FFはBGM部門でも評価されていますが、15も素晴らしいBGMが沢山あります。
私は、15のBGMは全部の中でもトップクラスに入るくらいには好きです。
特にイフリート戦のBGMが1番ですね。(曲名は言えないのでわかりやすい表現で)反則級にカッコイイです。
皆さんは15のどのBGMが好きですか?
では、どうぞ。
不安渦巻く月下も過ぎ去り、時は翌日。生徒一行はついに目的地であるオルクス大迷宮へとつながる入口付近の広場まで来ていた。
完全武装で来ている彼等を他所に、周辺の様子はやけに明るげで、まぁ察しはつくだろうが1部の生徒達はどことなく居心地の悪さを感じていた。
いや、むしろこのような状況でズカズカと迷宮に入っていけるというのがどうかしていると言った方がいいのかもしれない。
「…にしても俺が先頭とか無いでしょぉ…」
そしてここにも周りの様子に気付かないほどに参っている人が一人。プロンプトである。
昨夜、ノクティスの意見が通り、四方にそれぞれ1人ずつ派遣され、周りの援護をする事になっている。
とはいえ、実際はそんなに4間隔遠い訳では無いのだが、何時何処から狙われるか分からない為、この体制で行く事になったのだ。
「ボヤいたって仕方ないっスよ。先生方曰く、プロンプト先輩が加わる事で先頭の負傷リスクがなんちゃらかんちゃら〜って事らしいですし」
「いやー、そういう問題じゃないんだよ坂上君。確かに武器的に先頭ら辺には欠かせなくなってくるけどさぁ…。フツーそこは先生じゃないの? 」
場を有利にする為には得策な考えであるが、司令塔が前では無いことに不満を持っているプロンプトだが、グラディオラスに矛先を向ける素振りを見せると雫に冷酷な眼差しで見られる為、当たり障りがないようにボヤいていた。
ただ、何も先頭が嫌な理由がそれだけならまだ良かったのかもしれない。彼はもう一つだけ、
「少しは反省したのか? 皆をあんなに怯えさせた事に対して」
「おっとぉ、お口の態度がなってないなぁ。そんなんじゃ、帰った時に不良扱いされちゃうんじゃない?」
「話を逸らすな! お前など教師でもなんでもない、ただの人殺しだ!」
「酷いなぁ。何時俺が君達を犠牲にしたの? 人となりと言動だけで殺人鬼扱いしないで欲しいなぁ。てか、君こそ論点がズレてるような気がしてならないんだけど…」
プロンプトの前では、この世界に来て険悪の仲にになった勇者とアーデンが揉め合っていた。
別にただ争っているだけなら五月蝿いだけなので放っておけばいい。
ただ、せめて状況を考えて欲しい。ここは何処だ? 今は何をしに行っている? 出発前に一悶着して置けばすむものを態々ここにまで来てやるな。と、口には出さないものの、周りに引かれるくらいに顔に出てきてしまっていた。
「プロンプト先輩も! グラディオラス先生方が不真面目な貴方を特別評価してまで危険な位置に貴方をおいたのですから、もっと取り組む姿勢を考えたらどうなのですか!?」
(そんであの勇者くんもさぁ、たまに俺にも矛先向けるの止めてくれないかなぁ。恥ずかしいったらありゃしないよ。ホホホ…)
どういう訳か、無理矢理先頭にされた事を勇者(笑)は、
プロンプトは先生のご厚意によって先頭に組み込まれたのだから、不真面目な態度など許されるべきではないと解釈しているようで、何かとプロンプトの顔を目に入れては癇癪を起こして来ていた。
その様子を感じさせる顔にさせている1つの要因として自分が入っている事など、全く分かっていなかった。
酷く言えば、自分こそ迷惑をかけているんだという事には、触れることもなかったのであった。
