とある科学の肉体支配   作:てふてふちょーちょ

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act13:普通の恋

優しい光が瞼を照らす。柔らかな風が頬を撫でると、ワンピースが少し揺れた。

カーテンから流れる秋の風と、黄昏時の金色の光が狭い部屋に差し込んで、少年を優しく起こす。規則正しい寝息は小さなあくびに変わり、少年の黒い瞳に淡い光が宿った。

 

「起きた?」

 

「……彗糸」

 

「具合は良さそうだね」

 

眠そうな顔で毛布の中から顔を出すと、ぼんやりとした瞳が天羽を見つめる。いつもの病院の、ちゃんとした病室。

カーテンを締め切って、窓を閉じて、起きたばかりの垣根のそばに行くと控えめに視線が交わる。

なんだか少し気まずかった。

 

「うん、熱だいぶ下がったね。微熱だけど、よかった」

 

熱っぽいおでこに手を当てて、能力による体温チェックをしつつ、ある程度体調に目星をつける。

傷口と、熱。酷い有様に心がチクチクと痛む。

 

彼の場合は自然治癒に期待するしかない。未元物質(ダークマター)を無意識下でも操れる彼の体を操作をしたら、どういう化学反応が起こるか分からないためだ。

 

第六位では、第二位を癒せない。

それが現実で、リアルだ。

 

「……ワンピース、似合ってるな」

 

「ナース服ね」

 

「かわいいんじゃねぇの」

 

ベッドの近くに置かれた椅子に座ると、沈黙を破るように温かい手が天羽のワンピースに触れる。

触れた熱が体を巡って、脳の動きを止めるのは案外早かった。

 

「……どうしたの?頭ぶつけた?」

 

「違ぇ」

 

「なんでもいいけど。とりまセンセ呼んでくるね」

 

気まずさ。

砂糖を含んだ言葉と急激に静まる室内に耐えきれず、慌てて椅子から離れて扉へ向かう。

心音が響く体は熱を持ち、体内時計が狂ったかのように急ぎ足だった。

 

「どこ行くんだよ、おい、どこにっ」

 

「はぁ?ナースステーションだけど、うぉっ!!?」

 

急ぐ足を止めたのは狭い個室に響いた金属音。ドアに掛けた手は止まり、振り返った先で倒れていた点滴に目がいってしまう。

ベッドから大幅に落ちた彼のつむじに焦りが募って、気まずさなんか忘れて駆け寄った。

 

「どうしたの?痛いところは?」

 

「一緒に、行く」

 

「病人は安静にしてなきゃダメでしょ?ほら、まだ熱がある。静かに寝ててくださーい」

 

「一緒に……イテテッ」

 

「もう、分かったから、ベッドに戻って。ね?」

 

倒れた上半身をしっかりと肩で支えると、微かに血の匂いが鼻をくすぐる。

押し付けた大きな胸から感じる彼の鼓動は、少し早い。先程とは違う焦りが天羽の心臓をバクバクと刺激して、居心地が悪かった。

 

「行くな、絶対に」

 

「どこにも行かないよ」

 

「嘘吐き」

 

ベッドに体を戻し、椅子で一息つこう後ろに下がると、離したはずの手に強く引き止められる。

バランスが取れない体は容易くベッドに腰を下ろして、動きを封じられた。

 

「嘘じゃないよ」

 

「別れるって言った」

 

「それは、そうだけど」

 

強く、強く手が握られる。緩やかに握り返す天羽の手と、逃がさないと叫ぶ彼の右手が繋がって、鼓動が重なる。

骨に響く鼓動は熱も相まって、身体中を駆け巡って息がしづらい。

 

「俺は、お前をなくしたくない」

 

「なんで?」

 

「好きだから」

 

彼の言葉は甘すぎて、上がった息がどうにも戻らない。

悪夢でも見てるかのようで、恐ろしい。

 

「……熱が上がってきたみたいね。熱せん妄かしら?解熱剤もらってくるから──」

 

