ゴブリンスレイヤーTAS 半竜娘チャート(RTA実況風) 作:舞 麻浦
◆前話
・船を燻蒸し、港を整え、衛生設備を改善し、海竜曳航船としての完成度を上げ、試験航海もした。
・となれば、あとは
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※ AIさん(Gemini-Imagen)に出力してもらった挿絵あり〼
はいどーも。
待てば海路の日和あり。海を往き、交易に出る冒険、はーじまるよー。
間違ってエルフのいうところの『
さて前回は半竜娘ちゃんが八面六臂の大活躍をして、軽銀商会の港町の開発度を爆上げして、船旅の準備をし終えたところまででしたね。
いよいよ北への航路を取り、海路に居座る怪物をぶちのめして、
そう、半竜娘ちゃんが曳く、この
「ではいざ出航じゃ~~!!」
「「「 しゅっこうじゃ~!! 」」」
ざばぁっと曳航用の索具をたくさん結び付けた
胸に燦然と輝く
そして半竜娘ちゃんの声に合わせて、海竜曳航船のメインマストの見張り台で黄色い歓声を上げているのは、幼竜娘三姉妹。あ、一応、風も動力として使えるように、メインマストは残してあります。半竜娘ちゃんに不予があったときに備えた予備系統ですね。追い風の時は帆も張ればさらに速度も出ますし。
さて、
蜥蜴人として理論値最高の才能を持つ半竜娘ちゃんから単為生殖的な処女懐胎で産まれたこの三姉妹は、やはり最高レベルのポテンシャルを持っています。そのお陰か発育も早いのです。
蜥蜴人の文化的には三歳になる頃には親元を離れてスパルタみたいに集団で教育するのが普通なので、半竜娘ちゃんはそろそろ故郷の部族に幼竜娘三姉妹を送り出そうか迷っているとかなんとか。
閑話休題。
「積み込みよし。目録はこちらよ、船長」
「確かに。こちらの船員でも確認した」
「そのあとさらにこちらでも確認したわ」
「ギンバイはさせてないから安心しろよなぁ」
「まあ念のためというやつよ」
森人船長と丁々発止のやり取りをしているのは、まだ
その背後には、船に荷物を積み込む際に使った大きな
出航の日まで、彼女は彼女で、交易神の聖堂の誘致や、港湾施設の整備充実、交易品の手配なんかで大車輪の活躍でした。
聖堂の誘致ついでに交易神聖堂
さらに
清濁併せ呑み硬軟織り交ぜる彼女の老獪な遣り口は、軽銀商会会頭の女商人さんにとっても、学ぶべき点が多かったようですよ。
もちろん、後ろには半竜娘ちゃんという特大の暴力装置が控えているということも影響していますが。逆らうものは最終的にぶちのめせばいいのじゃ! 武力の後ろ盾は実際大事。
そして出航の様子を書付に記しているのは、聖剣を提げたローブ姿の文庫神官ちゃん。
それと、なんと意外にもTS圃人斥候も、何か書き物をしています。
「知識神聖堂の秘技をもってすれば、速記に描画もお手の物です。………それで、そちらもおねえさまの晴れ姿の記録を?」
感心ですね、と言う文庫神官に、TS圃人斥候は、残念ながらそんなんじゃないぜ、と返します。
「あとでオイラの冒険譚を出版するための覚書さ。男に戻って、冒険で得た財産で荘を開いて、可愛くて働きもんの嫁さんもらって、そして生まれた子々孫々の誉れになるような立派な本を書くのが夢だかんな」
「ああ、そういえば元男性でしたね、あなた。………戻れるといいですね?」
「【解呪】も効かねえもんな、この永久性転換の術……。完全に固着してやがる……」
「戻らなくても良いと思いますけどねぇ。せっかくかわいらしいお姿ですのに」
「戻らないと子孫繁栄のためにはオイラが孕まなきゃならんだろうが。嫌だぞオイラは、男とまぐわうのなんぞ」
「気持ちはわかります。私も子供を設けるならおねえさまとがいいですし。となると、【解呪】よりは、いっそ肉体変容の術とかで女のまま『生やした』方が早いかもしれませんよぉ」
「………
「嫌なんですか? 両方ついてるとそれはそれでお得だと思いますけど」
ちなみに、性転換の術の重ね掛けは、上手くいったとしても単に前の術を上書きするだけなので無意味です。
馬鹿みてえな達成値でしかもクリティカルしてるので、TS圃人斥候ちゃんの性別反転術式は実質解呪不可能になってるのですよ……。
文庫神官ちゃんの言うように、別のアプローチを探った方がまだ可能性があります。
そして、半竜娘ちゃんたち一党にちょうどいい冒険の難易度レベルから言えば、そういう胡乱な、しかし強力なアーティファクトを手に入れる機会があっても不思議じゃありません。
