風花雪月同様、時間が空かず、全く投稿する事ができない状態でした。
空いた時間にどんどんと話を進めていこうと思いますので、よろしくお願いします。
では、どうぞ。
「にしてもさ、急すぎない?いきなり明日って言われても困るでしょー」
「仕方ねぇだろ。言われちまったもんはどうしようもねぇし」
何時もと同じ様に、また訓練終わりの夜がやってきた。
それぞれ疲れきった身体を休め、不安と新しい事への期待を込めて早くに眠りにつく者もいたが、某4人はその中の一人の部屋に集まり、明日に向けての会議を始めていた。
というのも、今回の訓練終了後そのすぐ後に、メルドから
「明日から自主訓練の一環として、オルクス大迷宮へと遠征に向かう。まぁ、明日頑張れるだけの気合いは補充しておけってことだな! てことで、今日はゆっくり休めよ!」
と言われたことをきっかけに、この4人はこの様な集まりをしなければならなくなったわけなのだ。
何故か。それはもう、一部を除く生徒達を思い浮かべればすぐに分かるであろう。
「ね、イグニスはどうだった。やっぱりここに集まる前、他の子達の様子とか気になったでしょ」
「…あぁ。皆が皆、特に天之河を中心に浮かれている様子だったな。それ以外は不安で押しつぶされそうな表情だったりと、喝を入れたくなる程に好ましくは無かったな」
簡単な話だ。冷静に判断して対処出来る者が自分達位しかいないのである。
勿論、自分達の全てを過信している訳では無い。
只、周りが不安定な状況の中、判断を全て彼らに任せ、
ただ従って動くのには余りにも危険過ぎる。
今の生徒達の様子は、丸腰で火の海へと飛び込む阿呆のよう、飛ぶ羽をなくした鷹のようだと、危なっかしく、又、脆く感じたのだ。
「どうする? 俺達で化物共を薙ぎ払って危険から遠ざけるか?」
「いや、それは得策とは言えない。過度な突撃は命の危険もある。それに、これは訓練だとメルド団長殿が言った筈だ。ある程度獲物を残しておかなければ、あの子達の成長にもならない」
「じゃあ、いっその事後方で待機とか?」
「そりゃお前の願望だろうが!」
「うっさいな! 怖いものは怖いんだよ!」
「じゃ、大剣使いの1番強い俺が薙ぎ払ってくるってのはどうよ」
「人数がお前だけになっただけで、根本的な案は先程と変わっていないだろう。そもそも、俊敏性の低い上に大剣で立ち回ると言うのは、囲まれて袋叩きにされても文句は言えな」
「あぁ分かった俺が悪かった! いちいち言い過ぎだろうがお前は! 気にしてること刺してきやがって!」
「やっぱりグラディオは脳筋なんだねぇ」
「あぁ?お前のひ弱思考よりマシだろうが」
「慎重って言ってくれないかなぁ!? 脳筋ゴリラより柔らかい思考回路です〜!」
「誰がゴリラだヒヨコ頭!」
「うっさいゴーリラ!」
「…頼むから、そういう会話は、他所でやってくれ…。恥ずかしい…」
「あー、えっと、気にすんなイグニス。俺らではいつも通りの展開だろ」
「それはそれで胃が持たないんだ。お前に分かるか?
1番まともだという理由で騒ぎの原因全て押し付けられた時の俺の気持ちが…!」
「…あー、すまん。ちょっと何も言えねーわ」
しかし、後々になってくると、会議とは名ばかりのただの提案会になってしまっているのは、気にとめない方向で行く事を推奨する。
この会話だけを聞くと、少し真面目さが感じられないが、本人たちは至って真剣である。誤解はしないで欲しい。多分。
「んじゃ、四方に散らばって、各場所の応戦を行うってのはどうよ」
そんな締まらない雰囲気の中、ノクティスが仕切り直しだとばかりに注目を集め、この様な案を出した。
「四方、か。だがそれだと、明らかに戦力にばらつきが出る。それに、もし1人でも苦戦した場合、援護に向かうのにもかなりの労力が必要ではないか?」
「あぁ。だからこそ、密かに練習してきたシフトを使う」
『シフト?』
聞きなれない単語に、3人はそのまま聞き返す。
「ほら、俺の技能の所にあったやつだよ。何だかこれだけ異様に存在感があったから、何よりも早く習得しようとしたら出来るようになった」
そう言うと、ノクティスは立ち上がり、どこからが取り出した短剣を持った。
次から次へと謎が増えていく様子に、プロンプト達は戸惑うばかりであったが、次の途端に、血相を変え始めた。
ノクティスが、短剣を前に飛ばしたのである。
「ちょ! ノクトォ!?」
「お前、何やって…ん?」
絶叫するプロンプトをよそに、目の前では、青い残像を残した空間と、いつの間にか短剣を拾い、新しいおもちゃを買い与えられた子供のような表情をしたノクティスが、こちらの反応を伺おうとしている光景があった。
「…ノクト、今のそれはどうやったんだ?」
「ん?まー、簡単に言えば、瞬間移動、的なやつか?