「違うっ!!」

 

居心地が悪い中、立ち上がろうと足に力を入れると、握られた手に勢いよく引っ張られる。

濁した言葉は最後まで言えず、ひっくり返った重心が体を暖かい毛布の中へ引き摺りこんだ。

 

温かく、大きな体が視界を埋める。

思春期らしい薄っぺらで、けど厚みのある男の体。いつもと違う身長差。

白いワンピースに触れる体から心音が交わって、熱が上がっていく。

 

「……熱、上がってるよ。心拍数が異常だ」

 

「病気のせいじゃないって、テメェの能力ならわかるだろ」

 

「どうかな。あたし、精神系はさっぱりだから」

 

抜け出そうとしても、大きな手のひらが頭を抱えて更に深く垣根の胸板に押し付けられる。先程とは違う意味で息苦しい。

 

頭を撫でて、好きと言って、可愛いと褒める。

いつもの垣根帝督からは想像もできない、甘く煮つめたドロドロとした言葉と態度が混乱を招いて、力が抜けてしまう。

 

この熱に身を預けたい。

けれど、残った僅かなプライドがそれを許さなかった。

 

「俺のこと、嫌いになったのか?」

 

「なに、藪から棒に」

 

「じゃなきゃ、別れるなんて言わねぇ」

 

「……嫌いになるわけないでしょ」

 

心臓の鼓動がけたたましく皮膚の下で鳴り響く。

 

好きだ。

 

好きだ。

 

大好きだ。

 

温かくて、大きくて、優しい手のひらが感情を掻き乱す。

欲を持ってはいけないのに。

望んではいけないのに。

 

「でも、垣根くんはあたしのこと嫌いでしょ?」

 

気づいてしまった。

欲深い感情に。

卑しい想いに。

穢れた恋心に。

 

「ずっとしかめっ面で、笑いもしないでさ」

 

興味を持って欲しい。

 

「あたしが何言っても嫌そうな顔ばっかで、何してもそっぽ向いて。好きな女は抱くって言ったのに、あたしの体は嫌がって、文句ばっかりで」

 

けれど、この人はこの体に、天羽彗糸という人間に興味を持っていない。

 

「この期に及んで、何?好き?アンタは一体、何がしたいの?」

 

この感情をもったまま、愛することなんて出来ない。

これ以上を望んでしまう。

これ以上に膨らんでしまう。

このどうしようもない切なさと、どうにも出来ない支配欲が。

 

「意味分かんないよ、アンタの考えなんて」

 

嫌われてもよかった。

好きじゃなくてもよかった。

 

しかし流れる血が本能に囁く。

フィクションが感情を刺激する。

 

「でもそんなアナタが好きなんだ……」

 

支配者の本能が僅かなプライドを打ち砕いた。

 

恋とは支配。

 

体を包むこの男を、この体で支配したい。

冷たいその視線を、独り占めしたい。

口下手な彼を、誰にも渡したくない。

苦味ばかりで吐きたくなる少年を、ずっとずっと、手元に置いておきたい。

 

自分の力で、垣根帝督を幸せにしたい。

 

「俺も、好きだって」

 

吐き出した心をぎゅっと腕の中で掴まえて、垣根は静かに呟いた。

とても甘い、蕩けるような愛の囁きを。

 

だがそんな薄っぺらい言葉、もう信じることは出来なかった。

 

「嘘つけ」

 

「嘘じゃない」

 

「嘘」

 

「嘘じゃねぇっての」

 

「嘘だって」

 

本当は信じたかった。

 

その甘い言葉を鵜呑みにして、全てを預けたい。

何十人の業を飲み込んできた体は、疲れきって甘い言葉を欲していた。

 

けれど痛みへの恐怖がそれを拒む。

 

それは能力のせい。

肉体を支配する能力は、天羽を守る為に精神にもロックをかける。

 

