とある科学の肉体支配   作:てふてふちょーちょ

108 / 162
この一週間はまだハロウィン!セーフ!


103話:男のろまん

薄い玄関の扉を開くと、白い修道女が嬉しそうに顔を出す。

しかし、玄関先の光景にものの数秒でその笑顔は覇気をなくしていった。

 

「とうまぁ?なんでこんなに人が多いのかな?しかも、なぁーんで天草式のいつわがここに?」

 

彼女の予想と反し、そこに居たのは家主一人ではなく家主合わせた四人の男女。

 

つんつん髪の家主と、その後ろに立った顔の造形がすこぶる良い長身の男子高校生。

上条当麻の友人、垣根帝督。

久しぶりに見たと少しだけ驚いた表情をするも、それについては大して気にしているようでは無かった。

 

隣に天羽彗糸がいないことも、この間会わせた杠林檎がいないことも、真っ白い車椅子の少女が代わりにいることも特に気にせず、ただ一点を見つめる。

 

問題はただ一人、五和である。

薄紫でまとめたニットとベスト、そしてショートパンツとしてしか機能していない切り裂かれた紫のジーンズ。外ハネショートヘアに、清純派と言わんばかりの優しい顔。

 

魔術師、それも九月上旬頃騒動に巻き込んできた面倒な輩である。

彼女の来訪に巻き込まれ体質の上条を心配するインデックスは当然の如く不満そうな感情を表に出した。

 

「インデックス、引きこもりがちのお前の為にと思って、上条がわざわざばったり会った知人を家にあげたんだぞ?知り合いがいると楽しいかもしれないってな」

 

「……そうなの?」

 

しかし機転が利く、というより他人を騙し日常をスムーズにする必要性をよく知っている垣根は適当な言い訳を並べると、インデックスの追求をはぐらかす。

その手腕に疑うこともせず、純粋無垢なシスターは上条に上目遣いで真実か否かを問いただした。

 

「そ、そうだぞ!インデックス、寂しいと思って、な!??」

 

「え!?あ、は、はい!そうです!」

 

「ふーん……それで、この子は?ゆずりは、いないの?」

 

まだ疑惑は残るものの、一応納得した様子のインデックスは今度は垣根が押す車椅子に目を向ける。

この間紹介された杠林檎でもない、全く見知らぬ少女がその車椅子に大人しく座っていた。

 

白と緑を基調とし、金のアクセントを散りばめたシノワズリの少女。

伏せ目がちな人形の顔と、彫刻のような白い肌、絹のような白い髪、人間とは思えないその少女はまるで中国陶器のよう。

 

「こいつは俺の義妹、彗糸だ」

 

「けいと?天羽彗糸のこと?」

 

「正解だ」

 

幼い義妹の体を抱き上げ、車椅子を玄関前でコンパクトに変形させると彼は得意げに笑う。

普通ならば信じられない言葉にもかかわらず、幼い姿にかろうじて残った天羽彗糸の雰囲気にインデックスは信じざるを得なかった。

 

「……えぇ!?」

 

「驚くよなぁ、俺も驚いたし」

 

「私よりちっちゃくなってるんだよ!お人形さんみたい!」

 

「可愛いだろ?」

 

人形のように片手で抱き上げた彗糸の頬をつつきながら強く体を引き寄せると、人形のような顔が微かに歪む。

ぐちゃぐちゃと気持ちの悪い感情で歪む表情は、垣根以外誰一人としてその本心を理解することは無かった。

 

「皆さんお知り合いなんですね」

 

「大事な友達なんだよ、けいともていとくも!」

 

「……それは光栄ね」

 

「え?俺の妹になれて光栄だって?」

 

「それは言ってない」

 

五和とインデックスの言葉に少しだけ表情を和らげた彗糸だったが、髪をつつく唇の感触のせいか表情はすぐに歪んでしまう。

しかし、鮮やかな緑の目が歪み、小さな歯を食いしばる姿に凄みは全くない。

 

そんな姿に垣根が懲りるわけもなく。

──全然怖くねーよバーカ!

