とある科学の肉体支配   作:てふてふちょーちょ

116 / 162
111話:女王と三姉妹

学園都市とは違う空気、匂い、音。

雑踏の中で聞こえる英語と聞き慣れない音声案内に垣根帝督は辺りを見渡した。

 

長い空の旅をようやく終えてついたのは西洋の島国、イギリス。

今まで過ごしてきた学園都市とはどこもかしこも違う景色に少し目眩すら覚える。なにせこの大きな土地からたった一人の幼女を探し出すのが今の目的

約六千万という人口の中からたった一人の子供を探すのはあまりにも億劫だ。

 

「なぁ、乗り換えの確認一緒にしてくれねぇか?」

 

「さっきも確認しただろうが。そんなに不安かよ」

 

今後の行動に少なからず不安を覚えていると、後ろから困ったように上条当麻が垣根の肩を叩く。

見慣れた学生服で何枚かのチケットを持った彼の呑気な顔が腹立たしい。

 

これから彼が向かうのは物語の中心地、バッキンガム宮殿。

それがたまらなくムカつく。

別に彼が美術オタクだとか、歴史オタクだとか、そう言った理由ではなく、その立場が腹立たしいのである。

 

彼の義妹(ヒロイン)は今や行方不明。けれど、未来の全貌を知る彼女なら必ず未来の先にいる。

そうなると物語の中心地、バッキンガム宮殿に彼女が向かうのは想像に難くない。

一緒に向かって、物語の登場人物から話を聞きたいのが本心。

だがたとえ学園都市が誇る超能力者の一人である垣根といえど、国の大事な施設に入れるわけがない。

 

しかし上条当麻は入れる。

インデックスの保護者だから。

なんでも打ち消す力があるから。

主人公だから。

 

「つかお前一応国賓みてぇなもんなんだから、迎えの車あってもよくね?」

 

「そんなものただの学生にはありませんことよ!」

 

「とうま……ていとく……」

 

男子高校生二人、いつも通りの軽口を叩き合っていると後ろからゾンビのような掠れた声で呼び止められる。

欲に満ちた恐ろしい少女の声。知り合いの悲痛な声。そして地鳴りのように響く腹の音。

背中から感じる圧力に振り返る他なかった。

 

「なっ、なんでしょうかインデックスさん……?」

 

「とっても疲れてお腹がすいたんだよ!!機内食だけじゃ全然足りないし!!ご飯は!!!??」

 

「うわぁぁぁ!!」

 

腹の虫を鳴かせて小さいシスターが尖った歯を見せる。珍しくシスター服ではなく、一般的な白いワンピースを着ているせいかいたって普通に町並みに馴染んでいた。

 

言いたいことだけ言って上条に飛びつくインデックスの叫びを尻目に垣根は息を吐く。

なんとも騒がしいやつらだろうか。主人公とヒロイン、二人楽しくハネムーン気分かと思うと更にムカつく。

 

「あの……お迎えにきたのですが……?」

 

「か、神裂サン……うっ」

 

上条がインデックスによって戦闘不能に持ち込まれたところ、不意に誰かから声をかけられる。

床に寝そべり頭を齧られる上条の前に現れたその人と自然と目が合った。

 

垣根と同じくらいの長身と長い黒髪、まだ未成年ということに驚くほど大人びた彼女、神裂火織の姿がそこにあった。

 

「よう、神裂。相変わらず派手だな」

 

倒れた上条たち二人をまたいで神裂の元へ行くと、垣根は不思議な格好を見つめる。右腕と左足の袖が引きちぎられたなんとも愉快な上下セットは人目を引く。

学園都市では見ない不思議な着こなしは最初から知っていたものの、実際目にすると非日常な服装は大変興味深い。羞恥心的な意味で。

 

「こ、これは魔術的なもので……って、何故あなたまで一緒にいるんです?」

 

「仕事だ。お前らとは別件」

 

少し恥ずかしそうにジャケットの裾をもつも、垣根の顔を見て彼女の感情は恥ずかしさよりも驚きが勝る。

 

それもそうだ。

垣根帝督は本来学園都市にいるべき存在。イギリスに来る用事などないはずで、彼女と会うこともなかった。

だからこその驚き。その驚きに満ちた顔がなんとも面白い。

 

