東方素手喧嘩録   作:寄葉22O

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正直人里編とか予定してませんでしたが、何故か人里編。もっとガンガン闘って終わり!閉廷!以上!皆解散!するつもりだったんですが……。

それもこれも藤原妹紅ってやつが以下略




第14話

獣道を辿り、日が紅く傾き始めた頃、

一際拓けた先にはそれなりの村があった。

確かに現代の街に比べれば見劣りはするし、文明が何十歩も遅れているような家々。コンクリートなどの建造物はなく、背の高い建物もない。どれもこれもが木製で茅葺き屋根。

 

夕飯時の釜戸の煙が彼方此方で生活の息吹を感じさせた。

 

男は妹紅に言われた通りに寺子屋とやらを目指してみる事にする。

 

(てらこや……ってなんだろ?)

 

とりあえず誰かに聞けば良いかと歩を進める。

 

「止まれ、人里に何の用だ」

 

村に入る手前に木製の門扉の前にいた男に厳しい剣幕で止められた。

 

「…見ない顔だな」

 

「えーと……」

 

「山伏かなにかか?」

 

「いや……」

 

どう答えたものかと思い悩んでいると、門番の男の背後から一人の女性が声をかけてくる。

 

「何かあったか?」

 

「あっ慧音さん…。いや怪しい男が…」

 

慧音と呼ばれた女性が、前に進み出てくる。

 

「……ふむ、妖怪の類いではなさそうだが…人里に何か用事か?」

 

堅そうな物言い、敵意ではないが警戒はされている様子。

 

「いや…妹紅から、ここのてらこや?の人頼れって言われて…」

 

「む?妹紅が?」

 

女性は腕を組んで暫く考え込んだ後

 

「分かった、ここは任せてくれ」

 

「え、いや……慧音さんがいいなら…」

 

「ああ。門番、ご苦労様」

 

「あ、はい!」

 

門番の男性は、女性の労いに頬を染め背筋を正して礼をする。

 

「さあ、ついてきてくれ」

 

「え、あ、はい」

 

身を翻して先導していく女性にワタワタとその背を追う男。

 

 

 

 

 

 

 

「狭いが、まぁ座ってくれ」

 

「…うす」

 

案内されたのは比較的大きな建物で、古めかしい本が幾つも納められた本棚がある部屋に通された。

途中に大きな部屋があり、その配置はまるで教室のような場所もあった。

 

机上にも本が積み上げられており、横には筆と硯が備えられている。

 

「改めて、私は上白沢慧音。此処で寺子屋を開いている」

 

「自分は…佐藤武っていいます…外来人?やってます」

 

「ふむ、では佐藤。とりあえず話を聞こう、その格好を見るに色々あったのだろう」

 

「はぁ…」

 

男は幻想郷に来てからのことをかいつまんで話す。

博麗の巫女に世話になったこと。

元の世界に戻ることを拒否したこと。

大百足と闘って撃退したこと。

妹紅に奢られ、人里を紹介されたこと。

 

 

 

ただ、あえて言わなかった事がある。

 

 

自分の目的…闘いに関して。

 

 

なんとなく男は、目の前の女性が、いい人、だと感じていた。

いい人故に、無謀な行為はきっと止められるだろうと。

きっとそれを振り切って行くことは容易いが、なんとなくお互いにしこりを残しそうな気がして、止めておいた。

 

「ふむ…あえて幻想郷に残る…まぁそれも選択だろう。事実、人里にも外来人で根付いた者もいる。菓子屋を営んでいるものもいるから、夜が明けたら案内しよう、何かと話が合うだろう」

 

男の話を真剣に聞いていた女性は、大様に頷く。

 

「今日は此処で寝泊まりしてくれて構わん、寝具も持ってこよう。仕事も…その体躯ならば農業でも、大百足を撃退出来るなら退治屋でもやっていけそうだ。何処か紹介しよう」

 

「あっいや、宿は有難いんすけど…仕事は…」

 

「なに?流石に人里も穀潰しを置くほど余裕がある訳ではないし、君自身の立場も危うくなる……」

 

「少し…この世界を見て回りたくて…」

 

「……危険だぞ?人里の外は妖怪だらけ、襲われても文句は言えん。誰も助けてはくれないだろう」

 

「それは百も承知です、でも…やっぱり見てみたいんです」

 

「ふむ……」

 

むむむと難しい顔をして黙り混む女性。

 

「……よし!」

 

カッと目を見開いた女性。

 