その様子にプロンプトは更に顔を沈ませると、番犬の如く吠えてくる。これに雫は呆れを通り越して怒りが込み上げており、拳をわなわなと震わせ、勇者の親友である龍太郎でさえ顔が死んでいた。
「お前達、いい加減にしろ。遠征訓練とはいえ、気を抜けば命を失いかねない場所だ。必要以上の言い合いは程々にしておけ!」
やがて、先程までは無視を続けていたメルドも痺れを切らし、強制的に黙らせる事でこのいざこざは幕を閉じた。ちなみにアーデンは元々煽る事だけしか目的に無いため、満足したのか勇者から距離を取っていった。
漸く静かになった所でふと後ろを振り返ると、後ろで苦笑いを浮かべながら手を縦に振るノクティスと、左(プロンプトから見ると右)には最高に殴りたくなる顔をしたグラディオラス、右にはやや申し訳なさげな顔で見るイグニスがいた。
(うわぁすっごいなぁ。その生意気なお顔に回し蹴りを喰らわしてやりたい。)
拠点に帰ったら、イグニス以外を清々しい程までにいたぶり尽くしてやることを決意したプロンプトは、前からかかる出発の声を聞き、前へと歩み始めた。
迷宮に入り暫く経ったが、最初から今現在まで生徒達の目に入ってくるのは、何かに照らされて緑色に輝く道中だった。この迷宮は緑光石と呼ばれるその名の通りの鉱物が採れ、その光が漏れてこのような光景になっているのだと言う。
最初の内は綺麗だ、と感じていたが、ずっとこれを見続けていると目が疲れてくる。辺りを見渡せば、目をシパシパと開け閉じを繰り返している生徒がちらほらいた。
異常をきたす生徒が出る前に、この空間が終わればと考えた。
その願いが通じたのか、やがてドーム型の開けた空間に出た。ゲーム風にいえば、何か起こりそうな部屋、のようである。
それもまた予言の如く、所々に空いている隙間から、毛玉のような物体が、わさわさと湧き出てきており、
これにはプロンプト、血の気が引いてしまった。
想像して欲しい。いきなり無数の穴から、何かが一気に出てくるなんて状況、おぞましい事この上がないだろう。例えば…いや、止めておこう。これで気分を害してしまったら申し訳が立たない。
「よし、丁度いいのが出て来たな。あれはラットマンと言う魔物でな、すばしっこい奴だが、それに慣れれば大した奴らではない。今のお前らには肩慣らし程度だろうがな! よし、まずは光輝達が相手をとれ!他は下がって待機だ! だが気を抜くなよ、後ろに回ってきた場合を考えて備えておけ!」
メルドにラットマンと紹介された魔物は、ネズミの擬人化と言ったような姿形をしており、それプラスボディビルダーと説明すれば、大体どんな奴なのかは想像出来るだろう。
可愛くもなければ、カッコイイとも言い難い、なんともむさ苦しい容姿に、流石の光輝ですら苦笑いである。
一方、雫に至ってはグラディオラスとこの魔物を交互に見比べ、
「先生の方が男らしいわ。鍛え方がなってないわね」
などと言い残し見下す様な目を向けた。
初見の魔物が霞んで見えるとか、どんな鍛え方をしたらそうなる、とツッコめる者は誰もいなかった。
「ん、んー…。なんとも始めにくいなぁ…。…まぁでも、出てきたからにはやるしかないか!」
「ウッス。後ろは任せましたよ、先輩!」
本来リーダーがかけるべきである戦闘の合図らしき掛け声を、無意識の内にやってしまったプロンプトを睨む実際の勇者がいたが、今は奴らを片付けるのが先だ、と、他の何名かを引き連れてラットマンへと突撃をかました。
先手を打ったのは勇者だった。勇者の剣だと自信を持って言える程だと分かる剣を手に、纏めて数体を斬り飛ばし、バトンタッチだとばかりに前に出た龍太郎が、篭手を装備して相手を相殺する気満々となった拳で、残す事無く敵を崩れさせていく。