「別件?じゃあ俺のために付いてきてくれたんじゃねぇの?」

 

「なんでテメェのためにはるばるイギリス来るんだよ、寝言は寝て言え」

 

「俺の隣の席で一緒にイギリスに行くって、そう思う他ねぇだろ!俺のことは遊びだったの!?」

 

「殺すぞ」

 

「ひどぅい……」

 

行けるものならついてく、と言いたいのを抑え適当に誤魔化す。

伝えたら最後、真実を知られ、協力するなど主人公らしくされるだろう。そんな風に誰かに、それも上条当麻に首を突っ込まれるのは気分が悪い。

 

「じゃあていとくこないの?一緒に行けないの?」

 

「一緒にいて欲しいのかよ。そんなに俺のこと好きなわけ?」

 

「うん、だってていとくいい人だもん!」

 

しかし垣根帝督は上条当麻とインデックスの大切な友人である。

主人公が憧れる先輩、少女が好きな年上の男──この場合では恋愛ではなく隣人として、友人としての清らかな「好き」であるが──で、放っておけるはずもないのは明白。

 

そこにあるのは純粋で透き通った感情。

寂しいだとか、心配だとか、そういったものが合わさった素直な思い。

 

勝てるはずもない。

暗い社会で生きてきた垣根にはそれに抵抗するすべは無く、インデックスの緑の目に押し負ける。

どうしようもないほど弱っている自分に腹が立つ。

 

「……どうなんだ?」

 

「え?そうですね……まぁ、学園都市側が出発間際に事情を知る強い護衛をつけたってことにしておけば、たぶん……」

 

あの少女といい、インデックスといい、邪気のない愛くるしい素直な気持ちには強気になれない。

仕方がないと自分に言い訳をして頭を搔く。物語に巻き込まれるのは困るが、そこにしか探している義妹の情報がないのも確か。

 

答えは決まっているようなもの。ため息交じりに口を開いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

豪華絢爛な廊下、金の装飾が大きな窓からは入る太陽の光を浴びて輝く。

 

場所はイギリス、バッキンガム宮殿。

民間の血税を使い込んだ装飾品と建物は実に価値が高く、何百年も前のものとは思えないほど美しさを保っている。

 

学園都市では見ない伝統と歴史を感じる宮殿。それに興味が湧くのは当然といえば当然で、客人は控えめながらも周りを見渡す。

上条も垣根も、その輝きに興味が尽きない。

片方はその輝きの価値に、もう片方は連れて来れなかった少女を思いながら、眩しい廊下を歩く。

 

「うはー……つか、なんでそもそも俺たちはここに呼ばれたの?」

 

「案内役である土御門は何も言っていなかったのですか?」

 

「いきなり変なガスを食らって空港に置き去りにされた……」

 

「哀れだな、相変わらず」

 

垣根、上条、神裂、そしてインデックスが四人仲良く赤いカーペットの上を進む。

そして大きな階段に差し掛かった時、知らない誰かの姿が立ち塞がった。

 

「来たか」

 

金髪で、長身の男だった。皺ひとつ無い手入れの行き届いた茶色のスーツを着た紳士風の男。

 

確か騎士団長(ナイトリーダー)だったか、背の高い男の不機嫌そうな顔に言葉が詰まる。その強い視線は垣根を見つめていた。

部外者である垣根に対する真っ当な反応。外部の者に厳しい国の要であるバッキンガム宮殿、疑惑の目を向けられるのは当たり前である。

しかし、その疑惑を取り繕うともしない非外交的な態度は如何なものか。

 

「一人増えているようだが、一体どういうことかね?」

 

騎士団長(ナイトリーダー)、彼は護衛の──」

 

「垣根帝督と申します、以後お見知りおきを」

 

神裂の言葉を遮ると、騎士団長(ナイトリーダー)の視線が更に鋭く吊り上がる。

 

しかしここで引く訳にはいかない。

義妹を追ってはるばる来たこの異国の地で、彼女に繋がる可能性のあるこのバッキンガム宮殿から追い出されるのは非常に困る。

自分の部下()が連れて来れなかった以上、ここしかチャンスはなかった。

 

