選ばれし真の王と仲間達で世界最高   作:ゴアゴマ

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誠に申し訳ございませんでしたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

敢えて言い訳は致しません…。

ブランクもありますが、お久しぶりの続き、どうぞ…。


怒りと始動

不穏を残して遠ざかる背を見送る事しか出来ないまま、2人はその場に佇んでいた。

焦りを含みつつ必死に背を追う少女の事も、それすらも気にかける事のなく進むハジメも、止めることなど出来ないままだった。

期待していた再会がこの様な複雑なものになってしまったのだ。それで思考が追いつく事の方が中々に難しい。

鼻を刺激する鉛の匂いも、辺りに響き渡った後の銃声も、

それが砕いた音さえも。今の彼らには何も届くものにはならなかったのだ。

 

「…ノクト…大丈夫か?」

 

銃声の反響が完全に消失した頃、同じく思考処理が追いついてきたイグニスが、未だに微動だにせずに固まる友に声をかける。

声をかけた先の彼は、それに少しの動きも見せずに感情の分からないままに相槌をうった。生気のない、からくり人形のようにゆっくりと、滑りの悪い動きで首を振るその姿からはとても大丈夫、の言葉が当てはまる様子には見る事が出来なかった。

 

「…ノクト?」

 

まだ思考が追いつかないのだろうか。それとも、心の傷が広がってしまったのだろうか。その答えを探すように彼の顔を覗こうとした。

 

しかし、背後から近づく地を蹴り飛ばすリズミカルな音が、それを許す事をしなかった。直ぐにその正体に勘づいたものの、警戒心がイグニスの視線と得物を後ろへと向かわせてしまったからだ。

ふとした警戒心とは裏腹に、そこには2羽の可愛らしいくりりとしたお目目の鳥達が到着っとばかりに羽を広げていた。

 

「…ああ、無事に帰ってきたようだな。流石に疲れただろう。ここで少し羽を伸ばしてから行くか?」

 

眼鏡をかけ直しながら、仕切り直しの機会を作るとばかりに切り出したアイデアに2羽は大袈裟に羽根をばたつかせる。まだまだ行けると言いたいようだ。

 

「元気がいいのは良い事だが…生憎と今は身体と共に精神を休めなければならない時なんだ…特にノクトの」

「イグニス。そいつらの意思を尊重してやれ」

 

イグニスが休息の理由にもしていた男は、言葉をさえぎりそう提案する。未だイグニスからは顔が見えない。ただ、暗いかどうかすらも予想が出来ない立ち姿をしていた。

 

「しかしノクト…勝手にお前の気持ちを想像するのも失礼な話だが、先程のは大分困惑したのではないか? まさか南雲があそこまで変わっているとは思わないからな…」

 

「まぁ驚いたっていやぁ驚いたけどな。んでも、それ以前に余計ほっとけなくなったしな。イグニスだって、俺の気持ちを組んでくれてるからの提案であって、それがわかって無いわけじゃねぇだろ?」

 

 

「…まぁな。

 

俺達が取りこぼした魔物にあの弾丸が命中したのは偶然とは思えない…だが、もし本当に孤独の時間が長かったせいで南雲の考え方に変化が起きてたとするのなら…」

 

「そん時はそん時だろ?」

 

「っ」

 

振り返ったノクティスの瞳を見て、イグニスはそれ以上の提案を切り上げた。

 

この迷宮に来てから、イグニスは何度も息を呑む事があった。

それは今のように、ノクティスの些細な変化によるものである。

 

ルシス時代のノクティスは、良くも悪くも抱え込む性格であった。

その為に、他人からどう捉えればいいか分からない罵倒があった際、衝突し、それすらも悩みに抱えてしまう様な。彼からすれば放っておけない事だったのだ。

しかし、ここに来てからは出来事の前やその先を見据えているかのような振る舞いを見せている。

 

「ハジメにあっち行けと言われて、まんまと引き下がる程俺はやさしくねぇし、なにより他人に拒絶されるのが怖くて王様が務まるかっての…まぁ、もうそもそも王様でもなんでもねぇんだけどな」

 

そう、笑いながら既に言葉に出さずとも自信を感じさせるその様に、イグニスはここに来てから何度目か分からない決意を抱いた。

そして2人と2匹は再び潜り出す。

 

全ては、南雲ハジメの本心を聞くために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銃声が鳴り響く。打ち砕かれていくモンスター達の数は下に進むにつれ、増大していく。男の負の感情を表すように。

 

 

 

「ハジメ…良かったの…?」

 

