時はイグニスがノクティスを救出した時まで遡る。
見事に合流した2人は、すぐ様腹ごしらえをして動ける準備を整えた。
腹が減ればなんとやら。それも未知の領域ともなれば尚更である。気も張り巡らさなければならない為、空腹では命の危険も増幅する。
それに、奈落の脱出も含め、ハジメの捜索も進めなければならない。ちょっとした見落としは捜索の難航へと繋がる為、焦る気持ちも抑えて冷静に行動しなければならなかった。
「一緒に瓦礫に飲まれたはずなのに、何で隣に居なかったんだろうな…」
「恐らくだがその瓦礫の崩落の力が激しく、本人の意思とは関係なく離れ離れにしてしまったのだろう。
それか…南雲もお前を探したものの、知らずに段々と離れてしまったか…」
「クソっ…だったら尚更早く見つけねぇと…これで見つかんなかったら呑気に飯食ってた馬鹿野郎になっちまうしな…」
「あぁ。早く見つけて、アイツの腹を満たしてやろう。相当空腹も進んでいる筈だ。
だが焦り過ぎるな。その点はルシスの頃からのお前の欠点だからな」
わぁってる、と少々苛立ちながら応答するが直ぐに冷静さを取り戻す辺り、やはり王としての人生を歩んだ経験が身に染みていると感じさせる。
そしてそんな成長した姿を見て、イグニスも何処か嬉しそうに鼻を鳴らす。
(合流して俺が記憶を取り戻したと知った時は…大変だったな。俺の視力がちゃんとある事を再確認してノクトが泣いて、ノクトが全ての記憶を取り戻した上で折れずに立ち上がった事を知って俺が泣いて…。
そして悲劇を繰り返さないと暑苦しく誓いあって…。
今度は、何も悲劇を勧める事も無くお前を見守る事が出来るのを、この上なく嬉しく思ってしまうのは…あのルシスでの日々があったからこそなのだろうな)
まだ己の鼻には、男泣きを繰り返した証拠が貯まってしまっているなと苦笑する。
それを伝えればキショい。と一蹴されてしまったが、そういうノクティスでさえも、目には垂れ流しの跡がくっきりと付いている。
正にお互い様という言葉にふさわしい状況だ。
緑光石が辺り一面を照らしている影響もあってか、何処かが見えないという状況はない。
しかし、くまなく探してそれでも見つからないということは、やはり先に何処かの奥へと進んでしまったのでは無いかと推測する。
かといって手分けして探すのは危険すぎるので、少しずつ可能性のありそうな所から捜索していく事にした。
その際、どこから湧き出たか分からない、未知のモンスターが飛び出してくる事態が起きた。
レベルや能力的にも、ベヒモスを苦戦まで追い込んだとはいえ、明らかにレベルが高いであろう敵を果たして仕留められるのかとイグニスは慎重に思考する。
此処は相手の出方によって対応を変えて行こう、と指示を出すが、途中まで言いかけた所でモンスター達が一斉にノクティスに向かって進撃を開始する。
まるで弾丸の様な高速な距離の詰め方に圧巻されてしまい、咄嗟に叫びを上げてしまう。
ノクティスも彼なりに応戦し、先程の戦闘の感覚を思い出し、右手に武器を召喚するイメージを強くし、
やがてその手を相対する的に向かって伸ばして一気にイメージの剣を相手に向かって突き出す!
