ドラクエ勇者の能力を持った一般人がホビットの世界で無双するだけの話   作:空兎81

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トロールとの戦い

 

ホビット族は足が速いけどわたしはただの社会に埋もれるOLだったので馬で先に行ったドワーフに追いつくのは本当に大変だった。

 

乗せてもらった馬の上でゼイゼイ息を荒げるわたしにこいつ大丈夫かよといった視線が突き刺さる。正直全く大丈夫ではないしすでについてきたことを後悔しかけているので反論は出来ないのだがガンダルフが『確かにナノは力も体力もないが他の誰にもない素晴らしい能力がある。必ず役に立つから連れて行くべきだ』といってくれたのでもう少し頑張ってみることにする。わたしは勇者じゃないのかよ。もっと体力補正付けてください。

 

わたしという15人目の仲間が出来たのだから契約書を用意すべきだとバーリンがいう。まあ気遣ってくれるのは嬉しいけどもうすでに旅は始まっていて紙もペンもなにもないし取り敢えずは保留ということになった。とはいえべつにお宝が欲しくて参加するわけではないし分配する時にわたしの存在を覚えていてくれてちょこっと貰えたらそれで文句はないかな。まあもらえたとしてもそれはビルボにあげるつもりだ。わたしは彼の世話になりすぎている。

 

馬の毛に当てられくしゃみを繰り返すビルボにハンカチを投げながら旅が進んでいく。初めて乗る馬は楽しいけどお尻と太ももが痛くて筋肉痛になった。同じく馬に乗るのが初めてだというビルボは全然平気そうだ。羨ましい。あまりの痛みにこっそり自分自身にホイミをかけたことは内緒にしておこう。

 

初めはビルボ以上に歓迎されていなかったわたしだが(トーリンにはこの旅は遊びではない!女や子供が来るところではない!と怒鳴られた。あまりの怖さに目が潤んだのは秘密だ)夜になってわたしが何もないところから水や食料を取りだすと評価は一変した。ドワーフの中でも若いフィーリとキーリにそれはどういう魔法なの!?と詰め寄られあわあわ慌てながら何でも収納できる空間魔術を持っているといえば手放しで称賛された。旅では常に水や食料が手に入るとは限らないからそれを持ち運びできる能力はとても貴重らしい。いや、貴重どころか見たことない!君は素晴らしい魔法使いだ!とべた褒めされて旅の一員として認められたみたいでほっとした。いやもうなんでこいついるの?みたいな空気がずっと漂っていてつらかったんだよね。ついでに火を起こす魔法と簡単なけがを治す魔法も使えるというと絶賛された。ちょっととっつきにくかったドワーフだったけどフィーリとキーリとは仲良くなれたみたいだ。

 

そんなある日トーリンとガンダルフが喧嘩をしてガンダルフが姿を消した夜、ボフールと共に料理の支度をしているといつの間にかビルボとフィーリとキーリが姿を消していた。あの3人も仲がいいので一緒にいることは珍しくないのだが何よりもご飯を愛するビルボがこのタイミングで姿を消すのは変な感じだ。首をかしげていると慌てた様子でフィーリとキーリが駆けてくる。そこにはビルボの姿はなかった。

 

 

「大変だ!トロールに馬を拐われたぞ!」

 

 

「今ビルボが偵察に行っている!急いでいかないと!」

 

 

フィーリとキーリの言葉に思わず持っていた食器を落とす。もう食べ終わっていたから中身は何も入っていなかったがそれどころではない衝撃がわたしを襲った。ビルボがトロールの偵察にいっただと!?え、なんでそんなことになったし。いや、ビルボは忍びの者として雇われたわけだしそれがビルボの仕事だというのは理論的にはわかるのだが感情的に許容できない。あの、ちっちゃくていつもニコニコ笑っているビルボをよりにもよってトロールのもとに送り込んだだと!?この、フィーリにキーリ!お前ら超絶許さん!明日のご飯でお前らの分には肉をよそってやらんからな!

 

皆急いで支度を整えてビルボのもとに向かう。お前さんはここに待っておれとバーリンにいわれるがビルボが危険な場所にいるのにわたしが逃げるわけにはいかない。無理をいってわたしもドワーフたちについていくとそこにはトロールに捕まって火にかけられようとしているビルボがいた。うわああああッ!ビルボぉぉおぉ!!

