鳴り響く電話を取り上げ、表示された相手と通話を繋げる。
まさか第二位が彼と知り合いなんて、とよく知った男の名前に少しだけ場違いな喜びが心の中で飛び跳ねていた。
『っ垣根!どうなってんだよ、この状況はよ!』
「ごめんなさいねぇ、垣根さんじゃないのぉ」
電話を繋げた瞬間に弾けるように叫ぶ彼に残念そうな声色で返答すると、当たり前のことではあるが、彼は驚いたように声を荒らげた。
『へっ?だ、誰だよ!?』
「こんにちは上条当麻さん、輸送準備中の垣根さんに変わって今の状況を伝えるわぁ。質問は受け付けないんだゾ☆」
『お、おう……?輸送……?』
屋上で妹達を抱えるカイツの隣で地面に落ちた白いカブトムシに命を吹き込む青年の姿をちらりと横目で見ると、ゆっくりと歩む。
「状況を説明すると、私の精神干渉能力とミサカネットワークが悪用されて御坂さんが大変なのよぉ」
『やっぱアレ御坂なのか……』
フェンスに体を預けて絶えず上がる雷の方へ視線を向けると、地面につんつん頭の少年が携帯電話を握りしめ、白いナニカと対峙しているのが少しばかり遠くで見えた。
まるで雷神のような風貌のソレは青白い雷を放電しながら地面に浮かぶ。
人間とは思えない彼女に何を思ったかは分かりたく無いが、お人好しの彼ならばどんな感情であろうと彼女を救おうとするのだと、分かっていた。
「でもぉ、あなたが周囲にいて妨害力を発揮し続ければ、ネットワークの変化を遅らせる事が出来る!かもしれないわぁ……多分」
『あやふやだなっ、おい!』
「まー、直接触れば元に戻るかもしれないしぃ、レッツ☆チャレンジ!」
『つーかあんた誰だよ!』
叫ぶ彼の声を無慈悲に携帯とともに閉じると、思い馳せるように雷を眺める。
何もかも無効化する右手を持つ少年に淡い希望を持ちながら後ろを向くと、希望とは真逆の顔をした少年に言葉をかける。
「垣根さーん、そっちどう?」
「……準備できたぞ」
傍らにいたのは彼に瓜二つの白い少年。そこそこ長い茶髪が揺れる屋上で、衣服をはためかせながら緑色の瞳をした生き物が頭を下げる。
「マスター、申し訳ありません。私が不甲斐ないばかりに」
「俺の顔で謝ってんじゃねーよ。お前がいたおかげであいつのデータも取れたしな。あとは早くこいつらを避難させろ」
「了解しました……保護対象をよろしくお願いします」
垣根の言葉に、白い生き物は大きなカブトムシに姿形を変えた。ひと2人は乗せれる大きな姿に驚くものの、テキパキとカイツと妹を乗せる彼の背を見送ると、一転してカブトムシの持ち主に向き直った。
「あからさまに落ち込んでんじゃないわよぉ。そんなんで第二位さん大丈夫なわけぇ?」
「平気だ」
話しかけるのも躊躇うような陰鬱とした雰囲気に怖気ずくこともなくただ呆れる。
平気などと宣う男からは喪失と虚無を感じ取れた。
「あのねぇ、そんな暗い顔してる人が平気なわけないでしょ?藍花さんなら私が取り持ってあげるから、元気だしなさいよぉ?」
「いらねぇ世話だ。アイツも言ってただろ 、あの女の秘密を知れたのならもうそこで関係は終わるんだよ」
「あれ、付き合ってたわけじゃないの?」
「そんな低俗な関係じゃねぇよ」
その哀愁を漂わせる背から鋭利な刃物に似た否定の声があがる。
事前の情報と違う彼の言い分に疑問が浮かぶものの、からかって良い雰囲気でもなく、ただ恐ろしかった。
「じゃあ何?貴方たちはビジネス的な関係なのに、あんなに仲良しだったわけ?」
「仲良しじゃねぇ」
間髪入れずに遮られる声は焦っているようで、強い言葉からなにか歪さを感じ取る。
