にしてもこのイベント、運営側が垣根をとある界屈指の萌えキャラだと認識してますよね。
愛おしいですね。
(前回のあとがきで言っていた本編後に投稿するおまけ小説のアンケ置いてます)
(あと、春が垣根の季節らしいのでこの世界線の垣根さんは三月生まれの高二・十六歳ということにしておきます。本編で垣根の年齢は明言してないはずですし、あとで変更しても問題ないでしょうし……)
120話:白い景色、ロシアにて
スマートフォンをイヤホンで繋ぎ、流れる音声に耳を傾ける。暖かい息がひんやりと冷たい雪の中で白くなった。手の中に収まったなんてことない地図と周りを見比べながら、意識をイヤホンに注ぐ。
ロシア国内、銀色の景色。東京に位置する学園都市では全く見ない光景に、少しだけ心踊りながら積もった雪を踏み締める。
精神は、思っていたよりずっと軽かった。
『これは、世界とそこに住む全人類を守るための戦いである』
──ダウト、身内のためだろ
イヤホンから絶え間なく流れてくるロシア語。ロシア国内のラジオだから、ロシア語が流れるのは当然のこと。
そんな当然を、さも当たり前のように彼は興味津々に聞いていた。理解できるのも当然、第二位の頭脳は伊達ではない。
『
──学園都市はそんなちゃちな枯渇性資源なんてほとんど使ってねぇよ
『彼らの無秩序な科学技術の反乱を食い止めなければ、この惑星に住むあらゆる生命体は絶滅するだろう。学園都市は速やかに各地で行われているプロジェクトを完全に凍結する必要がある。そして、最先端の科学技術を我々に開示しなければならない』
──情報よこさなければ戦争って恐喝かよ
淡々とロシア語を聞きながら冷静に頭の中でケチをつける。強い言葉で断言する頭が眩しい大統領の声がどうも苛立つ。
『平和を求める我々の提案を拒んだ場合、学園都市は世界との融和の意思は無く、ただ己の利権のためだけにこの地球に住むあらゆる生命体を危機に晒す、邪悪な存在だと判断する』
──どの口が平和って言ってんだ
『学園都市からの返答はモスクワ標準時間10月19日午前零時まで受け付けるものとする。それまでに成されるべき返答がなかった場合、戦意ありとして大陸間弾道ミサイルの使用も考慮した侵攻作戦を開始する』
──平和どこいった
コロコロ変わる言い訳にため息をつくと、白い息が鼻先を温める。
延々と話題に上がるロシアの大胆な宣戦布告。なんともお粗末な世界情勢に、ただただ呆れと吐き気を感じる。世間はそれでいっぱいだった。
一体この世界はいつまで物語の通りに進むのかと。一体何を変えれば誰も幸せにならない悲劇を閉じれるのかと。
そう思うのは垣根帝督とここにはいない彼女だけ。
「お前、熱心に何聞いてんの?」
「ラジオ。聞くか?馬鹿が理屈コネようとして失敗してるラジオ。もう飽きたけど」
「こんな状況なのに余裕だな……って電波届くのかよ!」
イヤホンを外し、地図から視線を上げると上条当麻と目が合った。寒い空気に鼻を赤くさせ、寒そうにマフラーで顔を隠す。
いつもの学生服ルックだと言うのに、見た所死にそうなほど寒さを感じているわけではない。ただの学生服といえど、糸から縫い付け、全て学園都市製。防寒に関してはコートより優れているようだ。
「俺に不可能はねぇ。電波どころかWi-Fi、無線まで傍受できるぞ」
「一家に一台垣根の時代くるな、これは」
「来てたまるか。それより、もうついたぞ」
進む足を止め、目の前の大きな施設を隠れるように少し遠くの位置から眺める。普通の、一般的な地図に書かれた軍事基地。
簡単に占拠出来そうな難易度の警備しかなく、どう見ても軍事基地としては及第点にも届かない。なんとも胡散臭い場所だ。
「おー、これが例の軍事基地……」
「地図の通りならな。なんでこんなもん普通の地図に載っけるんだか」
「あえてセキュリティを低くして、重要に見えなくさせてるんだろうな」
大切な駐屯基地だと言うのに、隠すこともなく地図に書かれている。大規模とはいかないまでも、それでも立派な軍事施設、なぜここまでおおっぴらにされているのか。
違和感。
「とりあえず、乗り込むとするか」
白い息を吐いて、硬い雪を踏む。水を弾く革靴と擦れる音が不快だった。
艶のある黒い車が真っ白なロシアの大地を走る。茶色いサングラスをかけ、広い田舎の土地を有効活用したやけにワイドな道でハンドルを片手で握る彼女は、いや、彼はどこか不機嫌そうだ。
それはきっと助手席の大きなスーツケースのせい。
大きなスーツケース一杯に入っているのは大量のファイル。権利やら買収やら、政治やら。彼女に貢がれた全てについての書類を丁寧にファイリングしたもの。
そんなもの、見てるだけで気分が悪い。騙された人の顔が思い浮かんで、とても嫌だ。
