スタースクリームの友達のデストロンがめっちゃ待ちぼうけくらってる話。
ほの暗いけどハッピーエンド。
オリ主はネームレス。

スタスクに救いが欲しくて書いた話です。


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若干ホモくさいかもしれませんが友情です。
スタースクリームに救いが欲しくて書きました。女々しい。




スタスクの友達

 今日もスタースクリームは来ない。

 

 

 

 昨日はサイバトロンの副官が来た。「誰かを待っているのかい」 「ええ。もうずっと」 「そうかい。頑張ってくれ」 「ありがとう」そんな会話をしてから、副官は奥の部屋に向かっていった。

 

 

 一昨日はアストロトレインが来た。「よう、久しぶり。お前まだこんな所にいたのか」 「うるせえよウスノロトレイン」 「相変わらずで安心したぜ。じゃあな」 ハイタッチをしてから、アストロトレインは奥の部屋に向かっていった。

 

 

 その前には全然知らないやつが来た。薄っぺらな腕をして二本のケーブルを引きずっていた。「待てよ、お前。ケーブル破損してんぞ。そのインシグニア、デストロンだろ。リペアしてやるよ」 "今" からここはリペアルームになったので、幸いにも器具は揃っていた。「……〈デストロン〉〈じゃなくて!〉〈ディセプティコン軍〉」「そうかいそうかい。まあケーブル出しなって」 リペアが完了すると、フルバイザーのそいつは軽く会釈して、そのまま奥の部屋に向かっていった。

 

 

 

 スタースクリームと最後にあったのはいつだろうか。もう忘れてしまうぐらい前の事だった。でも、途方もない昔のことではあるけれど、最後に会った時の俺たちがどういう時間の共有をしていたのかはハッキリと思い出せた。

 

『そんなにお前もサウンドウェーブがいいのかよ! 俺だって、俺だって!』 『少なくとも足を引っ張るしか能のないどこかの航空参謀と違って、サウンドウェーブはデストロンを裏切らないからな』 『ッ、もういい! お前なんて知らねえ! サイバトロンにスクラップにでもされちまえ!』

 

 その後からずっと俺はここに引きこもっている。今はリペアルームになっているけれど。

 

 

 がちゃり。

 

 リペアルームの随分アナログに立て付けられている扉が開いた。

 

「おや、先客かい。失礼するよ」

 コンボイだった。

「どうも、俺の事は覚えていますか?」 「ああ、覚えているとも。なんだって君は、デストロンの優秀な軍医だったからね」 「それは光栄です」 コンボイとこうもにこやかに会話をするなんて、以前の俺じゃあ信じられなかっただろう。

 

「スタースクリームを待っているのかい」 コンボイは聞いた。「ええ」

 

「きっと彼はここには来ないよ」コンボイは言った。「もちろん、気づいていました。でも俺には今、こうして待つことしか出来ないので」 俺は答えた。

 

「私にいい考えがある」コンボイは言った。実に聞き覚えのあるフレーズだった。

 

「え?」 聞き返した俺に、コンボイは笑って話を続けた。「君が彼を迎えにいってやればいいじゃないか」 それもそうだ。俺はコンボイに礼を述べて、スタースクリームを迎えに行くことにした。コンボイに言われるまで気が付かなかった。俺がスタースクリームの元に行けばいいのだ。コンボイは奥の部屋に向かっていった。

 

 

 コンボイ達が入ってきた扉の向こうには、懐かしきセイバートロンの街が広がっていた。振り返っても、リペアルームの扉だったものはなかった。そして気がつく。セイバートロンが無人だということに。

 

「おおい、スタースクリーム!」

 

 呼びかけながら歩く。人影はない。

 

「おおい、スタースクリーム!」

「おおい、スタースクリーム!」

「おおい、スタースクリーム!」

「おおい、スタースクリーム!」

 

「スタースクリームなら、ここにはおらんわい」

 俺は振り返った。いたのはメガトロン様だった。「メガトロン様。お久しぶりですね」 「うむ。お前も変わらないようでなにより」 満足気にメガトロン様は笑った。

 