 

 

「ビルボを離せ!皆いくぞ!」

 

「おおおおおっ!!!」

 

 

捕まっているビルボを見てドワーフたちもビルボを助けようと立ち上がりトロールに攻撃を仕掛ける。不意を突かれたトロールが驚いて掴んでいたビルボを離したので慌ててわたしは彼に駆け寄る。ビルボぉ!よかった無事で!!

 

 

「ビルボ大丈夫!?ひとりでトロールの所へ行ったって聞いた時は心配したよ!生きててよかったわ。じゃないとフィーリとキーリの髭を引っこ抜いているところだったわ」

 

 

「いたたっ、大丈夫だけれどもとんでもない目にあったね。でもキーリたちも助けに来てくれたんだから髭を引っこ抜くのはやめておこうよ。それより早く馬を逃がさなくちゃ」

 

 

そういってビルボは落ちていたオークの剣を手に取り馬が入れられていた柵のロープを切り始める。やがてロープが切れたので馬を追い立てて逃がしていく。よし!これで撤収だね!トロールは動きが遅いらしいから全力で逃げるなら逃げきれるはず!

 

さあ行こうか!と思って振り返ったらビルボが消えた。え、と思って顔をあげるとトロールに連れ去られるビルボの姿があった。ああああああっ!!?ビルボぉぉおおぉーー!??

 

 

「そこまでだ。このシノビットの手足を引きちぎられたくなかったら武器を置くんだな」

 

 

2体のトロールでビルボの手足を掴むとトロールの親玉っぽい奴が勝ち誇った顔でそういう。だれだよトロールは知能が低くてノロマだとか言っていた奴。人質とるとかこのトロールむちゃくちゃ賢くないですか!ああああっ!ビルボ!これどうしたらいいの!?

 

トーリンが顔を険しくしたまま剣を地面に突き刺す。そこでビルボを見捨てて攻撃を仕掛けないところにトーリンの好感度がうなぎ上りになっていくのだが剣をおいちゃうとどう考えてもみんな仲良くトロールの腹の中エンドですよね?それは絶対にいやだ!

 

だいたいトロールの汚い手がわたしの大切なビルボをひっつかんでいること自体が腹立つ!残りのMPを確認してわたしは息を吸い込む。ここは戦うしかない!

 

 

「おまえこそわたしのビルボに汚い手で触るな!ビルボを離せ!『メラ』!!」

 

 

「なっ、ギャアアアアアッ!??目がァあぁぁ!!!」

 

 

トロールの目に発火するように祈りながら『メラ』の呪文を唱える。わたしの狙い通り目のあたりに火が付きどこかの大佐みたいなことを叫びながらトロールは目を抑えて掴んでいたビルボを離した。

 

『メラ』はドラクエでもポピュラーな攻撃呪文でレベルが2もあれば使えるようになる呪文だ。だが初期に覚える魔法なだけあってその威力も低い。数字で言うなら10しかHPにダメージを与えられないのだ。

 

しかしそんな魔法でもようは使いどころ。一定のダメージしか与えられないゲームの世界と違って現実世界なら股間攻撃も髪の毛を燃やして禿散らかすこともなんでも可能なのだ。発火地点を選べるというのなら実はめちゃちゃ便利な魔法なのだ。

 

火を付けられたトロールはビルボを離したがもう一体のトロールが驚きながらもビルボを掴んでいる。わたしはそちらのトロールに向かっても『メラ』を放った。すると火を付けられたトロールはぎゃあああっ!!と叫びながらビルボを離した。わたしは慌ててビルボに駆け寄る。

 

ビルボ!ビルボ!助けられて本当によかった!偉そうにビルボを離せ!とか言っちゃってたけどまったく自信なんてなかったわ!鍋に火かけるときは火の着火点選べたけど攻撃も正確にできるとは限らないもんね!

 

 

「ビルボ!大丈夫!?」

 

 

「ああ、うん。大丈夫だよナノ。助けてくれてありがとう。君の魔法ってすごいんだね」

 

 

「いやぁ、自分でもびっくりしているわ。料理以外にも使えるんだねこの力」

 

 

 

そのまま戦闘が開始して激戦が繰り返されている中丘の上から現れたガンダルフが石を割ってトロールたちに日の光を浴びせたことによりトロールとの戦いは終了した。

 

うん、おいしいところは全部ガンダルフに持っていかれたわ。

 

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