その横で雫が、刀に良く似た剣を計算された動きで使いこなし、一体、また一体と確実にラットマンを斬り伏せていく。
しかし、無双を繰り返す3人の背後に、隙を見つけたとばかりに接近した三体の魔物が飛びかかる。
少々対応が遅れ、なすがままに攻撃を受ける…。筈だったが、
バァン、と、何かが破裂した様な音が立て続けに3回鳴らされると同時に、三体の脳天が綺麗にぶち抜かれ、そのまま地面と一体化する。
3人が視線を向けると、銃のような物を持ったプロンプトが、それをクルクルと回しながら次の敵を捉えていた。
「ほら三人とも、ぼさっとしない! 次が来るよ!」
ハッとした3人(1人だけは苦虫を潰したような表情)は、
呆けている間に周りに群がっていた敵に再び視野を向け、無双パーティーを再開した。
その一方でプロンプトは、怖気付いて逃げようとした何体かを同じように銃撃し、逃げる事すら叶わない、と奴らに思い知らせた。
「4人とも、準備出来たよ!」
4人が戦っている後ろで、何やら準備を済ませた香織、谷口鈴、恵里の3人が合図をし、前衛はサッと身を引く。
《暗き炎渦巻いて、敵の尽く焼き払わん、灰となりて大地へ帰れ‐‐‐‐ 螺炎 》
その詠唱を終えると、螺旋状の炎が敵全体を覆い尽くし、そしてその全てを燃え上がらせた。哀れなことに、ラットマンは悲鳴をあげることも出来ず、そのまま塵と化し、跡形もなく消え去った。
背後を気にしていたメルドであったが、この惨殺の光景を目の当たりにし、先程の勇者達よりも顔を引き攣らせて賞賛の声を上げた。
「あ、あー、よし、良くやったぞ。流石なだけはある。だが加減はしろよ? 後に響いても仕方が無いからな。
それと、今回はいいが、魔石も回収する事を覚えておけよ? 明らかにオーバーキルだからなぁ…」
褒めると同時に、簡潔に言うとやりすぎだ、という事を伝え、頬を赤らめる生徒を見つめながら、仕方ねぇな、と肩を竦めるメルドだった。
その一方で、プロンプトは自分が手に持つ銃を見つめ、
その後に目線をハジメへと向ける。
(この武器、初めて使っては見たけど…チョー使いやすいじゃん! やっぱハジメに頼んで正解だったなぁ)
そう、この武器は、数日前にハジメとの打ち合わせで話に出た、製作依頼を出していた銃の完成品なのである。
本人曰く、今の自分に出来る限りの事をした、だと言うが、これは何処に出しても恥ずかしくない程の代物である。
彼に感謝の眼差しを向けていると、無自覚ながらも偉そうな振る舞いでこちらに近付いてきた勇者が、不服そうに口を開く。
「先輩、ここに来る時から思ってはいたんですが、そんな卑怯な武器を使っているのですか?」
「…ワイ?」
「ちょっと光輝…!失礼な事言わないで。先輩はその銃を使いこなして私達を援護してくれたのよ?」
今度はどう言うご都合解釈をしたのやら、再度ブレーキが壊れた勇者は、一気に畳み掛ける。
「黙っていてくれ雫。確かに先輩は敵を倒すだけの実力はある。けれど、それはその武器に頼りきったものだろう? 道具に頼りきった戦い方では、何時か通用しなくなる。きちんと自分の力で戦わないと」
一同、絶句。
嫌いな奴の行動は全て醜く見えるとは言うが、ここまで酷いのは流石にないだろう。ましてやこの勇者は、それら全てが無自覚なのだから。それでこんなセリフが出てくる事にも驚きだが。
「それに…」
「ねぇ勇者クン。君の言いたい事は大体分かったよ」
「…そうですか。ならその武器は」
