東方素手喧嘩録   作:寄葉22O

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ちょっとお茶濁し回が続きます。更新も開くかも…。
戦闘のネタこそあれ、自分の文章力のなさで描写が上手くいきません。あと大型イベが来るので(素直)。
許してください!なんでもしまかぜ!



第18話

顎を砕かれ気を失った守人頭は、わたわたと守人衆に運ばれて行った。気に当てられ気絶していた少年達も同様だ。

 

 

 

ぽつねんと道場に残された男はどうしたものかと頭を掻く。

 

半ば連行されて来た様なものだが、人里でそれなりに地位にあるであろう守人頭をぶっ飛ばしてしまった。

 

守人衆が真剣で一人の男に私刑をしていた…という見方が出来るが、人里にとっては男が異分子。

 

守人衆の言い方次第でもあるのだろうが、そのまま外来人と守人頭が闘い、守人頭が重症。という事実が伝わっただけでも、恐らく忌避されるのは男のほうであろう。

 

 

「まいったね…こりゃ」

 

 

既に人里で生活していく気のない男にとっては、人里の好感度自体は些細な問題だが、問題は慧音。世話になった人に迷惑を掛けるのだけが心配事だった。

 

頭をガリガリと掻き、どうしたものかと天井を仰ぎ見る男。

 

 

 

しかし、男は後悔はしていない。反省も。

今後どうするか悩んではいるが、やったことに対して全く思うところはない。

 

それどころか、満足すらしていた。

 

あのレベルまで高められた剣技。滅多に御目にかかれるものではない。

 

人の極みにいる男ですら感嘆する修練の到り。

 

達人と呼ばれる人間と闘ったことは一度や二度ではない男であったが、その中でもトップクラスに名を連ねるだろう。

 

特に最後の一撃。

 

人類最強の男をもってして、白羽取りなんてお遊びが出来るような一撃ではなかった。

 

 

野太刀を用いた居合、という蛮行を成立させた武人。

 

 

男はもっと速い居合を経験したことはあるが、それ以上に危険を感じた。

 

避ける事は出来た。

 

問題だったのは、その範囲。

絶対的な間合いを保ちながら放たれる野太刀。

如何に人類最強の男でも、野太刀と比べてしまえばその腕は如何に関節の軛を外したとしても限界がある。

 

そして、培われた身体操作を用いた、刹那に迫る居合の技術。

その技術から繰り出される、野太刀という質量が、その破壊力を加速度的に跳ね上げた。

 

極めて合理的で理想的な人間の体を用いた物理学。

 

人間において最高峰の一撃が翔んでくる。

 

男はあの速力を、重量を完全に捌くのは難しいと判断した。判断させられた。

 

 

 

だからこそ、出鼻を挫いた。

だからこそ、技を用いた。

 

 

 

抜拳による、速度(はや)さ比べ。

 

 

 

男は闘いにおいて、手加減はしても妥協はしない。

 

平手という手加減こそ加えたが、間違いなく速さで、技で競いあった。

 

そうすべき相手だと、間違いなく認めていたから。

 

 

そんな相手と闘えたことに、男は後悔などない。

人間と闘って、楽しかったと素直に思える日がまた来たのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局良い案など出てくることもなく、道場の真ん中でぼけっと突っ立っていた男。

そんな時、道場の引き戸がカラカラと開かれ、見知った姿が入ってくる。

 

「失礼する……。やはり、ここだったか。佐藤」

 

「……あっ。慧音さん……」

 

「全く、探したぞ。出掛けるのは構わないが、何か置き手紙の一つでもしていってほしい」

 

「す、すんません」

 

「うむ、素直に謝れるのは良い事だ」

 

そう言って、道場の中を見回す慧音。

 

「……ん?守人衆は何処だ?大体この時間なら稽古に励んでいるはずだが……」

 

「あー……いやぁ……」

 

立ち会い最中ですら流れなかった汗が、男の額にたらりと流れる。

 

「……ん?どうかしたか?」

 

「いや……えっとぉ……」

 

男は言い淀む。素直に説明してよいものかと。

 

「ふーむ…まぁ大方アイツに喧嘩でも売られたんだろう?」

 

「…えっ?」

 

「守人頭にまでなってまだあの向こう見ずは直らんか…。全く…子供の頃から言い聞かせているのに一向に考え直さん」

 

