とある科学の肉体支配   作:てふてふちょーちょ

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デート編……ですのでクッソ甘くしました。夢小説に認定されてもおかしくない感じです。
拷問に近い。
二話構成となってます。二つとも作者が拒絶反応を起こさない程度に甘くしました。


act??:デートに誘おう!

休日(オフ)

学校で勉学に励み、部活動などで汗を流す健全な高校生にとって安息の日。

本来ならば、重い体を休めるため睡眠を取ったり、溜まった洗濯物を干したり、行きたかったお店へ遊びに行ったり、普段会えない誰かと会ったり、特別な人と過ごす日のはず。

 

「さて、つい先日色々初めてを済ませた垣根さん、まだやるべきことがあるとは思いませんかね?」

 

決して、黒と金とツンツン髪男に囲まれ、狭いワンルームに押し込められる日では無い。

 

「なんだ、いきなり。くだらねぇ事で呼び出してんじゃねぇよ」

 

「そうですね、お付き合いがさらに濃密になったおふたりですが、まだやっていないことがあるんですね」

 

「人の話聞いてんのか?」

 

惰眠を貪っていた午前、突然『いいから作戦会議だ!』と無理やり部屋から引き摺り出され、連れてきたのはいつもの上条の部屋。

ワンルームの狭い間取りは、身長や体格がしっかりした男三人並ぶにはやはり狭い。

 

「それって一体なんだにゃー?」

 

「土御門さん、実はですね、この二人……デート、したことないんですよ……」

 

「えぇ〜!?」

 

「なんなんだその小芝居は」

 

眠気が吹っ飛んだとはいえ、友人たちのふざけた態度は寝起きの人間にとってかなり癪に障る。なんならつい二日前に起きた彼女との()()に悶々としている今、それについてとやかく言われるよはもっと腹立たしい。

しかし彼らはそんな苛立ちなど気にも止めず、にたにたと腹立たしい笑顔で話すばかりだった。

 

「というわけで、垣根帝督の恋路を盛大に応援する会主催、『垣根と天羽をデートにぶち込もう!』のお時間です!」

 

「ヒュー!」

 

「くだらね」

 

垣根の健康を損なってまで彼らが話したいこと、それは随分とお節介な議題についてだった。

 

垣根と天羽、紆余曲折あって付き合うことになった二人だが、彼らにはひとつ問題がある。

それは彼らの職業。

 

アイドルである彼らは上層部に半ば公認とはいえ、ファンはそれについて知らない。

知られてはいけない。

スキャンダルなんてもってのほか、どんな匂わせも避け、何も無い風に振る舞わなくてはならないのだ。

 

つい先日の話し合いでお互いわだかまりが解消され、今までより随分と距離は近くなったが、それでもバレてはならないことに変わりはない。

最近は仲直りしたこともあり接触が増え、尚且つ超能力者(レベル5)には気づかれている。

この状況下でデートなどしたらスキャンダルは確実。

 

だから彼らは一度もまともなお出かけということをしたことがない。

したとしても、アイドル前の話。しかしそれも暗部で仕事をしていた時のため、巻き込まないよう配慮し、下校時にカフェに寄る程度のお出かけしかしなかった。

 

「いいんですか?垣根さん、我々のバックアップ、いらないんです?」

 

「はぁ?」

 

「魔術師にかかれば、人の認識を阻害する魔術ができるし、人払いも出来るぞ?」

 

「俺はパパラッチ的な能力を無効化できるから、遠隔で見られねぇと思うが?」

 

「ぐ……」

 

「もう一度聞くっ!俺らの助けアリで、彼女の私服を見ようと思わねぇかっっ?!」

 

だからこそ彼らの話は魅力的だった。

能力では無い別の力である魔術に、異能を打ち消す上条の右手。

超能力で築いた学園都市では完璧なスキャンダル対策と言えるだろう。

 

しかしあまりにも垣根に都合がよすぎる。

そして都合のいいものとは、相手にとっても何かが都合のいいものが多い。

詐欺と同じようなもの。

暗部出身の疑り深さはだてでは無い。

 