「学園都市側の護衛と言った所でしょうか、我々としても、一個人とはいえ学生の安全が大切ですので」

 

「そんな話は聞いてないが」

 

「必要悪の教会からの依頼でもあります。能力のない学生と重要人物である禁書目録、学園都市からの輸送に危険がないと言えないでしょう?」

 

適当な嘘を並べて柔和な笑みを浮かべる。このチャンスを生かすため、精一杯口角をあげて目を細めて拙い言い訳で誤魔化した。

 

仕事であることは間違いない。

学生の安全が大切であるのも真実だ。

 

真実の中に嘘を混ぜる。

とはいえ今回ばかりは少しやりづらい。上手く丸め込むというには、今持つ真実も嘘の言い訳も、あまり使い勝手が良くなかった。

 

「……理解した。では、付いてこい」

 

「どーも」

 

だが案外すんなりと上手くいった。

すんなりすぎて笑顔の裏で少し焦るが、甘いマスクが崩れることはなかった。

 

だが考えてしまう。

これも()の手が入っているのか、否か。

 

ただ悩むだけ無駄である。無駄な努力に思わず思考の中で呆れてしまう。

神という超次元の存在の考えなど読めるはずもない。

 

「垣根が敬語だ……!」

 

「かっこいい!」

 

「そんな言葉遣い出来るのですね……」

 

そんな垣根の考えを他所に、現場を目撃していた上条たちの意識は違和感へと集中する。

垣根帝督というプライドの高い男がへり下って敬語を使うとはこの場の誰も思っていなかった。

 

キャラじゃないと、誰もが思う。

容姿端麗の美人とはいえ目つきは悪く、溢れ出る面倒臭そうな、明らかにお人好しではなさそうなチンピラ野郎。敬語を使うような見た目ではない。

 

不思議で仕方ない、そう言いたそうな顔が三つ、垣根を見つめる。それほどまでにおかしな光景だった。

 

「……一応、お前らより社会経験は多いぞ。それに彗糸が前──」

 

「前?」

 

「なんでもねぇ、教える義理ねぇし」

 

だが垣根にとっては至って普通のことである。猫を被る方が物事は上手く進むと、上条夫妻との会話やら、義妹の勤める病院などの経験からよく知っている。

 

それに飼い主故のプライドと言えば良いか、義妹に出来ることが出来ないという事実は堪らなく腹立たしかった。

TPOくらい弁えられるとサラリと言った年下で、ギャルギャルしい女。それも様々な感情を向けている相手、遅れをとるわけにはいかない。

 

ただの複雑な恋とも言えない幼い感情から来る態度。

しかしそれを馬鹿正直に言うことも出来ず、適当にあしらうことしか出来なかった。

 

 

 

沈黙が続く。

 

観光名所を巡るかのように宮殿内に興味を惹き付けられ、厳かな廊下で誰も本題に入ろうとしなかった。

 

「今からこのバッキンガム宮殿で行うのは作戦会議のようなものだ。建前では謁見という形になっている。なので出来れば正装して貰いたかったんだが……」

 

しばらく長い廊下を歩いた後、沈黙を破るように突然騎士団長(ナイトリーダー)が口を開く。

不機嫌そうにそれぞれの服装を横目で確認すると鋭い眼光で睨む。

 

確かにこの場にいる中で正装と言っても差し支えないのは私服からシスター服に着替えたインデックスくらいだろう。

学ランを閉めず、中にポロシャツを着て、スニーカーを履いた上条。

カラースーツでボタンを閉めていない垣根。

そして袖をなくした神裂。

問題なのはこの三人に絞られる。

 

「正装……」

 

「いや、この場合は学ランも閉じずにポロシャツ見せてるお前の事じゃね?」

 

確かに一番に目がいくのは神裂の支離滅裂な袖無しルックだが、彼女の服装は魔術的な要素を含んだ戦闘服。

つまり彼女にとってはそれが正装である。

 

ではその隣を歩く垣根は?

