とある科学の肉体支配   作:てふてふちょーちょ

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リアルが忙しいので12月まで金曜日更新です。
今年中に完結しません(断言)
来年中には終わらせるつもりなので寛大な心でお待ちください。


46話:大覇星祭

ゆらゆらと漂う嗅ぎなれた匂いと白い世界。何処か知らない世界の中、呆然と立っていることに気づく。

何も無い白い世界。これはきっと夢だろう。

とてもわかりやすい明晰夢だ。

何処までも白い視界に警戒しながら辺りを見渡すと、視界の端に何かが見える。

 

それは禍々しいものだった。

 

宇宙を凝縮したかのような醜く美しい何か。定まらない形をしたそれの頭上には三角の光がまるで優しい風に当たる風車のように回っていた。

 

一体何者なんだと、口にしようと唇を動かしたその刹那、力強い風が体を吹き飛ばす。

何も教えないとでも言うかのように、強い風が吹き荒ぶ。霞む視界の中、歪んでいく白と黒は混ざり合い、最後は濁った黒となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かに体を揺さぶられる。優しい振動に目がゆっくりと開く。

そこには白い世界も、穢れた何かもいなかった。

白いベッドの上、軽いブランケット越しに体を揺する黒髪の少女と目が合うと彼女は優しく微笑んだ。

 

「垣根、起きて」

 

微睡みの中、はっきりしない意識で体を起こす。淡いピンクの薄手のブランケットに、白い枕、柔らかいベッド、いい匂いのする部屋に、ローテーブル、部屋の隅に積み上げられた本や書類。

そこまで見てやっと今の状況を把握する。

 

「……そうか、寝ちまってたか」

 

ブランケットに手を置く林檎をぼんやりと見ながら少しづつ目を醒ましていく。

昨夜、林檎に本を読んだり、絵を描いたりと世話を焼いていたらそのまま寝てしまったようだ。

まぁ、嫌いな女の家なので迷惑を掛けても困ることは無い。そのまま布団の上でボーッとしていると、何やら訴えるように林檎がこちらにキラキラとした眼差しを向けてくる。

 

「垣根、ご飯」

 

「あ?」

 

何やら急いでいるような林檎に引っ張られてベッドの目の前のローテーブルに移動すると、目の前に料理とメモ用紙が置いてあることに気がつく。

いい匂いにつられると料理の前に座り、そのメモ用紙を手に取って読んでみる。そこにはやけに大人びた字で05と学校に行くこと、料理は自分で作ったこと、そして部屋を物色しても構わないことが書かれていた。

バッチリ化粧してセーラー服を着込む彼女が思い浮かぶと、ため息をついてテーブルに並べられた朝御飯に目を向ける。

 

卵、ベーコン、キノコとほうれん草のガレットに、プチトマト付きのサラダ、レトルトのコーンスープ。

この間林檎を連れていったカフェのようなラインナップにだ。それがよほど嬉しかったのだろう、林檎は乏しい表情筋を精一杯使って笑顔を浮かべる。

 

「ガレット……?」

 

「食べたいって垣根に言ってたの聞いてたみたい、早く一緒に食べよう?」

 

「なるほどな……」

 

どうやら家主は子供を喜ばせることが得意らしい。起きてすぐ食べれるようにと部屋に置いておくあたりも彼女の性格が表れている気がした。

皿の傍に置かれたナイフとフォークを手にしてガレットを小さく切り分けるとそれを口に入れる。毒は入ってなさそうだ。

 

料理を口に運びながら改めて部屋の内装をみるが、やはり青はない。家具は全て白、飾られている花は全て青以外の色で、開けっ放しのクローゼットからは青のないシャツやズボンが見えていた。パッと遠くからみる限り、スカートはこの間のワンピースしかないようで、物凄い違和感を発していた。

部屋の主のファッションセンスにとやかくいうのも忍びない。

この部屋唯一の暗い色であるテレビをつけて、そのまま食事を進める。天気予報だとか、起こった事故だとか、ニュースキャスターから次々と出てくる情報に耳を傾けながらゆっくり手を動かす。