ここで捨てて下さい。とは言いきれなかった。
その前に、プロンプトが吐き捨てる様に、ゴミを見る目で言い放ったから。
「それじゃ、ここに居る人達は全員卑怯って訳だね。じゃあ皆、自分の持ってる武器を捨てて先に行こうか」
「はっ!?」
メルドは、やれやれといった形で止めるタイミングを伺い始めた。どうやら、どちらかが言いくるめられるまで待ってくれるらしい。
「み、みんなが卑怯なわけないでしょう。だって、ここに居る皆は自分の力で戦って」
「え? 自分の口で言ったじゃないか〜。武器を使ってるヤツらは卑怯だってさ〜」
「そ、そんな事は言っていません! 何をおかしな事を言っているんですか!」
「いやだってさ、自分の力で戦わなきゃ卑怯、なんでしょ? 君の中では」
「そ、そうです! それがなんで…」
「じゃあ、なんで皆その借り物の道具を手に取って戦ってるのさ。君だって、この世界で貰った剣を手に取って戦ってるでしょ?」
「うぐっ!?」
言い返す言葉が見つからないらしい。いつものテンプレのごとく、勇者は黙り込んだ。まぁ、これは何かしら無理矢理反論を見つけて来るパターンなのだが。
「そ、それは自分の手で使ってるからです!だから自分の力で戦ってるじゃないですか!」
「へぇ、なるほど。銃とかそーゆーのは手を汚さずに戦うから、卑怯だって言いたいんだ?」
「そ、そうです!」
「じゃあ、弓兵の方々や、白崎さん達に言わなきゃね、君達が卑怯だから魔法とかそういうのは使うなって」
「な、何でそうなるんだ!! 俺は、貴方のことを話してるのに何故そこで香織達が出てくる!!」
いよいよ建前であろう敬語すら崩れだした。彼の中で、プロンプトはアーデンと同じくらいに気に食わない存在になってきたのだろう。
「自分の力じゃないんでしょ? 自分の手を使ってないんでしょ? だったら、魔法使いや弓使いの人達は全員卑怯になるよね。だって魔法や矢に頼りきった戦い方をしてるんだからさ」
「ふ、巫山戯るな! 香織達は一生懸命努力してあの力を手に入れたんだ! お前のような卑怯者と一緒にするな!」
「うん、皆努力して手に入れた力だよね。知ってるよそりゃあ。近くで見てたし。でもさ、銃は努力しないで使えるものじゃなくない?」
「な、何だと!?」
もう傍から見てもどちらが有利に見えるかなんて分かっているだろうが、まだ誰も止めない。まだ完全に決着が着いていないと察しているのだろう。
「君は銃は道具で、それに頼りきったら強くならないって言うけどさ、じゃあ、最初から何もせずに銃を使って、この子に頼りきりで戦ったら、どうなると思う?」
「な、何の話を…」
「俺を含めた、この中の誰かが死ぬけど?」
「なっ…!?」
「いや当たり前だよね。だってなんの技術も身に付けずに銃を使うんだよ? そんな事したら、狙いが定まらずに暴発して最悪サヨウナラ…だよ? そうならない為に技術を身に付ける訳なんだからさ…。そーゆー点では他の武器も同じでしょ」
「まぁ、そうね。剣とかだって、上手く扱えなきゃ事故になるし…」
「でしょ? だって、そうならない為に訓練をしてきてる訳なんだからさ。それと同じ様に、俺だって扱う為に色々勉強してきたんだから」
「は…?銃なんてこの世界にはなかっただろう! 出鱈目を言うな!」
「いや、誰もこの世界でなんて言ってないからね?」
「…まさか、俺達の世界で…!?」
プロンプトは静かに首を縦に動かす。それはそれでまた勇者が騒ぎそうだが、面倒事になる前にさっさと片付けておく。