「『マスターによる今後の行動プラン』ねぇ」
そして手の中にある一枚のメモ用紙。
びっしりと今後の予定が書かれたそれは、体の持ち主がわざわざ書いて残しておいたもの。イギリスからどういったルートでロシアへ入るか。その道中何をすべきか。全てが書いてある。
それはもう、本当に、恐ろしいほど細かく。
大人の女らしい字で丁寧に順序立てて、たまに色マーカーを使って整理されてメモに書かれていた。
現在はそのメモの半分程度まで進んでおり、同封された地図を見ながら片手で運転を続ける。
「で?次は?」
誰もいない直線を走りながら手元に視線を落とす。天羽彗糸直筆のナビによると次の指令は『スーパーみたいな雑貨屋に入る』とのこと。
茶色い視界に見える短い文章は、どうも説明不足でなんて反応していいのか分からない。
入るだけか。
入って何かを買うのか。
というか雑貨屋ってなんだよ。
スーパーって、どういうことだよ。
他の項目よりも圧倒的説明不足なその一点にため息が出る。地図にわざわざそこへのルートも書かれており、必ず行けと言わんばかりだった。
「……入るだけでいいのか?」
地図の表記に従って、『スーパーみたいな雑貨屋』へと向かう。駐車場とも呼べないだだっ広い店先にとりあえず車を止めて、地図にある個人商店へと向かう。
田舎の片隅にポツンと一軒だけ建っている個人商店。他にも車が一台止まっていることから察するに、どうやらドライバーにとっては憩いの地らしい。
防寒になるとは言い難い薄っぺらな扉を開いて店内へと足を踏み入れる。小型の赤外線ヒーターの暖かさと外気の寒さは
「マスターは一体何考えてんだか、あ?」
「ひっ!」
入った店の中、見えた景色は恐怖というより呆れか。店員と思しき女性が男性数人に囲まれているところ。
黒いマスクに拳銃を持った団体客は、女の胸ぐらを掴み今にも性犯罪でも犯そうとしている風貌だ。
「っな!?」
「オイオイ……まじかよ」
突然の来店に犯罪者たちは血走らせた目で敵意を向ける。その血の気溢れる視線が戦闘用生命体の本能に突き刺さる。
大きな胸を興奮させる闘争心。
「あの女、一体何歩先まで見えてんだか」
胸の高鳴りがカブトムシの攻撃性に火をつける。まっさらなエプロンがこんなにも早く汚れてしまうとは、夢にも思っていなかった。
ガタンゴトンと貨物列車が揺れる。
「やっぱ正解だったな」
「警備もザルで、罠くさいけどな」
木箱や段ボールなど、様々な荷物で埋め尽くされた軍事用の貨物列車はトンネルをくぐり、目的地へと向かう。
すんなりとできてしまった無賃乗車に違和感どころかきな臭さを感じながらも、垣根と上条は駅まで走る電車の中で小さく言葉をかわす。
「仕方ねぇだろ。お前が俺を抱えて飛ぶわけにはいかねぇし」
「何が悲しくて哀れな童貞オスをこの俺様が運ばなきゃならねーんだ」
「だろー?って誰が童貞だ!!!」
「ハイハイ様式美様式美」
男同士、軽口を叩き合う。男子高校生特有の雰囲気は、戦争が始まる寸前の国で起きるようなものではなかった。
「……そういやさ、なんで付いて来てくれるんだ?天羽が俺の行く先にいるかはわかんないんだろ?」
「あー?アイツの目的は体晶の後遺症を治し、体を再構築すること。戦争が間近の国なら魔術師が多いし、復活すればすぐ応戦に行けるだろ?」
ふと上条は隣で暇そうに携帯をいじる垣根のめんどくさそうな横顔に問う。携帯の弱い電波を睨む端正な横顔は、一度横目で上条をみると、見せつけるように大きなため息を吐いてまた携帯に視線を落とす。
トンネルの中、ニュースサイトに一向に繋がらない携帯をどうにかしようと一人で能力を駆使しているものの、なかなかたどり着かない。作業に手間取りながら一番まともな答えを簡単に教えて上条を軽くあしらう。
上条に伝えた答えは確かに彼女は思っているだろう。だが彼女のことだ。もっと恐ろしいことを考えているはず。
天羽の目的、それは物語に関与すること。戦争で何かを遂げること。
だが今の彼女は自主的に動けない。50番で失った四肢を補い、動かない体を乗っ取らせ、操縦させている現在、彼女は植物状態に近かった。
チョーカーの接続もないので脳が働かず、能力も意識も戻らない。
50と物理的に脳が繋がっている状態なら、
ならばどうするか。
他人に
そもそも彼女が能力を失ったのは爆発や圧力などの物理的な理由ではない。
物語のヒロインと同じ。
体晶を使用しての後遺症。オーバードーズを引き起こしてしまった結果。彼女自身の破滅願望のせい。
だから物語通り、ロシアへ、独立同盟へとと赴いたのだろう。
「本当かよ。ならなんでイギリスの魔術師に頼まなかったんだ?一応あそこって魔術の本場じゃねーか」
「外交の問題だ。イギリス清教に借りを作るのが嫌なんだろうな、