「確かに好奇心は歴史を作る大事な要素だ。しかし、蛮勇は見過ごせない」

 

「まぁ…自分でも自覚はあるっすけど…」

 

「ならばどうすればいいか。蛮勇は知恵の無さ。勇気になるにはまず知恵を。というわけで、勉強してもらおう」

 

「べ……勉強!?」

 

とんでもない方向に行きそうな話に狼狽える男。

 

「うむ。知り合いに幻想郷縁起という妖怪図鑑を著している者がいる。ある程度危険安全が分かれば蛮勇は侵さないだろう」

 

その情報自体は有り難かったが、男にとっての鬼門が立ち塞がる。

 

「あ、あの…俺、あんまり…ってか全然馬鹿なんすけど…」

 

「なに、人は皆学ぶものだ。暇さえあれば私も面倒を見よう。学ぶ間は何かしら仕事をしてもらわねばならんが…そうだな丁度良いから稗田家で何かないか聞いてみるとしよう」

 

(だ、ダメだ。この人、いい人だけど頭硬いタイプの人だ…)

 

男は悟った、少し頼る先を誤ったかもしれないと。

 

その後女性に押し切られて、あれよあれよと言う内に、夕飯をご馳走され、寺子屋の一角で宿をとらせてもらうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌朝

 

 

「あれが共用の井戸、皆で使うから汚さないようにな。あっちは食事処……あぁ、暫く此処に居着くことになる佐藤だ、宜しく頼む。む?あぁ、正午から授業だぞ?遅れないようにな。い、いや違う、外来人らしいから世話をな……」

 

人里を案内をされていたが、村の老若男女から声をかけられる慧音。

人里の皆から慕われているのが良く分かる光景。

 

その後ろでぬぼーっと突っ立っている男はなんとなく居心地が悪い。

 

 

全身傷だらけ、人里の誰よりも大きい体躯、退治屋でも見ないような発達した筋肉。無精髭に、ザンバラ…どころではない髪型。

 

 

人里の人々の目はどちらかというと、不審なものを見るものであった。事実、不審者である。

 

外の危険に怯えて過ごす彼等にとっては、ほぼ閉じた世界である人里に誰かを受け入れるのは時間が掛かる。

外来人を受け入れている前例こそあるが、ここまで奇異な人物であると恐れが先に立つのは仕方がない。

 

慧音の紹介だからこそ、なんとか受け入れているような状態だ。

 

 

人々の視線に晒されている男だが、気にした様子はない。

 

それが普通、それが日常であった男は、それが異なことだとも思わなかった。

 

自分が異常であるという自覚。

自分が普通とはかけ離れているという自覚。

 

良くも悪くも、男は慣れていた。

例え人里の皆々から迫害されたとしても、自衛こそすれ、男は黙って出ていくだろう。

なんの感慨もなく。それが普通だとして。当然だとして。

 

 

 

「…佐藤?佐藤、行くぞ?」

 

「あっ、はい」

 

漸く人々が散り、先行する慧音に声をかけられる。

 

相変わらず周りから好奇の…或いは疑惑の視線を受けながら、人里を歩き始める。

 

 

 

 

「ここが稗田家だ」

 

一際大きな建物。玄関先には…男と比べれば見劣りこそするが…屈強な男性二人が番をしている。

 

「慧音さん、何か御用で?」

 

護衛であろう若い男が、明らかに男を見据えながらあくまでも慧音に話しかけてくる。

 

(そこそこ鍛えてるけど…アスリート以上達人未満かな…。もう一人は…結構出来そう。でもまぁ慧音さんの方が断然強いだろうなぁ)

 

慧音が自分の紹介をしているのにも関わらず、ぬぼーっとそんなことを考えてる男。

 

「しかし、外部の者に阿求様に会わせるのは…」

 

「……まぁそうだな。阿求の立場もあるのは分かっている」

 

どうにも交渉は上手くいかなさそうな雰囲気を感じる。

 

「……分かった。すまん、佐藤。少し此処で待っていてくれ」

 

どうやら慧音一人で入ることになったらしい。

 

「うっす、んじゃ待ってます」

 

「すぐに戻る」

 

そう言って屋敷に入っていく女性。

 

慧音が入っていったと同時に、若い男性からの圧が強くなるのを感じる。

 

「おい」

 

「…なんすか?」

 

「外来人…だったな?」

 

「そうみたいっすね…」

 

「……チッ。外来人だからといって慧音さんに世話掛けていい理由にはならんのだがな?」

 

「ホントに…助かります」

 

