リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第10話 約束のお礼

「待ち合わせは確か、10時だったよな……30分も早く着いたが、まぁ問題ないだろ。でも、待ち合わせよりも早く着くってことは内心楽しみにしてたってことかな……」

 

ジルヴェスは待ち合わせ場所に立ちながら自嘲的に呟き、フェイトを待つ。

 

「そう言えば、食事をするってことだけど、どこに行くんだ?」

 

などと考え事をしていると

 

「ごめん、待った?」

 

フェイトが走ってこちらに向かって来た。

 

「いいえ、今来たばかりですから。それにまだ時間になってませんし、大丈夫です」

「そう?私から誘ったのに、私の方が来るのが遅いのも申し訳ないんだけど」

 

フェイトは本当に申し訳なさそうな顔で謝る。

 

「謝らないでくださいよ。ハラオウン執務官は悪いことしてないじゃないですか」

「それ!」

「え?何ですか?」

 

急に大きな声を上げたフェイトに、ジルヴェスはたじろぐ。

 

「ハラオウン執務官っていうのやめてほしいな。今は完全なプライベートなわけだし、それに私は執務官としてじゃなくて、フェイト・テスタロッサとしてジルヴェスくんと仲良くなりたいの。ダメ、かな?」

「………分かりました。フェイトさんって呼ばせてもらいます」

 

ジルヴェスにしては珍しく、素直に言うことをきいた。

 

「うん」

 

ジルヴェスの返事にフェイトは笑顔を浮かべる。

 

「それで、どこに行くんですか?」

「んー、特には決めてないんだ。ジルヴェスくんの行きたいところがあればそこに行ってもいいし、特にないならお店を適当に回るのもいいかなって」

「そうですね。特に行きたい場所も思い付きませんし適当にぶらつきましょうか」

 

フェイトとジルヴェスはウィンドーショッピングすることにした。

 

◇◇◇

 

「あ、これかわいいなぁ。ねぇ、ジルヴェスくんはこれどう思う?」

 

そう言って、フェイトはちょっとしたアクセサリをジルヴェスに見せる。

 

「ええ、かわいらしくていいと思います」

「(あ、ジルヴェスくんかわいいとは思ってないな)」

 

ジルヴェスは同意的な回答を返したが、それが本心からではないと、上辺だけの社交辞令のようなものだとフェイトにはバレていた。

 

「じゃあ、これは?」

「それはさすがに無しじゃないかと……」

「(うそ、これすごくかわいいと思うんだけどな)」

 

次いで見せたものに対するジルヴェスの反応は取り繕ったものでないことにフェイトは気付いていた。

けれど、彼女自身は気に入っていたものであったから、ジルヴェスが本音を出してくれたことに対する嬉しさを感じる反面、自分のセンスにダメ出しされたようでショックも感じていた。

 

「……………」

「いや、かわいらしくはあるんですけど、デザインがこう、何と言うか、すごく前衛的ですよね」

「(……ジルヴェスくん苦笑いだよ。私のセンスってずれてるのかな………?不安になってきた)」

 

フェイトが黙っているのを、見てフォローしようと、ジルヴェスは色々と話すが、どちらかと言うと逆効果だったかもしれない。

 

◇◇◇

 

「(さっきから、話題を作ろうとしてるんだろうけど、フェイトさん、空回りしてるな。まさか、ああいうのが趣味ってわけでもないだろうしな…焦り過ぎだぞ)」

 

ジルヴェスはフェイトの落ち着きの無さを見て少し情が湧いたようで、あまりそっけ無くするのも如何なものかと考え始めてもいた。

 

「フェイトさん、一回落ち着きましょう」

「え?」

「さっきからなんでもかんでも手にとって俺に見せてますよね?見境なく」

「そ、そうだった?」

 