まるで認めたくないから拒絶しているようで、食蜂にとってはチグハグにしか見えない。
一緒に住んだり、一緒に遊びに行ったり。それって、ビジネスと呼ぶには少し、おかしいのではないかと、明るい茶髪が風に吹かれるのを見て一考する。
食蜂は見たのだ。
彼女のピンチに駆けつける姿も、飛び降りた彼女を助ける姿も、怪我をした彼女を抱き上げる姿も、全て見た。
だからこそ、彼の言葉は信じるに値しない。
「てことは、彼女は、あなたにとってビジネス如きの他人なの?」
「知るかよ」
「どうみたってそれ以上の、」
「知らねぇつってんだろ!!」
張り上げた声に肩が跳ねる。怒気を含んだ大きな声は虚しく風の音で掻き消えた。
「っ、なら、なんでここにいるのよ。あの人がどうなろうがどうでもいいんでしょ?」
「……」
反論することもせず、静かなまま出口へ向かうと、静寂を崩すように轟音が鳴り響く。
爆発に似た音がビルを揺らし、壊れて床に落ちたドアがかたかたと震えるほどの音はビル内部から響いたようだった。
「っ!クソっ」
「ちょっと!置いてかないでよぉ!」
音が発生した場所をめざして出口へ走る。何が起こっているか分からないというのに、焦ったように走り去る彼は外見とはかけ離れて優しく見えてしまった。
確かに、ずっと独りだった少女がこんな人を好きになるのも極々当たり前かもしれないと、場違いな考えを巡らせながら食蜂は必死に追いつこうと歩みを早めた。
◇
大きな音が響くと、地面が揺れる。周りの小物がガタガタと棚から落ち、机の上の工具が散乱する光景に嫌気がさしながらも目の前のパネルをいじり続けた。
やっとの思いでこの階のスピーカーと監視カメラの制御権をもぎ取ると、急いで回線を繋げて映像を映し出した。
爆発音の発生源を突き止めるため何十ものモニターを起動し、何かをみつけようと目を凝らす。
そして青い画面に映る何箇所もの景色のひとつ、真ん中のモニターに人影が映った。
「好きな男にフラれて傷心中かと思いましたが、随分と元気そうですね。失恋の気分はどうですか?」
黒檀のようにどこまでも深い色の長い髪と、藍色の下着、そしてその背中から生える完璧な白色をした一対の翼と、淡く光る丸い輪を頭上に浮かべた少女がモニターに顔を向ける。
備え付けの最新式マイクで画面越しの彼女に言葉を伝えると、余裕な表情を見せた。
『別に、何も思っちゃいないよ。愛は向けられるものじゃなくて向けるものだからね』
「嘘吐きですね、傷心を隠そうと虚勢を張らなくたっていいんですよ?ここには自分たち二人しかいないんですから」
まるで爆発が起きた後のような大惨事の中、彼女はいた。
崩れた壁や天井の瓦礫をバレエを踊るかのように可憐な動きで飛び越えて、彼女はゆっくりと前へ進む。
体を操るだけの能力者が何故爆発後のような惨状を作り上げたのは分からない。けれど先程までいたはずのジジイは傍におらず、嫌な予感が脳裏に過ぎる。
なにか恐ろしい怪物を呼び起こしてしまったのではないかと、考えは尽きなかった。
『本当だよ。あたしは誰もを愛してるけど、彼らの愛は求めていない。全てを知られようと、嫌われようと、それは全て起こりうること』
「起こりうること、ですか。ならば幻生さんを殺したのも必然と?あなたの思想から反した行動ですが、どう弁解なさるおつもりで?」
『殺した?殺してなんかないよ、ちゃんと生きてる』
虚勢を張った女はそれを隠すかのように髪に隠れていた右手から何かを放り投げると、足元に散乱した機械のパーツを踏み潰す。