何も考えずに情報を右から左へ受け流してとろける卵とベーコンを口へ運ぶと、美味しいご飯に喜んでいた林檎が途端にフォークを動かす手を止めた。

 

「ねぇ、これなに?」

 

「あ?」

 

行儀悪くナイフでベッドから反対側の壁にかけてあるテレビを指すと彼女は首を傾げる。

体操服姿で走る学生たちを写した映像は彼女の興味を引くに十分だったようで、フォークに刺さったきのこを忘れて食い入るようにテレビに視線を注いでいた。

 

大覇星祭(だいはせいさい)のことか?これは去年の映像だな」

 

「気になるのか?」

 

「うん、なんか楽しそう」

 

大覇星祭、それは九月下旬の学園都市全域で行われる大規模な体育祭のこと。

 

全ての学校の生徒が見世物として夢や希望を追う反吐が出るような行事。クリーンなイメージを持たせるだけの広告に特に興味を抱くことは無かった。

目を輝かせて答える林檎には申し訳ないが、彼女の言葉に同意することは無い。

 

「行きたい」

 

「……まじか」

 

しかし自分の中で結論を出したところで、彼女は完結に要望を伝えた。

大人しくても所詮は子供、興味が出るのは分かっていた。しかし想定内の答えとはいえ、実際に言われたら困る。

 

「ったく、しょうがねぇな」

 

それでもなぜか俺の口からは腑抜けな声がもれていた。

一度言ってしまった言葉は戻せない。やってしまったと思い頭を抱えながらも、なぜか心の奥底は笑っていた。

初めて守れた子供の些細な願い叶えられなくては第二位の名が廃る。それにあの馬鹿女が騒ぎを起こさないか心配だ。

そんな言い訳を胸に、暖かく甘いコーンスープで胃を満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少し寒さを感じる九月一九日、灰色にピンクと白のラインが入ったブカブカのウィンドブレーカーのチャックを一番上まで閉じて、風を遮断する。それでもジャケットから伸びる防寒具がついてない足は風を敏感に感じとっていた。

寒さを感じない体でも風に当たると体は冷えるし、いちいち演算をするのも馬鹿らしく思えてしまう。

 

賑やかな喧騒の中、壁に取り付けられた大きな街頭ディスプレイの目の前で黒い携帯を握りしめて一人佇む。

 

脱色された金色の髪を揺らしてマイクに向かって優しく喋る常盤台の女王と、その柔らかな声をかき消す程の大声で叫ぶ熱血少年が映るディスプレイを眺めながら電話の主の言葉に耳を傾けた。

 

「ぼくを探してた?」

 

調整したソプラノ声を潜めて電話の相手に問う。

いつもとは違う少年らしい声で呟くと、電話相手、駒場利徳はため息を着いた。呆れたように短く息を吐くと彼はコピー機のような淡々とした口調で話を続ける。

 

『……大覇星祭の選手宣誓の件でな。まぁ映像を見れば見つかってないのは分かったが』

 

「でもありがとう。心配してくれるのはありがたいよ」

 

『……そうか』

 

どうやら藍花悦に大覇星祭の選手宣誓をさせようと運営が捜索していたらしい。

今年の選手宣誓を超能力者(レベル5)に任せるという頭のネジが外れたようなトチ狂った企画を考えていたことに戦慄すると同時に、見つからなくて良かったと安堵した。

自分ならまだ前世での職業や経験があるため大勢の前で人当たりのいい笑顔でスピーチができるとは思うが、他の人間には無理だろう。

 

「ありゃ、切られた……ま、いっか」

 

ありがとうとだけ伝えると、駒場は直ぐに通話を終わらせる。

ツーツーと短い電子音が鳴る携帯を項垂れながらしまうと、再びディスプレイに目を向けた。削板軍覇と食蜂操祈の選手宣誓が終わり、大覇星祭の情報を映す画面はとても賑やかに見える。