「まぁ俺、射撃が趣味だったからさ、資格なりなんなり取って使ってたから、一応技術はあるんだけどね〜。…と、言う訳でさ、銃も刀もさ、ちゃんと努力して力を身に付けないと扱えない代物なんだよね。で、そうした点で考えると、君はそれらを含めた物を自分の力ではない、なのに白崎さん達は努力してるって言ってる…矛盾してる事、分かる?」
「ぐっ…」
「まぁ、簡単に言うとさ、君の方が彼女達を卑怯者って言ってるんだよね」
「うっ!?」
「それにさぁ…それら全てを作ってる人達に対してとんでもない侮辱をしてるって事にも気付きなよ。軽くなんの力にもならないってのと同じくらいの事を言ってるからね?」
「うぐぁ!?」
「あのさぁ、大した結論も分からないのに騒ぎ立てるのやめてくれないかな? ただ迷惑をかけて終わってるだけだからね?」
「ぐはぁ!?」
お約束が終了した。いつも通りにボロボロにされ、勇者は何も言えずにそのまま佇むだけとなった。
ノクティス達は、普段よりも毒舌かつ、自分の意見をズバズバというプロンプトに素直に賞賛を送っていた。
「どうやら言いたい事は終わったようだな。よし、進むぞ」
「メルド団長、でも…」
「いいか、光輝。戦いに卑怯も何もねぇ。使える物を使ってその上で戦う、それが本質だ。てか、そんなモノにこだわってたら、何も出来なくなっちまうだろうが」
「…」
「取り敢えずだ。俺達は武器に頼りきって戦ってるんじゃねぇ。その武器を理解した上で技術を身に付けて、自分の一つの力とするんだ。その点で言ったら、その坊主は既にその段階にあるんじゃねぇのか? まぁ、長年戦ってる身からすると、まだまだな部分はあるけどな」
「うわぁー、手厳しいねぇやっぱり」
「光輝。自分の体だけが力だと思うな。お前はまだ武器とは何なのか、よく分かっていない。武器は使うものでも、使わされるものでもなく、共に戦うパートナーの様なものだ。そのジュウを道具としか、頼りきる物としか見えていないようじゃ、それこそその先には進めねぇぞ。…お前らも覚えておけよ! よし、じゃあ先に進むぞ!」
各自が自分が持つ武器を見つめながら、今語られた全てを思い返しているようだ。だが直ぐに、今のままでもいいか、と考えを放棄してしまうものも多数おり、このままでは成長できないだろうと感じながらも、皆を誘導するメルドだった。
それからの展開は、サクサクと進んだ。ローテーションし、任された生徒達が一体となって敵を倒し、それぞれに散らばっているノクト一味がその援護を行う、といった形だ。
そうして進んでいくと、いつの間にか二十層へと辿り着いたのだった。この層は今回の遠征の目的ポイントであり、ここまで進むにはかなりの手馴れでなければ難しいとされている。いかに生徒達の初期ステータスがこの世界では異常だったかが分かる結果である。
まぁ、何はともあれ、此処での戦闘を終えれば、今回の訓練は終了なので、と浮かれている様子を見れば、これが本当に世界を救う任務を任された人達なのか?と不安になってしまう。
そんな不安も他所に、本日最後の戦闘相手であろう者が、どこかでその闘志を燃やしている。
「擬態しているぞ。よ〜く周りを注意しておけ!」
メルドがそう忠告すると、壁と同化していたなにかが肌の色を変え始め、褐色色のゴリラのような魔物が姿を現した。
「ロックマウントだな。 二本の腕に注意しろよ! 馬鹿力野郎だからな!」
メルドのアドバイスに、これまた雫が、
「馬鹿力…。先生とどちらが強いのかしら…。まぁ、先生でしょうけど」
と信者と言われても仕方の無いような支持力を感じさせる発言をして、龍太郎からそこまで比べんな、とばかりの呆れた視線を向けられていた。