「……いや、テメェらはそういうタイプじゃねぇ。目的はなんだ」

 

喜ばせる(からかう)ためだよ、ブラザー」

 

「そうだぜ、別に宿題手伝って貰おうとは思ってねぇーよ、親友」

 

企んだような、いたずらっ子の笑みに悟る。都合のいい話とは、やはりいつも誰かの思惑が絡んでいることを。

 

「…………はぁ、そんなに言うなら、手伝わせてやるよ」

 

彼らはなんてずる賢くて、なんて酷いやつらなんだろう。

ニコニコ、馬鹿みたいに笑う彼らに心の奥底から嘲笑してしまう。

 

その笑みは、男子高校生の、至って普通の微笑みとよく似ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

受話器越しに会話を重ねる。

少し甘い言葉を吐いて、貰って。

終了の電子音に惜しむのはいつものこと。

 

「誰から?」

 

音が途絶えたスマートフォンをしまって研究室のドアを開くと、蜂蜜のような金髪が蛍光灯の下で輝いた。

 

研究室にいるのは似たような女たち。胸がでかくて、背が高くて、金髪、あるいはシャンパンゴールドか。

天羽彗糸に、食蜂操祈、テレスティーナ=木原=ライフライン。似たような見た目の彼女たちは、ティーカップ片手に談笑を止める。

 

「垣根くんだけど……ねぇ、テレスティーナさん、来週の創立記念日ってオフ??」

 

「なんで?」

 

「暇なら会おうって」

 

「あら、デートの誘い?」

 

「んー、うん。ぽいね。午後から外で遊ぼって」

 

電話から戻ってきた天羽の言葉に視線が集まると、怪訝そうな顔でその言葉に食蜂は首を傾げる。

それもそうだ。

外で遊ぼうなど、アイドルの彼女たちにはご法度な提案、垣根が何を考えているか不思議に思うのも当然。

しかし垣根の友人、もとい自分のクラスメイトの事情を知っている天羽には特別不思議なことでもなかった。

 

「外?変装する必要があるし、それはやめておいた方がいいんじゃなぁい?」

 

「あー、えっと、垣根くんの友達に人の認識を阻害する能力の子がいてね、その子が協力してくれるんだって」

 

「アイツ友達いたのか」

 

天羽の弁解を聞きながら、手にしたティーカップに紅茶を継ぎ足して、お茶請けのクッキー片手に二人は会話を続ける。

特に天羽の答えに疑問は持っていないようで、少し安心した。

 

「でも、それなら安心ね。一応何かあったら連絡頂戴?友達のよしみでなんとかしてあげるわよ☆」

 

「カメラも、こっちで細工しておいてあげるわ」

 

「ありがとう。でも来週だし、今から張り切らなくても……」

 

「一週間しかないじゃない!お洋服買って、美容院行って、エステして、ネイルして、そんなのやってたら一週間なんてあっという間よぉ!」

 

「えっ」

 

安心もつかの間、食蜂は席を立ってきらきらとした瞳をさらに輝かせる。彼女の頭の中にはきっと乙女の可愛らしく甘い夢でいっぱいなのだろう。

好きな人とのデート、その単語だけで気分は上がり、世界が煌めくから。

けれど天羽の熱量はその半分以下。食蜂の楽しげな声と言葉にラグを生じながら反応した。

 

「えってなによ」

 

「いや、そこまでするつもり無かったんで……」

 

「じゃあなに?貴女、あの代わり映えのしない服でデートに行くつもりなの?」

 

「ダメ?」

 

「ダメに決まってるでしょぉ!あんな普通の安物、デートに適してないわぁ!」

 

天羽にとって、お出かけとは言葉通りのもの。外で遊ぼうという言葉はデートとは変換されない。

そのせいか食蜂たちと熱量が異なる。

 

そもそも外出自体はアイドル前によくしていた。とはいえ大抵は下校時の放課後デート。制服姿で街をぶらつく程度のものだが。

だからデートという概念に、あまり熱は感じられない。

 

「そんなにおかしいかな?」

 