と、内心見下しながら垣根は動かない足を強く抱きしめた。

 

「そんで、なんでまたこんな姿に?」

 

「テメェらには関係ねぇよ」

 

「答えてくれ。お前ら危なっかしいし、心配なんだよ……」

 

玄関先から移動し、キッチン近くで一人楽しく嫌がる彗糸で遊んでいると、話の流れをぶった切って上条が少し真面目な顔を見せる。

本来の天羽彗糸の姿とは随分違う今の彼女について教えろと、そう彼は言った。

 

確かに、デカイ女が小さくなって、白くなっていることは知り合いならば誰だって気になる。それは理解できる。

しかし、それは答える必要がない。

結局のところ他人で、関わる必要も、知る必要もない存在なのだ。

 

けれど上条当麻は主人公である。

上条には一切関係のないことでも、たとえ垣根だけが知っていればいいことでも、ズカズカと入り込んでくる。

それが主人公というもので、だからこそ主人公たる所以

上条当麻(ヒーロー)の名を冠する以上、記憶があろうとなかろうと、彼はそうやって行動してしまう。

 

「……この間の休みにテロがあったろ?」

 

「らしいな、俺はあんまり知らなかったが」

 

「そんときに巻き込まれて治せないほどの傷が出来ちまってな、回復してる間は脳波を使ってこっちの体を動かしてんだ。ラジコンみてぇなもん」

 

主人公というだけで全てを持っている彼に、自分だけのヒロインを渡したくはない。

一瞬という時間、葛藤が心でせめぎ合っていた。

 

けれど、友人としてなら教えてもいいかと、少しだけ丸くなった悪党は思い直す。

黙っていては勝手に勘違いされ、的外れな行動をされてしまうかもしれない。

それが主人公相手ならば尚更。

 

自分を正当化するために言い訳を考えながら垣根はだいぶマイルドに真実を言い換え、手持ち無沙汰に抱き上げた彗糸の髪をいじり出す。

前の金髪とは違う白に近い髪色は、部屋の明かりのせいかやけに眩しく見えた。

 

「ラジコンって、その体はどっから来たんだよ」

 

「作った。こいつのDNAとか色々使って。元の姿にもできたが、色々あってな」

 

「……てことは幼女化は垣根の趣味ってことか!!お前って奴は……!」

 

眩しい髪を弄んでいると、上条の震えた声が静かに響く。

思わず前を向いて上条の目と視線が合うと、熱い感情が燃え盛る強い瞳に体が固まった。

 

好きな女を好きなように弄り、好みへと変える。

肉体そのものを変えて望んだ姿へ変えるなど、18禁の漫画でしかありえないような現実であり、興味が尽きることは無い。

 

しかし目の前にその実例がいる。ならば知りたいことは一つ。

彼女の新しい体が造り手の性癖を色濃く反映しているか。

それを知らなければ死んでしまう、そんな物騒で呆れた熱意を秘めた目だった。

 

「話聞け。時間が無いし、デカいままも困るから昔の姿にするしかなかったんだよ」

 

「……じゃあそういうことにしておこう」

 

「あ?」

 

誰も彼もどうして性的な話にしたがるのか。思春期らしい上条の反応に垣根は呆れたように、そしてどこか面倒そうに顔を顰める。

彼自身は子供の姿に欲情する性癖など持っていないというのに、他の人らは直ぐにそういった話に持ち込む。

 

腹立たしい。

そんな話したくないというのに、好奇心旺盛な思春期達はところ構わず話を続け、神経を逆撫でする。

 

「……ねぇ、昔の姿ってことは、これは何歳の頃の姿なの?」

 

「十歳くらいか?小学生にはなってると思うが」

 

苛立ちを募らせながら垣根は顔を伏せると、今度はインデックスが恐る恐ると言った風に垣根に近寄る。

ろくな話じゃないと直感的に気がつくも、それでもシスターの話を遮る気にはなれなかった。

 

「……それでも、私より大人じゃない?」

 

「はい?」

 

モゴモゴと言い淀むインデックスの目線は明らかに彗糸の胸部へ向かっており、視線に気がつくと彗糸は目を見開く。

胸の下に切り替えがあるワンピースのため確かに少し強調されているが、今までの彼女と比べれば至って普通の膨らみである。

 