脳漿が飛び散る桃色の臓器と、キャンディのような眼球が捨てられた地面には破れた白衣に包まれた義手が一つ落ちていた。
「……一体全体、あなたの能力で何をすればそうなるのです?」
『
顔色一つ変えず素手で脳を掴んでいた手から薄っすらと桃色の液体が流れ落ちる。
彼女の言葉は正しくて、実際に
それだけじゃない、彼女は自分の能力で他人の水分量を好きに調節できる。理論がほとんど同じ
嫌な予測に冷や汗が湧く。
脳漿で濡れた手で口元を抑え笑いを堪える姿に何か得体の知れない恐ろしいものを感じるのは、人間としての本能からだった。
『技術って恐ろしいね、相似くん。こんなに小さくなっても機械さえあれば姿を取り戻せるんだから』
「あなたはてっきり甘いだけの人間だと思ってたのですが、なんだ、やれば出来るじゃないですか」
まるでどこに行くのか決めているかのような足取りで彼女は進む。
ギラギラと星のように瞬く虹彩がまっすぐ見つめる先には、明るい廊下しかないというのに。
「それで?今度は自分を殺しにくるので?」
『殺さない。けどあたしの愛を伝えに行く。正義を全うするだけ』
「相変わらずイカれてますね。貴方のこと、本当に嫌いです。気持ち悪い」
わざとらしく怖がるふりをすると、画面の向こうの彼女は足を止めて柔らかく微笑む。廊下の奥で怪しく光沢を見せるそれは、大きな腕を動かし床に大きな穴を開けた。
彼女の身長三つ分はある巨大なボディが道を塞ぐ。
馬鹿でナルシストな調子に乗った男から取り上げた、カマキリの形をした機械は鎌の形をした両腕を振り上げた。
「でも、そう簡単に通すほど自分は甘くありませんよ?」
『そうみたいね。面白いオモチャも奪ってるし』
左目を隠す長い前髪を搔き上げると、一度だけ高いピンヒールのつま先で床を叩く。立ったそれだけ、小さな一撃で床がめくり上がり大きな衝撃がビルを伝い、カメラが大きく揺れた。
振動と共にカマキリの腕が切り離される。その威力に、ものの数秒足らずであの木原幻生を脳だけの姿に作り上げた経緯も容易に想像できてしまった。
彼女の能力とはかけ離れた有様に絶句し、言葉を失う。
ただのちっぽけな虫を踏み潰すような軽い足取りで、彼女は防御を突破してしまった。
「あ、貴方の能力は体のことだけでは無いのです?!どうして
『あたしは物体を動かしてなんかないよ』
「は?じゃあ何を……」
『ただすこし、足からの衝撃の方向を弄っただけ』
耳に纏わりつく笑い声が気持ち悪い。轟く爆発音と爆風に負けないほどの衝撃的な告白は、揺れる画面を見てるだけの自分には少し刺激が強すぎた。
「ベクトル操作……?しかし貴方の能力は──」
『馬鹿なあたしの演算だけでは上手く扱えないの。電子、水分、因子、物質、熱量、
「一体どういう……」
『能力体結晶だよ。
意味不明な言葉を続ける彼女は真っ直ぐカマキリの元へ向かう。足を踏み出す事に凄まじい疾風が巻き起こり、くるぶしまで届く長い黒髪がまるで触手のように風で広がった。
「はぁ……?何言ってるんです?」
『この体は神によって作られた、ならば神と繋がるのも道理じゃないか。
「支離滅裂ですね。体晶のせいで、言語機能が低下したのでしょうか?」
理解のできない話に乾いた笑いを見せると、彼女は喉を鳴らして口に含むように笑う。かつんと小さな瓦礫を蹴り飛ばし大きな爆発を巻き起こし、彼女の姿は爆煙に掻き消され画面の中から消え失せる。
『この姿を見てもそう言えるか?』
背後から凄まじい音が轟いた。その音の方に顔を向けると、明るい光に少し目を細める。
