リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第100話 覚悟を決めて

 

 

「おい」

 

ティアナとスバルが出ていくのを見送り、他の人たちの元へ行く前に少し気を落ち着かせようと、隊舎の外に出て一人で佇んでいると、ジルヴェスに声をかける者が現れた。

 

「…………ユナ、ただいま……」

 

そして、ジルヴェスは申し訳なさそうにそちらに体を向ける。

 

「お前は嘘を吐いたのか?」

 

ジルヴェスと目を合わせたユナは開口一番そう言った。

 

「ユナのことを守るとお前は言ったじゃないか!」

 

そして間髪入れず言葉を続ける。

 

「そしてユナも言った、お前の傍に居ると、そして味方で居続けると。なのに、何で居なくなろうとしたんだ……」

 

あのときの言葉は嘘だったのか、とユナは心からその叫びを上げていた。

 

「そんなのズルいじゃないか……!ユナだけを光の元に連れ出して自分は逃げるなんて……」

 

ジルヴェスはこれらの言葉を黙って聞いていた。

 

「ユナは前に、お前が自分自身を責め続けるその理由を教えてもらった。ただ、ユナにはお前の辛さも苦しさも、想像することしか出来ない。想像は出来ても理解することは出来ない。それでもお前が、自分自身では否定していてもだ、心の奥底ではあいつらと、高町たちと共に居たいと思ってるってことくらい簡単に分かる。それなのにお前は、自分は高町たちにとっては迷惑にしかならないからと、自分は幸せになったらいけないからと、そんな独り善がりなことで一番大事な気持ちを押し殺してる。何でそんなことするんだ?ユナはお前のおかげで救われた。それは本当だよ。お前が過去に何人もを絶望に追いやった、それも事実だろう。でも、今の、ここにいるお前がユナを救ったことだって紛れもなく事実じゃないのか?お前は過去ばかり、過去の自分の失敗や罪ばかりを見て、今、そしてこれからのお前自身を見ていない。お前は、過去に罪を犯した自分が普通の幸せを得ることを否定しているが、過去は過去、現在(いま)現在(いま)でしかないだろうが。お前の過去を責めることが出来るのはその当事者たちだけだ。その中にはユナは入ってないし、高町たちだってもちろん入ってないだろう?だったら、もっと素直になれよ」

 

いつか自分をその身も心も楽にして救ってくれたジルヴェスを今度は自分が救いたいと、ユナはそう思って、こんなの柄じゃないな、と感じつつも彼に言葉をぶつけ続ける。

 

「………………シャルにも言われたんだ……」

 

すると、ジルヴェスはポツリと呟いた。

 

「え?」

「…………今ユナに言われたようなことをシャルにも言われた……」

「そうか……余計なことを言ったな……」

 

ユナはそう言って彼の元から離れていこうとする。

 

「ユナ!」

 

けれど、ジルヴェスに名前を呼ばれ、そちらを振り返る。

 

「余計なことだなんて俺は思ってないから……ありがとう……」

 

その一言に彼の色々な思いが全て詰まっているように、ユナには感じられた。

そして、今度はジルヴェスが足早にその場を去っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ふぅ…………よし」

 

ユナと別れたジルヴェスは隊舎のとある一室の扉の前で大きく深呼吸をすると、覚悟を決めたような表情を浮かべ、ノックをした。

 

コンコン

 

そんな乾いた音が廊下に響き、

 

「……はーい。開いてますよ」

 

部屋からはそんな軽い声が返ってくる。

 

「…………ごくっ……」

 

そして、ジルヴェスは緊張した面持ちでドアノブに手をかけ、扉を押し開け

 

「ふばっ」

 

ようとして扉が何かにぶつかった。

ついでに、何かよく分からない音なのか、声なのかも聞こえてきた。

 

「え?」

 

ジルヴェスが驚いて、扉が半開きのままでいると、スーっと扉が開いた。

 

「…………いたた……」

 

そして、そこにいたのは、鼻を軽くおさえたなのはだった。

 

「……それで、どちら様で----」

 

けれど、扉を開ききり、そちらに視線を向けたなのはは、驚いて固まってしまっていた。

 

「……なのは、どうし--」

 

突然動きをフリーズさせたなのはを心配したのか、フェイトがこちらの方に近付いてきて、彼女もまた、動きを止めた。

 

「…………ジルヴェス、おかえり……私はちょっとやることあるから、また後でね」

「え、あ、はい」

 

ただ、一瞬で復帰して、そして部屋を出て行ってしまう。

それにはジルヴェスもただ頷くしか出来なかった。

 

「…………なのはさん」

「ふぇ!?」

 

フェイトが去り、その場にはジルヴェスと、フリーズしたなのはの2人だけになり、ジルヴェスは少しばかり気まずさを覚え、なのはの名を呼ぶと、彼女は声を上げて驚いていた。

 