しかし小学校を卒業していない年齢にしては明らかに大きな膨らみでもあった。

それを暗に指摘するインデックスの考えはとても分かりやすく、この場にいる全員がその意図を汲み取る。

 

呆れてものも言えないとはこういうことかと、皆思っていた。

 

「みんなして、そんなに気になる……?」

 

「べべつに気にしてる訳じゃ」

 

「そうそう、気にすんなよ。遺伝てものがあるんだから」

 

視線に耐えかねため息を着く彗糸に、恥ずかしそうにインデックスは目線を床へと移す。

だがその恥ずかしげな顔も、上条のデリカシーのない発言で一気に冷たい顔へと変わった。

 

明らかに間違えた発言だった。

デリカシーがない垣根でさえその発言に面倒が起こると分かるほどあからさま。どうしてそんなフォローになるのかと、頭を悩ませる他ない。

 

「……いいもん」

 

ローテーブルの傍に正座すると、糸が切れたかのように倒れてインデックスは平坦な声色でつぶやく。

どこからどう見ても拗ねていた。

 

「あ、あれ?あの、インデックスさん……?」

 

「デリカシーねぇこと言うから」

 

「アンタもないじゃん」

 

困惑する上条に呆れた視線を投げかけると、危険物(インデックス)から離れるようにベッドへ彗糸とともに腰を下ろす。

柔らかいベッドに二人並んで成り行きを見守るも、どこか頭の隅でこの後の展開が予想できていた。

 

「あの、なんだかよく分かりませんが、完璧に爆発する前にいっそ、噛み付いてくれませんか?少しずつ怒りパワーを分散していけば、頭蓋骨も噛み砕かれずに済むと思うのです」

 

しれっと移動して高みの見物を決め込む垣根たちを観客に上条は深々と床に頭を擦り付け、いわゆる土下座をし始める。

自分の失態というのに保身しか考えていない言葉に呆れてしまう。

 

奇妙な時間だった。

小さな子猫がバカにするように目の前で寝転び、沈黙が訪れる。最悪な空気の中気持ち良さそうに身体を伸ばす子猫が場違いだった。

 

「そうだ、ねこちゃんにはいいものがありますよ!最高級なまり節!」

 

とても滑稽な様子に耐えきれなかったのか、五和は慌てて大きなカバンから生の鰹節を取り出すと明るい声で猫を撫でる。

黄色味がかった三毛猫は土下座する上条の体をまたいでなまり節へ向かって走り出した。

 

「相変わらず賑やかだな」

 

「人用のなまり節……ミネラル過剰から尿路結石ならなきゃいいけど……」

 

飛び乗った上条の小さな呻き声と、静かなインデックス、そして健気に猫を可愛がる五和。その姿を呑気にベッドで幼い義妹を膝に乗せて垣根はつまらなさそうに見学していた。

 

「買い物してたのか、いつのまに」

 

「はい、いくら護衛のためとはいえただ居候するのは気が引けますし。なんでもお手伝いしますよ」

 

「……っ!」

 

つまらなさそうに彗糸の髪を弄りながら成り行きを見ていると、地獄のようだった土下座の会は別のやましさを感じる雰囲気に変わる。

上条の視線はインデックスではなく、キッチンへ向かう五和の華奢な体へ注がれていた。

 

「なに、とうま。なんで空気の流れが一変しているの?」

 

「自分の胸に聞いてご覧なさい?炊事洗濯家事……上条さんに全部任せっきりで、今までお手伝いすらしてこなかったのは誰ですか?」

 

一変した空気にインデックスが起き上がり、視線は上条へ向かう。

形勢逆転か、今はインデックスの立場が危うくなっていた。

それは彼女の日頃の行いのせいだったが、それでも上条が失言をしたことに変わりはない。

 

「それは、ごめんだけど……あっ、そうは言っても状況は全然……!」

 

「お鍋とかフライパンはこっちで、調味料はこっち」

 

「はい!」

 

だが上条は己の失言などとうに忘れ、五和をキッチンへ入れる。

緩んだ頬でキッチンの説明をする上条にそれほどまでに嬉しいのかと垣根は呆れ果てて眺めていたが、キッチンからでた瞬間にその顔は悲惨なものに変わった。

 

