ドラクエ勇者の能力を持った一般人がホビットの世界で無双するだけの話   作:空兎81

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覚醒

 

 

ルーラでエスガロスに戻る。ここは街の外れか?いや、街の入り口か。

 

どうやらまだスマウグは来てないようだ。さすがに魔法での瞬間移動のほうが速かったらしい。でもすぐにこの街に飛んでくるだろうし早く行動した方がいい。

 

でもどうやって避難勧告したらいいんだ?

 

『竜がくるぞー!逃げろー!』って叫びながら街中走る?いや、効率悪すぎだろ。どんだけ街広いと思っているんだよ。バルドさんが狭い街だからとかなんとか言っていたけど万単位の人数はいるよね?いちいち一軒一軒通告とかしてられないぞ?うん、どうしよう。

 

やっぱりこういうのは偉い人に言ってもらうのが手っ取り早いよね?取り敢えず領主様の屋敷目指そう。で、それが終わったらキーリ達の回収だ。

 

そう思って走ろうとした瞬間上空を影が過ぎる。嘘だろ、来るの早過ぎませんか?わたしの考えは全部無駄になった。

 

瞬間上空から炎が降り注ぐ。空飛ぶスマウグが上空から街に炎を吐いたのだ。辺りから悲鳴が上がる。『竜だ!竜がきたぞ!!』という人々の叫びが辺りに響き渡る。ちくしょう、ルーラしてきたの全部無駄になった。やっぱり飛行能力ってずるいと思う。離れ山まで行くの苦労したのに飛んだら一瞬じゃないか。

 

せっかくここまできたのだからキーリ達は回収したい。そう思ってバルドさんの家に行くとすでに家はもぬけのからだった。うそっ、皆どこ行ったの!?もう逃げたの!?

 

この広い街で一度離れたらもう巡り合えないと思うの。あちこち燃えて視界も悪いしね。どうしよう、もうルーラでエレボールに戻る?

 

炎はどんどん燃え広がり夜だというのに周りはとても明るい。スマウグは炎を吐き続け街全体を燃やし尽くそうとする。こうなったのは私達のせいだし、このまま何もせず立ち去るのはめっちゃ良心が痛む。いやせめてMPの分くらいは仕事しよう。ルーラの分は残して!

 

 

「ライディン!!」

 

 

『クギャアッ!!!魔法使い!来ているのかッ!!何処ダァァ!!!!』

 

 

使う魔法はひとつしかない。信頼と安定のライディンさんをスマウグに向かってぶっ放す。他に使える魔法はありません。ベギラマとか、燃える街にさらに油を注いでどうするんだよ。勇者なのに有用な魔法が少な過ぎる。

 

ライディンで見事空飛ぶドラゴンを撃ち落としたらしい。だけどもすぐさま復活したスマウグが怒り狂った様子でわたしを探す。おぅ、ヘイト管理ミスってるぅ。こんなん一人で戦う相手じゃないよ。トーリン達も連れてくればよかったわ。

 

 

『そこか小娘ッ!!』

 

 

「え?うわあああっ!!!!」

 

 

視力の良すぎるスマウグはこの燃え盛る街の中からわたしを見つけ出したらしい。うそだろ?ちょっと索敵能力が高すぎませんか?わたしにも分けてくださいその能力。キーリ達探したい。

 

スマウグが火の玉みたいなものをわたしに向けて放った。全力で逃げるも炎弾の範囲は広く直撃は避けれたが風圧で吹き飛ばされる。

 

そのまま何処かの家の壁に叩きつけられ崩れた家の中に雪崩れ込む。

 

痛い!熱い!死ねる!うわあ、マジやばい。全身バキバキでとんでもなく痛い。勇者じゃなかったら即死だったわ。わたし勇者でよかったよ。

 

自分にベホイミをかける。痛みがなくなり回復したのがわかる。でも残りMPが少なくなってきた。もう半分を切っている。MPはわたしの命綱だ。これがなくなったら本気で死ねる。

 

ふらふらと立ち上がる。キーリ達に会えないしスマウグ強いし心折れそう。取り敢えずスマウグの注意はわたしに向かっているのだから、この間に街の住人が逃げていると信じたい。そうじゃなかったらマジで骨折り損すぎる。

 

その時ふと手に持つ感触に違和感を覚えた。わたしはいつもガンダルフにもらった杖を握っているのだけど(イスタリではないけど魔法の威力が上がる気がするので持っている)なんか感覚がおかしい。

 

恐る恐る手に握っていた杖を見る。するとおそらく吹き飛ばされた衝撃を受けてしまったのだろう、真っ二つに折れ、プラプラとブランコのように揺れていた。いやああいいっ!!!?