武器を投げて、その方向に自分も素早く移動出来る、みたいなやつなんだわ。で、どうよ、かっけぇだろ!?」
「あー、うん。カッコイイんだけど、何だろう。素直に喜べない」
「ハァ? 何でだよ。そこは素直に褒めたままで終わらしとけよ」
「…いやぁ、なんていうかねぇ。ちょっと今のやつがあんまり俺達には歓迎出来ないって言うか…」
「…お前ら、大丈夫か?」
ノクティスは不審と不満を抱えた。自分の新しく習得した力を披露したそのすぐ後に、仲間達の様子が急によそよそしくなった事が、今の彼には凄く不快な反応であった。
彼の心境を無視するかのように、イグニスは自分達の疑問をぶつけるかの如く、ノクティスに詰めより、質問を投げた。
「ノクト。そのシフトという能力なんだが、本当に今初めて使ったものなのか?」
「は? んなもん嘘ついてどーすんだよ。ここに来て初めて使った力だよ。 …まぁ、でも、この力を使えば、確実に動きやすくなっていいと思うんだけどな。俺は」
「いや、その、ノクト。その力を使うのは、やめにしないか?」
ノクティスは更に奇怪だとばかりに表情を歪ませる。
段々と謎に焦り始めている3人を見て、本気で医者に見てもらった方がいいのではないかと考え始めているようだ。
「は? お前らマジでどうした? この力があるとじゃないとじゃ、全然違うと思うんだが」
「いいから使わないでくれ!!」
「…っ? イグニス?」
体がピタリと止まる感覚がした。今のノクティスは、今自分の前で大声を上げた彼の顔を直視することしか出来なかった。
それ程までに今のイグニスの顔は、普段の冷静さが見当たらず、暴走しかねない程に必死な様子だったからである。
「っ、すまない。少し、訓練の疲れと明日の事で、少し気が動転していたようだ」
咄嗟に今の発言を取り消そうと、誤魔化しを行っている事など分かってしまったが、敢えてノクティスは声を喉の奥へとしまい込んだ。
何故だか分からないが、今それを聞けば、イグニスが更に追い詰められる様な気がしたからだ。
だからといって、他の2人に尋ねるという気にもなりはしなかった。同じ結果になる事が目に見えたからだ。
何故こんなにも、彼等が焦っているか。
それは以前、ノクティスが天之河に対して怒りをあらわにした時、王のような厳格な威圧を放った時に原因がある。
ノクティスがそれを発揮している時、同時に彼等の頭に、起こったことの無いはずの出来事が、一瞬のうちに次々と流れ込んでくる現象が起きた。
その中に、先程のシフト、と呼ばれる能力を駆使し、敵だと思われるモンスター達を圧倒しているノクティスの場面もはっきりと映し出されていた。
本来ならば、偶に勝手に頭に浮かんでくる様なものだ。とそこまで気にする事はないのだが、何故かこの出来事だけは、頭の中から出す事が出来なかったのだ。
頭をよぎる度に、何故かは分からないが、ノクティスがそのまま何処かに消えてしまうような気がして。
映像の一つ一つが、とても印象深く、儚く、そして悲しく。彼等の記憶へと刻み込まれたのだ。
だからこそ、彼等はノクティスに、その一つであるシフトを使って欲しくなかったのである。
無論、そんな事をノクティス本人に打ち明けられる筈もない。
これがきっかけで、どうにかなった、等と想像したくもない出来事が実現してしまったら、と。
「…悪い、イグニス。その頼みは聞けねぇ」
「…ノクト…!」
「お前らが何を思ったか、なんて分からねぇさ。何で止めてくんのかも意味不明だし。
けどよ、お前らが束で、しかもイグニスがこんなになってまで止めてくるってことは、俺にこの力を使って欲しくないって事なんだろうなってのは分かる」
「…なら、そのまま使わないで良いじゃねぇか」
「ばーか。そんなんでアイツらの事を死なせちまったら意味ねーだろうが」
そこまでノクティスが言うと、急に体が浮くような感覚がして、直ぐに胸ぐらを掴まれたのだと理解した。
それも、今1番混乱しているであろう、イグニスが、だ。
「それでも! 俺達はお前にあの力を使って欲しくないんだ!
