リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第101話 「守る」存在

 

 

JS事件が一応の収束を見せ、機動六課は主な任務が完了したことで物理的にも精神的にも余裕が出てきていた。

帰還後すぐには六課の面々から心配され続けていたジルヴェスも今ではすっかり元通りの関係を築いている。

そして、そもそもが一年間の試験運用ということで稼働していた六課の解散の日は刻一刻と近付いてきてもいた。

 

「…………はぁ……」

 

そんな中、いつも元気一杯に笑っているスバルが珍しくため息を吐いて浮かない顔をしていた。

 

「スバル、どうしたのよ」

 

そんな彼女を心配して、ティアナは声をかける。

 

「……うん」

 

ただ、スバルは返事はするものの肝心の答えは返さない。

 

「あんた、ずっと憧れてた特救から声をかけられたのよ?あたしは、跳びはねて喜ぶものだと思ってたんだけど」

「……うん」

 

少しばかりツッコミ所のあることを言って、無理矢理にでもスバルを沈んだ気分から変えようと思っていたティアナだったが、案外スバルの悩みは深刻なようで、全く効果がない。

 

「ほんと、どうしたの?あんたがそんなんだと、すごく心配するんだけど?」

 

それでもめげずにティアナは声をかけ続ける。

 

「………………ティア、私どうしちゃったんだろう……」

 

すると、漸く反応があった。とは言え、随分後ろ向きな言葉が返ってきただけであったが。

ティアナとしては「知らないわよ。だから聞いているんじゃない」と思ったけれど、さすがに真面目な顔をして不安げに呟かれては滅多なことは言えなかった。

 

「……ずっと憧れてきた特救からスカウトされて、すごく嬉しいはずなのに、どうしてか素直に喜べないの。なんだかよく分からないモヤモヤが私の胸から離れなくて…………私はこんなままで、本当にスカウトの話を受けていいのかな、って不安になっちゃって……」

 

そうして言葉を紡いでいくことで、スバル自身も自分が何に対して不安を抱いているのかを自覚しているようだった。

 

「…………はぁ」

 

それを聞いていて、今度はティアナの方がため息を吐く。

 

「スバル、あんたはあんた自身が上手くやっていけるのかを心配してんの?」

「うーん……そう、なのかな……」

 

自分のことなのに、いや、自分のことだからこそ分からないでいるスバルを見て、ティアナは言おうか言うまいか葛藤するように考え込み、そして言うことに決めた。

 

「スバルあんたはアホだから、自分じゃ気付かないのかもしれないけど、あんたが今悩んでんのは、特救に行って上手くやれるのかとか、自分は特救に相応しいのかとか、そんなあんた自身のことなんかじゃないのよ。あんたのそれは…………」

 

ティアナはそこで一旦言葉を切る。

彼女はその続きをどこか言いにくそうにしていたが、意を決したように言い切る。

 

「……もうあたしたちのことを守ることが出来なくなるっていうことに対する不安なのよ」

「そんなこと…………」

 

けれど、スバル自身はそんなティアナの言葉を信じていない。

 

「いいから聞きなさい。あんたはあんた自身がどう言おうとあたしたちのことを守ろうとしてきたわ。あたしは付き合い長いんだからそれくらい分かるのよ。それで、六課が解散したら、さすがにもう同じ職場で働くわけにはいかない。もうこれまでみたいに一緒に戦うことなんてない。だからあんたは心配してる。『自分の居ないところで、自分の手の届かないところでみんなが傷付いたらどうしよう』って。でも、そんな心配必要ないわよ。あたしは…………あの日ビルの中で一人になって、足まで怪我して、もうあたしはダメかなって本気で諦めかけた…………それでも、あたしとしては癪だけど、ふと、あんたのことが頭に浮かんだのよ。これまでのあんたと過ごしたことが頭に浮かんだ、あんたがかけてくれた言葉を思い出した、そして、あんたは絶対に最後まで諦めないだろうって、そう思った…………それであたしは最後まで諦めたらダメだって思えたの。あたしが何を言いたいのかって言うと、あんたはあたしのことを守ってくれたってこと。これから先、あたしの隣にあんたは居ないかもしれない。だけど、あんたはあたしの心の中にずっと残り続けるし、それがあたしを奮い立たせて守ってくれる。こんなこと言うのはあたしの性には合わないけどね……」

