とある科学の肉体支配   作:てふてふちょーちょ

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来週もお休みです。しばらく隔週になります。


106話:鬱陶しい女とプライド

静かな病院にて、誰も口を開かぬまま時計の秒針が進む。消灯時間を過ぎた病院は薄暗く、天草式以外に人はいない。

そわそわとする仲間達の中、建宮斎字は取り返した首元の小型扇風機を手持ち無沙汰に触りながら医者から話を聞きに行った仲間を待っていた。

 

「とりあえず危険な状態は脱したようだ」

 

沈黙を破るように現れた男が医者からの知らせを伝える。急ぎ足で建宮のもとへ報告にきた彼の言葉に、小さな歓声がチラホラとあがった。

 

「全身打撲と脳震盪、軽度ですが内臓へのダメージもあるとか」

 

「しばらくは絶対安静ね」

 

「対応が遅く、ちゃんとした指示がなければさらに酷かった可能性があるそうです。医者があの子に感謝しろと言ってました」

 

「あの子?」

 

胸を撫で下ろし、一先ずの無事を確認できたと皆声を潜めて喜びを分かちあっていると、男は報告を続ける。

困惑した顔をして医者の言葉をそのまま伝えたが、名前も知らない『あの子』という単語を建宮斎字率いる天草式は誰一人そのを真に理解できなかった。

 

「さぁ?一緒についてきたあの茶髪の少年のことかと」

 

「実際の戦闘は見てないけど彼もそこそこの能力者のようだし、なんとかしてくれてたのかもね」

 

「それは後で本人に聞くとするのよ」

 

病院に搬送されたのは五和と上条当麻、そしてその友人である少年。

重症だった上条をベッドに乗せて、あとの二人は軽い手当と共に病院まで一緒に乗り込んだと話は聞いていた。

五和であれば仲間なのだから『あの子』などという表現は用いない。ならば消去法的に少年のことだと適当に状況を判断し、言葉を濁した。

 

「で?お前さんはそこで何をやってるのよ」

 

言葉の意図や意味を探るよりよっぽど大切なことがひとつあった。

上条当麻がいる病室の扉を塞ぐ女に鋭い視線を投げると、建宮は苛立ったように言葉を吐き捨てる。

 

ぐずぐずとすすり泣く女。ピンク色のセーターを涙で濡らし、地べたで膝を抱えて五和は嗚咽を漏らす。

責任感と自己嫌悪、言葉に表せない気持ちにただ泣いていた。

 

「わ……たし、守るって……そう言って……槍だって、魔術だって、なんの役にも立たなかった……の、に。お友達も……怪我してるのに、守ってて……私だけ、何もできなくて……」

 

ぽつりぽつりと五和は強く膝を抱えて俯く。

金属が地面に衝撃を放つ音、脳を揺さぶった強烈な痛み、その全てが忘れられない。

凄惨で悲惨な血飛沫が記憶の中にこびりつき、震えが止まらず感情を吐露する彼女の背中はとても小さく、哀れであった。

 

「私、あの人の話を聞いた時なんてすごい力を持っているんだろうって思いました。でも違ったんです。あの人はどんな防御術式にも頼ることができない、どれだけの回復術式でもかすり傷一つ治せない。本当に体一つで戦っていただけなのに……」

 

「五和……」

 

「私、そんな人を見殺しにしたんですよ」

 

少しだけ顔を上げた彼女の目元は赤く、緊張で喉が干上がったのか、絞り出した声は掠れている。

人目も気にせず地べたに座る彼女の本音が冷やかな空気の中、長い廊下に響き渡った。

 

「そんな人間が、なんでのうのうと生きているんですか!?なんで天罰が降り注がないんですか!?こんなのっておかしい!あのベッドで眠っているのは私の方だったはずなのに──!!」

 

心の奥を吐き出す叫び。悲痛な声に、誰一人として答えなかった。

答えられなかった。

 

「お静かに」

 