すると弾丸が血飛沫を上げて急停止を行い、動揺を上げる周りを差し置いて、急所近くに刺さった剣を抜こうともがく姿が出来上がった。
しかし王は気を緩めない。すぐ様シフトによって刺さっている剣へと移動してトドメの押し突きをして倒した後、驚き戸惑っている残りの敵を大振りの大剣を召喚して一気に切断する。
気持ちのいい程にスパッと切り落として行くその異様な光景に、警戒のし過ぎだったかと、これにはイグニスも失笑するしか無かった。
「どうなっているんだ…まさかと思うが、ルシスの時の経験値がそのまま今の体に全てのしかかった訳では無いよな…?」
「んや? 歴代の王が言うには、力の一端を少しずつ取り戻していくらしい。本来の力に戻るには暫く時間がかかるらしいけど、巨神の前辺りの俺までは力が戻ってるんじゃねぇかな」
「それにしては都合が良すぎる程に順調過ぎないか…っ…! 」
「あ、やっぱりな。後ろは任せたぜ、イグニス」
進みが良すぎるという予感に的中したのか、ノクティスの背後の気配を瞬時に捉えた軍師は、同じく召喚した双剣を構え、確実に一体一体に致命傷を追わせる程の連撃をしていく。
その嵐のような斬撃に元々疲労困憊だったモンスター達は為す術もなく、踊りを踊るように暴れながら今度こそ消滅した。
「ゆーてお前も感覚戻ってるんじゃいだだだだだだだ!! はにほっぺはひっぱっへんわ!!(何ほっぺた引っ張ってんだ!!)」
「何ででは無い! 当然のように自分の残したものを人に押し付けるな!! 油断するなとあれほど言ってるだろう!」
「わーっは!! わーっはから!! いはいいはい!!」
残党を屠った軍師は激昴しながら王の頬を捻り、観念するまで捻り続けた。
やはり心配をかけさせる事が連続していたからだろう。知らず知らずのうちに彼の過保護の度合いが増していた。
「悪ぃって…次からは油断しねぇから」
「全く…手分けさなくて正解だったと心から思う」
滞在していた空間から、距離も時間もだいぶ経ったことだろう。
訓練の時に訪れた場の何倍にも入り乱れている複雑な地形を、2人はひょいひょいと軽い身のこなしでアスレチックのように進んで行く。
それもやはり、ルシスでの記憶が戻った事により冒険での経験が身体に再び染み込み始めているのだろう。
時々あの時よりも大分軽い、のような余裕の口振りを見せつつ、されど神経を張り巡らせて奥へ、奥へと身体を進ませた。
「そういや、お前嫁さんが居るだろ?
置いてきて大丈夫なのかよ? 行く事も伝えてねぇ感じだけど」
「よ…まだ婚約はしていないとあれほど…。
…そうだな。あの時、2人でその事を話したとはいえ、本当にこの緊急事態が起きたとなれば…彼女はどう思うだろうか…」
「そりゃそうだろ。その様子じゃ、行かせたくないって言われた様だしな。ある程度はな」
進行を止めずに進み続ける彼等だが、気になった事や伝えておきたい事は口に出しながら捜索を続けていた。
ノクティスは、イグニスが愛子としばしの別れをしてここに来た事を気にしている様で、またイグニスも、実際の所彼女はどうしているのだろうかと不安にもなっていた。
「…必ず帰ってくるとは約束したんだろ? だったら元気な顔を見せれば良いだけだと思うが…分かってても申し訳なさがあるのか?」
「…そうだな。だが、お前の言う通りだ。開き直りの様にも感じてしまうだろうが…それでも、悲しませてしまった分も帰った時に彼女の隣に居ようと思う。
…我儘だとは思うが…俺はお前との友情も、彼女との日々も、どちらも手放したくないからな」
「…はぁ!? だからそういう事を面と向かって言うんじゃねぇっつーの!! ///
恥ずいんだよ全く…!
…まぁ、それが分かってるなら大丈夫なんじゃねぇの? 帰った時、先生の我儘沢山聞いてやれよ?
…泣かせたりなんてしたらどうなるかは分かってるよな?」
「お前は愛子先生の父か何かなのか!?