品のある赤紫のスーツと白いシャツからみえる赤いセーター。

カジュアルながら上品なプレーントゥの革靴。

ボタンを閉めていないのは確かにルーズであり、高貴な場所では良くないだろう。

 

しかしお値段は高貴である。

 

超能力者第二位、そして暗部組織スクールのリーダーという地位はやはり強く、人生一回遊んで生きたって何億ものお釣りが来る程度の財力を持ち合わせているのは明白。そんな男の着るものがただの布切れとは言い難い。

 

そうなると消去法で上条が選ばれる。

一般的な学ランは正装足りうるが、ボタンを閉めておらず、履き慣れたスニーカーで歩くのは正装とは呼べない。

せめてローファーで、ボタンを閉めていたら正装とも呼べるだろう。

けれど上条自身はそうは思っていないようだった。

 

「え!?俺!?それ言うならお前だって、この間みたいに変な順番でスーツ着てるじゃねぇか!」

 

「はぁ?変な順番ってなんだよ」

 

「変だろ!なんでシャツの下にセーター着るんだよ!」

 

「これは重ね着用の薄手のニットソーだボケ!」

 

「……話をしても?」

 

男子二人、不毛なファッション議論が始まりそうになるが、騎士団長(ナイトリーダー)の不機嫌な声色に口を閉ざす。

永遠に解決することがなさそうな話題。口を挟んでくれてありがたいと、女性二人は安堵で胸を撫で下ろすも、反対に男性陣は少し不服そうだった。

 

「でも作戦会議ってなんの作戦について話し合うの?」

 

「ユーロトンネルの爆破に魔術が絡んでいる可能性ができたのだ。その先は陛下に聞くがいい」

 

「爆破?」

 

「そういやテレビで見たな」

 

長い廊下の突き当たり、大きな扉の前に一同の足が止まる。

 

そういえば、ふと垣根は上条に視線を移す。

なぜ上条たちは遠い異国の地に呼ばれているのか、考えてもいなかった。

 

結末を知る彗糸がイギリスにいる時点でユーロトンネルの爆発も何もかも、阻止できていたはず。

人が傷つくことを酷く嫌い、恐怖する彼女が爆発なんてものを見過ごすはずがない。

 

では何故彼らはここに?もっと言えば、何故事故は防げていない?

 

いつだって他人の為、被害を無くすため、物語の先読みを活用して日々偽善的なヒーロー活動に勤しんでいたというのに。

爆発は起こり、上条ははるばるロンドンへ、それもテロの可能性がある飛行機に乗ってやってきた。

 

彼女の考えが読めない。

いつもの彼女、天羽彗糸ならばありえない行動の数々。

喉に小骨が刺さるような違和感と気持ち悪さが胸を込み上げ吐き気を催す。

 

まるで意図的に、計画的に、打算的に彼女が動いているようで。強かな欲望があるかのようで。

酷く不安だった。

あの小さな子供が、艶やかな少女が、何を考えているか何一つ分からないことが恐ろしかった。

 

「入るといい」

 

ぼんやりと眺めていた扉が静かに開く。

重い扉の先、煌びやかな会議室の明るさと金属の反射光に少し目が眩んだ。

 

「よく来たな、さぁこちらへ」

 

扉をくぐり、最初に視界に入ったのは一人の女性。

緩やかな段差に置かれた幾つものテーブルに囲まれた円の中心、歳を食った老けた女性がルネサンスを彷彿とさせる仰々しい白いドレスを身に纏い、凛々しく立っていた。

 

「彼女こそが女王陛下、エリザード様だ」

 

年寄りならではの凛々しさと威圧感。

靴まで隠す豪華なドレスを着たその人の手に握られていたのは、八十センチあまりの長い剣だった。

艶のある銀色は美しく、手入れが行き届いている。輝くその剣に切っ先は無く、両刃は研がれていない。

人を殺す武器ではなく、人を支配する権力をかたどった装飾品に近かった。

 

「あれって何か凄い剣なのか?」

 

「あれはカーテナと呼ばれる王族専用の剣です」

 

「この剣の所有者は擬似的にだが天使長(ミカエル)と同質の力を得られる礼装。優れものの一品さ」

 

何もかもが浮世離れしている部屋の中、困惑したように上条が神裂に耳打ちすると代わりにどこか満足げな女王陛下が答える。

 