傷がついたら細胞が活性化し、癒す。

ストレスがかかったら意思に関わらず涙を流す。

恐ろしいものがあれば、恐怖でそれを警告する。

動物と同じ本能が、人よりも強かった。

 

「なんでそう思うんだよ」

 

「……好きなら、()()はもっと違うんでしょ?」

 

その本能が、彼の熱で溶けていく。

 

「好きだから、体使うんでしょ……」

 

信じたい理性が拒む本能を覆い隠し、嫌になるほど饒舌になっていた。

 

「バーカ、テメェはほんと何も分かってねぇな。何も知らないお前を掴まえて、色々察してもらおうとしたのが間違いだった」

 

「……バカでごめんなさいね。別れてよかったでしょ?」

 

「そうじゃなくて。お姉ちゃん気質の甘え下手には、手本を見せてやるべきだったって話だ」

 

温かい手が腰に回る。自分の手もいつの間にか彼の首に回されて、二人抱き合う姿勢になっていた、

 

暖かい。

太い血管が束になる首、脈打つ血流が皮膚越しに伝わって、胸の高鳴りが最高潮に達した。

 

「なら、見せて?垣根くんが好きになる方法を」

 

無意識のうち、思いがけない大胆な誘い文句が零れ落ちる。

暖かく、きらきらした香りが充満したベッドの中では、正常な判断はもう出来なかった。

 

「……そうだな、まずは名前で呼ぶことから始めようか」

 

触れた体温に吐息を奪われる。

交わる息と触れた皮膚が熱を加速させて、体温を上昇させていく。

 

暖かいベッドはとても心地が良かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

十月一日、ドラマの初回放送日となった。初回放送日だと言うのに、垣根が病欠していた分通常より一時間ほど長く続いた撮影はようやく終わり、それぞれが帰宅する準備を始める。

撮影で疲れていたのか、撮影を終えた超能力者(レベル5)たちはいつものハチャメチャな元気はなかった。

 

「お先失礼しまーす。用事あるので!」

 

「俺も」

 

第二位と第六位以外は。

 

「なんか最近、あの二人仲良しじゃない?」

 

「恋にでも目覚めたんじゃねぇの?ま、第二位にそんな感情あるわけねぇけど」

 

疲れきった超能力者(レベル5)達を置いて、垣根と天羽はマスクに地味な服装のよくあるお忍びスタイルで二人揃って楽屋から出て行く。

その背中がやけに楽しそうで、御坂と麦野はどこか違和感を覚える。

垣根の一方的なものだが、あまり馬の合わない二人が仲良く一緒に帰る姿は想像しづらい。けれど、現に二人は仲睦まじく寄り添っていた。

 

「あ?アイツら付き合ってンぞ?」

 

その答えは簡単で、一方通行のなんてことない一言で御坂たちに衝撃が走る。

思いもよらない発言にただ驚き、口をあんぐりとあけて一方通行の言葉を脳内で何度も繰り返す。

 

「ツキアッテ……?」

 

「あら、気がついてたのぉ?」

 

「アイツらとはアイドル前から面識あるからな。そン時から知ってただけだ」

 

「俺もだ。天羽とは結構前から付き合いがあったからな!」

 

「え……私だってアイドル前から……え?その時から?え?」

 

「私はアイドルで初対面だけど……知らなかった……」

 

それに気づいていないのは御坂と麦野のみ。

短い労いの言葉に続けて爆弾発言を落とし、何事もなかったかのような顔で颯爽と帰宅していく男子二人を見つめると、彼女たちの口角が引き攣った。

 

「御坂さんったらにぶちんねぇ。『超能力者(レベル5)の中で唯一の彼氏持ちの天羽さん』のこと見習ったほうがいいんじゃない☆」

 

「そそ、そそそ、そんな、彼氏とか、別に欲しくないし!?」

 

「第六位、殺すか……」

 

落ち込んだり、焦ったり、物騒な言葉を並べて事実を知る御坂たちを尻目に、食蜂操祈はいたずらっ子のような笑みを浮かべてふっと息を吐く。

 