…安心しろ。愛子先生を泣かせるつもりは無い。生涯を尽くして愛すつもりだ」
「ほぉ〜? 愛子 先 生 ね? それにどのぐらい愛すつもりなんd」
「べらべら喋ってないでとっとと歩け腑抜け王!!」
羞恥心を、羞恥心を煽る発言で対抗していくノクティスに耳まで赤くし、我慢の限界に達したイグニスは勢い良く王を蹴飛ばす。
これが臣下達の前であったら即斬首刑なのだろうが、生憎と今は王の責務から開放された親友である為、何より人の目が無いため喧嘩に発展するだけで終わった。
「…おいイグニス」
「…なんだノクト。もう冷やかしは受け付けんぞ」
「ちげぇよ。…なんか水の音が聞こえねぇか?」
「水…? …確認だ。前に進むぞ」
ノクティスのふとした注意により、水のようなぴちゃん、ぴちゃんと鳴る音を察知した2人。
その音はどうやら前からしていた様だが、怒り声を上げながら進んで行くうちにどんどん大きくなっていったようだ。
その音だけを頼りに前へ前へと進むと、そこは2人が拠点としていた所のように開けており、その奥には小さな水の滝が姿を見せた。
そこから染みた水が天井少しだけ這い、先程の音がしていたようなのである。
「…ふぅ…また振り出しか」
「…進んでいるだけマシだと思え。まだまだ道のりは長そうだ。気を抜くなよ」
そういうものの、少しだけ緊張が解けた2人は、少々その場に座り込んでしまう。いくら先頭の経験が馴染んできたと言っても、此処での彼等はただの学生がいきなり力を貰った状態。
身体がまだ全ての力を制御できるまで育っていないのだ。これこそが正に、夜叉王がノクティスに忠告した理由。
「…それにしても、此処は大分広いな」
「あぁ。所々傷のようなものがあったり、何かが強引に空間を広げたようにも感じるが…
…傷?」
「…!! イグニス、伏せろ!!」
そして、イグニスが空間の違和感に疑問を感じた直後だった。ノクティスの怒号と共に繰り出されたシフト攻撃が、イグニス…の背後へと飛んでいく。
鉱石に弾かれたような、鈍い音が響き渡る。
『グルゥ…グァァァァァァァァァァァァ!!』
獲物としていた人間に初手を持ってかれたのが余程頭にきたのか、怒り狂った様に雄叫びを上げる恐竜の様な怪物が、爛々とした眼で食糧を見据える。
「スモークアイが現れた時点でこうなる事は分かっていたが…やはり何故ルシスの怪物が姿を表しているのかを調べる必要がありそうだな」
「あぁ…にしても最悪だ。こんな所でバンダースナッチに出くわすなんてな…」
バンダースナッチ。巨大な双牙を用いて、怒りによって戦闘力を倍加させるまさに凶暴な猛者。
かつてノクティス達の前に3度も立ちはだかり、骨を折らせ続けて来た厄介極まりない相手である。
本来の力が覚醒したノクティス達にはもう到底及ばない相手ではあるものの、現在の不完全な状態での戦闘はかなりの劣勢を強いられるだろう。
「…イグニス。俺が引き付ける。その隙に足を狙え」
「了解だ。残りの必要な指示は俺が出す」
「っしゃ! 来いや牙野郎!! 俺が相手だ!」
ノクティスが孤立したのを確認したバンダースナッチは、好機とばかりに喰らい尽くそうと突進を始める。
突進しか頭にない馬鹿しかいねぇのか、と悪態を付きつつ、接近してきた頭を剣で叩きつける…ということはせず、攻撃を受け止める形で凌いだ。
1つの剣を持つ青年に怪物が気をとられていると、
背後から接近する気配を感じ、下半身の神経に力を入れ始め、自らの尾を振るう。
「…そこだ!」
その猛威に背後の気配、イグニスは直撃する数距離手前で体を極限まで屈め、魔の尾を躱し目的の足を捉え、交わる2つの剣の斬撃を撃ち込む。
が、
「…ぐっ!?」
が、鉄鉱石に一撃を加えたような鈍い音が響き渡り、イグニスは両手の危険を察知していち早く退却した。
「どうやら、ルシスの頃よりも外殻が発達しているようだな。前ではこんな事は有り得なかった」
「堅くて刃が通らねぇとか、詰んでんじゃねぇか!」
冷静に分析を立てているが、イグニスはかなり動揺を見せていた。親友の仲で無ければ気が付かない些細な余裕の変化だが、それでも状況的に最悪なのは確かである。
連続で攻撃を加えるにしても、傷一つつかないのならどう対処せよとの事だ。
味方は焦るばかりだが、一方の敵は一切の妥協も容赦も無いようだ。
隻眼の悪魔 スモークアイのようにグルグルと嬉しそうに喉を鳴らしながら、彼等が苦戦する姿を愉悦する様に反撃を仕出していく。
「! イグニス! 背面に飛べ!!」
「!」
ノクティスの助言に操られるような速さで、イグニスは途端に背面へと後退していく。