 

ちょ、これ折れちゃダメな奴だよぉぉぉーー!!!やばい、ガンダルフにもらった奴だぞ?世界文化遺産にでも認定されてもおかしくない杖だぞ?なんてもん折っちゃったんだよちくしょう。どうしよう、もうガンダルフに会いたくない。絶対に怒られる。

 

壊した杖はアイテムボックスにしまって頭を抱える。どうするんだよ、これ。取り敢えず今は戦闘中だし手ぶらはまずい。新しい武器を手に入れないと。

 

ふと周りを見ると山ほどの武器があちらこちらに並んでいることに気づく。剣に槍に弓に様々な武器が立てかけてある。何ここ武器庫?

 

もう一度見渡してここが何処だか理解する。あ、ここ領主様の武器庫だわ。一度忍び込もうとしたし間違いない。飛ばされた先に武器があるとはついているわ。一本もらっておこう。

 

ここの物は領主様の物であるが緊急事態であるし許してくれるだろう。パッと見た感じ杖はないな。そんな魔法使いしか使わないマニアックな武器はありませんか。

 

その時ふと目に付いた物があった。炎に照らされ明るくなったこの武器庫で一切光を発しない“黒”が立てかけられていた。

 

それは黒い剣だった。引き寄せられるように手に取り鞘から抜くと刀身すらも黒かった。全てが黒い漆黒のツルギ。

 

エルフの剣ではない、エルフの鍛えた剣は銀色に輝き何処か華がある。だけれどもこの剣は無骨だ。ただ剣たるためにここにある。

 

たぶん、これドワーフが鍛えた剣じゃないかな?見たことないから確信は持てないけどなんとなくそう思う。この黒い剣は頑固だが一途な彼らを表している気がした。

 

ドクンと身体の中で何かが脈打つ。初めて握った剣は驚くほど手に馴染んだ。手に持ったそれを一度軽く振ってみる。

 

風を切る音がして剣が振り下ろされる。剣など使ったことなどないのに驚くほど様になっていた。だけどそれを当然だと思う自分がどこかにいた。

 

ああ、そうか。そうだったのか。ガンダルフに杖をもらったのは意味がないことだったんだ。

 

わたしは勇者だ。勇者なのだ。勇者は杖など装備しない。

 

勇者が装備すべき武器は剣だった。今、剣を握りしめてはっきりと思う。

 

今まで魔法を使ってモンスターを倒してきた。でも勇者はそういう存在ではない。ほんの少し状況を有利にするために魔法を使うことがあっても戦いを決めるのは剣なのだ。

 

黒剣を掴み外へ出る。身体が軽い。外は相変わらず炎が燃え盛っていたが恐れる物はなかった。身体の底から湧き立つ何かがあった。

 

わたしは勇者、勇者なのだ。勇者とは魔物を討ち滅ぼす者、

 

わたしはスマウグを倒す為にここにいる。

 

 

「ライディン!」

 

 

『グオォォオオッ!!!まだ生きているのか魔法使いッ!』

 

 

再び舞い上がり街を蹂躙していたスマウグに向けて魔法を放つ。空飛ぶドラゴンを地に縫いとめる為に魔法はあるのだ。トドメを刺す為ではない。

 

スマウグはこの剣で倒すのだ。

 

 

「わたしは魔法使いではないよスマウグ」

 

 

家屋を登りスマウグの前に立ちはだかる。身体が軽い。家屋を登るのにも何の労力も要らなかった。身体能力がかなり上がっている。それはそうだ、旅を始めた時は一桁しかなかったわたしのレベルはもう30もある。あの時とは圧倒的にステータスが違うのだ。