モニターの光しかないはずの薄暗い部屋に眩い光が差すのはあり得なかった。
その光は、天井から降り注いでいた。大きな穴の空いた天井が無機質ながら温かみのある白い光をスポットライトのように通すと、柔らかい香りが部屋を侵食していった。
「退けよ、天使様のお通りだぞ」
天から翼を持った少女が降りてくる。人間とは思えない造形に一瞬、息を飲んだ。
頭上に浮かぶ光輪と、上階から照らされた黒髪がドレスの裾のように落ちた瓦礫を擦る。藍色の少女は瞳の中の一番星を薄く歪めて朗らかに笑った。
「っ、サーチ機能か……!」
「ずっといる場所くらい分かっていました。でも、きちんとお話しなくてはいけないと、そう思ってたんです」
「は、話……?」
「あたしを愛してくれる人はいないと言ってたね」
床に散らばった工具や機材を眺めると、瓦礫の山から降りてぽつりぽつりと話を始める。
「正解だよ。誰にも望まれず、誰にも愛されたことはなかった。これからも、この先も、誰かがあたしを好きになることは無いよ。だって
静かな部屋に彼女の言葉と瓦礫の崩れる乾いた音が響く。ヒールを鳴らしながら前を見つめる彼女はその姿も相まってどこか厳かで、おぞましかった。
「でも、一人だけいるんだ。あたしを愛してくれる誰かが」
床に落ちた取っ手の長い金槌を見つけると、拾い上げて胸の前で握りしめた。神に祈る信者のように優しく微笑む彼女だが、金槌を握ると途端に恐ろしい形相に変わる。
憎いと暗に伝えるその黒い目は、どういう原理か薄暗いこの部屋の中で淡く光っていた。
「それはあたしのためにあたしを殺し、あたしのために救いを差し伸べ、あたしのために世界を作ったクソ野郎。お前らが御坂美琴に植え付けた一部。この世界を具現化した愚かな神様のことだよ」
「か、神……?」
「そう、神様。あたしだけを愛してくれる神様、けどテメェらのせいで浮気されちゃった」
止まっていた足が再びゆっくりと移動する。長い前髪に隠れて見えなくなった両の目は先ほどとは打って変わって感情が読み取れなくなった。
「だから神の望みに従い、愛を取り戻す。あたしが
「何を、言っているのですか…、分かりませんよ!その能力も、全て!」
「
金槌を王笏のように唇に当てると、青白いモニターに照らされながらこちらにゆっくりと歩み寄る。
体はもはや動かず、自分にできることは思いの丈を叫ぶことだけだった。
「どうしてそうなるのですか、どうして能力が切り替わったのですか、どうして!もっと見せてください、貴方の底を、掴んで見せます、理解してみせます!だからっ!」
「歓喜しろ、テメェは今日神の意志を知り、神の御言葉を聞き、神の秩序を知る。願い通り、神の正義をその足りない脳髄に刻み込んであげましょう」
顎を金槌で持ち上げられると、可憐な少女はその見た目からおよそ出るとは思えない高い少年の声でひどく汚い言葉を紡ぐ。
厳かで、美しく、清純で、悍ましい天使のような少女が花の優しい匂いを振り撒いて神々しく頭上の輪によって淡く照らされる。
その恐ろしさたるや。彼女を人とはもう脳が認識してくれなかった。
鋭い痛みがこめかみから突き刺さる。支配権を奪われたこの体は生きるも死ぬも彼女次第。
彼女が願えば触らずして肉体を腐らせることも、脳を作り変えることも、心を奪うこともできてしまう。他の能力者とは違う、抗えない死がそこにあった。
常識を凌駕する能力に痛みを越す興奮と興味が湧く。何も考えられない頭で手を伸ばすと、動きに伴い買ったばかりの煙草の箱が音を立てて落ちた。
知りたい、その異常な能力を。だから最高の舞台に連れ出した、誘導した。