「……えっ?」

 

「ん?あぁ、すまん。守人衆には後で言っておくから、まずは朝食にしよう。妹紅も首を長くして待っているしな」

 

なんでもないような事のように言ってのける慧音についていけない男。

 

先導していく慧音に、ノコノコとついていくしか出来ない男だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、あの悪ガキ、まだ無茶してんのか?本当にガキん頃は冒険だなんだっつって竹林に迷いこむし、妖怪に追われてたことも一度や二度じゃないんだぜ?」

 

「先の妖怪の件で大怪我して少しは大人しくなったかと思ったらこれだ。歳をとっても根っこが変わらん。また制裁の一発や二発お見舞いしてやらんと…」

 

事の顛末を肩身が狭まる思いで告白したというのに、リアクションは至って平和だった。

 

ケラケラと笑う妹紅、頭痛を堪えるように頭を押さえながら慧音は首を振る。

 

そんな二人のリアクションに、心底気が抜ける。

 

「しっかし、やっぱり強いんだな、佐藤は。あの悪ガキも人間じゃ相当なんだろ?」

 

「守人頭には伊達や酔狂じゃ選ばれない。なんと言っても稗田の家の守護者だ、単純な強さなら退治屋でも相手にならん」

 

二人の会話に違和感がある。

 

違和感があるが…なんとも会話に入り難い。

友達の家に招かれたはいいが、友達の親友もいたような、微妙な居心地の悪さ。

 

「いやぁ、見たかったな。佐藤の勇姿」

 

「い、いや。そんな大したことは…」

 

「あっはっは!大したことないことでアイツは戦闘不能か!そりゃ傑作だ」

 

言葉尻を掴まれる。

 

「妹紅……笑い過ぎだ……」

 

「だってよ、ガキん時から無茶ばっかで、少しはでかくなったと思ったら妖怪に突っ込んでったろ?良い薬だよ」

 

「まぁ…そうかもしれんが…。しかし佐藤、幾ら売られた側とはいえ、顎を砕くのはやり過ぎではないか?お前ならもっと加減出来たと思うのだが…」

 

 

 

「いや…慧音さん。それは違うよ」

 

 

 

「む…?」

 

やおら説教の流れかと思いきや、当の本人が否定の意を示した。聞き逃せない、事があった。

 

「あの人は……強かった。ちょっとでも俺が遅けりゃ…手を止めて迎撃してたら…俺は真っ二つだった。あれが限界、最大限加減出来た結果っす…」

 

「………」

 

「す、すんません。生意気言って……」

 

だが、それだけは伝えたかった。

男にとって、自分と向き合ってくれた人間なのだから。

大したことはないのは、自分自身。手加減も出来ない、自身の未熟。

 

「……そうか。ならば…そうだな」

 

慧音は、ちゃぶ台に身を乗り出し、男の頭をポンポンと撫でた。

 

 

 

「良く我慢した。手加減した。佐藤は…強いんだな」

 

 

 

慈愛すら感じる柔らかい笑顔。

まるで子供にする様なそんな…優しい一撃。

 

 

 

男は戸惑った。

 

どんな打撃にもない、体の奥の奥に響くような、心にまで届くような痛烈な衝撃。

痛くもないのに目頭が熱くなる。

痒くもないのに涙腺が緩んでいく。

じんわりと心が攻撃されている。

 

世界にこんなに優しい攻撃があったのかと、顔が火照るのを感じる。

 

行動を、褒められた。

それだけの事実、しかし男にとっては青天の霹靂。

 

 

強さは誉められたことがある。

強さは讃えられたことがある。

強さは羨ましがられたことがある。

 

 

男には、強さしかなかった。

 

 

いつぶりだろうか。褒められたのは。

まだ、ただの少年だった頃以来であろう。

 

嬉しかった。

 

褒めることは、単純に自分を見てくれるということだ。

自分と向き合ってくれる事は、何も闘うことだけではない。

認められる事への、充足感、満足感。

 

 

男は戸惑った。

 

 

 

闘うこと以外に心を満たすものが、確かにあったから。

 

 

 

 

 

 

 

端から見れば成人するかしないか位の見た目の女性に、いいこいいこされている中年の男性。

絵面は正しく、倒錯している。

 

「あっ……えと……」

 