ロックマウントが肉体系とだけあって、龍太郎が先手を繰り出し、奴の拳と自分の拳を力強くぶつけ合い、相打ちとなって両方の手が弾き飛ばされた。
それを好機と見たプロンプトが、素早く銃を向け、急所に向けて連弾を放つ。
が、敵はそれを素早く手でなぎ払い、そのまま息を吸い込んでそれを巨大な声と変換して返した。
「グァガァァァァァァァァァァァァァ!!」
巨大生物が姿を現した、と説明されても信じられるような咆哮が、空間全体を襲う。
さて、ここでだが、咆哮というものはゲームではどのような役割を果たしているだろうか。
攻撃と判断して吹き飛ばされる例もある。だがやはり、大きな例としてあげれば、相手を怯ませたり、行動を制限させたりといった目的で使われる事が多いだろう。そして、このゴリラの咆哮は後者。
つまり、
「ぐぅ!」
「きゃぁ!?」
「うぉ!?」
「ひぇぇ!!」
これを喰らってしまった前方4人の動きが封じられてしまった。
邪魔者を捉えたとばかりに走り出すロックマウントは、彼らを横切り、後ろで迎撃しようとする香織達の頭上付近へと飛び立った。
その際、飛び立つ前に持ち上げた岩を思い切り香織へとぶん投げたのだった。
しかし、忘れないで欲しい。ロックマウントとは擬態能力を持った魔物。
その岩がみるみる褐色となり、腕と足を出してこちらへと向かってくる。
もうお分かりだろう。これもゴリラだったのだ。
そのまま奴は香織達へと変態の如く飛びかかろうとダイブする。
どこかのアニメの主人公が女性に飛び付く時に上げそうな声が聞こえてくるかのような状態だ。
そして目も血走り、鼻息も荒い。本物の変態のようだ。いや、変態だ。
恵里を除く2名が悲鳴を漏らしてしまい、そのままゴリラは3人へと激突し…
「ちょっとオイタがすぎるんじゃねぇの?」
かけたその巨体はいつの間にか回り込んでいた誰かによって貫かれ、絶命した。
「おーっす。お前ら、ひでぇ面してんな」
「ノクティス先輩!」
巨体を地に伏せ、怯えた様子の2人を気遣うように屈んだその顔は、ノクティスであった。
「で、でもどうして…先輩は後方の人達を守ってるんじゃ…」
「いやまぁ、俺らも状況に応じて作戦を変更しなきゃならねぇからな。それに、恵里、お前にとってはこっちの方が良いんじゃねぇのか?」
「え? てことは…」
「んじゃ、後は頼んだぜ、アーデンのおっさん」
「ハァ…守るなんて柄じゃ無いんだけど、あの勇者君と話す事になるよりはマシ、か」
ノクティスがプロンプト達を助けに走り出すと、背後からぬっとアーデンが現れた。
それを確認した恵里の表情がみるみる柔らかく、そして狂気的になった。
「えへへぇ♪ 先生、僕の事助けに来てくれたんだぁ♪ 嬉しいなぁ♪ ちゅーする?」
「はいはい、そーゆーのは後ね。ゴリラさんが大人しくなるまでは君も大人しくしてなさい」
「えぇー、先生ってば照れ屋なんだからさぁ〜」
「…ハァ。なーんでこうも好かれてしまったのだか。あ、君達も早く建て直しなよ? まぁ、もう終わるとは思うんだけど…」
「はい! ありがとうございます!」
「ありがとね! アーくん先生!」
「…キミさぁ…もう少しそのネーミングどうにかしない?」
奇抜なあだ名で人を呼ぶ鈴のその余りにもかけ離れたセンスに、アーデンは心底困惑してしまっていた。
一方、4人の援護に向かったノクティスは、もう1匹のゴリラと対面しながら彼らを案じていた。
「ごめんノクト、しくった!」
「おう、分かったら働け。そして助けた分の借りは返せよ」
「いや辛辣過ぎない!? 借りは払うけど!!」
払うんだ…とのツッコミは敢えて口に出さなかった何名か。