「いつも赤系とかばっかで、ぱっとしないし、学生にはババくさいのよ」

 

「確かに鮮やかな赤多いな」

 

「それはロマンチックレッド現象の応用で……」

 

「そんなくだらない理由で?全部捨てなさい」

 

「集めるの苦労したのに……?」

 

天羽の熱と比例するように食蜂とテレスティーナの勢いが増していく。天羽の恋愛事情がそのままアイドル活動へのやる気に変わる現状、テレスティーナにとってこの件は最優先の事項で、勢いがつくのも仕方がなかった。

食蜂操祈もそう、彼女にとって数少ない友人の恋愛事情は恰好の遊び場。アイドル活動も楽しいが、友人とする恋愛相談はとても楽しい経験だった。

 

しかし天羽はそう思わない。いくらこの間ようやく自分の恋だの愛だのを理解したと言えど、まだその思考はおかしいまま。

自分が着飾ることにあまり意味を見出せない。

 

「でも実際、お前の私服は質素すぎるし、男物も多いからやめた方がいいだろ。もっと可愛いものにしておいた方が好印象じゃないか?」

 

「それはテレスティーナさんの趣味でしょ」

 

「いいえ、違うわよ。なんでこの世にまだ王道ぶりっ子ゆるふわ女子が絶滅せずに生き残ってると思うの?それは男が好きだからに決まってるでしょ?」

 

その考えはただの友人相手にだったら困らないのかもしれない。だが恋人とのデートはそれとは違う。

一番似合う服を着て、一番可愛い自分になって、『テメェが選んだ女は世界一だぞオラ、もっと惚れろ』と喧嘩を売りにいくのがデートの醍醐味、彼女の意識の低さでは垣根に恥をかかせるばかりか、なおかつ戦いに負ける。

スリムなジーンズになんてことないTシャツは、デートの勝負服ではない。それがミーハーで可愛い物好きな彼女たちの考え。

 

「え、でもあたしもアメリカでは結構ぶりっ子のクソ女って小さい頃から……」

 

「アメリカと日本じゃ違うんだから!日本の男には日本の落とし方があるのよぉ!」

 

「そんな事言われても……」

 

けれど天羽の考えは真逆。というより、アメリカの世論は逆である。

十六歳、アメリカで十年、日本で五年。常識、特に恋愛に関するものはアメリカに寄るのは当然。

 

アメリカでは、巨乳で、強気で、大人らしい女性になって欲しいと、何度も言われてきた。それに応えてきた。

少女趣味の可愛い女はポピュラーではなく、なんならアメリカにおけるぶりっことは過剰にエロティシズムを煽る女を指す。そういう場所で育った。

だから性欲を煽ろうとしてきた。

もうその必要はないと分かっていても、それでもやはりそういう思考になってしまう。

 

歪だ。

子供なのに大人の価値観を持っていて、けれど子供の思考だからそれに振り回される。

こうなったら、何が何でも可愛く、可憐で、男が振り向く天女にしないと気が済まない。

それが天羽の友人である食蜂操祈と、母代わりであるテレスティーナがたどり着いた考えだった。

 

「よし、テレスティーナさん。今週末はあいてるかしら?」

 

「ええ、平気よ。エステとかは勝手に予約入れとくけど、いいわね?」

 

「正直天羽さんの能力にエステはいらないかもしれないけど、行っておいた方がいいわ。けど美容院は、デートは午後からなのよね?ならその日の朝に行くのがベストねぇ」

 

「分かったわ。準備はこちらでやっておくから、買い出しの時に連絡して構わないかしら?ちなみに、どこで買うか目星ついてる?」

 

天羽をのけ者に二人スケジュールを組み立てていく。もう二人の中には一定の結果──コーディネートが決まっているのか、随分とさくさく、本人抜きでいろいろなものが決まっていった。

 

「あのぉ、そんなマジになんなくても……」

 

「「貴女は黙ってなさい」」

 

その手際の良さと、鋭い眼光に天羽はただ、震えながら黙るほかなかった。

 




本日は二話更新です……
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