「垣根には天羽がいて、隣のグラサンにはメイドがいて、青髪は下宿先のパン屋で飯を食って。その間俺は……はぁ」

 

「お前もインデックスがいるだろーが」

 

ベッドの方へ酷く項垂れて戻ってきた上条の顔に生気はなく、大げさに肩を下げる。

冗談交じりとはいえ、その目には疲れからくる哀愁が漂っていた。

 

「あ、でもお前今日ピザ持ってたけど、いつもは外食なのか?」

 

「あー、まぁ、そんな感じ。車椅子のガキにやらせるなんて酷な話だろ?」

 

「なら同類か……ヨシッ!」

 

あまりにも可哀想な表情をしていたにも関わらず、次の瞬間にはけろっといつも通りの表情で昼頃の話を蒸し返してくる。

お昼頃にピザを買っているなど、確かに自炊をしていない人間にしか見えず、彼が望んでいる女の子の手料理を垣根が食べているようには思えない。

 

ようやく上条がマウントを取れると、幼女を抱えた美男子を前に彼はガッツポーズをとる。

ひとつでも同じ境遇だと知るや否や、途端に彼は晴れやかな気持ちでいられた。

 

「何がヨシだ、俺はこいつのためを思って言ってるのであってだな、」

 

「……車椅子だからって出来ないって思ってたわけ?」

 

「いや、車椅子じゃ大変だろ」

 

「料理くらい、この体でも出来る」

 

だが、彼らの言葉は少女にとって最上級の侮蔑でもあった。

車椅子というハンデを理由に彗糸を子供扱いし、繊細な人形を相手していると言わんばかりの侮辱。

負けず嫌いな彼女が、その言葉に被せるように子供ながらの唸り声で苛立つのも当然である。

 

「え、けいと料理出来るの?」

 

「あんまり得意じゃないけど、でも車椅子だからって出来ないわけじゃないし」

 

「な、なら私と同じ……」

 

垣根の膝の上で苛立つ彗糸だが、インデックスの問いには朗らかに答えてまるで別人のように対応する。

だがその優しい対応と謙遜が過ぎた返答でインデックスが誤解するのも無理はなく、碧眼を輝かせて彗糸を見上げた。

 

「インデックス、こいつの得意じゃないは『素人質問で恐縮ですが』と同類だ。信用するな」

 

「確かに、調理実習普通にできてた記憶あるな」

 

「そんなことないよ。キャラ弁とか可愛く作れないし、ホワイトソースとかたまにダマになって失敗しちゃうし」

 

高校生の頃は妹と自分の弁当を作ったり、アメリカで一人暮らしをしてる時は自炊したり、妹とお菓子作りまで作ってきた女、『あんまり得意ではない』という言葉は適していない。

しかしあまりにも自分にストイックすぎる彼女は他人と比較することもできずに軽い調子で自虐する。

それは到底褒められるような行為ではなく、言葉を聞いた周りに至ってはあまりのストイックさに驚き呆れていた。

 

「別にプロじゃねぇんだから、そんな気にすんなよ」

 

「……美味しいほうがいいでしょ?」

 

驕りを捨てた緩みのない考えにため息をついて垣根は彼女の頬をつねる。子供の姿にしたのは彼女の母性、正しくは姉性、を捨て去るためでもあるというのに未だにおかしい思考回路は彼にとっては不安でしかない。

 

それでもそのストイックさが自分のためだと面と向かって言われるとどうにも強く怒れなかった。伏せた顔は髪で隠れて表情は見えないが、彼女が()()想ってそんなことを言っているかなど、想像に容易い。

 

「さては俺の事大好きだな?」

 

「……どーだろね」

 

ほんの少しの糖分を含んだ彼女の言葉に優しく髪を撫でる。それに答えるように腰を支える大きな手を軽く抓って彗糸は頬を膨らます。

どんな辱めを受けても、どんな侮辱を受けても、一度好きになった彼を嫌いになることは出来ない。自分の性格に縛られ、立場(ヒロイン)を固められた彼女には神の手が加わらない限り垣根帝督を嫌いになれなかった。

美しい愛、汚い愛、なんと形容されようと、宝石の輝きが失われることのないように感情も変わることはない。

 

