲みたいだし…会ってみたら?レンベルトおじい様もラスカーのことを呼んでいたみたいだし」

「レンベルトおじい様が?…わかりました!行ってみます!」

 

あれから、ボクはレンベルトおじい様とは本を読む仲になっていました。

気難しい性格で、怖いけど……本を読むことには、とても…美しい…と言ったらいいのかな?

 

ともかく、ボクはレンベルトおじい様が呼んでいたと聞き…

アーネアと別れ、ボクはレンベルトおじい様の部屋へと行くことに決めた。

 

 

 レンベルトおじい様の部屋の前に立って…開けようとすると

「あれ?ラスカーくん?…君もレンベルトおじい様に会いに?」

開けようとしたら、隣にグローゼムさんが居ました。

「え?あ、はい!アーネアお嬢様がレンベルトおじい様が呼んでいたと聞いたので」

「奇遇ですね!自分もです。……けど、何の話でしょうか?ラスカーくんだけなら本を読む事だろうと思いますし。自分だけ呼べば、戦場についての話でしょうけど……二人揃ってなんて…」

 

確かに…なんだろう?重要な話なので……!?…

 

「……グローゼムさん!剣を構えてください…!!」

ボクは剣を抜き…扉の前で構える…!

 

「ど、どうしたんだい!?ラスカーくん…!?」

「いいからお願いします!!…」

「……わかりました」

「ボクの合図で扉を!…」

 

合図を顔で送り、グローゼムさんに扉を勢いよく開けてもらうと…

 

「……ぐ………ああああ……」

「……なっ!?レンベルトおじい様!?…どうして…!?」

 

そこには……頭から血を流し…床に倒れていたレンベルトおじい様の姿がありました。

…気がつかなかった!…朝からの頭痛と昨日のことを考えてて…

レンベルトおじい様の生命力にもっと早く、気がつかなかった…!!

 

「しっかりしてください!!…レンベルトおじい様!」

 

……また、ボクは……ボクは…!!同じことで…誰かを…………

 

「……ラスカーか………!…来るな!グローゼム、貴様もだ!……早く、部屋から逃げるのじゃ!!…これはあやつの………罠じゃ!!……ぐっ……」

「罠!?何をおっしゃっているのですか!!…今はともかく……ラスカーくん!魔の力で治療を!!」

「……はい!!」

 

レンベルトおじい様の手を握ろうとした時……

 

「そこまでだ!反逆者!!」

 

部屋の扉から、何人かの騎士の皆さんが……部屋へと入ってくる。

「…反逆者?何を言っている!……ともかく、今はレンベルトおじい様を…!」

「グローゼム将軍!!その魔女から離れてください!!そいつは反逆者だ!そいつがレンベルト将軍を暗殺しようとした反逆者。魔女のラスカーだ!!」

「……え?」

 

何を……言っているのですか?……ボクは何も…していません……!?

「待て!!ラスカーとは自分の隣に居た!殺すことも出来ないしありえない!!それにラスカーはさっきまでアーネアお嬢様と自分とでサーラレアとの取引から帰ってくる途中だったんだぞ!!」

「こいつなら魔の力で遠くからでも殺めれるでしょう!!とにかく、こいつを連行しろ!!」

「そ、そんな!?…待ってください!?ボクは…私は何も…!?」

 

 

「ラスカー・アーレスト!貴様を王国への反逆罪で、貴様を火炙りの刑に処す!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は………そのまま、騎士達に連行され……両手の手首を絞められ…街の外へと連れられ…

 

 

「やっぱり所詮は魔女だったか!」

 

「そいつを殺せ!少女の皮を被った悪魔め!!」

 

「今まで私達の為にしていた事も、全て演技だったのね!!」

 

国民の皆さんから罵倒され…石を投げつけられたり…

首輪をつけられ……私は首輪に繋がれていた鎖を騎士に引っ張られながら…

 

木の柱に巻き付けられてしまい……身動きが出来ませんでした……。

「………………」

足元には……火をつけるための薪とか油とかが…置かれて…

騎士は片手に松明を用い……もうあとは……私を焼くだけでした……。

 