暖簾に腕押ししているような手応えのなさに、若い男性は苛立つ。

 

「だから!迷惑をかけている自覚があるならばとっとと荷物纏めて出ていくのが筋だろう!余所者が!」

 

「そうっすよねぇ…」

 

(慧音さんも妹紅も、随分と世話焼きだよなぁ。普通こんな怪しい奴に世話なんか焼かないだろ…)

 

男にとっては粉うことなき本音だった。

 

「お前……喧嘩売ってるのか?」

 

「いや……別に」

 

それも本音だった。

態々弱い者いじめをする気もないし、八雲紫と大百足という、男にとって闘いへの欲望を満たす相手と出会えた。

 

そのお陰で、妹紅と慧音という猛者に会っても欲望が鎌首をもたげることがなかったのだから。

 

だが、その態度こそが若い男性の癪に触った。

当たり前だ。稗田家の守人、という人里においても実力者しかなれない職に就き、皆から一目置かれている自負と自尊。

そして、人里の守護者である上白沢慧音に世話をされている事実が、気にくわなかった。単純に慧音が美人であることも関係している。

 

若い男性は腰の得物に手をかける。

 

男も無論自衛はする。だが、特になんの構えもないのは、どんな攻撃もこの状態のまま捌ける余裕があった。

 

「……やめとけ」

 

「…っ!ですが!」

 

もう一人の護衛、若い男性に比べればだいぶ歳をとっているが、その視線は鋭く深い。

 

「阿呆、此処が何処だと思ってんだ。奴さん、すまんね。まだ若くて血気盛んなんだわ」

 

「大丈夫っす、俺も昔は向こう見ずでしたしね…」

 

若い男性はまだなにか言い足りなさそうだが、壮年の男性の手前、ぐっと口を閉ざす。

 

「しっかし、奴さん。本当に外来人か?歴戦どころじゃなさそうだが」

 

「いや…俺も大したことないっすよ。最近ぼっこぼこにやられたばっかですし」

 

「お前さんがか?はっはっは!どんな化け物とやったんだ」

 

「えっと…八雲…「すまん、待たせたな」……あっ」

 

屋敷から一冊の本を手に出てきた慧音に話が遮られる。

 

「無事に借りられたぞ、とりあえずはこれで目的は果たせたな」

 

「うす」

 

「朝から騒がせたな、お前達も阿求の護衛を頼むぞ」

 

「「はっ!」」

 

男と慧音は稗田家の屋敷を後にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男と慧音が去っていった稗田家屋敷前。

 

 

「…………」

 

「…なんか言いたそうだな」

 

「当たり前です!あんなに馬鹿にされて黙っているなど!」

 

「馬鹿にされちゃいねぇよ。というか、相手にもされちゃいねぇ」

 

「ならば尚更!!」

 

「死にてぇならいいけど、そんときは守人衆抜けてから行けよ?面倒だから」

 

「……俺が負けると?あんな見た目、虚仮威しに過ぎません」

 

「勝負にもならねぇ。俺と二人がかりでも無理だわ。ありゃ本当に化け物の臭いがした」

 

「……そんなこと」

 

「それが見抜けないなら長生きできねぇぞ」

 

「…………」

 

「それにお前聞いてなかったのか?」

 

「……何をです?」

 

「最後、奴さん何て言いかけた?」

 

「最後……?えっと……」

 

「八雲の名前を出したんだ、嘘だとしてもお前以上の命知らずの破滅願望持ち。本当なら……」

 

若い男性ですら、知っている。

幻想郷に住むものならば心に焼き付けなければならない氏。

 

八雲の名前が示す者は。

 

妖怪の賢者、接触禁止(アンタッチャブル)

男が指しているのが、その氏を賜るその式だとしても、九尾の大妖怪と式の式である化け猫だ。

 

「まぁ、どちらにしろ関わり合いになるだけ厄介な御方だろうさね」

 

「…………」

 

「…納得いかねぇってんなら、一手合わせて来たらいい。あれは礼には礼で返すみてぇだからな。……俺も興味はあるからな」

 

「……はい」

 

男と慧音が立ち去り、誰もいなくなった道を見据える二人の守人。

 

 

辺りは騒ぎもなく、ただただ安穏とした空気が蔓延していた。

 

 

人里は今日も平和であった。




お気に入りが何故か増えた。バーに色が付いた。
暇潰し小説のつもりがこれは笹食ってる場合じゃなさそうです。
皆も執筆して東方二次創作者になってよ!(裏声)

次回
人類最強の試練あたりまで
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