伸ばした手は、彼女に届くことはなかった。
「だから、まだあたしを愛してください。神様」
朦朧とする意識の中、最後に聞いた言葉が自分に告げられたものではないと気づくと、悔しさを抱えて目の前の少女の眩しさを拒むように瞼を閉じた。
◇
落ちた煙草のボックスを拾い上げると、微かに痙攣を繰り返しながら椅子の上で気絶する木原相似を乱暴に床で眠らせる。
埃が舞う薄暗い部屋の中で柔らかい感触の椅子に深く座ると細い煙草を一本取り出して口に咥えた。
物が散乱した机からライターを掴むと、青いモニターの光と空いた天井から差し込む少量の照明しかない暗い室内で真っ赤な光を燃やす。
肺を満たす煙を薄く吐き出すと、青白い光に彩られて空気に散らばる。天に登る煙が消えていく光景にただ懐かしさしか感じなかった。
「神様、あたしはまだ、この世界で生きていてもいいんですか」
椅子に体を預け、彼に恋い焦がれる。
彼女をこの世界に落とした産みの親は、自分が思っているよりも繋がりがあった。
神が裏切れば、天羽彗糸はこの世界では生きていけない。
その命が保障されない。
嫌いだと、死んでしまえばいいとも思うのに、神の加護なしには生きられない。あれに見捨てられたら、彼女はこの未練を果たせない。
大好きな彼と同じ空気を吸うこともできなくなる。
だから、世界一嫌いな神に仕えてでも、世界一好きな彼を救いたい。
初めて好きになった
「あたしの人生、なんでこんなことになっちゃったんだろうなぁ……」
モニターの電源を一つ消すと、そこに酷く疲れ果てた天使の姿がぼんやりと浮かぶ。
荒れた部屋と、血色のない顔がどこか他人事のようで笑ってしまう。
けれど引き攣る神経のせいか、上手に笑えなかった
「あたし、普通の女だったのに」
妹の為に、自分を最大限生かすため、ずっと研究してた一般人。
妹のことだけ考えてきただけの、社会経験もない普通の学生。
要領も、頭も悪くて、一度に多くのことをやるのがちょっと苦手な、妹思いの姉。
こんな世界に生きるための体でも、脳でも、魂でもないのに。
前世との歪な違いに精神は疲労していく。
前世は簡単だった。
研究も、妹だけでなく誰かの為になることだから、ずっとそれをしていればいつかは報われると思ってたからそれだけをずっと見据えて生きてきた。
それだけで彼女の人生いっぱいになった。自分のことも手のひらから捨てて、妹だけを心の支えにしてきた。
目標はいつでも一つだから、こんな女でも容易く生き抜けたのだ。
けれど、この世界はそんな簡単じゃない。
名前隠して、本性隠して、上手く立ち回れるように手を回して、嘘を沢山ついて。
目の回る忙しさに体は追いつかない。
まるで十五歳の自分が二十四歳を演じてるかのように感じてしまうのだ。
初めてこんなに頭を使うからボロも出るし、馬鹿に見える。堪らなく疲れる。
彼女の若さが、彼女の老いについていけてない。
今までならひとつのことに没頭してれば良かったのに。それすらままならない。感情の波は今までより激しいのに、大人の自分に振り回されて、疲れだけ残って。
前はなんでも出来たのに。タバコも、お酒も、ギャンブルも、車も。今よりもなんでも出来たのに。
今も昔も、同じくらい窮屈だった。
「天羽?」
静寂が低い男の声で破られる。背の高い少年の暗い茶髪が微かに揺れたのを横目で見ると、深く息を吸い込んだ。
香りが口腔に広がる。
咥えたタバコの爽やかなメンソールとシトラスの味はどうしてか、とても切なく苦かった。
次回からは毎週金曜更新です。申し訳ない