振り払うことも、もっととせがむことも出来ず、されるがままになっていた男。

待ったの声は、隣からだった。

 

「……慧音。佐藤だってガキじゃないんだから、困ってるぞ」

 

「私からすれば随分と年下だしなぁ。何なら妹紅もするか?」

 

「ばっ……!お前っ!ほん……バカ!」

 

「はっはっは。妹紅よりは勉強は出来るぞー」

 

「そういう意味じゃねぇーから!」

 

そんな気安いやりとりに、もうなにがなんだか分からないままポリポリと沢庵をつまむ事しかできない男であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん?私の歳?」

 

食休みに茶を啜っていた時、男の疑問が二人に投げ掛けられた。

自分より年上であろう守人頭を悪ガキと呼称する辺り、見た目の年齢ではないのだろうかと疑問をぶつけてみた。

 

「あまり女性に歳を尋ねるものではないぞ?」

 

「そ、そうっすかね…」

 

「別に尋ねられて困るわけではないが……そうだな。まぁこの里の者は大体赤ん坊の頃から知っているな。その親の親も」

 

「な、長生きなんすね……」

 

「あぁ、そういえば言ってなかったな。……私は妖怪と人間の混血なんだよ」

 

「妖怪……混血……あー…それで強そうなわけですか」

 

男は驚くよりも恐れるよりも、納得したと、あっさり受け入れる。

漸く合点がいった。慧音に感じる強烈な強さの感覚に。

 

「なんとなく予想はしていたが、佐藤は…怖くないのか?混血とはいえ、妖怪だぞ?」

 

「いやぁ……いいっすね。ワクワクします」

 

怖いか怖くないのかを聞かれて、ワクワクしますと答える人間は、おそらくこの男だけであろう。

 

「な、なんだか完全に予想していたのとは違うが…」

 

「そうっすかね?……つーことは…もしかして妹紅も実はかなり年上…?ほうらいじん?って言ってたけど」

 

「んー?」

 

食休みにゴロゴロしていた妹紅はのっそりと顔を上げる。

 

「私の歳?別に数えちゃいないが…1000歳くらい?」

 

「はえー……マジすか?」

 

思わず慧音に問い掛けてしまう男。

 

「いや、それはないだろう」

 

キッパリとした否定に、男は一本とられたと苦笑いをする。

 

「ですよ……「藤原氏の来歴からすると1300歳くらいだろう」…ねえぇー……?」

 

予想とは正に桁が違う話。

男は目を白黒させるが、慧音の表情は真剣だ。

 

「えっと………なに時代?江戸?」

 

「時代で言えば奈良か平安時代あたりだろう」

 

「あー……いいくに?」

 

「それは鎌倉幕府だ」

 

「あー…………なるほど?」

 

算数など日常で使うものならまだしも、歴史とあっては死に体を晒すしかない男。

 

「まぁ、つーわけだ。私らからすれば悪ガキも佐藤も子供みたいなもんだ」

 

「そりゃ…そうか?」

 

実年齢で言えばそうなのかもしれないが、容姿が若すぎる為に違和感が強い。

妹でも若すぎる。娘と言うには大きすぎるが。

 

「さて、私はそろそろ守人衆の所に行ってくる。手当ても落ち着いた頃だろう」

 

「おーう、後で様子を聞かせてくれ」

 

「全く…悪趣味だな」

 

そう言って外出の準備をし始める慧音。

 

「お、俺も行った方が…」

 

「いや、佐藤は待っていろ。アイツの性格と守人衆の性質からしても、そう事にはならん。それに……」

 

ピシャリと男の提案を否定する慧音。

 

「今、勝者が敗者に掛ける言葉はない。掛けることがあるとすれば、佐藤の前に自ら出てきた時だけだ」

 

「そう…すか…」

 

「うむ、では行ってくる」

 

その言葉を残して、慧音は出ていってしまう。

 

「…ま、そういうこった。のんびりしようぜ」

 

ポンッと妹紅に肩を叩かれる男。

 

男に出来るのは、妹紅を見習ってゴロゴロすることしかなかった。




本当にもこたんって1300歳くらいなの?って疑問を持つ人はいない、いいね?
というか、色んな二次見すぎてどれが公式に近いのか分からなくなってる…。

次回
まだ人里。
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