カーテナ、そのオリジナルはこれから起こる諍いで使用される武器の一つである。

 

少し眉を顰め、その輝きから目を離さず扉の前で腕を組む。例えといえど、凶器を前にして顔を少しも歪めない人はいない。

それでなくても権力を象徴する物体を見せびらかす女王の前に、プライドの高い垣根の神経が刺激されるのは目に見えていた。

 

天使長(ミカエル)?」

 

「あらゆる天使の中で一番偉くて強い存在のことなんだよ」

 

「四大天使のひとりだ。三対六枚の翼を持つ、熾天使ってやつだったか」

 

「へぇー……垣根物知りだな」

 

「まーな」

 

高価な霊装を前にして右手を隠す上条の姿を尻目に、ズボンのポケットの中で強く拳を握る。

 

物知りに決まっている。どれだけの本を彼女不在で読み漁ったか。

遅れを取らないため、知識に追いつくため、経験に勝つため、何よりあの女を打ち負かすため、小さな努力は不可欠である。

 

聖書も小説も、教育論も論文も。本の知識と神の知識を武器にヒロインを捕まえに行く。

本物の主人公とは違う。努力を重ねなくてはならない脇役の運命。

口にできない劣等感と苛立ちが積み重なる。

 

「仮に何かの因果で破壊されたとしても、誰も責めはせんよ。そもそも、こいつはカーテナ=セカンドだからな」

 

「いや、名前だけ言われてもさっぱりなんですけど……」

 

「要は二本目ってことだ。最初に登場したカーテナ=オリジナルはどこかへいってしまってな、仮にこいつが折れても新たカーテナが生まれるだけだ」

 

「まったく、そんなわけが無いわ!」

 

暗い思考を吹き飛ばす強い声が響く。黒髪にモノクルをつけた物腰の落ち着いた女性が一人、側近も置かずに会議室へと立ち入る。

 

第一王女、リメイア。

頭脳に特化した三姉妹の一人。

 

「カーテナ=セカンドは確かに後世に作られた二本目ですが、現在ではその二本目を作る製法すら失われている」

 

「リメイア様、言ってくだされば部下のものを。いえ、私が出迎えにあがりましたが……」

 

「あぁ!いけませんいけません!みすみす背中を刺される危険を増やしてどうするの?」

 

くるぶしまで長い上品な青いアフタヌーンドレスを翻し、階段を降りる彼女は騎士団長(ナイトリーダー)をモノクル越しに睨みつけて品定めするかのように後ろの垣根たちを見つめる。

 

何ともめんどくさそうな女。

王女ゆえの性格の曲がり方といえばよいか、何とも付き合いづらそうな人である。

 

「また姉上はじめじめしているの?世界の全部が信じらんないなら、とっとと死んでしまえば丸く収まるのに!」

 

苛立ちがピークに達する前に、別の扉が開いて第一王女の言葉を遮った。

騎士二人をつれた一つ結びの金髪がそこそこある胸を張って尊大に中心へと闊歩し、高いヒールの踵を鳴らす。

真っ赤なプリンセスドレスはイギリスだからか少しロックなテイストがはいっており、存在感も相待って少年少女憧れの『お姫様』感はあまりなかった。

 

第二王女、キャーリサ。

軍事力に特化した次女である。そしてこれから先のキーパーソンである。

 

「ヴィリアン、お前も来てたの?」

 

キャーリサがふと視線を一つの机に移す。吐き捨てるように呟いた言葉は、そこに座っていた物静かな女性に向けられたものだった。

 

そこにいたのはお姫様のような若草色のドレスに身を包んだ上品な女性。

第三王女のヴィリアン。

人徳に恵まれた三女は口も開かずドレスの裾を掴んで綺麗なお辞儀をする。綺麗な顔はどことなく不安げだった。

 

「さて、他の連中も集まる頃合いだ。それじゃあ適当にトンズラするか」

 

そして役者は揃う。

ニンマリと、したり顔の女王陛下は嬉しそうに客人に背を向けた。

 




イギリスとロシア編は長いのでどこで切るか悩みますね。天羽さんの出番が遠くなる……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。