しかし、誰でもない声がいとも容易くその叫びに答えた。

叫びが轟く廊下の先、全ての視線を奪う。そこにいたのは電動の車椅子に乗った背の低い幼い少女だった。

 

「ッ……」

 

「ここは病人が寝る場所、アンタが懺悔を喚き散らす場所じゃないんだよ。アナタたちも、待つなら緊急外来のロビーに行きなさい」

 

「ごめんなさい、私……」

 

亡霊と見間違うほど白く、淡い色をした幼い少女が廊下を進む。進むたびに花の香りが舞う彼女に、ここにいる誰もが視線を奪われた。

 

「それは何に対しての謝罪?」

 

「……それは」

 

「ここで喚いたこと?悲劇に酔いしれてこんな所で自分語りしたこと?守れなかったこと?何もできなかったこと?どれに対しての謝罪かはっきり言ってくんない?じゃないと、返しようがない」

 

青磁色のシノワズリの少女は恐ろしく煌びやかな緑の目を歪めて五和を見下ろす。手先の体温が冷える感覚が建宮を襲い、緊張のせいか、ただ少女の長い髪を見つめ押し黙ることしかできなかった。

 

「私はっ!……酔いしれてなんか、ありません」

 

「すごいと思っていました。でも違いました。小学生みたいな言葉垂れ流しておいて、何を言っているの?」

 

突然現れた彼女が上条当麻の友人が連れていた子だとようやく思い出すも、少女を制止するタイミングを失い辛辣な言葉が飛び交う。

優しく儚げな雰囲気の少女だったが、吐き出す言葉が鋭く尖っていた。

 

「んなことが仕事を完遂できなかった言い訳になるとでも思うわけ?護衛なんだよね?上条くんの。それなのになぜアンタが五体満足で、彼が死にかけなの?」

 

五和の反論に動じもせず、少女は強い言葉を吐き捨てる。蔑む緑の瞳が当事者ではないというのに建宮たちには恐ろしく見えていた。

 

「アンタたちにも言ってんだよ。『()()()()()()()()』?自分たちの立場弁えてないのがトップなんて情けないね」

 

「ッ、なぜそれを……?」

 

「あたしとは()()が違うよね?上条当麻を無事に守ることが今の仕事でやるべきことだよな?ふざけた言葉で士気を高めるのは構わないけどさぁ、TPOくらいわっかんないかな?」

 

そしてその恐ろしい瞳は五和から建宮たち全員へ向かう。絶対に知り得ない情報を口にする彼女に恐ろしさとは違う、得体の知れないおぞましさが建宮の脳を駆け上る。

目の前のおぞましい少女が人間に見えない、それほどまでにその一言が亀裂を生んだ。

 

「恋する感情が邪魔になることくらい分かるだろ、それで失敗したら失うのは立場と仲間だけじゃねぇんだぞ。事の重大さ本当に分かってんの?」

 

まるで仕事で過失を作った部下を論理的に問い詰めるように、声を荒げず淡々と少女は言葉を続ける。

誰も彼女に反論などできなかった。

現実(メタ)を生きた合理主義の正論に対抗する手段など、彼ら(キャラクター)が持っているはずもない。

 

「分かってねぇよな?分かってたら教皇代理、アンタが彼の護衛をすべきだった。それが叶わぬのなら二人体制でも敷くべきだった。大切なキング守るのはいつだってたくさんの駒だろうが。それすらできなかったから、今、あたしのクラスメイトは死にかけて、あたしの家族は怪我したんだぞ」

 

「……申し訳なかった」

 

「アンタたち表では普通に働いてんだよな?依頼もまともにできず、依頼側に損害与えて、自分たちは少ない被害で収まるって普通の会社なら解雇もの、なんなら賠償責任が発生してんの。責任なんて取れもしないくせに何が申し訳ないわけ?何に謝ってんのか理解できてる?」

 

ようやく絞り出した建宮の謝罪の言葉も軽くあしらわれ、話したこともない日常を言い当てられ誰もが口を閉ざして視線をそらす。

いたたまれなかった。

ただの子供に反論の余地なく圧されている。

信じたくない光景に絶句するしかできなかった。

 