「メガトロン様はスタースクリームの居場所をご存じですか?」 「知っておるとも。そうだな」 メガトロン様は腕を真っ直ぐ上に伸ばして空を指した。「この方向に真っ直ぐ進めば会えると思うわい」 「ありがとうございます。それでは、お元気で」 いてもたってもいられず、俺はその方向に真っ直ぐ飛んで行った。空を飛ぶのはいつぶりだろうか。

 

 

「スタースクリームを探しているのかい」 空を飛ぶ俺に話しかけて来たのは白い輸送機の裏切り者だった。「ああ。お前はスタースクリームの親友なんだろう。あとどのぐらいの距離でスタースクリームの場所まで行けるかわかるか?」 スカイファイアーは笑った。「あの部屋を出たのだから、もうあと少しさ。それに、私と彼は道が別れてしまった。親友であったのも過去のことだ。友達ではあるけれどね。きっと今の彼にとって、一番の親友は君なんじゃあないのかい」 俺は礼もそこそこに空を飛び続けた。

 

 

 とても寒い。震えが止まらない。もう随分上へ向かって飛んでいるのに、空は随分先まで広がっていた。この先ずっと無限に空が続いてるのだろうと思ったし、多分それは正解だった。

 

 

 飛び続けてどれぐらいの時間が経っただろうか。寒い。もう手足の感覚も翼の感覚もない。ただ、エネルギー残量の心配はしなくていいことだけは救いだった。

 

 

 寒くて仕方がない。もう諦めて帰りたくなったが、スタースクリームもこの寒さの中にいるのかと思うと、休憩することすらしたくなかった。最も、休憩なんてのは一切してはいなかったのだけれど。

 

 

 空は続いている。見慣れていたはずのセイバートロンの空は、いつの間にか辺境の泥の惑星の空に様変わりしていた。少しだけ寒くなくなった。

 

 

 気が付かないうちに夜になり、いつの間にか朝になる。無限に等しい時間を飛んでいるような気がするが、それでもリペアルームになったあの部屋で待っていた時間よりは随分短いものだった。

 

 

 俺の体はいつの間にか形をなしていなかった。ただの青っぽい光の塊みたいになっていた。それでも、飛ぶことだけは出来たので俺は構わず飛び続けていた。いつの間にか寒くなくなっていた。

 

 全身にペイントを彫り込んだ、きっと地球産の戦闘機が飛んできた。俺の進行方向の先からこちらにむかってくるようだ。よく見るとそれはトランスフォーマーだった。「おおい! ここだ、ここ!」 すれ違いざまに、俺はそいつを引き留めた。

 

「なんだ、お前」 「いや、人探しをしているんだ。スタースクリームというトランスフォーマーを知らないか?」 そいつは悩んでいた。どうやら心当たりがあるようだ。

 

「……ああ、いや、お前か。そうか、そうだな。そのスタースクリームならちょっと違う場所にいるぜ。ここからあっちの方向だ」

 

 スタースクリームは場所を移動していたらしい。そりゃそうかと納得した。常時ソワソワしているアイツが、メガトロン様に場所を教えてもらってから今までの長い間、1箇所にいるはずがないのだ。

 

「ありがとう。いつかお礼がしたい。あんたの名前を教えてはくれないか」 そいつはにやりと笑った。「スタースクリーム様だ。覚えておけ」 そう言って、俺が自己紹介をする間もなくそいつは飛んでいってしまった。あいつの名前もスタースクリームなのか。まあ世間は広いのでそういうこともあるだろう。俺は教えてもらった方向に向かって飛びだした。

 

 

 

「おっ、久しぶり。ようやくここまで来たのか」 「スカイワープ、サンダークラッカー。どうしてここに」 「てやんでぃ、決まっているだろうがよ。お前をリーダーの所に案内するためだぜ」

 

 スタースクリームの部下であり同型機のスカイワープとサンダークラッカーが居た。二人は、スタースクリームならあと少しの場所にいることを教えてくれた。

 

「しかしどうしてこの姿の俺がちゃんとわかったんだ?」 俺は光の塊だった。声だってどうなっているのか分からない。「お前をずっと待っていたからだよ。さっさとリーダーの所へ行ってやれ」 背中を押され、ありがとうと言おうと思ってふりかえったその場所には、もう俺以外誰もいなかった。

 

 

 