その気持ちとは逆に、ゴリラは今度こそ、ともう一度吠える準備をする為、1歩後ろへ下がる。だが、
「2度も食らうかっての!」
素早くノクトが剣を投げて奴の腕へと剣を刺し、シフトの能力で一気に間合いを詰めた。
「ァガァァァァァ!?」
「そら、暴れん、な!」
そうしてゴリラの腕へとしがみついたノクティスは、さらに無力化させようと、その剣を深く突き刺す。
これには流石のゴリラも思ったように動けず、ただ痛みに苦しむばかり。
完全に片腕を仕留めたと踏んだノクティスは、もう片方の腕へと器用に移る。
「ほらよ、もう一本の腕も頂く、ぜ!」
そしてそのまま、同じ様にもう片方の腕にも突き刺し、最早ゴリラは叫ぶどころか、許しを乞うために悲鳴をあげる他打つ手がなかった。
「…いやぁ、やっぱノクト強ォ〜」
「…すげぇな…。あんな細かい動き、俺には到底無理だぜ」
「いやあれ、細かいって言うのかしら…? 確かに上手く立ち回れてるのは分かるけど…」
圧倒するノクティスを見て、それぞれ3人は学ぶ生徒のような眼差しでノクティスの戦い振りを拝見していた。
しかし、その横で、完全に周りが見えていない勇者がまた問題行動を起こし始めた。
「貴様、よくも香織達を…許さない!」
「え!?」
「ちょ!? 何やってんのぉ!?」
この勇者は、ノクティスが抑えている事も視野に入ってないのか、自分の力だけで消し飛ばさんと剣を高く掲げ、剣に光を纏わせて攻撃準備へと入る。
「天翔羽ばたき…天へと至れ… 天翔閃!!」
「あ! こら、馬鹿者!!」
「光輝ストップ!! あれが見えてないの!?」
「ノクトぉぉぉぉぉぉ!! 全力で避けろぉぉぉぉぉ!!」
誰の声も届かないのか、怒りに身を任せた勇者の一撃が、斬撃となってゴリラへと向かっていく。
その光の一撃は、無慈悲な程に真っ直ぐゴリラへと向かって行く。
「ん? やべぇ!?」
やがて後ろから近づく音と光に気がついたノクティスは、急いで剣を抜き、ゴリラから離れる。
取り残されたゴリラは、その無慈悲な光によって綺麗に両断され、その奥の壁さえも巻き添えを喰らう。
断末魔を上げることさえ許されないまま、2つにスライスされたゴリラだったものは、そのまま他と同じように地と同化した。
一仕事を終え、ふぅ、と安堵の息を吐きながら、自分を暖かく迎えてくれるはずの香織達へと顔を向け、大丈夫か、と声をかけようとする。しかし、
「このぉ、大馬鹿者がァ!!」
「ヘブォァ!?!?」
声を掛ける前に、メルドの拳骨、雫の溝打ち、プロンプトのアッパーカットの3連コンボが決まり、うずくまる。
「な、何を…」
「何を、では無いわ!! お前は何を見ていたんだ! ロックマウントを食い止めているノクティスの姿が見えんかったのか!!」
「い、いやだって香織達が…」
「貴方は本当にそれしか頭にないの!? 香織達が救えればノクティス先輩を巻き添えにしてもいいの!?」
「うぐっ…」
「勇者クン…」
「な、何だ…」
「偽善者ってレッテルを貼られるのと、今ここで脳天撃ち抜かれるの、どっちがいい?」
「なぁ!?」
怒り心頭、それどころでは済まされない程に声を荒らげた3人が、勇者をこれでもかと怒り倒す。
まるで勇者が子鹿のように震えている。余程怖かったのだろう。だが自業自得なので同情はせん。
「あー、死ぬかと思ったわ〜」
「ノクト!? 大丈夫!? 怪我はない!? 半身消し飛ばされてたりしない!?」
「しねぇわ!! じゃあどうやって歩いてきたんだよ!」
無事に生還したノクティスを労りながらも、怒りが収まらない3人は更に何分かと勇者を説教し続けた。