「貴方だって……何もできてない、じゃないですか」

 

誰もが黙る中、地面から立ち上がった五和が小さく呟く。高いとは言えない背でわざとらしく足と車椅子に視線を移し、少女を見下ろす彼女に緊張感が漂う。

一触即発。女同士のプライドやら愛情やら恋やら、汚いものをかき混ぜた何かが張り詰めて、破裂してしまいそうだった。

 

「足の動かない、喧嘩もできない子供だから?最低な価値基準だな、社会人なら改めたほうがいい」

 

「……っ」

 

「確かにあたしは他人なしじゃ立てないし、歩けない。チョーカーを外したら意識だってままならないし。半身不随、右腕の神経欠如、脳の破損、能力の権限も奪われて。いろんな制約があるのは自分でも分かってる。で、アンタは?五体満足で?魔術もできて?なのに何もできてないよね?ハンデもないくせに、何いっちょまえに吠えてんの?」

 

だが上手なのは少女の方だ。棚にあげた五和自身の問題を引き摺り下ろして淡々と逃げ道を奪う。

自分に向けられた侮蔑に怒らず、ただ五和たちの過失をよく回る口で責める様は子供に出来る芸当とは思えなかった。

 

「……なら、貴方は何が出来たんですか?」

 

「役目は果たしたよ。アンタたちと違ってね」

 

「何をしたんですか?どんな素晴らしいことを?そこまで言える自信がどこに──」

 

「好きな人に生きて欲しくて代わりに死んだ。これで満足?」

 

吐き出した五和の反撃に、少女は手のひら程度の大きさのカードを取り出して見せびらかす。

彼女の肩越しに見たそれは、どこかの学校のカード型の学生証。印刷された本人写真には可愛らしく胸の大きい学生が写り、一瞬誰なのか分からなかった。

 

しかし、輝く緑と赤の荘厳な目にはっと気づく。

目の色も、髪の色も、肌の色も、体の大きさも、何もかもが違うというのに、建宮たちは気がついた。

その写真の少女が、目の前で蔑む少女であることを。

 

「死にそうだったから、あたしが代わりに死にました。そしたら気まぐれか申し訳なさか、こんな不便な体とはいえ生き返らせてくれましたよ。体全てがあたしの希望の証明、彼が生きていることがあたしの『好き』の証明なわけ、わかる!?」

 

「何を言って……?」

 

「確かに、今のあたしはできることは少ないよ。彼に、あたしの好きな人に、上条くんほどではないけど傷を負わせてしまった。治すことも、守ることもできない自分があんた達なんかよりよっぽど憎い」

 

見せた学生証をスカートのポケットに戻して唾を飲みこみ息を吐き出す。激昂した感情を抑えながら、少女は静かに息を整え扉に手をかけた。

 

「でもだからと言って立ち止まることはできないの。どんな形でも、あたしにはやるべきことがあるから」

 

冷たい声で呟いて、少女は上条当麻が眠る病室の扉を開く。

そこは誰も入れるなと言われていた病室。止めようと体が動く前に、目の前の五和が先に手を出した。

 

「そっちはダメですっ!」

 

「ッ!?」

 

侵入しようとする少女を車椅子ごと押し倒し、くるくる回る車輪が壁にぶつかる音が静寂な夜に響く。地べたに倒れた少女の苦々しい顔にどよめきが広がった。

 

「ご、ごめんなさい、でもここは……」

 

「ここは医療関係者以外立ち入り禁止なのよ。嬢ちゃん、手荒で悪かったが……」

 

「はぁ、むやみやたらと入るわけないでしょ」

 

誰の手も借りず一人で車椅子に乗ると、今度は別のポケットから名刺入れを取り出す。面倒そうにその中の一枚を手渡す。

そこには簡素な字で『肉体干渉能力保持特別()()()()()』と書かれていた。

 

「医療、従事者?」

 

「そうだよ。ここのドアをまたげる資格があるの。大学に行って、博士号取って、勉強して、大切な人を助けようと頑張った結果がこれなの。意味わかる?」

 