ぶっきらぼうに足を進める男に、黄金色の少女が小さく呟く。

足取りは未だ弱まらず。それは苛立ちを表しているかのように。何かをもみ消すかのように。強まっていく。少女の疑問を聞かなかった事にする為かのように。

 

「…ハジメ…?」

 

「…あぁ。良かったんだ。あれで良かったに決まってる。そうであるはずに決まってる…!!」

 

先程の行いを正当化せざるを得ないように頭を掻きむしる男…ハジメを、

助けられた少女…ユエはただ、募り行く不安を抱え見てる他無かった。

それもそのはず。ハジメは、永遠に続くと思われた封印を、自分を解き放ってくれた、温もりを感じた一人の男。

 

それが今の彼から感じるのは、なにかに囚われているような、何かを見失っているような喪失感。彼が過去について話した時に感じたその不安は、先程の二人の男との再開によってリミッターが外れるかのように増えてしまったのだ。

 

「…ほんとうに?」

 

「だからそうだって言ってるだろ…!アイツらに助けられる道理なんてこれっぽっちも…」

「でもハジメ…苦しそう…」

 

「…っ…」

 

「…他の人の事を話す時…ハジメはそんなに気持ちを乱してなかった…けど、あのノクティス…って人達の時だけ…ハジメは取り乱してる…」

 

「…」

 

地面を抉る音が消えた。されども、不安は止まらない。止まろうとしない。振り向いたその瞳に光が灯っていなかったからなのか、ハジメの異変の真相が掴めないからなのか。

 

「…それにハジメ…私は」

「もういいだろ…!! その話はもう」

 

 

 

しかしそれ以上、何も進展等は起こらなかった。いや、全てをかっさられてしまったのかもしれない。

 

 

「クエエエエエエエエエエエエエエエ!!」

 

「ちょっ待て! ブレーキ! ぶれーきぃぃぃぃぃぃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「…は?」

「…えっ…?」

 

ユエの目には、目の死んだハジメでは無く、黄色い弾丸が接近し…

 

「どぶぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!??」

 

ていくだけではとどまらずに不安の種を逆くの字に曲げつつ壁に吸い込まれていく光景が映し出されてしまった。

余りにも訳の分からない、そして間抜けすぎる絵面を目の当たりにして、ユエはどこかほっとしたような、また別の何かが沸きあがる予感がした。

 

(…どうしてだろ…少し気持ちが安らいだのに…物凄く安心出来ない…)

 

「…カッコつけといてこのザマか…まだまだ俺がついていないと駄目だな…俺達の大将は…っっっはぁ…」

 

白い目を向ける仲間の上に跨った男がついたとてつもなく巨大な溜息に、ユエは同情すると共に、何となく湧き上がった新たな不安の正体が分かってしまったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いきなり事故起こすとかやっぱ殺しにきてんのか!? あ゛ぁ゛!?」

 

「クエエエエ…クェ! クェェェ!!」

 

「いででで分かってるっつの! 俺が悪かったからてか今から謝るから! マジで悪かったハジメあだだだだだだだだ!!! ごめんなさい! ごめんなさいって言えってことだろ分かったからつつくなぁぁぁ!!」

 

なんとか壁と一体化していた二人と1羽を生物に戻すと、ユエと話していた時よりも狂ったように叫び散らしながら非難するハジメと、すっかり縮こまっている主犯2人という、母と子供達のような図が出来上がっていた。母の方はゴリゴリの極道が入っているようである。ドスが入りすぎて喉がイカれかけていた。

 

「ていうか異世界で衝突事故とか意味が分からねぇよ!! どんな速度で走ってきたんだその鳥は!!」

 

「悪ぃって…追いつかねぇと思ってスピード上げた途端に見つかるもんだから…」

 

「いやそこじゃねぇ!! どんなバケモンみてぇな脚力してんだってってんだよ!!!!」

 

「クェェ!?」

 

「お前は黙ってろぉややこしくなるだろうが!!!」

 

 

「…ほっといていいの…?」

 

「割り込んでも頭痛に悩まされるだけだ…」

 

「…ん…そんな気がしてきた…」

 

遠くから見守る…ことを放棄したユエとイグニスは事情抜きに説教を続けるハジメが静まるまで、心ここに在らずを実現することにしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は遡る。