…決められた使命だったとしても、もうあんな思いをするのは!!」
「…決められた使命?」
咄嗟に出てきた言葉を思い返し、イグニスは自分が今、如何にずれている発言をしたかを思い出す。
まるで、自分のようで自分ではない誰かが、自分の体を操って言葉が出てきた様に、するり、と彼の口から身に覚えのない言葉が出てきていた。
「っ? 俺は何を…」
掴んでいる手を離し、ノクティスを楽な様にする。
彼が怒っている様子はなく、しっかりとイグニスの目を見たまま、口を開いた。
「…何を言ってるのかはさっぱりだ。でも、俺の事を心配してくれてるってのは分かるわ。
…サンキュな。イグニス」
「…」
「でもよ、お前らが訳わかんねぇ事言ってるのと同じでよ。何故だか知らないけど、使える力を全て使って、今度こそ俺の手でって、この間からそう思うようになってきてるんだよな。
自分に力が無かったから、とか、
もっと早く強くならねぇと、とか、
最近はずっと、気が付くと頭の中でそればっかり考えちまってさ。主に訓練の時」
「…そうか。力の事ではないが、お前も…」
「…何でかは知らねぇさ。そんな出来事あったっけとしか思えねぇし。けど、何かしら意味があんじゃねぇかって思うんだわ。もしかしたら、前世でやり遂げられなかったことでもあんじゃねぇのか、とかな。
…お前らに辛い思いをさせてるってのは理解してる。
けど、ここで俺が使える力を使わなかったら、きっとこの頭に浮かぶ事が現実になるんじゃねぇかって思うと、俺は、これを使わずにはいられねぇ」
「…ノクト…」
少し、部屋に沈黙が流れる。外から吹き付ける風が伝わるほどに静かで、ノクティス達の決断の行く末を見守っているかのようにも思えた。
「…はぁ~。相変わらずノクトは自分勝手だよねぇ。こっちの気持ちも少しは受け取ってくんないかなぁ」
「うっせぇな。カッコつけてたんだから素直に、はいかいいえで終わりにしてくれよ」
完全に、とは言わないが、少しだけ緊張が解け、いつものおどけた雰囲気が戻ってきていた。
しかし、イグニスは未だに険しい顔のままで、そのおどけた中に混じることは出来なかった。
どうやら、とても根強くトラウマになってしまっているのは、イグニスの様だ。
「…なぁ、覚えてるか?俺達が4人で山登りに行った時の事」
「あれさぁ、ほんとにヒヤヒヤしたからね!? 俺が死にかけたわ!」
それは、転移前の出来事。ある日の夏に山登りに出かけた4人は、頂上の手前のところの険しい坂道を登っていた時の事。よく周りを見ずに足を前に運んでいたノクティスが、スレスレの所で体制を崩し、絶体絶命な状況になったことがあったのだ。
「あの後不注意だったお前を3人でこれでもかと言うほど怒鳴り散らしたな。全く、俺も心臓が縮んだぜ」
「悪かったっての…。でもよ、あん時イグニスが真っ先に手を出して、俺の事を引っ張り上げてくれようとしてくれてたよな」
「あん時のイグニスカッコよかったよねー。頭脳だけじゃない、アニキみたいな感じだったし!」
「…それは俺がひ弱だと言いたいのか?」
「痛い痛い痛い痛い!! こめかみをグリグリしないでぇアダダダダダダダダダダ!!」
プロンプトの何気ない一言に、頭にきた様子のイグニスがオカンの一撃をくらわす。
プロンプトはここまでで2人にボコボコにされている。
ドンマイというか、自業自得というか。
「…もし、まだ俺のことが心配ならよ。
…手を差し伸べてくれねぇかな。あの時みたいによ」
「…手を…」
「そうだね。ノクトは1人で突っ走る癖があるから、しっかりと手綱を握っておいた方がいいかもね!」
「おい、俺はペットか!?」
「まぁ、危ない事仕出かしそうになったら、血祭りにでもしてやろうか」
「お前がやるとシャレになんねぇから止めろ!