 俺と同じ、青っぽい光の塊を見つけた。俺は今出せる全速力でその光の元へ向かった。光の塊はスタースクリームだった。「スタースクリーム!」 表情は分からないはずなのに、なぜか俺にはアイツが泣いているように見えた。

 

「 ぁ……お前、どうしてここに…………嘘だ、オレの……都合のいい夢だとか、幻覚なんだろ……」 「幻覚なものか。お前がいつまで経っても来ないから迎えに来たんだ」 俺はいつの間にかできていた手で、流れていたスタースクリームの涙を拭った。いつの間にか青い2つの光の塊はなくなっていて、そこには俺とスタースクリームがいた。

 

「"かえろう"、スタースクリーム。一緒に。スカイワープも、サンダークラッカーも、メガトロン様だってもう向こうに行ってしまったぞ」

 スタースクリームは首を振った。

「だめなんだ、なんでかは知らねえがオレはそこには行けねえ。それに、まだチャンスがあるんだ」 「なんのチャンスだ」 「機体(からだ)を取り戻すチャンスだ。だからオレはそこに、オールスパークには "かえれ" ねえ」 スタースクリームはそう言って、顔を逸らした。

 

「じゃあ俺がスタースクリームと一緒にいていいか。一人だと寂しいだろ。それにここからわざわざ向こうに行くのも遠くて面倒くさい」 俺がそう言うと、驚いた顔でスタースクリームは聞いた。「お前は大丈夫なのか」 俺は途中まで自信満々に答えた。「大丈夫だ。ここに来るまでの間で、俺のスパークはむき出しの状態でも過ごせるようになった、はず」 スタースクリームは笑った。「はずってなんだよ」「じゃあ絶対」 「お前なあ」 つられて俺も笑った。

 

 

「なあ、スタースクリーム。あの時はごめんな。俺、ずっとお前に謝りたかったんだ。本当にごめん。酷いこと言ったな、俺」

 

 最後の、最期にスタースクリームと会った時のことを、俺はずっと後悔していた。どうして素直にスタースクリームを褒めてあげられなかったのだろう。認めてやれなかったのだろう。

 ずっと、例のリペアルームになった部屋で ───オールスパークの手前でそればかりを考えていた。それだけが気残りで、ずっとオールスパークに還れずにいた。

 

 スタースクリームが言った。

「オレ、サイバトロンとの戦闘の後、お前に謝るつもりだったんだぜ。オレだって、その。言い過ぎたなってずっと思ってた。……なのにッ、お前は! 」 思わず俺はスタースクリームを抱きしめた。見ていられなかったからだ。

 

「そうだな、油断していた俺が悪いんだ。医者で、前線じゃああんまり戦わないとはいえ、まさかサイバトロン如きに遅れをとるなんて、デストロン失格だった。……ずっと寂しくさせて悪かった」 スタースクリームは俺の方に顔をこすりつけた。スタースクリームの頭を優しく撫でた。「おせえ、んだよォ……! ぅ、あ…ぁ」

 

「ごめんな、スタースクリーム。ごめん」

 俺は謝り続けた。そうすることしか出来なかった。俺が寂しさを感じながら待っている間、スタースクリームもまた寂しかったのだと強く感じた。

「っうぅ……オレも、ごめ、ごめんなさい、スクラップになれなんて言ってごめんなさい、ううっ、ごめんなさい、うあっ、うっ」

「大丈夫、本気で言われたなんて微塵も思ってない」

 

 いつの間にか、抱きとめているスタースクリームの肩に水たまりができていた。俺の涙だった。

「すか、っうう、ファイアみたいにっ、お前もオレをっ…………かもって、ぅあ、それで、オレ、オレっ」

「俺はお前を置いてったけれど、ずっと待ってたんだ。それに、スカイファイアーは今でもお前の友達だ。ただちょっと進路が違っただけで」 本人がそうやって言ってたのだから。それを伝えると、スタースクリームはより一層腕に力を込めて俺を抱き寄せた。

 

「ううっ、うっ、ああっ、あっ……」 「……スタースクリーム」

 スタースクリームと俺は、そうやって長い間再会の喜びを分かちあった。

 

 

 気がつくと、俺の周囲は果てしない空ではなく、果てしない宇宙になっていた。そうして、俺たちは果てのない宇宙をいつまでも二人で旅したのだった。おわり。

 

 




ありがとうございました。



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