とても嬉しそうに微笑み、帰路に就くあの少女の顔。

初めて見た乙女の表情に心が深く安堵する。

 

「あの子、楽しんでるといいけど」

 

この後、彼の部屋にお邪魔するとか。

ふたりの秘密を食蜂にだけ教えてくれる、少し天然でお馬鹿な友人の姿が忘れられない。

 

食蜂の心は満たされた。

達成感と満足感。

友人の晴れやかな姿が単純に嬉しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ついに来てしまった。

 

「お、お邪魔します」

 

開いた扉の先、ワンルームにしては広めの部屋の前で垣根の心臓が強く鳴り響く。

 

「狭いが、我慢してくれ」

 

「そんなことないよ。長点の寮なんて家賃高いでしょ?」

 

「いや、そこまでじゃない。あ、そこお手洗いな」

 

撮影終わりの夕方。仕事の終わったその足で彼女の手を引き自宅へ戻る。

 

文章にしたら至って普通のはずなのに、玄関の棚に置かれたアロマと彼女のシャンプーの香りが混ざりあって、背徳感が心臓に根付く。

すました顔で受け答えする外側に対し、内面はくらくらして、惚けてしまっていた。

 

「とりあえずゆっくりしてけよ。カフェラテでいいか?」

 

「あ、うん。なんでも飲めるよ」

 

「つってもお前甘党だろ」

 

「でも味覚切れば」

 

「そういう話じゃねぇよ。ほら、座れ」

 

「はーい」

 

玄関をぬけて洋室へ招き入れると、暗い部屋に明るい金髪が煌めく。

 

今日のために片付けたシンプルでモダンな内装は好印象だろうか。

エスコートはスマートだっただろうか。

鬱陶しいパパラッチ共に気づかれていないか。

 

ふつふつと不安が心の奥で湧き出して、少し無口になる。

座る場所を探して、テレビの前のベッドの上に腰掛ける天羽の姿に意味の無い不安ばかりが膨らんでいた。

 

「やっと始まるな、ドラマ」

 

「ほんとだね。十月まで長かったぁー!」

 

キッチンカウンター越しにたわいもない会話を続ける。

ポットでお湯を沸かし、コーヒーの豆を挽くと、一気に香りが広がった。

 

十月、ドラマの秋クールが始まる。

今日彼女を呼んだのは、ドラマの初回放送を見るため。

 

「テレビつけてろよ。放送までそんな時間ねぇだろ?」

 

「そうだね。リモコン借りるよ」

 

放送が待ち遠しいのか、ベッドの上でそわそわとしていた彼女の姿に小さく笑みが零れる。

ずっと下心が見透かされるんじゃないかと、部屋に呼ぶのを避けていたが、それも杞憂だったようだ。

 

「ねー、音つかないんだけど、壊れてる?」

 

「あ?コンセントが抜けてんじゃねぇか?」

 

カチカチとリモコンを押す音が聞こえたものの、コーヒーミルを回す音とともに天羽が僅かに声を大きくして、キッチンから見やすいようにリモコンをかかげた。

何度もボタンを押して見せるも、CMが映るテレビは彼女の言葉通り音声だけがつながらない。

 

(今朝掃除したしな。テレビの裏…………あ)

 

最新型のテレビのため故障あるとは思えず、コンセントが原因だと目星をつけるが、そこでふと気づく。

コンセントなんて自然に抜けるものじゃない。何か衝撃や、人為的なものがない限り。

そして今日、彼女を呼ぶために、部屋の隅々まで、それこそテレビの裏も掃除したことを思い出す。

 

「ちょっとまて、やっぱ俺が見る」

 

「垣根くん」

 

めったに片付けないテレビの裏。そんなところわざわざ掃除したのは理由がある。

 

「これ、何」

 

テレビの裏とはものを隠しやすい場所。

 

(しまった)

 

例えば、彼女が手にしたピンク色の薄い本を隠すには最適だ。

 