ただひたすらにもどかしい感情がそこにはあった。

 

「オメーら人の部屋でやらしい雰囲気を出すなァ!」

 

悶々としながら触れ合う二人の空気を粉々に壊す大声が狭いワンルームに響き渡る。

距離の近い男女が言葉を交わすのはあろうことかベッドの上。彼らに()()()()は微塵もないと言っても、家主の気は休まらない。

 

「あぁ、悪い。同棲相手の手料理が食べられない上に童貞の上条には理解できない空気だったな……」

 

「お?煽りか?煽ってんのか?煽りやがってますね?」

 

「……しょーもない煽りするくらいならやっぱ作らない方がいいかな」

 

「えっ」

 

怒りが爆発する上条に調子づいて垣根は彗糸を抱きしめたまま笑うと、みぞおち付近を軽く小突かれ呆れられる。

その言葉のせいで男子高校生二人に面倒なスイッチが入ってしまうことも知らずに、彗糸は小さくため息を吐いた。

 

「俺を煽るから垣根に不幸が!いいなこの流れ!」

 

「よくねぇ!」

 

「独占禁止法違反だバカヤロー!女子の美味しい手料理はみんなのものなんだよ!」

 

「いや、彼女作ればいいだけだろ……」

 

劣等感からくる苛立ちをぶつける上条だったが、垣根は彼の心情など理解しようとせずとても冷たく現実的な言葉を放つ。

その言葉は常人ならば口にするのも恐れられるような言葉。

 

『彼女』

自分を好きだと言い、自分を愛し、料理を作り、手を繋ぎ、肌を重ねる存在。

常人の憧れも、我儘も、全て叶う、そんな素晴らしくも遠い存在。

 

「それは言ってはいけないワードだ。万死に値するぞ、垣根ェ!」

 

「は?童貞ビビりの女たらしのほうが万死だろ、何人の女泣かせてきたんだ。罪でも数えてろ」

 

けれどその言葉は決して口にしてはいけない呪いの言葉だった。そのおぞましい言葉に上条は肩を震わせ垣根を強く睨む。

男のプライドをかけた戦い──あるいはしょうもない口喧嘩と呼ぶ──が火蓋を切られんとしていた。

 

「いやいやいや!俺らの巨乳枠をロリにしたホスト崩れのほうが罪が重いだろ!つかタラシはお前だ!このイケメン!高身長!金持ち!頭脳明晰!」

 

「誰がホスト崩れだ!!このハーレムラノベ主人公!」

 

「はぁぁ!?俺がハーレムラノベ主人公ならテメェはエロゲ主人公だよ!!!寝取られて自滅しろバーカ!!」

 

「テメェまじぶっ殺すぞ!死ねバーカ!」

 

幼稚な罵詈雑言が狭い室内に反響し、二人は構っていた少女たちをほっぽり出して取っ組み合う。

子供同士の些細な喧嘩に女性たちは少し冷ややかな視線を投げることしかできなかった。

 

「あの、大丈夫なんですか……?」

 

「いいよ、そのままにさせておいて。上条くんなら死なないし」

 

全てを砕く右手さえあれば垣根の能力が害を与える可能性もなく、ちょうどいい喧嘩相手だと思いながら彗糸はキッチンから出てきた五和に顔を向ける。

困惑する五和だったが、随分と落ち着いている彗糸の姿に感化されたのか止めに入るのをやめて彼らを見守ることに徹することにした。

 

「でも、さすがに止めた方がいいんじゃないかな……?」

 

「あーね。でもすぐ終わるしょ」

 

「あ、そうだ、気分転換に大きなお風呂でも行きません?お二人とも暖まれば落ち着くと思うんです」

 

「それいいかも!ね、彗糸!」

 

それでもやはり喧嘩が長引くのはよろしくないと、シスターらしく止めることに賛成するインデックスに女性たちは顔を合わせる。

しかし喧嘩慣れし、魔術の効かない男子高校生一名、超能力者第二位の腕っ節もある男子高校生一名、両方を抑えるほどの力量を持った人はこの場におらず。

 

ならばもうリラクゼーションに頼る他ないと、五和はある程度収まってきた男性二人の言い合いから視線をそらして困ったように笑った。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。