それこそ、TS圃人斥候が日頃から用心棒として入り浸っている歓楽街のおねーさんたちのお店、そこからの情報か何かを起点に、そういうシナリオを組むのなんて、ありがちですしね。
さて、そんなこんなで無駄話をしながらですが、乗員がすべて船に乗り込めば、いよいよ完全に出港準備が整いました。
岸壁と舷をつなぐ渡し板を引き上げ、係留索のもやいを解き放ちます。
森人船長が野太い声で、「出港!!」との号令を響かせれば。
「よーそろー!!」と応えた半竜娘ちゃんが、ざぶんと海中に潜り、マストだけを海面から出します。
そして岸壁を柔らかく、しかし強く蹴って勢いをつけると、次には自らの巨体の尾をくねらせて泳ぎ、捧げ持つ牽引用のマストを前へ前へと推し進めていきます。
牽引マストから船体前部に伸びた索具がピンと張って、先ほどまで浸かっていた海水をロープからパンッと弾けさせると、その張力が船体へと伝わり、静かに、しかし力強く、船全体が進み始めました。
「帽ふれー、帽」 と森人船長の声に合わせて、手すきの船員たちが、側舷で帽子を振って、同じく岸壁で帽子を振る見送りの商会員たちに答えます。
港に並ぶのはほかにも、領地から派遣された徴税役人や、交易神聖堂の赴任神官、夜警や船大工、おかみさん衆など。
「どうか無事の旅路を……祖竜よ、交易神よ、彼女らに加護のあらんことを」
多くの人々の声援に、乙女の祈りが加われば、冬の北海の荒波やそこに巣食う化け物など、何ほどのことがありましょうか。
まさしく、百人力を得たかのごとし。
この航海の成功は、約束されたも同然でしょう!
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さて、晴れの穏やかな日もあれば、寒風とみぞれ交じりの雨の日もあり。
どうにもならない
追い風の精霊術*2で半竜娘ちゃんの負担を減らして休養日を設けたり。
そんな感じで北の海の荒波を砕きながら海路を行くことしばし。いくらかの日数が経ちました。
交易神のもたらす旅路の加護の奇跡*3の効果もあり、行程は順調そのものです。
「思ったよりも海の怪物には襲われないものなのね」
塩気を含んだ風にさらされた弓とその
服装はファーも多くついたもこもこの冬装備です。鞘みたいな毛糸の耳当てで笹穂の長耳を覆っているせいで、若干、音や空気の動きによる索敵にデバフが入っているのを気にしていました。
いまのところは酔い止めの薬のおかげで、船上でもグロッキーにならずに済んでいます。
まあ、森人探検家は万が一のためにと、出港準備の間に、以前から習得していた武技【地功拳】の真髄を磨き、万が一船酔いになったとしても、それすらも利用した攻勢を可能にしているのですが。ええ、攻勢は……。
なおその場合は
「船員どもも不思議がってたが、今回は特に
干し魚を齧りながら返事をしたのはTS圃人斥候。
圃人は体が小さい分、熱が放散しやすいですし、カロリーの貯えも体格相応に少ないので、いくら着こんでいてもたくさん食べる必要があるのです。
そして、船員らの言うことによれば、いつもの航海であれば、刃のヒレを備えたトビウオだの、あるいは、魚の方の
ですが、今回の航海では、そういった敵影が異例なほどに少ないのだそう。
「いいえ、これはやはり、おねえさまの御威光のたまものでしょう!」
ふんす、と鼻息荒く断言するのは、文庫神官。
まあ、竜が曳いている船なんて、海のモンスターとしても近づきたくはないでしょうしね。
あと半竜娘ちゃんたちの手配によって改善された衛生装置の影響もあると思います。
おそらくですが、以前の船旅は、船から投棄される糞尿や生ごみなんかの匂いをたどって、海の怪物たちが襲ってきていたんじゃないかと思われます。それが『冷えカチ丸』によって汚物を凍結処理することで、匂いが広がることが抑えられ、結果としてエンカウント率の減少につながったのでしょう。
まあ、それら以外にも、非常に大きな原因もあるのですが……。
ということでその
「冒険者の嬢ちゃんたち、そろそろみてえだぜ」
甲板にいる森人探検家・TS圃人斥候・文庫神官の3人に声をかけた彼は、遠く海原の果てを指さします。
「あれが……」
「『あらしのくも、てんのさけめ、そのしたにあるは、ごうよくなるかいま』。言い伝えは本当だった」
船乗りに伝わる、おそるべき
分厚く積み上がり、まるで夜のように陽光を遮る、嵐の雲。超巨大積乱雲。