前に焦点を合わせると、パックリと咥えられてしまうのでは無いかと言われる程に口をあんぐりと開けたバンダースナッチが急接近していた。
ノクティスの指示によって捕食を免れたイグニスだったが、咄嗟に反応してしまった為に背中を地面に打ち付けてしまう。それにより、少しばかり動きが鈍くなってしまった。
「…っ!」
すぐに捕食しても逃げられると判断したのか、バンダースナッチは器用な足を軽々と持ち上げ、イグニスを潰そうと一気にスタンプを繰り出していく。
「させねぇ、ぞ!!」
その魔の手はノクティスの剣戟によってまたもや阻まれる。足に向かって懇親の力を込めた突きを放たれ、その威力は通らずとも狙いを不安定にするには充分すぎたのだ。
が、その代償を寄越せと言わんばかりに、スタンプに失敗した足を中心として、大きな回転を起こし再びの尾による攻撃をし、ノクティスを怒りのままに吹き飛ばしていく。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
力のかかる方に吹っ飛ばされていくノクティスは、やがて壁に激突しイグニスとは比べ物にならない衝撃を喰らい崩れてしまう。
ガラガラと音を立てる壁の残骸に埋もれ、その光景に愉悦感を上昇していくスナッチは、その有様を人目見た後に喰らってやろうとの様に崩落した壁の一部へと接近する。
「グルァァァ…
グル?」
自慢の牙を使い、岩をせっせとどかしていくが、そこに目に映ったのは、もぬけの殻となった崩落した岩のみ。
呆けた様に佇むことしかできないスナッチ。
その少し離れた所にて。
「…ふぅ。助かったぜイグニス。お前のスキルのお陰だな」
「あぁ。ルシスの時から仕組みは分からないが、便利なのは変わらないな。これは」
かなりの距離を開けられたはずの2人が、丁度スナッチから見えない位置に合流していたのだ。
その原因は、イグニスの1つのスキルにある。
その名は、ギャザリング。
そのスキルは、一定範囲内であれば、どれだけ仲間が離れても呼びかけ1つで集合させる事が出来る隠れチートの様なスキルであり、軍師である彼にとってはうってつけなのだ。
「…だが、どうする。攻撃が通らない現状で、これ以上の戦闘はかなり危険だ。こんな所でくたばる訳には行かないぞ」
「そりゃコッチも同じだ。まだまだやりてぇ事いっぱいあんのに、こんな所で無情に殺されてたまるかよ」
絶体絶命の時の奮起の言葉なのであろうが、その言葉はイグニスの胸にはしっかりと刺さった。
ノクティスは確かに王の使命を全うしたが、それは聞こえの良い部分ではそうなのかもしれないが、
悪く捉えて考えると、星の病を抹消する為の生贄として理不尽な運命に左右され、運命に殺されたと言っても過言では無いのだから。
そしてそこまで思い浮かべた上でイグニスは再思考する。これ以上、理不尽な猛威にノクトを晒してたまるか。と。その為にここまでやってきたのだ。泣き言を言うよりも、力を奮え! と。
不安に駆られていた自信を奮い立たせ、状況を冷静に判断しようとしている王に、即座に考えた作戦を話す。
「…ノクト。魔法精製は使えるか?」
「あ? …まぁ、今の俺にどれくらいの威力が作れるか分からねぇが、魔力が続く限りは出来る」
「あぁ。それなら大丈夫だ。…少し頼めるか? それまでお前の安全は俺が守ろう」
「はっ。今更何くせぇ事言ってんだ。俺はお前の親友だ。地獄の果まで付き合うっての」
隠れ、闘志を掲げ始めた2人は、反撃の狼煙を上げる。
やがて、とうとう2人の気配を察知したスナッチが、見つけたぞと威圧をかけて今度こそはと暴れ回る。
今までとは比べ物にならない程に怒り狂っているようで、今までの遊びのようでは無く本気で殺しに来ていることが見て判断できる。
「…数秒だけ遊び相手を努めよう。ついてこい!」
『ガルルァァァァァァァァァァァァ!!!!!!』
もう遊びは充分だ。殺してやる。確かにそう聞こえた。
が、イグニスは恐れない。
もう恐怖を感じ、不安で押しつぶされるのは嫌という程味わった。
ならば、どのような策であろうと、生きる為に尽力する。
「南雲。…お前の武器、最大限に活かさせてもらうぞ。
…雷よ纏え!!」
瞬間、イグニスの装備していた双剣が、緑黄の光を灯し始める。
まるでイグニスに共鳴している様にバチバチと音を立てるその剣は、彼等を痛めつけた獲物を灰にせんと、その電力の放出量をあげている。
それだけで終わればいいものの、イグニスの身体も悲鳴をあげる。ガクガクと膝が笑いだし、今にも地面と一体化しそうな程にくらくらしている。
「…っ、やはりまだ今の俺には強力過ぎる…か…!