 

「天羽、なにしてるの?」

 

天羽の知らないところで知らない面倒事が起こらないといいが。

肩を落としながら大きい画面から目を逸らすと、そこへ聞き覚えのある声の黒髪の少女が声を掛けてきた。

 

黒髪のボブカットに、黒目。カーキ色の七分丈のズボンと、同じ色をしたブカブカのブルゾン、淡い紫色の花の写真がプリントされた白いシャツを着込み、白いスニーカーを履いた少女、杠林檎は首を傾げて彼女の顔を覗き込む。

 

「ん?お仕事の電話……って、あれ、なんでいるの?」

 

「垣根ならあっち。天羽の競技見に来た」

 

「いや、あたし競技でないし……」

 

どうして彼女がいるのか理解できないまま、三センチ以上は差がある杠と目線が合うようにしゃがんで聞くと、彼女は屋台が並ぶ道路を指さした。その指の先を視線で辿ると、茶色と白い髪の少年姿が視界に入る。

何名かの女子生徒に囲まれ笑顔を浮かべるジャージ姿の美少年達が自分の知り合いだと気づくのにそこまで時間はかからなかった。

子供を放って置いて女性に優しくするのは少し腹立たしいが、眉目秀麗な人間の宿命だと考えれば仕方ないのかもしれない。

 

「女の人が怖くて逃げてきた」

 

「……イケメンの双子もどきは大変だね。あたし移動しなきゃいけないし、面倒見れないんだけどな」

 

「移動?どこか行くの?」

 

「うちの学校の野郎どもの棒倒し……あの人達おいて二人で行っちゃう?」

 

杠の手を握り、ポケットに入れたパンフレットを二人で確認する。

もうそろそろいつかのアニメで見た棒倒しが始まる時間だ。行きたくないが、巡回ルートと被っているのだから仕方がない。

 

仕事道具を入れた重い服にうんざりしながら立ち上がり、未だ女生徒に絡まれる彼らを遠目から眺める。助けに入るつもりは毛頭ないし、なんなら置いていってもいいくらいだ。

 

どうしているかはわからないが、杠に引っ張られて嫌々来たのだろう。なら彼らが楽しい方を優先するべきだ。

杠の手を握って次の場所に行こうと彼らから視線を逸らして足を動かす。

しかし次の瞬間に誰かにグッと髪を引っ張られ、足はその場に留まることになる。誰かは見なくても分かっていた。

 

「お前どこ行こうとしてんの?」

 

「げ、バレた」

 

ピンクの毛先を掴んでイラついた口調でその人は天羽を睨む。

金に近い茶色の髪、どこの学校のでもない市販の黒いジャージをヤンキーのように着崩す少年は学園都市超能力者(レベル5)第二位の垣根帝督。

そして隣には彼そっくりな見た目の白ジャージを着込むカブトムシ05。

 

「すみません保護対象、勝手について来てしまって」

 

「いいよ別に、怒ってないから」

 

「テメェがいねぇから女に絡まれたじゃねぇか責任とって昼飯奢れ」

 

眉を八の字にして落ち込むように肩を竦める05とは違い、垣根は悪びれもせず未だ天羽の髪を掴む。

離すように手を軽く叩くと、不服そうな顔に眉間に深く皺を刻んだ。

 

「えー……?あたしに責任擦り付けるの?自分のせいなのに?楽しそうだったし遊んでくれば良かったじゃん」

 

「うるせぇ女に囲まれて何が楽しいんだよ、うるさいのはお前と林檎だけで腹いっぱいだ」

 

「別に強がらなくていいんだよ?勝手に連れて来たことはちょっと怒ってるけど、杠ちゃんならあたしと05で面倒見てるから行って来れば?」

 

「黙れ殺すぞ」

 

「理不尽の極みじゃん……」

 