どうして……なのですか?……こんなに突然…

……レンベルトおじい様は誰かに殺されかけた…その人がボクに濡れ衣を…?…

でも、なんで?……魔女だから?……魔女だからなのですか?……

 

…本当ならこの縄も解けて、あの部屋に戻れば…魔の力で部屋の記憶を読み取り

レンベルトおじい様を殺めかけた犯人もわかるはずです…

でも……今、動けば……余計に…被害を招きます…だから…動けません……。

 

 

「待って!!どうしてラスカーがあそこに居るのよ!!!止めて!!!」

 

罵倒する国民の中で……ただ、一人だけ……助けようとする声が聞こえる。

それは……アーネアが…ボクのところへと…来ていたのでした。

 

「アーネアお嬢!これは既に、王からの決定です!貴女に止めれる権限はない!!」

「レンベルトおじい様にラスカーが手を出されるわけないでしょ!?いいから止めなさい!!」

「……いい加減にしろ!!器だけの女が!!」

 

 

バンッ!!

 

 

アーネアは……私の目の前で……騎士の人に殴られ、その場に倒れてしまう…

 

「……ぐっ…な、何をするのよ……!!」

「………アーネア……いいんです………」

アーネアが傷つくぐらいなら……ボクはなにもしません……

「嫌よ!!…ラスカーはなにもしてない!!ラスカーは無実よ!!誰かにハメられたんだわ!!」

「…………」

それでも、確かめる方法がありません……どうしたらいいかも…

でも……だからって……死にたくないよ………まだ……隣に……

ようやく……互いに隣に居てくれる人と…会えたのに………

 

………でも、そうだ!……あの時は出来なかったけれど……今度こそ…

今度こそ時間を戻せば…!!レンベルトおじい様が怪我をする前までに戻れば…!

 

 

 

ボクは前に進むために…今度こそ、誰かを救うために…

アーネアのところへと戻るために…時間を戻す為に…全身に力を入れる……!

「うああああっ!!!……」

 

 

 

「な、なんだ!?じ、地震か!?…」

 

それと同時に……王国や辺りの地形…大陸そのものが…全てが揺れだす…!

あと、少し!ごめん!……時間が戻れば……今度こそ!…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ほう。やはり、貴公は物語を歪めようとするか」

 

 

 

……なに!?……また……また辺りが真っ白に……!?

でも…あの時の夢とは違う!?…それに、縛られていたのに…手も……

まるでこれは現実?…でも、幻想みたいな…?

 

今度は…一体……何が起こるの!?…

 

「……問おう。貴公は願いを叶えるために…時間を戻すのか?」

 

光の先から…何かの煙が払われ……その煙が払われた先には……

 

 

 

雲の上のような場所に王座が…君臨するかのように…現れ…

 

 

 

その王座には……ボク…やグローゼムさんよりも…

何枚も何枚も上間る大きさの体と上半身裸の大男が

…王座に右手に槍を用いながら…共に座っていた……。

 

「…貴方は……一体!?……」

「……我、物語を司る神。ゼウスなり…!…此度は…貴公が物語そのものの時間を戻すという物語での禁忌で…貴公をこの場へと誘わせてもらった」

 

ゼウス!?……物語の……世界の神様…!?

そんな存在が……本当に…!?でも、それよりも…世界の時間を戻すことが禁忌って…!?

でも……この人が神である証拠なん……て!?

 

「…あ、ああああ…」

 

魔の力で……全てが感じ取れる……

いろんな世界の人の感情や……見えてしまう。

私達が住んでいる世界とは違う単語や言語が頭へと流れ、聞こえてくる…!?

 

私達が住んでいる世界にはない…物も……

こんな事が感じ取れてしまうなんて…信じれないし、ありえないけど……

………この人は「神」なんだ…!