 

そうやってスバルに言葉をかけたティアナは恥ずかしげにしていた。

 

「……ありがと、ティア…………なんか気持ちが楽になった」

 

照れてしまったティアナだが、彼女の言葉はしっかりとスバルへと届き、モヤモヤとしていたスバルの心を清々しいものへと変えることが出来たようだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………ル、ど…………たか?」

 

シャルルは六課隊舎近くにある湾の堤防に一人佇んでいる。そして、どこか遠くを見るような目をして、しかし何も見てはいない。

 

「おい…………ルル、きい…………か?」

 

しかも、先ほどから誰かが彼女に声をかけているのだが、それに気付く様子はない。

 

「おい、シャルル、大丈夫か?」

「ひゃうっ!?」

 

けれど、その声の主に肩を掴まれようやくその存在に気付く。驚きから盛大に悲鳴を上げるおまけ付きで。

 

「あ、すまない……」

「い、いえ、いいんですよ、ユナ」

 

シャルルへ声をかけていたのはユナだったのだが、シャルルの驚きようを見て申し訳なさそうにしている。それを見てシャルルは気にしないで、と言ってユナを気遣った。

 

「ああ、ありがとう」

「ところで、ユナはどうかしたんですか?」

 

そして、そこでシャルルはユナが自分に声をかけてきた理由を訊ねた。

 

「……それは、シャルルから何か嫌なオーラを感じたからだよ。ゆりかごから帰ってきたときからシャルルの様子は変だった。どうしてあいつと話をしようとしない?」

 

ユナの口から放たれた言葉にシャルルはビクリと反応する。「あいつ」という指事語が誰を指すのか当然シャルルは理解していた。

 

「他の人の前では笑っているのに、あいつの前では塞ぎ込む。いや、あいつの話には生返事だ。何かあったのか?ゆりかごの中であいつと何かあったのか?」

 

ユナは問い詰めるようにシャルルへと迫る。

 

「…………ユナには関係のないことです……」

 

すると、シャルルはそんなそっけないことを言ってそれ以上のユナの追及を退けようとした。

 

「関係なくはない。あいつがお前に何かをしたというならちゃんとあいつに謝らせないといけないし、仮に何もあいつがしていないと言うなら今のシャルルはあまりにも失礼だ」

 

けれど、ユナはそこで退くことはせず、なおも食い下がる。

 

「…………ユナ、しつこいですよ?それとも、ユナは私の知りたいことを教えてくれるんですか?」

 

そんなユナをシャルルは睨み付けていた。

 

「……シャルルが知りたいことによる。それを教えてくれたら、ユナの答えられる範囲で話をしたっていい」

「そうですか……」

 

シャルルはそう呟くと、一つ呼吸を挟んで話始めた。

 

「私が知りたいのはただ一つ。ジルヴェスさんの過去のこと。特に5年前にジルヴェスさんは何をしていたのか、それを知りたい。別にただの一般人だと言うならそれでいいの。ううん、むしろそうであってほしい」

 

そして、本当に心からそうであってほしいと願う気持ちをユナに吐露する。

 

「……何で知りたいんだ?」

 

そこでユナは一番気になっていた、「どうしてジルヴェスの過去を知りたいのか」ということに突っ込みを入れることにした。

 

「…………それは……」

 

それに対する答えを返そうとするシャルルはどうしてか口ごもっている。

 

「答えたくないなら無理には聞かない。悪かったな、問い詰めたりして」

 

シャルルの様子に、ユナがそう言って謝りその場を離れようとすると、シャルルがそれを引き留め、そして徐に話し始めた。

 

「…………ゆりかごを脱出した後、ガジェットに囲まれて、でもそのときは、ジルヴェスさんは私を気遣ってくれたし、実際何事もなく対処してくれた。でも、ジルヴェスさんの使った魔法は、全てを凍てつかせるあの魔法は…………」

 

言葉を詰まらせたシャルルは怒りからか、それとも恐怖からか、それは定かでないが、その身を震わしている。

そして、次に紡がれた言葉はユナから言葉を奪った。

 

「私の家族を奪った魔法そのもの----」

 

 

 

 






ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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