今度は意味不明な怒りとともに頭を叩かれる。俺様気質で自分勝手な子供っぽい彼に乾いた笑みが浮かんでしまう。

子供は何を考えているかよく分からない。そこが愛らしいと言えるが。

しかしなぜこの場に彼がいるのか分からない。少し疑うような目線を彼らに向けると、それを察したのか05は朗らかな笑みを浮かべた。

 

「保護対象、マスターは心配しているのです」

 

「何を?」

 

「か弱い貴女を一人にすることをです」

 

「待って、あたし喧嘩売られてる?」

 

垣根と05の二人で天羽と杠を囲むように見下ろす。

いつもの無機質な声で人の神経を逆撫でするようなことを貼り付けた笑みで言い放つ05に若干腹立たしさを感じるが、それに気遣いもせずに05は話を進めた。

 

「貴女はいつもいつもいつもいつも、何かやらかしてます。木原相似みたく怪しい実験に身を売ったり、マスターと初めて会った時のようにマトモでない貴女の唯一自慢できる体型に売春目的の野郎がやって来たり、変な事件に巻き込まれたりなどが考えられます。なんなら大覇星祭が終わった後に貴女が五体満足で生きてるか想像が出来ません。なので貴女を見張るのは必然です」

 

「あたしディスられてる?ねぇ、なんで?」

 

「口答えしてねぇで黙って目の届くとこにいろ。やらかす未来しか見えねぇんだよ」

 

まるでやんちゃな小動物を見るかのように天羽の頭をぐっと片手で抑えると、垣根は怒り気味にため息を吐いた。

ため息をつきたいのはこっちだ。

背を縮めるかのように頭を抑える垣根の手を払おうと腕を握って退けようと力を入れるが一向に退かない。筋肉量を増やしてるのに。

馬鹿力をこんなところで使うなと目線を送るが、彼はいつもと変わらない悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。

 

「やらかすって……」

 

「初めて聞く係の腕章つけてるのが大きな証拠だろ。なんだよ緊急係って、聞いたことねぇよ」

 

頭から手を退かし、今度は右腕に付けられた赤い腕章に手を掛ける。緊急係と赤い布地に黄色で書かれた腕章は他で見られるようなものでは無い。

天羽とつい最近出来た複数の部下が付けているもので、馴染みのないそれに垣根は険しい顔をする。疑うような視線がチクチクと降り注ぐ。

 

「……まぁ、これは統括理事会の知り合いに()()()()()()係だしヤバそうなのはわかるけど、一応ちゃんとしてんだからね?」

 

「ん?作っ、た?」

 

「あれ、言ってないっけ」

 

針のような視線から逃れるため杠の手を握ってゆっくりと歩き出す。

渋々後ろを着いてくる少年の鋭い目付きに背中を強ばらせながらため息をこぼして道を進む。賑やかな通りの隅を歩いているからか、自分の声がやけに大きく聞こえた。

 

「普通に大覇星祭とかダルいしさ、休む言い訳が欲しかったんだよ」

 

「ダルいだけでサボるんじゃねぇ不良女。それがその腕章となんの関係があるってんだよ。それなら放送とかに行けばいいだけじゃねぇか」

 

灰色のウィンドブレーカーとカーキのブルゾンを挟むように黒いジャージと白いジャージが天羽と杠の両隣に立つ。片腕と片手が塞がれた状態に不満を覚えるが、特に怒ることは無い。

早歩きで天羽たちに追いつくと、垣根は右腕の赤い腕章を掴んで不機嫌そうに呟いた。

 

「極力地味な仕事に回りたい、かと言って大覇星祭に深く関わるのは嫌だ。やるなら風紀委員(ジャッジメント)みたいな仕事がいい。でも風紀委員(ジャッジメント)に入ってない」

 

「つまり警護と称して散歩したかったわけだな?」

 

「なので上に掛け合いました」

 

「は?」

 

杠を抱き上げて狭い道を通る。

四人で並ぶには狭い道は、横一列に並ぶ数が三人に減ると途端と窮屈さを感じなくなった。

 