 

「……ほう。見たか…物語の一部を……その我よりも遥かに越える力でな。だが、まだその力を…貴公は全く扱えきれていなく引き出せてもいない!…そして、なによりも…それを扱いきることなど…今の貴公では無理だろう」

……このゼウスと名乗る人物の言っていることは本当。

レンベルトおじい様のことも…お母さん達のことも…

今回も今までも、ずっと……肝心な時に…ボクは力が使えなかった…。

「…貴方は…何が目的なんですか?……」

 

 

 

 

「…貴公を裁きに来た。此度問おう!!貴様はこのまま…時間を戻すのか!!」

 

 

答えよ!!!

 

 

 

 

 

私は……ボクは、時間を戻したい。

時間を戻し……今度こそ、誰も傷つかない世界へと進ませたい!…

「……ボクは時を戻します!!貴方に逆らってでも!!」

「そうか…。ならば、こうするしかなかろう…!」

 

王座から座っている状態で槍をボクに構え…槍の先端から何かが光り…

その光はボクの方へと……!?

見えない…!?魔の力でも、何が飛んできているのかわからない!?…

 

「ぐうううっ!?…あ、ああああああ…!?!?」

 

その光がボクに当たると……急に首が苦しくなり

光り輝く枷のようなのが…首に付けられていました。

 

あれ?……付けられたと同時に……感覚が……おかしく……

 

「…その枷は貴公のような物語を勝手に改変し破壊するような存在に付ける抑制の枷だ!その枷がある限り、貴公の力はほとんど使えはしない!」

 

「……あ、あああああっ…!」

 

………それでもと、ボクは残った魔の力を今までで一番…最大限に使い…

この枷を外そうと魔の力を限界まで高め、枷にヒビを入れる。

 

 

「あああああああっ!!!!……」

「…ほう。それ一つで大抵の宇宙などを破壊できる存在は力は使えなくなるのだが……なるほど、貴公の他の時間線が貴公が全ての存在にとって絶望する存在になったのも頷ける。やはり貴公にも足りぬか…!」

 

さらにゼウスと名乗る人物は…槍から枷を召喚し…

ボクの力を抑えようと枷を放つ……。

 

 

「うわあああああああっ!?!?………」

 

 

 

痛い。苦しい。自分が小さくなり…何か別の存在へと変わっていくような感覚になる。

何回も何回もボクは枷の力を凝固され…ボクはそれに少しずつ抵抗が出来なくなってしまい……。

等々……力がほとんど使えなくなってしまう……。

 

「はぁ…はぁ……」

「…50回か。貴公の力がようやく弱まったのは枷の50個分の力だ」

 

 

感覚が前みたいに研ぎ澄まされなく…まるで、赤ん坊のように…手足が言うことを聞かない。

………終わった。ただ目の前の状況と力が使えなくなったことに絶望する…。

 

 

力が使えなくなってしまったら……

ボクは……何も出来ない…。

 

……よく考えてみたら、ボクの中には魔の力が消え、何が残るんだろう?

人を助ける時も…ボクは自分の力ではない。

魔の力という生まれたときに与えられてしまった力に…頼り

ボクなら助けれる!この力で何か出来る!…と…何時も……思っていた。

 

でも、肝心な時には誰も力では助けれなかった。それどころか…今はもう力もほとんどない。

進もうとしたのに…ボクは今、神と名乗る人物により…何も出来なくなった…。

 

……このまま、ボクは火炙りにされるのかな?

それとも、此所はもう天国か地獄でボクはもう火炙りにされ、召された後なのかな……?

 

………会いたかった。彼女とずっと、隣に居たかった。

でも、それはもう叶いません…。ボクはもう……ボクではなくなった…。

 

「……これで、もう満足ですか?……ボクはこれで…消えるのですか?…」

「いいや…これからだ。ラスカー・アーレストよ」

 

「問おう。貴公はあの世界に戻りたいのか?」

「……!?」

 

予想外の問いかけに……ボクは頭を困惑させる。

 

「……戻れるなら、戻りたいです。けど…ボクにはもう、力なんてないから…戻ったところで…」

 

「間違えるな!!確かに、貴公の力は有能なだけであって完璧ではない!その力を利用し、貴公の外側しか見なかった人間達も居ただろう!!だが、その力を求めた人間達ではなく。貴様自身を求めた人が……貴様が愛していた人が居たのだろう!!」