 

 

『何?ではお前は何だというのだ小娘』

 

 

「わたしは、勇者だ」

 

 

スマウグに向かって走る。すぐ様炎が吐かれたがかまわず突っ込む。

 

勇者の戦いは無傷でいられない。その為に回復魔法があるのだ。

 

身体が焼かれる。ベホイミ。炎に炙られる。ベホイミ。

 

そして炎を抜けた。目の前にスマウグの顔が広がる。

 

覚悟は出来ていた。

 

 

『ば、馬鹿なッ!?炎に焼かれ何故無事なのだ!!?』

 

 

「くらえ!」

 

 

スマウグの左眼に向かい剣を振り下ろす。斜めに一閃、肉を切る感触が腕に伝わってくる。

 

『クギャオォォーーー!!!』というスマウグの叫びが辺りに響いた。左眼は奪った。でもまだだ。まだこれでは終わらない。

 

ここでドラゴンを地に沈めるのだ。

 

 

『小娘がァァァー!!!!殺してくれるッーーッ!!!』

 

 

怒れるスマウグの爪が振り下ろされる。避ける。振り下ろされる。避ける。

 

しっかりと剣を握りしめる。全てを終わらせる決意を固めた。

 

 

『小娘ェ!!ちょこまかと逃げるなァァァーー!!』

 

 

「そうだね、逃げるのはお終いだ」

 

 

振り下ろされる爪を避けなかった。握りしめた剣を竜爪に向けて斬り上げる。黒剣は振り切れた。

 

ドスッと重量感のあるものが落ちる音がした。赤黒い竜爪がすぐ側に突き刺さる。ドラゴンの武器をひとつ斬り伏せた。

 

 

『グオォォッーー!!俺様の爪がァァァ!!!』

 

 

叫び声を上げるスマウグに飛び乗る。そのまま腕を伝って背中までいく。狙うはその首ひとつ。

 

黒剣を振り下ろす。刃が半分ほどめり込んだ。流石に硬い。でもこの首をもらう。

 

 

『小娘ガァァァーーーッ!!調子に乗るなァァァッ!!!』

 

 

スマウグが首元にいるわたしを振り落とそうと仰け反る。足場が安定せずに剣は振るえない。振り落とされないように首に捕まる。

 

その時、何かこちらに向けて放たれた。風を切る音がした。

 

それは矢だった。黒い矢がスマウグに向けて放たれた。

 

矢は吸い込まれるようにスマウグの胸元へと突き刺さる。そこは守る盾となるべき鱗が剥がれ落ちた場所だった。

 

スマウグが痛みに咆哮を上げる。そういえばバルドさんの家で、かつてスマウグに黒い矢を浴びせ鱗を剥がしたっておとぎ話を聞いたっけ。きっとこれがスマウグの弱点だったのだ。

 

スマウグが痛みで飛び上がる。そして高く高く空を駆け抜ける。

 

このまま逃げるつもりなのだろうか?そうはいかない。ここでスマウグを逃すわけにはいかない。

 

黒剣を握りしめる。この一撃だけは外せない。

 

全身の力を込めた。身体中から力が迫り上がってくる。なんとなくこれが何なのか想像がついた。

 

 

「スマウグ、ドワーフの王国を返してもらうよ」

 

 

溢れんばかりの力が剣を伝った。黒剣がスマウグの首を斬り裂きその首を落とす。

 

“会心の一撃”

 

全身全霊の力を込めた一撃はスマウグを屠った。そのまま地面に向かって落下していく。

 

わたしは勇者、魔物と戦う者。剣を持ってわたしはようやく自分が何者なのか理解した。わたしは闇の者と戦う為にこの世界に来たんだ。

 

だから頑張るよ。ホビットもドワーフも大好きだから。だから、彼らの世界を守る為に努力する。

 

うん、でもどうやって着地したらいいのだろう?

 

スマウグの死体と共に落下していく中、即死だけはやめてくれと全力で祈るのだった。

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