大事そうに名刺入れをしまい、彼女は病室へ入る。

自分たちが入れないその部屋にためらうこともなく車椅子で踏み入れた。小さな子供が、とても大きく成熟した大人に見えるほど、彼女の見せた笑顔は冷徹で、恐ろしい。

 

「入った学校も、取った資格も、専攻した学部も、付き合ってきた人たちも、全部たった一人の愛すべき家族のため。あたし、好きな人を救うために人生も体も潰したの」

 

扉が閉まる。

最後、隙間から見えた冷たい緑の瞳がまっすぐ彼らを見た。

 

「それで、お嬢さんは何をなされたんでしたっけ?」

 

再び沈黙が訪れる。小さな少女の恐ろしい姿が脳に焼きつき、恐怖が喉を閉ざす。

もう誰も口を開くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

温かいベッドの中で手元の小さなリモコンを弄る寂しい夜、静かな病室の中でガラガラと扉を開く音が聞こえた。

そして次に聞こえたのは回る車輪の軋む音。

 

「おー、遅かったな」

 

誰が来たのか音だけで見当がつくと、垣根帝督は少し嬉しそうに口角を上げて少女に視線を向ける。

彼の想像通り、そこには車椅子に乗った自分の義妹、彗糸が少しむくれて病室に入って来た。

 

「頼まれごとは終わったのか?大変だな、能力もないのに」

 

「アンタが外見の認識弄ったからでしょ」

 

「そのおかげでスムーズに上条の容態とか医者に言えたんだし、文句言うなよ」

 

「……そういうことじゃない」

 

「は?」

 

コンビニのビニール袋片手に彼のベッドの車椅子を近づけて、苛立ちを隠さず彼女はため息をつく。

口を固く結んで彼の言葉に返事もせず淡々と袋の中身をサイドテーブルに置く彼女は明らかに怒っていた。けれど垣根には原因が分からず、いつもの調子で接する他ない。

 

「あー、で、何買って来たんだ?」

 

「りんご、果物のほうね」

 

「ナイフは?」

 

「果物ナイフくらいはコンビニで売ってる」

 

見舞いの品にしてはありきたりでオーソドックスな赤いリンゴと紙皿を机に並べると、新品の果物ナイフをプラスチックの包装から取り出しリンゴを切り始める。

機嫌が悪いのにも関わらず健気にリンゴを切り分け、せっせと皿に並べる姿は小柄な体型も相まって小動物に見えた。

 

「それで……傷の方は大丈夫なの?」

 

「平気。ったく、医者もうるせーよな。頭だから一応検査入院しろとか。こういう時超能力者(レベル5)は面倒だ」

 

紙皿からひとつ、綺麗に切られたリンゴを手に取り口に含むと、甘酸っぱい舌触りが口腔に広がる。昼から何も食べていない胃袋に小さく甘いリンゴがゆっくりと落ちた。

 

一口で飲み込むリンゴが空腹を男子高校生を満足させるわけはない。

けれど、垣根のこめかみに貼られたガーゼを見て泣きそうになる少女に食欲とは違う感情が満たされ、空腹など忘れてしまった。

 

「それで、強さ(レベル)なんて知って、何がしたかったの?」

 

「この世界で俺はまだまだなんだろ?蛙だって大海を知りたいのさ」

 

俯き加減に彗糸はリンゴを剥く手を止めて、上擦った声で呟く。

大事な人にたとえかすり傷でもつけたくなかったと、彼女の緑の目は強く訴えていた。けれどその思いは垣根にとってはただ邪魔な優しさ。

必要のないもの。

だから自分らしくない言葉を使ってでも、その言葉を切り捨てたかった。

 

「……随分と、設定(性格)にそぐわないこというようになったね」

 

「お前のおかげでな」

 

「こんな人間に家族なんて言って、自分の弱さを理解して、しおらしく病衣なんて着てさ」

 

「そりゃ神様との邂逅なんて経験すれば悪役だって丸くなるさ」

 