 

愛していた……人?……ボクを求め、ボクが愛していた……人?…

 

 

 

あら?私は「待って」とは言ったけど、止めろなんて一言も言ってないわよ

 

 

これは貴方のこれからの人生に影響する。だから貴方が自分で決めるべきよ

 

 

ラスカー。私もやるわ。貴方にだけ無理はさせないし…見てるって言うのは嫌なの

 

 

うーん。歳が近かったからかしら…まぁそれに、あの人達にはいろいろとね

 

 

貴方に服を着せたのも、正直に言えば…寂しかったのよ同じ歳の友達が……居なかったから……

 

 

でも、服を着せたり…見守ったり…せめて、何か貴方にしてあげたくてね…

 

 

これから、よろしくね。…ラスカー!

 

 

 

脳内から…魔の力がないのに…アーネアと居た記憶が脳内へ浮かび…蘇ってくる。

同時に……胸がまた、苦しくなるのに……暖かい気持ちになる……

 

 

…………そっか。これは病気なんかじゃない。

昔、お母さん達が言ってた。隣に居て…自然に手を取ってしまう…。

 

 

……私、好きだったんだ。アーネアのことが…ずっと…

…あれ?……うっ…もう全てが遅いのに…涙が溢れて……うう……うあ………

「あいたい……会いたいよ……アーネア…うっ…」

「…それが願いか……たった一つ。貴公をあの世界にへと戻す方法がある」

 

「我の願いを聞け。その願いを貴公が叶えてくれば…見返りとして、貴公の願いを聞こう」

 

「ただし、我の願いは険しく。後戻りは出来ない…そして、一度。貴公には死んでもらう。それでもいいなら…答えを聞こう。どうするかね?」

 

 

私は…ボクは……アーネアのところへと帰りたい。

そして……まだ希望があるなら、生きたい…!

 

 

生きることを諦めないで…!

 

 

それが、どんなに険しくて…イバラの道だとしても…力が使えなくなっても…!

運命で決定されたものだとしても!!ボクは……最期まで足掻きます…!

「……やります」

「…本当にか?此度問う。戻りたいか!!」

「…はい!」

「……ならば!転生するがいい!!」

 

「貴公はこれより、全ての物語の守護者。または物語を犯した存在。世界を見守る者となる!!」

 

「死して物語から外れた命の存在となり、偽りの命で汝は我の願いを叶えるために他の世界へと歩むこととなる!!」

 

「汝、世界を見守る者となり我が手足となって我の願いを叶えよ!誓え!!」

 

「……誓います!」

 

「さらに誓え!!進むことを止めないということを!!全てを受け入れる覚悟があるかを!!」

 

「誓います!!」

 

「ならば我も誓おう!!我の願いを叶えた暁には、汝の世界に戻るという願いを叶えよう!」

 

「では、行くがよい!!汝、罪の火を受け入れよ!!!火を受け入れ、願いを掴め!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 次に見えたのは……また、さっきの現実の世界…

でも今は…少し違った場所に見える。何処か、寂しく…何か足りなくて満ちてない世界に…

 

そして、足元を見ると……薪は燃え上がっており

ボクは少しずつ……火に包まれようとしていました。

 

「ラスカー!!…らすかぁぁぁ………!」

 

アーネアが泣いている…。

………やっぱり、死ぬのは怖いし…。アーネアと離ればなれになるのは…嫌だよ……

これから先、どうなるのかもボクにはわからない……

けど、まだ希望は……あります…!ボクはまだ足掻けます……!……でも……

 

「……アーネア!!」

「…!?ラスカー…!」

 

「……ずっと、貴女のことが…アーネアのことが好きでした……!」

「!…私もラスカーのことが…好きよ…!…今夜に…その事を……告白しようと思っていたわ!」

 

「ずっと、胸が苦しくて…なのに暖かい。私は…貴方にいつの間にか恋をしていた。その恋のせいか…私は貴方に意地悪するにようになってしまっていた…貴方ともっと…隣に居たくて…」