自らにも負荷がかかっている…!」
突如として現れた雷に少し怯えた様子だったバンダースナッチだが、敵の弱った様子を見て一切の怯えを無くしてしまう。喰らってしまえばいいと、ひき肉にしてしまおうとその牙を向ける。
しかし、その判断は数分後直ぐに相応しくないと知る事になる。
「ハァ!!」
雷の力を持った剣から放たれる一撃一撃は、やはり通じる事は無いのだがそれでも、直撃する度に呻き声を上げている事から、バンダースナッチは雷に弱いのだろう。
しかし、決定的な破壊力が足りず、どうしても倒すまでは至らない。
が、そんな事は百も承知のかの如く。
イグニスは雷の舞を止めることをしない。
もはやがむしゃらに攻撃を出すスナッチをギリギリの位置で全て躱し、そのお返しに一つ一つの電撃を手、足、背、顔、牙、尾全てに確実に当てていく。
するとどうだろう。堅く、攻撃が通らないはずのバンダースナッチの外殻が段々と剥がれ始めたでは無いか。
どうやらあの外殻は雷に滅法弱いのだろう。だから雷を察知した時、怯えを見せたのだ。
「…今が好機と見た!」
イグニスは隙を逃さない。剥がれ始めた外殻に集中し皮を剥いでいく様に、周辺の外殻をひっぺがしていく。
その度にバンダースナッチは悲鳴のような唸り声をあげ、もう先程の愉悦を出す姿はどこにも見られなかった。
(だが、やはり決め手には欠ける。
…頼んでいて勝手だが、早く完成しろと思ってしまうのは…俺達が平和を慣れ親しんだせいなのかもな)
「イグニス! 出来たぞ! 受け取れぇぇぇぇぇぇ!!」
タイミングを見計らった様に叫びを上げたノクティス方向から、何かを投げられる。それは正にイグニスが頼んだものその物だった。
「でかしたノクト!
…さぁ、仕上げだ!」
「巻き込まれんなよ! それは今上げられるだけ威力を上げたサンダー…サンダラだからな!
舐めてるとお前まで丸焦げになるぞ!」
「あぁ。そんなヘマをするつもりは、ない!!」
イグニスはその忠告を聞き入れたと同時にそのサンダラが封じ込められている瓶を全力投球で獲物へと投げる。
バチバチでは済まないほどの、ドルドルといったうねり音を上げるくらいの雷が漏れだしているその瓶に、
先程の忠告の意味をすぐさま理解した。
そして、全体力を行使して体勢を崩すことなく、また背面へと飛び引く。今度は倒れる事もなく退避を成功させる。
そして、相手の外殻に激突したその瞬間。
『ギャギャギャギャギャギャギャギャァァァァァァァァァァァァァ!』
漫画によくある骨まで見えるような感電を起こし、バンダースナッチが雷の力に翻弄される姿の出来上がりである。
ただの攻撃ではビクともしなかった鋼鉄の鎧でも、電気の前には為す術もない様だ。
『ギャ、ァァァ…』
やがて、抵抗を止めたバンダースナッチは恨みの視線を二人に向け、静かに倒れ伏した。もうスナッチには暴れる力も残っておらず、そのまま意識を永遠の闇の中に彷徨わせたのだった。
「…終わったな。ノクト」
「あぁ。手強い奴だったぜ全く」
再び合流した2人は、自然な流れで手を掴み合う。
記憶を戻して再会してすぐとは思えない協力を見せた2人は、握手という固い繋がりで友情を確認する。
戦闘を終えた2人はすべきことを済ませ、滝のように流れる小さな水の正体を突き止めた。
この滝は先程ノクティス達がいた場所と繋がっており、更に下へも続いているということだ。
此処から下へ行くものなら、最短ショートカットが出来そうであるが、あまりおすすめが出来ない事は承知の上である。
先ず、次こそ絶対的な安全があるとは限らない。死ぬ事は無いだろうが、無事に辿り着くとも難しいのだ。
もう1つは、仮にハジメがどの段階まで潜ってしまったかによって、この行動が無謀か最善かが変わるのだ。
するにしても、選択は慎重にしなければならない。
「んー…下へ続いてるかもしれないけどなぁ…アイツが何処まで言ってるかが分からねぇと…」
「…!! ノクト!!」
彼等を休ませる術はこの迷宮には無いらしい。
バンダースナッチの消息を知らせたのか、それとも野生の性なのか。先程のバンダースナッチの群れが押し寄せてきていた。