…安心しろよ。お前らが手を離さねぇ限り、俺はお前らを置いて消えたりしねぇよ」
「ノクト…。
分かった。お前を見失わないように、俺はお前の手を離さずに、お前を救うことを誓おう」
「あぁ。よろしく頼むな」
この後、ノクティスの四方に分散の案で決まり、
明日に向けて更に4人の絆を固くし、それぞれ自分の疲れを癒すために、それぞれの部屋へと戻って言った。
会議が終わった後のイグニスは、そのまま自分の部屋へと帰った。
部屋の前で立ち止まり、そっと扉を2回叩く。
そうすると、可愛らしい返事が聞こえ、トトトトと足音が近づいてくる。
やがて扉が開かれると、そこには、イグニスの妻(非公認)の愛子が姿を現した。
「あ、イグニス先生、夜遅くまでどこに行ってたんですか? あまり夜更かしはメッ! ですよ!」
「すまない、愛子先生。少し、明日の事でノクト達と話し込んでしまって。」
すらっと話が進んでいるが、実はこの2人、同室であり、もうこの光景も何度目なのかと言うくらいである。
話から察した愛子は、直ぐにイグニスを中に入れ、
一息を着くために椅子へと座らせた。
「すみません。とんだ勘違いな事をしてしまって…」
「いや、誰だってこんな遅くに帰ってくれば心配する。俺の方こそ、すまない」
お互いがお互いに律儀である為、こういう風になると1歩も譲らない、という、真面目同士のイベントのようなものが発生した。
まぁ、いつかどちらかが諦めて、話を変えるのだが。
「あの、先生。少し、お願いがあるのですが」
「どうした?愛子先生」
「…むぅ…」
「…?」
「…あれだけ2人きりの時は名前で呼んでと言ったでは無いですか…」
「…君だって俺の事を先生と呼ぶだろう」
「わ、私はまだ良いんです!! その、多分言ったら、心臓が持たないので///」
「…はぁ、我儘過ぎるのもどうかと思うが?」
「わ、私のことはいいので、名前で呼んでください…!」
「…」
「…」
「…愛子」
「〜!!」
「…保てていないのだが…」
我儘発言をした挙句、願いを叶えてもらっても悶絶する、お茶目というか、天然というか。
それとも、イグニスという男の前だからできる行動なのか。
「しょ、しょれより、本題に戻りましょう…」
「…そうだな。それで、話とは?」
愛子は一旦息を吸い直し、そして、イグニスの目をじっと見たまま、口を開く。
「イグニス先生。明日、オルクス大迷宮へと遠征に行くと言う話を聞きました。それも、園部さん達以外の全員が」
「…あぁ」
「知っての通り、私は、教師です。生徒達が傷付く事や、犠牲になる事は、耐えられません。
…私、畑山愛子という教師としてのお願いです。
どうか、あの子達を危険から守って頂けませんか?」
「…それは勿論だ。あの子達の誰かがもしも、ということがならないように、死力を尽くそう」
そう答えると、愛子は少し満足そうな表情をした後、
イグニスに近づき、そのままひしっと抱きしめた。
「…ですが、私は、畑山愛子という女としては、貴方を大迷宮には行かせたくありません。本当なら、貴方をここで引き留めて、一緒に逃げたいです」
「…!愛子…」
「ですが、それは私の我儘。それは生徒達を見捨ててくださいと言っているようなもの。でも、先生としての願いを突き通せば、貴方を見捨てるという決断になってしまう」
「…いや、それは…」
「私は、とても悔しいです…。自分の手では生徒は愚か、貴方までも助ける事が出来ないなんて…」
愛子の震える声を聞きながら、イグニスは無意識に、先程の自分と愛子を照らし合わせていた。
ノクティスの意見を尊重したい自分と、危険な目にあって欲しくない自分。
それと同じように、彼女も同じように苦しんでいたのだと。
「…でも、今まで貴方は、私に寄り添ってくれた。
私が教師としてどうすればいいか分からない時も、道を照らしてくれた。生徒が事故に巻き込まれそうになって、貴方が助けに行った時も、どちらも無事に帰ってきてくれた…。だから…」
1度、愛子の身体がブルっと震える。きっと、色々な事をはきだすのを我慢し、イグニスを送り出す覚悟を決めたのだろう。
「私は、あなたを信じます。だから、最後には、絶対無事に、帰ってきて下さいね!」
その言葉を聞くと、イグニスは愛子を抱き返した。
その抱擁には、約束する、という意味が込められていた。
如何でしたでしょうか。
やはり、ゴリ押し感が否めない…。
久しぶりで訛ってないかな…。
では、また次回。
番外編で、転生後のルシスの皆とヒロイン達の出会い(+α)を書こうと思っていますが、特に見たいのは誰でしょうか。人気順に書いていこうかなと思います。
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プロンプト×優花
-
グラディオラス×雫
-
イグニス×愛子
-
アーデン×恵里
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