フェイトは自覚がなかったのかジルヴェスにそう言われて少し狼狽えているようだった。

ジルヴェスは、恥ずかしがってるフェイトを見て、少しかわいいかもしれない、なんてことをふと考えていた。

 

「少なくとも俺の目にはそう見えました」

「そうなんだ……」

「とりあえず、どこか喫茶店にでも入って落ち着きましょうよ」

「うん、そうだね」

 

そうして、二人は別の店に向かうため、雑貨屋を後にした。

 

「(焦り過ぎちゃったかな……。でも、ジルヴェスくん遠慮なく言ってくれるようになったし、少しは打ち解けたんだよね。やっぱり、ジルヴェスくんのトラウマが何か知りたい。そして、何か力になれたらいいな)」

 

ジルヴェスの横を歩きながら、フェイトは心の中でそう呟いていた。

 

◇◇◇

 

フェイトとジルヴェスは手近にあった店に入って行った。

 

「フェイトさん、何飲みますか?」

「アイスティーにしようかな」

「分かりました」

 

ジルヴェスは呼び出しボタンを押して店員を呼ぶ。

すぐに店員はやって来て注文をとる。

 

「ご注文は?」

「アイスティーとレイコーで」

「えーと……」

 

店員はジルヴェスの注文を聞いて疑問符を頭に浮かべていた。

 

「すいません、アイスコーヒーを」

ジルヴェスもすぐに言い直した。

「あ、はい。かしこまりました」

 

店員はなるほどという表情を浮かべて厨房に入って行った。

 

「どうしてアイスコーヒーがレイコーなの?」

 

フェイトは言い換えの意味が解らなかったのか興味津々に訊ねてきた。

 

「アイスコーヒーって冷えたコーヒーじゃないですか。漢字で『冷』って『れい』って読めるので、『れいコーヒー』、略してレイコーらしいですよ」

「らしいってことは誰かに聞いたんだ」

 

フェイトは特に意味を含ませたわけでもなしにそれを指摘した。

 

「ええ、はや──じゃなくて、知り合いの方にそういう言い方をする人がいて。いつの間にか染み付いていたというか」

 

ジルヴェスは歯切れ悪く言葉を返した。

 

「そうなんだ。ジルヴェスくんにもよくお茶をするような知り合いがいるんだね。あ、いやジルヴェスくんって他人と関わりたがらないみたいだからさ……」

 

少し言い過ぎたかな、と思いながらフェイトはジルヴェスの言葉を待った。

 

「………そうですね。はっきり言って、今はまだあまり人と関わりたくないです」

 

少し溜めてジルヴェスは話し出した。

 

「今は、ってことはいつかは関わりを持たなきゃいけないとは思ってるんだ?」

 

フェイトは思わずジルヴェスの話を切って質問していた。

 

「そうですね。先日学長に言われたことなので全部を隠しはしません。俺は、学長の言葉を借りて言うならトラウマを持ってます。それを克服出来なくて、他人と触れ合うのが怖いんですよ。それに、訓練だからこそ、他人に刄を向けるのも怖いんです」

 

ジルヴェスはどこか饒舌に語りを進める。

 

「そのトラウマを教えてはくれない?」

 

フェイトは話を聞き、核心とも言えるところを突いた。

 

「すいません。正直、今こうしているだけで精一杯なので…」

 

けれど、彼は急に口を閉じた。

そして、ジルヴェスは当時のことを思い出したくないとでも言うかのような雰囲気を出していた。

 

「そっか。私じゃダメかな。分かったよ。いつか話してもらえるのを待ってるね。今はただの迷惑かもしれないけど、私は人と触れ合うのが怖いって言うジルヴェスくんの支えになれると思うから」

 

フェイトはそう言ってこの話は終わりとでも言うように違う話題を振った。




ここまで読んでいただきありがとーございます

「レイコー」は以前に名探偵○ナンでもって見たんですよ。まぁ、ここでこのネタ使ったのもほんとすぐにネタバレします
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