流石にこれはいけないと感じたのか、すべて終わったあとにノクティスは彼から謝罪を貰った。ただし、香織達を、救おうとしたのに…と納得はいってないようであった。
「あ、あれ、何かな?キラキラしてる…」
そして、勇者達を心配した香織が前へと進むと、不意に壊れた壁の方へと視線を向ける。そこには、青白く発光する鉱石のような物が、こちらを誘うように輝いていた。
「ほぉ、あれはグランツ鉱石だなぁ」
「ん?団長、グランツ鉱石ってのは?」
「おぉ、坊主達は知らなかったな。あれは、特に特殊な効果はないが、その美しい輝きから、貴族に受けが良くてな、求婚の際によく使われる鉱石らしい」
その言葉を聞いた刹那、雫の眼が怪しく輝き、ジロっとその相手となる男を見つめて、知人には見せられないような顔を浮かべていた。
それに加え、ここにはいないであろう2人の視線を何故か感じた、と、後にプロンプトとイグニスは恐怖体験として語っている。
「綺麗…」
加えて香織も、そんなことを口にしながらハジメをこれまた逃げ出したくなるような眼力で見つめていた。
ハジメは恐怖を通り越して受け入れる姿勢に入ったようだ。だめだ、思考回路がやられている。
「だったら、俺たちで回収しようぜ!」
女子陣に気を向けてばかりいると、小悪党筆頭の檜山が、その鉱石を目掛けて壁を昇っていく。
「待て! 迂闊に行動するな! 安全確認すら出来てないんだぞ!!」
慌ててメルドが止めるも、それをうざく感じた檜山は無視し、お目当ての鉱石へと手を伸ばす。
「うへへ、これで香織に…」
「おい!待て!」
ノクティスが慌ててシフトを発動し、檜山を止めようと接近するが、遅すぎた。
檜山を捕まえ、振り投げる前に、既に彼は鉱石に触れていたのだ。
刹那、部屋全体が魔法陣に包まれ、あの時と同じような光景になっていた。
「これは…転移魔法か!?」
「撤退だ! 総員、撤退しろ!」
メルドが全員に避難を呼びかけるが、それも虚しく、
光が彼らを包み込む方が早かった。
そのまま謎の浮遊感をプラスされ、どこかへと転移される。
やがて浮遊感が終わると、次の瞬間には床に叩きつけられる生徒が多数いた。
ノクティスは辛うじて着地する事が出来たが、それでも足にダメージを受けたようだ。
「どこだよここは…」
ノクティス達が辺りを見渡すと、そこは大きく開けた洞窟のような場所で、自分達を乗せた大きな橋が、ドスンと構えていた。
ひょいと顔を出して、下を覗いてみると、そこには川などはなく、下へ、下へと暗黒が広がっているだけだった。
すぐさまメルドが橋の先端の階段へと向かう様に指示を出したが、そうはさせないとばかりに、小さな魔物がうじゃうじゃと出てきて、彼らを待ち構えんとする。
更に、通路にも大きな魔法陣が展開され、そこから出てくる魔物を見て、メルドが驚愕する。
「ま、まさか、あれは…」
ベヒモス…なのか…
いかがでしたか?
少々原作とは変更点や、違った会話等を入れております。1つの楽しみとしてくれたら幸いです。
では、また次回。
番外編で、転生後のルシスの皆とヒロイン達の出会い(+α)を書こうと思っていますが、特に見たいのは誰でしょうか。人気順に書いていこうかなと思います。
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プロンプト×優花
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グラディオラス×雫
-
イグニス×愛子
-
アーデン×恵里
-
ノクティスとの日常side