グラディオラスの奮闘により、休暇を与えられた生徒達は、抜け殻のようになっていた。

原因はただ1つ。オルクス大迷宮での1件である。

死ぬかもしれない恐怖。何もかもが通用しない現実。落ちた仲間達。

そして、次は自分達が…と考えてしまう絶望。

それら全てが、体を動かす気力さえも奪っているのだ。

一部を除いては。

ステータスプレート公開時の演説者である園部優花を含める、戦争反対派と勇者パーティ、グラディオラスとプロンプト、そして、教師である畑山愛子である。

 

戦争派閥と愛ちゃん派閥という大まかに分けて説明をすると、先ず、

勇者率いる戦争に参加する者達は以前と変わらず、訓練に力を注いでいる。

力をつけ、一刻も早く世界を救うべく奮闘している。

というのはあくまで勇者個人が掲げている目標であり、深く掘り下げると、この派閥は再起不能メンバーよりも問題を抱えていると言っても過言ではない。

何故か。連携、思想、行動理由。全てが見事にバラバラすぎるのだ。

先程も説明した通り、世界を救うという目標を掲げ、というかそれしか目に入っていないのは勇者だけであり、そのほかのメンバーは生きるためやら、目的すら謎の者すらいる状況。

 

更には、性格やらを差し置いて、未だに心にとてつもなく恐怖を抱えている者すらいる。

復帰したのは早いが、崩れるのも時間の問題と言えるだろう。

 

次に、愛ちゃん派閥。

作物系において無類の強さを発揮する天職持ちの愛子は、農地開拓の為に戦場とは全く無関係の場所に移されていた。

それを上手く利用し、現時点で戦争、戦闘事態に反対意識を持つ生徒達は

愛子に付き添う事にした。表を戦争に参加する事とするならば、裏で情報やら別の方法を探り、元の世界に帰る方法を探す決断をした。

此方は全員の目標が一致している他、ハジメ達の奈落行きを知らされても尚、すぐに行動を再開させた愛子を筆頭としている。約束の効果は偉大なのだろうか。

団結力やリーダーの頼りやすさ的には、後者が安定している。しかし、圧倒的に愛ちゃん派閥は人数が少ない。

その為、満足のいく成果は未だに出ておらず、どちらも苦しい状況下に置かれていた。

 

では、残る2人は何をしているのか。

 

「…皆。確かに俺達はあの迷宮でとてつもない挫折を味わった。だけれど、何時までもこうしている訳には行かない。その間にも、世界の平和がどんどん失われていくんだ。だから、武器を取るんだ」

 

「あのさぁ…何度言えばわかるんだよ君は。こんな状態で武器を取らせても死ぬだけだってば! 教会だけじゃなくて、君まで強制させてどうするんだよ!」

 

「でも、このまま何もしないのがいい訳じゃないでしょう。俺達は戦うことを決めた。だからこそ、何時までも恐怖に怯えたままじゃダメなんだ」

 

「恐怖っていうのは鼓舞するだけで取れるようなそんな甘いもんじゃないんだけど!? あぁもう、どうしてこう話を聞かない奴らばっかりなんだよ!」

 

プロンプトは、怯えたままの生徒達をあらゆる脅威から守っていた。

当然ながら、この怯えた生徒達の事を闘わせたい教会側はそのままにしようとはしなかった。匂わせる形で何度も復帰を促してきたのだ。

最初は愛子の猛抗議のおかげもあり、暫くは息を潜めていたものの、愛子達が本格的に別行動を取り始めたあたりから、また圧力を強め始めて来ていたのだ。

それだけだったらまだいいのだが、流石は1度、全員に戦うことの希望を抱かせたトップと言うべきか。

勇者の中で、クラスの中でのあの挫折は既に過去のこととなっていたのだ。つまり、なにかきっかけさえあれば復帰出来るはずだと。決めつけもここまで来れば素晴らしい。

 

正直、プロンプト自身もその場気分で戦争へと覚悟を示していた生徒達に対して、良い感情を持っている訳では無い。寧ろ、その挫折は予想出来たのに対処出来なかったことだとすら感じている。

 

(にしたって、コイツらの強制もあまりにも酷すぎる…もう、どうしたらいいのさ!?)

 

板挟みをモロに受けている彼は、悲鳴すらあげられない状況だった。

 

どうするべきかと…頭を回そうとした時である。

 

「お前ら…何様だよ」

 

もう1人の教師が、動き始めた。

番外編で、転生後のルシスの皆とヒロイン達の出会い(+α)を書こうと思っていますが、特に見たいのは誰でしょうか。人気順に書いていこうかなと思います。

  • プロンプト×優花
  • グラディオラス×雫
  • イグニス×愛子
  • アーデン×恵里
  • ノクティスとの日常side

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