「…はぁ!? なんでこんな時ばっかり群がるんだよテメェら!!」
「此処は言わば敵の巣窟のようなものだ。俺達のような異分子が休める場所は無いのだろう」
そうだ。お前達はおれ達の獲物だ。大人しく喰われろ。
先程のバンダースナッチの様な獰猛な姿勢の大群が、そう言ってるかのように2人を追い詰め始める。
「どうする。サンダラを酷使して来た道を振り切るか?」
「それでもいいが、俺達が巻き込まれるぞ? あの威力じゃ、この場が持つとも限らねぇ。
シフトを使ったとしても…切り抜けた先で先制されたらタダじゃ済まないかもな…」
もう、選択肢はたったひとつしか残されてないようだ。
強行突破しても、自滅を辿るだけ。
そもそも、この数は無謀ともなる。
「…なぁ。ノクト。此処で言うのも何だが、この階層に南雲がいると考えられるか?」
「いや、この階層は…気配も微塵もなかったからな…よく良く考えれば…。
でもよ、もしも降りた先よりも上に居たとしたら、かなりの痛手じゃないか?」
「だがノクト。此処で死ねば、救えるはずの南雲にも手が届かない。ならば、手段は限られるだろう」
「…そうかよ!」
ノクティスはおもむろに立ち上がり、イグニスの手を取って水場へと走り込む。
「イグニス! 此処から飛び降りたら、上も下もくまなく捜索するからな。もしかしたら今よりも過酷な状況になるかもしれねぇ。それでもちゃんと着いてきてくれんのか!?」
「当然だ! お前の暴走に幾らでも付き合ってやるさ。
南雲を助けてアイツらと再会して、あの平和な世界へ帰るぞ!!」
「おうよ!!」
彼等は意を決して、水の中へと飛び込む。
その落ちる先に僅かな希望をのせ、最前の選択へとなるように。
が、
「ちょっと待てこんな過酷だとはおもわなぶぶろろろろろろぶぁぁぁ!!??」
「イグニスぅぅぅ!!
やっぱ強行突破した方がマシだったかぶるるるるァァァァァァァァ!?」
水の勢いが強いのと、落下速度が早すぎるののダブルパンチにより、絶賛もがき苦しみ中だった。
…果たして無事に辿り着くのやら。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「…ハァッ…ハァッ…」
大きな球体の結晶の光に照らされた一人の男が、今にも消えてしまいそうな息を上げながら苦しみと戦っていた。
その姿は見るも無惨で、左肩から先が無くなっており余程の何かに襲われたようだ。
その表情は怯えに染まっており、絶望しか映さない瞳で結晶を見つめるだけだった。
「この…まま…死ぬのかな…? まだやりたい事とか…いっぱいあったのに…。
しら、さきさん…イグ、ニスせん…せい…グラ、ディオラスせんせ…い…プロ…ンプト…せんぱ…い…
ノク…ティス…せん…ぱい…
誰か…助けて…」
『見るも無惨だな?お前』
(…誰? それに…あれ? 此処は…僕はさっきまで洞窟の穴の中にいたはず…じゃあこのふわふわしたオーロラみたいな場所は…
あれ…? あの姿は…僕?)
『あぁ。僕の姿は確かにお前だ。
さぁ、狂ってもらうぞ? それがお前の運命なのだから。南雲ハジメ』
イグニスの料理スキルは少し制限があり、オルクスに来てから覚えたレシピ、かつそれを独自調理込みで完成まで作れる料理しか、スキルが発動しないとなります。
彼は料理人の職業では無いので、このぐらいのスキルの方が割にあってるかと思ったので、こうしました。
また、ハジメがイグニスに作った武器は、エレメンタルダガーのようなものです。エピソードイグニスをやった人ならわかると思いますが、一応説明すると、
ダガーが属性に応じてに特化しており、炎、氷、雷の属性を使い分けるダガーです。
ノクティスの指示と、プロンプトとハジメの技術によって作られました。
さて、ハジメの元に現れた謎のドッペルゲンガー。
正体は!?
番外編で、転生後のルシスの皆とヒロイン達の出会い(+α)を書こうと思っていますが、特に見たいのは誰でしょうか。人気順に書いていこうかなと思います。
-
プロンプト×優花
-
グラディオラス×雫
-
イグニス×愛子
-
アーデン×恵里
-
ノクティスとの日常side