その嵐の周りを囲うように上空で光るオーロラと、雲の合間を光らせる幕電。
これこそは、深淵の主たる海魔が、死すら死するほどの永劫の微睡みからほんの束の間目を覚まして、獲物をむさぼり尽くさんとする、その予兆なのだ、と。
だからそうなれば、近づくなと。
恐ろしい海魔の魔の手に捕まりたくなければ、すぐに逃げろと。
すべてを喰らいつくす
船乗りに伝わる伝説では、そのように謳われているようです。
まるで闇のように暗く黒い海流が、半竜娘ちゃんが曳航する船を引きずり込まんと渦巻いています。
そして、渦の中には、砕けた船が何隻も何隻も見えています。
それらの多くは、まるで巨人か何かに握りつぶされたかのような、歪にひしゃげた壊れ方をしています。
ですがそれだけではありません。巨大な歯形によってえぐり取られた船体。まるで氷山にぶつかったかのようにしてへし折れた竜骨。そういったものも見受けられます。
「ここだ。ここらの海域で、俺たちの船団は沈められたんだ」
森人船長は「間違いない」と言い、渦に弄ばれている砕けた難破船の群れをキッと睨みました。
おそらくは、見覚えのある船首像や識別旗でも見つけたのでしょう……。
「リベンジだぜ、デビルフィッシュ……! 他人任せってのは、船乗りとして忸怩たる思いだが……。頼んだぜ、竜の嬢ちゃんよ……!」
一方で、船を曳く半竜娘ちゃんもまた、その胸の奥で、不思議なざわめきを感じていました。
嵐による暗い海の荒波がその身にぶつかりますが、そのざわめきをかき消してはくれません。
「
単に大物を前にした高揚とは別に、なんとなく座りの悪いような、ジクジクとした感覚が、胸の奥というか
似たような感覚を覚えたことがないかと、記憶を探ってみれば。
なぜか、冒険者になった初めのころに黒龍を討伐したときのことが思い起こされました。
「………そうかや、これは────
かつての敗北の屈辱を
すなわち、雪辱。
どうやらそれが、半竜娘ちゃんの胸を燻ぶらせる感覚の正体のようです。
であれば、動力炉心のざわめきというのは、何なのでしょう。
「共鳴している……いや、外部からの信号受信……? ああ、そうなのじゃな、この動力炉心の正当な持主が、これを探しておるのじゃな」
動力炉心の由来は、外宇宙から墜ちて海底に沈んでいた、星の海を征く艦の、その動力炉です。
半竜娘ちゃんは、海底の冒険を通じて、周辺に変異の呪いをバラまいていたその動力炉心を得て、さらにそれを自らのものとしたのです。
一方で、動力炉心を失った艦船はといえば、それを取り戻すためにと、周囲に居た
そして追ってくる、鮫と蛸と沈没船の融合体たる
つまり、かつての半竜娘ちゃんたちは、
なすすべもなく逃げ出すしかなかったのです。
その後コアを失ってエネルギー不足に陥った
あるいは、空間の歪みを通じて、星辰に導かれて、ここに現れたのかもしれません。
ともあれ、半竜娘ちゃんの胸の
ここに至るまでに海の魔物の襲撃がなかったのも、北へ向かう交易船が戻らなかったのも、すべては、その怪物のせいです。
その恐るべき海魔が、すべてを己の腹の中へと納めたが故に。
「ここに居るのじゃな、ヤツが」
半竜娘ちゃんの胸に雪辱の感覚が沸き上がるのも当然のこと。
無様に逃げ出すしかなかった、あの夏の深海での屈辱。
それを雪ぐ機会が巡って来たということを、本能が感じていたのです。
見れば、波立つ嵐の暗い海面に、さらに暗い巨大な、とても巨大な、島のような魚影が一つ。
そこから海面を裂いて現れ、そそり立つのは、巨大な鋼鉄製の、サメの背びれ。
そして、同じく鋼鉄の、無数の触手が周囲の海面を突き破って、まるで手招きするように踊りそびえました。
これこそが、北海航路を塞ぐ海魔。
その正体は、なんと! 因縁浅からぬ強敵、
半竜娘ちゃんは、抱え持っていた牽引用のマストを手放し、波を割って敵影と対峙します。
互いに深い因縁のある者同士。
因縁を乗り越えて勝つのは、果たしてどちらの怪物か──── というところで今回はここまで。
それではまた次回!
シャークトパスさん、久々の登場。リベンジだ!
過去話の「32/n 鮫と蛸と沈没船-3/3(VS鮫、VS蛸、そして)」https://syosetu.org/novel/224284/104.html で登場したやつですの。
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