「そんなこと思ってないでしょ。全部知ったアンタが、なんでこんなとこ居んのよ!」

 

だが議論は熱を上げ、息を荒げて彼女は手にしたリンゴを握り潰す。ぼたぼたと小さく柔らかな手から溢れる透明な液体が彼女の服を濡らし、彼が贈った服に染みを広げた。

彼の能力で使った作り上げた特殊な服、汚れることも破れることもない。それでも滴る液体に彼は顔を顰める。

綺麗なものが穢されてくようで堪らなく腹立たしかった。

 

「交渉権のために動いてて、それだけが目的だったんでしょ?それが設定(アンタ)じゃん!家族とか、ヒロインとか、そんなもの一番()()()()から遠いものじゃん!」

 

「今となってはどうでもいいことだ」

 

ため息交じりに壁に掛けていたスーツからハンカチを取り出し彼女の服と手を拭うと、手が重なる。

濡れた小さな手と、赤いハンカチ。

交わった緑の瞳の奥にあるのは戸惑いと恐れ、彼女の言い様が否定された結果の動揺だった。

 

「そうじゃないよね、そんなこと言うキャラじゃないよね。だって、あんなに一生懸命に、」

 

「もうどうでもいいって言ってんだろッ!!」

 

引き攣った笑みで並べた彼女の言葉は体が固まるほど低く通る垣根の声で掻き消えた。

思わぬ反論に彗糸の手が微かに震え、甘いりんごと花の香りが舞う。

強く言いすぎたと後悔しても遅く、涙を零しそうな彼女の瞳から視線を逸らして口を結んだ。

 

「……だって、悪役()は主人公に勝てないんだろ?」

 

ようやく出た言葉は自分を正当化するためのもの。強く小さい手を握りしめ、逸らした視線は定まらずただ何もない床を彷徨った。

 

彼は結末を知ってしまったのだ。

神の寵愛(主人公補正)を。

世界の理(メタ的設定)を。

主人公になれなかった現実を。

一生覆らない真実を。

 

誰も彼もが救われるエンディングを知った。

第一位が欲しかった地位をとってしまうことを、彼は知ってしまったのだ。

それが戦意を削ぐ。彼が成し遂げたかったことは嫌いな格上に掻っ攫われ、勝てない役者だとバラされた。

ならば今ある『唯一無二』を大切にすべきだと、そう感じるのはおかしなことだろうか。

 

「……じゃあ、勝たせてあげる」

 

「あ……?」

 

まるで責めるような言葉に彼女の思考回路をよく知る彼は酷く後悔するも、予想と反して彼女の口からこぼれたのは謝罪でも怒りでも僻みでも蔑みでもなかった。

それは恨みを持った、狂気に満ちた、覚悟を決めた、決意にみなぎった、強い女の言葉だった。

 

「おい、どこ行くんだよ」

 

「必要なもの、取ってくる」

 

くるりと車椅子を動かして、リンゴの残骸を残し彼女は病室を後にした。甘酸っぱい果物と尊く甘い花の香りが充満した部屋でひとり、垣根はベッドに体を預け布団にくるまる。

 

能力を使えない、足の動かない少女に何ができる。

拗ねて、こじれて、見栄っ張りな少女が飛び出した先にできることなどないというのに。

 

しかし毛布の中で不貞腐れていても大事な妹であることに変わらない。

金も多く持たせておらず、一人の子供。夜の学園都市で何が起きるかなど深く考えなくてもすぐに最悪の予測はつく。

 

仕方ないと、もぞもぞ毛布から顔を出して適当な個体を一匹、監視役として飛ばす。

心配よりも拗ねた彼女への苛立ちとプライドが勝った。

どうせすぐに音を上げるだろう。何もできない子供、すぐにホテルか彼のいる病院に向かうしか選択肢はない

 

心配することは何もないと、リンゴの置かれたサイドテーブルを横目に彼は目を瞑った。

 




激おこさん。気が立ってる犬みたいな人です。
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