 

「私も…そんな貴女が好きでした。何時も私には意地悪で時には軽口。なのに…優しくて暖かい気持ちが伝わってくる。そんなアーネアが恋しくて大好きで…口では否定してるのに、もっとアーネアに攻めて欲しく…隣に居たかった…それが叶わない恋だとしても…」

 

「叶うわよ!私は他の誰とも婚約をしない!!…なのに…なんで?…ようやく、二人で互いに…隣に居られる存在なんだと…互いに互いを支え合い。初めての友達で親友なのに!!国民からの信頼も得たのに!なんでこんなことになったのよ!?…」

 

「…嫌だ…死にたくないよ……もっと……もっと…アーネアと居たいよ…うっ…うああ……」

「……私も…私も…ラスカーとずっと居たい!…ラスカー、私もそっちに行くわ…」

 

そう言いながら…アーネアは私の所へと…共に罪の火へと飛び込もうとしてくる。

 

「……待って!アーネア!!」

「…ラスカー。嫌よ!……ラスカーだけ…ラスカーだけこんな目に遭うなんて…!」

「それは…アーネアもです。アーネアも…ずっと…耐えていたのですよね…」

「でも…ラスカーが居なくなったら……私は……」

「……生きることを…諦めないで!私を…信じて!」

「…!?ラスカー……」

 

「ボクは…私は…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例え、運命に離されても…わたしは君のところに戻ってみせるから…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だから……信じて!私の事を……!!」

「……わかったわ!!必ず、戻ってきなさい!ラスカー!!」

 

 

ボクは炎と光に包まれ……そして、体は浄化されていった…。

…おかしいな…死ぬことがさっきまでは怖かったのに…

今は……なんだか…嬉しい……や………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なに!?…ラスカーの死体が何処にもないぞ!?…」

 

「探せ!!くそ!…あの魔女め!魔の力を使って逃げたんだな!!」

 

 

アクディロナの国はその日、魔女が逃亡したと騒がしくなり…

その魔女の話は大陸全てに広がっていった。

 

「ブレイズ様!大変です!…ある国で、仲間が火炙りにされたと!…」

 

「名前はラスカー・アーレスト。確か、リベリアの友人の娘です…!」

 

「……ほほう。我らが魔女をまた地獄へと招くか…独裁者どもめ…」

 

「ど、どうしますか!?…」

 

「…仲間を集めよ。その国の大陸へ出発する!そして言え…!革命の時間だとな…!」

 

 

 

 

「フォルデーラ様。あの魔女ラスカーが……火炙りにされたと…」

 

「……そう。あの子…今まで生きていたのね。でも、母親から貰った命も尽きたみたいね」

 

「ただ…死体は見つかっていないとか」

 

「…でしょうね。あの子の魔の力は神と呼ばれてもいいくらいの力よ」

 

「……どうします?…」

 

「私は進むわよ。そいつを気にして部屋の片隅で震えるより、行動あるのみだわ」

 

「だと思いましたよ。では、今日も…やりましょうか」

 

「ええ。…全てをひっくり返すために…ね」

 

 

世界はラスカーが消えたと同時に…様々な人物が動き始める。

そして、それはこの物語も…動き始めるということ…

 

……先程も言った通り、私はただの誰かの視点だけではないとも。

私は気になるのだよ。ただ、彼らの物語が何処に行き着き…どう干渉してくるのかもね。

 

物語はその世界の人の物語で語られる物語もいいものだが

別の世界や時間の物語から人が干渉してくる話も…いいものだろう?

 

今から始まる物語とは…君達にも何かを干渉させながら…進まれていく。

君達にも…覚悟があるかね?まぁ書いてる側からしたら、大変だろうが…

また、これらも生きた物語なのだろう。

 

誰も見てくれなくてもいい。ただ、妄想だとしても生きた彼らの物語がね。

 

………さて、そろそろ私も元の世界の物語へ行くとしよう。

だが…その前に…語ろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さあ。交わることのない時間や物語に干渉し、新たな人と人との物語を進ませようか……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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