そこは、普段なら活動の少ない穏やかな活火山であった。
火山の真上なのに気流は安定し、船乗りから好まれる地であった。
そんな平穏が続くこと数十年。
突如、火山口上空に
歪められていく空間。そこから二つの光が放たれる。
一つ、白い光は空の彼方に。もう一つ、黒い光はそのままその火山へ。
途端にその火山口が真紅に染まり、
黒い稲妻が迸り、そこに物質が存在することを否定する。
空気が圧縮され溶岩が水泡の如く浮かぶ。
冷気……いや氷塊が溶岩を包み込み、さらに外側を黒き稲妻が表面を走る。
そして……中から煌黒を纏い、全てを貫かんとする角が姿を現した。
この世の理に反抗するが如く、全ての鱗は逆立ち。
身を守る甲殻ですら逆立っている。
その巨体は赤と黒、時として蒼と白を纏い。
全てを終わらせんと降り立つ。
「すべてを終わらせんとする、夢幻の闇を従える煌黒の龍」
おとぎ話にも登場することのない、かの暗黒の王がこの地に立った。
それが現れたことにより各地で異変が起き始めた。
とある城跡に幻の祖が現れ。
とある地脈に眠りし巨龍は目を覚まし。
とある雪山では全てを崩す白き神が目を覚まし。
海中深くでは巨大な角を持つ海の神が煩わしそうに頭を振るい。
天に高くそびえる山の頂上では、嵐司る空の神が気流を変え。
とある森の奥地では未知のウイルスを司る
大陸各地で異常気象や天変地異を引き起こす事態にまで発展した。
さらには原因不明の隕石が各地に飛来し、甚大な被害をもたらした。
環境を変え、巨龍たちを目覚めさせ、
大陸各地で英雄たちが剣を取った。
西シュレイドの英雄たちは巨龍を。
一対の翼は白き神を。
遠く離れた地で生まれ育った3人と魔犬は海の神を。
温泉栄える地の英雄は空の神を。
蒼き旗をなびかせる狩猟団は未知のウィルスに対抗し。
そして、黒き神によって定められた運命に抗う4人のハンターたち。
蒼をまとう一対の閃光。狂乱する一対の赤と黒。
この世の理を覆す一筋の輝きはその大乱に終止符を撃った。
「っていうことが前にあっての」
「なにそれ……おとぎ話のつもり?」
「いや実話じゃよ」
世界の終わりと呼ばれた災厄から50年。世界各地に古龍や原因不明のウィルスに侵されたモンスターが世界各地で出現し、未曽有の被害を引き起こしかけたあの一連の出来事。
多くのハンターがそれに立ち向かい、約40年もの年月をかけて鎮静を図ってきた。その被害の爪痕は現在もこの地に残ったままだ。
しかし人々は日々を生き抜くため、懸命に活動している。
それら一連の出来事を語り継ぎ、後世に残していくために「彼」は世界中を渡り歩いていた。
しかし「彼」もこの出来事に少しばかり疑問を抱いていた。暗黒の王は自身が対面した1人なのでわかるし、かの王がこの地に立った後に現れた古龍や古龍級生物に関しても、「彼」の先輩にあたるハンター達が撃退してきたというのも本人たちの話や、ギルドの公式報告書にも載っているのでわかる。
ただし、それらの出来事はすべて「黒い光」から生まれた暗黒の王が引き起こしたものだ。ならば「白い光」とはなんのことなのだろうか。
また新たな災厄が引き起こされるのではないかととある界隈では憶測されている。が、「彼」はそうではなくあの龍に対抗すべく現れた一種の「勝利を導くもの」として考えていた。もちろん憶測にすぎないのだが、「白い光」による厄は一切起きていないのだ。
そしてギルドはこの「白い光」に関する情報を握っているとされる。一般に公開できない情報ということなのだろう。当事者である「彼」にまで隠すとはどういうことなのだろうか。
ふと、風が「彼」の周りを優しく吹き抜けた。振り返るってみても何もない。誰もいない。なのに懐かしくなるような白百合の香りがした。
今日は快晴、予報にこの晴れ空が崩れるという報告はない。
今日も「
忘れてはならない「