「……その、ここだとあれなので、中、入ってもいいですか?」

「あ、うん。そうだね」

 

そして、ジルヴェスはなのはに続いて部屋へと入った。

 

「……………………」

「……………………」

 

ただ、部屋へと入ったはいいが、どちらも話を切り出すことはなく、お互いに沈黙を守っている。

とは言え、なのはは何か言おうとして結局何も言わないということを何度も繰り返しているのだが。

 

「…………ねぇ」

 

けれど、意を決したようになのははジルヴェスに言葉をかけた。

 

「……まず、ジルヴェスおかえり」

「はい…………ただいま、ですね」

 

2人はどこかぎこちなくしながらもとりあえず言葉を交わす。

 

「……えーと…………言いたいことはいっぱいあるけど、私はジルヴェスがこうやって帰ってきてくれてすごく嬉しいよ。何となくだけど、あのまま帰ってこないような気がしてたから……」

 

なのはは話しながら、心から安堵しているような表情を浮かべていた。

 

「…………本当にすいません……俺はいつも勝手なことしてばかりで……」

 

ジルヴェスは申し訳なさげに俯いている。

 

「…………シャルが迎えに来てくれて、そして、お説教されました」

 

そして、ポツリポツリと呟きを漏らし始める。

 

「でも、そうやって言葉をかけてくれたことが何より嬉しかったんです…………自分はまだここに居ていいんだって、自分のことを肯定してもらえた気がしました。だから、やっぱり帰ってこようと決心しました」

「……そう」

 

ただ、その呟きを聞くなのははどこか寂しげな雰囲気を漂わせていた。

 

「………………ねぇジルヴェス、少しわがまま言ってもいいかな?」

 

そして、彼女はそうジルヴェスに切り出した。

 

「どうしたんですか?」

「…………シャルの話じゃなくて、今は私のことを見て」

「……え?」

 

だが、ジルヴェスはなのはの言ったことが意外というか唐突で上手く理解出来ていないようだった。

 

「…………私は、ジルヴェスが居なくなってすごく不安になったよ……あのままじゃジルヴェスが居なくなると思って、ジルヴェスのところに行こうとしたよ。でも、体力が()たなくて、結局シャルがジルヴェスのところに行った。本当は私がジルヴェスのところに行きたかった。偉そうなこと言うけど私がジルヴェスのこと救いたかった。私はジルヴェスに必要なんだってそう思いたいの…………」

「どういう…………?」

 

さらに続いた彼女の言葉はジルヴェスを混乱させるには十分だった。

 

「…………私はわがままだから……」

 

なのははそう言うと黙り込んでしまう。

 

「……そんなことないですよ。一番わがままなのは俺です。自分の話したくないことは話さずに、いつもなのはさんたちに迷惑かけて、それでもなのはさんたちと居たいと思ってしまう…………」

 

するとジルヴェスは俯きがちになのはに向けて呟く。

 

「……唐突ですけど、なのはさんは罪を犯した人、犯罪者をどう思いますか?」

 

彼は言葉通り唐突な問いを投げ掛けた。

 

「え?」

「過去に重い罪を犯したにも拘わらず今をのうのうと生きている、そんな人間に対してどういった思いを抱きますか?」

 

ジルヴェスは戸惑うなのはにさらに言葉を重ねる。

彼女は戸惑いながらも何とか答えを返そうと言葉を紡いでいく。

 

「…………私は、その罪と向き合って、そして今を懸命に生きているなら、何も悪いことなんてないと思う。少なくとも、私が過去のことだけを聞いてその人のことを判断するというのは傲慢過ぎると思うから。だから、ジルヴェスのことだって、今まで私の見てきたジルヴェスのことを信じるよ」

 

そして最後になのははジルヴェスに微笑みかけた。

 

「…………俺は……そうは思えません…………罪を犯して、そのために不幸になった人たちがいる。なのに、その罪を犯した張本人は幸せになろうとするなんて、許せません」

 

ただ、彼は少しばかりなのはの言葉とは噛み合わないことを言って再び俯く。

 

「ジルヴェス……私はジルヴェスの抱えてるものが何かは分からないけど、それでも、話さないなら私は知らないなりにジルヴェスとはこれまで通りに付き合っていくから。だからさ、ジルヴェスも今までと同じように私の、私たちの前で笑っていてほしいな」

 

なのははそう言いながらジルヴェスの肩に手を添えて、彼の顔を上げさせる。

 

「…………なのはさん、ありがとうございます……」

 

そしてジルヴェスはなのはに向かって笑顔を見せた。

なのはは顔を近付けていたこともあってその笑顔にドキリとしてしまったが、なんとかその動揺を抑え込み、彼女もまた眩しい笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

----それを見て今度は彼の方が動揺してしまうのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m


遂に大台の100話に到達しました!
みなさまの応援のおかげでございます。これからもよろしくお願いします。
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