「そこまでアイツが考えてんのか?」
「ずるくて変に頭が回るやつだ。何かしらは考えてるだろ」
「よく知ってんだな、あいつのこと」
垣根の話に怪訝そうな顔をする上条に自信満々に断言する。
彼女の思考は一番分かっている。誰よりも、神よりも、親よりも、絶対分かってる。
そんな感情が丸見えだったのか、上条はニコニコと嬉しそうに口角を上げる。
スレていた男友達。
友達が少なく、不思議な魅力が高嶺の花のように見える孤独な女友達。
二人の友人の変わり様が、純粋に嬉しかった。
「……それより、終点が近いみたいだぞ」
「おう!乗り込むか!」
「意気込みはいいが、静かにしろよ?」
なんだか小っ恥ずかしいと、緩やかにスピードが下がる電車の中で垣根はそっぽを向く。場違いなほど楽しそうな友人の顔に、なんだかやる気が削がれていった。
「こんなに貰っても、俺もこいつも消化できないんだがな」
閉じた銀色の鞄の上に乗っけた茶色い袋に目を向ける。ハンドルを握りながら、先ほど起きた(相手にとっての)阿鼻叫喚を思い出す。
コンマ2秒で制圧したのではないかと思うほど早くクソどもを倒してしまったせいで、ヒーローか何かと勘違いされる勢いでお礼を貰ってしまった。
垣根由来の考え方を持つ50番には少しモヤモヤする出来事だった。
「けふっ、ゲホッ……オリジナルのネットワークねぇと、流石に演算が重いな」
ぼんやりとしていると、突然鉄の味が喉をせりあがって塊を吐き出す。先ほどの戦闘で少しばかり内蔵に負荷を負った様だ。
そもそも側からみれば健康体に見えるが、
なんなら病院で管に繋がれていたところを本人が得体の知れないカブトムシに押し付けて国外逃亡している状況である。そんな体が、血の一つや二つ、吐かないわけがない。
そろそろどこかに定着したい。
だがこんなクソ田舎に休める場所があるのか。店があるから人はいるんだろうが、あの店はおそらく長距離トラック用のサービスエリアの様なもの。あの店があるから人がいるというわけではない。
「はぁ、あっつ……」
それにしたって田舎すぎる。限界集落すらなさそうな銀世界で、車を止める。
青い長袖で口元の血を拭き取ると、ゆっくりと赤いシミは消えていく。その様子をぼんやりと眺めながら、サングラスを取って背もたれに体を預けた。
目を瞑って、息を吐く。真新しい車の内装の匂いが気持ち悪い。
「もし、お嬢さん。顔色が悪そうだが、大丈夫かい?」
胸元のボタンを外して楽な体勢に整えていると、不意に車の窓をコンコンと叩かれる。
ロシア語でノックする男に気がつくと窓を少しだけ下げて、話を聞く意思表示をしながら外したボタンを再び止め直す。
窓から入る冷たい風が今はとても気持ちよかった。
「あ?脅しか?強盗は間に合ってるぞ」
「いや、ギブアンドテイクってやつだ。うちの集落は発電用の燃料を切らしちまってな。アンタが分けてくれるなら、うちの医者まで案内してやってもいいぞ」
三十代後半か、淡々とした口調で喋る男はこの辺に住んでいる様だった。妙案とでも言いたいのか、自信満々に車体に肘で体を預ける男に思わずため息が溢れる。
このまま急発進してやろうか、と苛立ちを感じながらもマスターに手渡されたメモを見る。
腹立つ男だが、休めるのはありがたい。渡されたスケジュールに余裕があれば、申し出を受けてもいいだろう。
「……いや、それを法律では脅しって言うんだよ」
メモ用紙に書かれた『人を助けなさい』の文字に、何度目かのため息をつく。
彼女は全て知っているようだった。誰と何を話して、何が起こるかを。
そのおぞましさに、何も知らない50は少し恐怖と興奮を感じてしまった。
前回言った通り、旧約(本編)が終わり次第作者自己満のおまけ小説を書く予定です。
しかし作者は筆も遅い上優柔不断なので、今のうちに内容のアンケを取ります。
選択肢は以下の通り:
①偶像時空に異世界転生した天羽さんが垣根と同棲しながら垣根のオタ活するガチ恋勢殲滅一話完結もの
↪︎NOT恋愛、ギャグ()
②偶像時空で転生『していない』天羽さん/藍花さんが垣根さんとてんやわんやする十二話程度の長期もの
↪︎恋愛。いわゆるアイドルアニメを参考にした構成
③逆に現代にやってきた垣根(もしかしたらカブトムシsも)を天羽姉妹が甘やかす二、三話程度の垣根さんの精神回復愛情もの
↪︎ただただ垣根を無償の愛で可愛がる。恋愛?匂わせ
ちなみにこれは今後来るであろう鬱展開で落ち込む作者自身の精神回復のための執筆なので、蛇足でも自己満でも書きますし、全部ハッピーエンドになります。
アンケは次回更新までです。
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