「今までの大覇星祭で出た負傷者、重傷者をリストアップし、保健委員だけでは不十分なこと、熱中症、脱水症状、夏血栓、低ナトリウム血症の危険性をとにかく強く訴えた。巡回型の保健員が必要じゃないかと」

 

「低ナトリウム……?」

 

「訴える前に努力の方向性がおかしいことに気づいてくれ」

 

「とにかく、そう言ったら上層部があたしの能力を買ってくれてすんなり特別措置をしてくれたの」

 

淡々と事情を説明すると、あからさまに嫌そうな顔をされてしまう。馬鹿にするような腹立たしい表情をして隣を歩く彼にまたもや頭を叩かれると彼は頭を抱えて肺から大きく息を吐いた。

 

「あぁー、お前ほんとさぁ……どこからどう見ても罠だろ……」

 

「でも緊急係ってなに?」

 

風紀委員(ジャッジメント)みたいな感じ。パトロールして、近くに重傷者が居たら救急車の代わりに駆けつけるの。救急車より迅速に治せるからね」

 

「なるほど……?」

 

腕に抱えた少女の質問に笑顔で答えると、彼女は首を傾げながらも頷いた。

新しく買った新品の服と、ずっと着ていたブルゾンをぎゅっと握り大人しく抱っこされている杠はとても小さくて軽い。

 

天羽が高校一年生の頃、妹は九か十歳。同じような小ささと軽さだった。

そう思うと自然と手に力が入る。離しては行けないと、ぐっと手を強く握る。

 

「ですが貴女は特殊とはいえ大能力者(レベル4)ですし、そんなすんなり要望が通るとは思えないのですが」

 

「相手も同じことを考えてたってだけだよ」

 

「……つまり?」

 

杠と同じように不思議そうな目でこちらを伺う05に笑いかけると、彼は緑の瞳を逸らす。

白に近い淡い茶髪に白い肌、緑のラインが入った白いジャージを着た彼はいつもより人間らしかった。

 

「大覇星祭、本来なら厳しい学園都市の警備が緩む日。外からイケナイものが来る可能性はある」

 

足を早めて声を潜めて答えると、彼らは同じ顔で同じように眉を顰める。

この日に起きる()()()を知っている天羽からすればこの処置は当然だった。自分から志願したのも同じこと。

魔術への対抗策がなく、行動が制限されていては今日起こることに介入することも難しくなる。

だから部下を作ったし、上層部に打診した。コネは有効に使うべきだと、経験上知っているからこそ特別処置を貰えたのだ。

 

「不死身で、しかも05を経由すれば二百の監視カメラが使えて、第二位である垣根帝督を主人公(ヒーロー)に仕立て上げた異常分子。それがこの学園都市でのあたしの評価だからね、こういう処置を取るのは当然でしょ」

 

「……何の話だよ」

 

「つまり、アレイスターはあたしを管理しやすく、そして問題に巻き込まれやすくしたいわけ」

 

ほとんど望み薄だったリクエストが実現しているのもきっと彼の都合がいいから。

それを理解してるから天羽はこんな罠臭い腕章をつけているのだ。薄く笑みを見せると、垣根は目を鋭くさせて顔に影を落とす。

嫌そうな顔。そんな顔をして欲しくて言っている訳では無いのに。

 

「彼が想定してない不慮の事故が起きても、あたしが近くに居ればリカバリーが出来る。アドリブが得意な人ではあるけど、修正できるならをしておいた方が良いって思ったんでしょ?」

 

「……テメェは一体何を知ってるんだ」

 

「ほとんど何も知らないよ。特にここから先の未来は」

 

物語を一部知っているとはいえ、見ていない最新作に関しては大まかな話しか知らない。

どうやって動くか、どうやって救うか、取り返しのつかないことになる前に動くために天羽はここにいる。

 

「それより早く移動しようよ、棒倒し終わっちゃう」

 

そのためにはまず物語の初めに向かう他あるまい。

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