「なんかいうことない?」

 

「……悪かった、謝る」

 

「それで?」

 

「今から燃やす……あ?」

 

コーヒーミルから手を離して彼女の前で小さく謝罪の言葉を述べると、冷たい空気が肌を刺激した。

 

随分前に上条たちから奪った成人向けの薄っぺらな本を前に気まずく視線が彷徨う。

本人をもした漫画など、不快でしかなく、気分が悪いだろう。そう思って、彼女の手に収まった本に手を伸ばすものの、びくともしない。

 

怒ったような、何かに期待するような、そんなわかりづらい彼女の顔に困惑してしまう。

男の欲を詰め込んだ本など、当事者には気持ち悪いだけだというのに、何故か彼女はその本を手放さなかった。

 

「あとは?」

 

「あと……?」

 

「馬鹿だろ。絵じゃなくて本物の乳を揉めっつってんだよ、バーカ」

 

答えに悩んでいると、立ち尽くした天羽の後ろ、テレビの中をすり抜けるように誰かの腕が伸びた。

真っ白な腕が彼女を包む。見覚えのある男の大きな手が彼女を捕まえようと大きく腕を広げた。

 

「ひっ!?」

 

「50!」

 

垣根と瓜二つの整った顔と、真っ白な髪と体、そして服。カブトムシの一体、ナンバー50。

テレビをすり抜けて、その手は天羽の胸を薄手のセーター越しに下からぐっと持ち上げた。

 

「な、何してんの?」

 

「見りゃわかんだろ」

 

「そうじゃなくて、あの、離してくれる?」

 

「嫌──っがはぁ!」

 

あまりに唐突な出来事に一瞬静まり返るも、事態を飲み込んでからは早い。天羽から手を離すか、垣根の蹴りが先か。

しかし、鉄槌を下したのは彼ではない。

 

「申し訳ありません保護対象。この個体は少々デリカシーがないようで……」

 

「だからって殴るこたァねぇだろ」

 

「あります」

 

柔らかな肉に手を添える50の頭上にまたもや白い人影が映ると、白いつむじに白い靴がぶつかった。

同じダークマターで作ったカブトムシ、ナンバー05の鋭い踵落としが見事に決まり、50は地面に倒れ伏す。作られた中でも一番善に傾いている05は、その姿にため息をつくと、深々と頭を下げた。

 

「元気だね。通常の垣根くんが元になってるとは思えないくらい」

 

「悪い……」

 

「落ち込まないでよ。別に分身たちは悪いことなんてしてないんだから」

 

同じ顔が三人もいる自体が垣根にとって少し気味が悪いが、それよりも突然すぎる出来事に言葉を失う。

作られた分身とは言え、彼らは垣根の性格や思考回路をもとにして作られている。罵り合う50と05を横目に、ただひたすら罪悪感に苛まれていた。

 

「……悪かった、本当に」

 

「別になんとも思ってないってば!」

 

一瞬の出来事、けれど彼女にとってはそうじゃない。

汚い欲に触れさせてしまった。この間病室で互いに深く話し合ったといえど、まだ彼女にそう言った欲をぶつけるのには抵抗がある。

ずっと汚いものと生きてきた彼女に、自分の汚らしい欲を知られるのは怖かった。

 

けれど、優しい顔と温かい声で笑って、彼女はこてんと体を垣根に預けて手を握る。彼女の心音が体を巡って、熱が上がっていく。

 

彼女から手を握るのは初めて。だというのに、少女は動じもせずに花のように微笑んで、静かに垣根の隣に座る。

 

「だって、50の言ったこと、ホントだから」

 

照れ臭そうに、彼女はそう呟いた。

 

繋がったコンセントがテレビの音量を上げる。うるさくなった部屋の中で、その声だけがやけにはっきりと耳に残る。

 

始まるドラマの明るい音声とは打って変わって、目の前の乙女は随分と大人びていた。

 




次回はおまけのデート回です。
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