リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
ジルヴェスがはやての「護衛」に
はやての護衛をすると言った翌日には、
だからこそジルヴェスとしてはこんなんでいいのかと思っていたりした、目の前を楽しげに歩くはやてを見詰めながらぼんやりと。
「ほんで、あんた今日は何か食べたいもんはあるか?」
すると、はやては後ろ、ジルヴェスの方へ振り返って訊いてきた。
今はミッドにある大型スーパーへとやってきているのである。
「え、あー、そうですね……正直何でもいいです」
「は?なんや、その答えは。人に作ってもらうっちゅうのに偉そうやな」
ただ、ジルヴェスの
「別に偉そうになんかしてませんよ。はやてさんの作る料理はどれも美味しいんで何になってもいいなって、そう思っただけですよ」
「……………………」
ジルヴェスはそう言うものの、はやては無言を貫いている。
「本当ですって。はやてさんの料理は絶品ですから。俺は大好きです。毎日食べられて幸せですね」
それに耐えきれなくなったのか、ジルヴェスは慌ててフォローを入れるように、言い訳をするように、そんなことを言う。
けれど、意味がないなどということはなく、はやてはニヤついた顔を隠すようにくるっと前に向き直る。その後ろ姿は上機嫌であるように見えた。
「なら、今日はお魚にしよか。いいのがあればいいんやけど……」
そしてそう呟きながら、はやては鮮魚売場へ軽い足取りで向かっていく。
ジルヴェスは置いていかれないようにすぐにその後を追った。
「クーベルさんこんばんわ。今日はいいお魚ありますか?」
売場に着くと、はやては早速売場にいる中年の女性店員に話しかける。
「あら、八神ちゃん、いらっしゃい。そうねぇ……今日はこの辺りが活きがよくておすすめよ」
店員は広く陳列スペースを取った、ある鮮魚を指して、はやての問いかけに答える。
「ほんまですか。じゃあこれでお願いします」
その店員とはやては顔見知りであるようで、すらすらと会話が続く。
「毎度ありがとう。それで、八神ちゃん、その子が噂の彼氏くん?」
手際よく商品である鮮魚をはやてに手渡しながら、ジルヴェスの方を見て訊ねてくる。
「ちゃいますよ」
それをはやてはすぐさま否定する。
「なら、まさか旦那さん?いつの間にそんな人が」
けれど、クーベルは止まらずさらに妄言を吐く。
「ちゃ、ちゃいますって。クーベルさん止めてくださいよ」
「あら、そう」
クーベルは残念そうにしながらもとりあえず、はやてをいじるのを止めてくれた。
「でも、もしかして店員さん同士の間で噂になってるんですか?」
はやてはすぐにそれを否定して、そして恐る恐るといった具合に確認をとる。
「そうね。私は今日初めてあなたたちを実際に見たけど、最近この店であなたたちを見たって人多いもの。だからみんな話してるわよ、あの八神ちゃんにも春がきたって」
そう言いながらクーベルという店員は微笑んでいる。
はやては自らが振った話題であるから盛大に墓穴を掘った気がして冷や汗をかいていた。
「だから、そういうんじゃないんですよ。こいつはうちの弟みたいなもんで」
だから、はやてはジルヴェスの服の襟の辺りを掴んでクーベルの前に出しながらクーベルの言葉を否定しようとする。
「そうなの?」
そしてクーベルは今度はジルヴェスの方に矛先を向けてきた。
「まぁ、こんな乱暴な人が姉というのは勘弁願いたいところですけどね……」
「……あら、本当みたいね。茶化して悪かったわね」
ただ、ジルヴェスの、はやての方を見やりながらやれやれと首を左右に振る仕草に、姉弟でないにせよ、それに近い関係なのだと誤解してくれた。
いとも簡単に態度を改めたことに、はやては若干不服そうにしながら、何故かジルヴェスの方を睨んでいる。
「いえ、別に謝ってもらわんでも…………とりあえずうちらは行きますね」
「ええ、また今度いらっしゃいね」
そう言葉を交わしてはやてとジルヴェスはその場を離れた。
「…………で、さっきの言い方はないやろ」
再び商品を見て回りながらはやては非難がましい目をしてジルヴェスを見る。
「え、何のことですか?」
「……はぁ…………何でもあらへんよ」
全く以て自覚のないジルヴェスにはやてはため息を吐いてしまう。
「だってさっきは否定してほしいみたいだったから、ああ言ったのに……」
ただ、ジルヴェスもジルヴェスで嘆息しているようだった。
「とりあえず、さっさと買って帰りましょうよ」
「せやね」
そう2人は言葉を交わして、足りない食材なりを集めてレジへと向かった。その様子は何だかんだ言ってとても仲が良く、楽しげであった。
楽しげに歩く、そんなはやてとジルヴェスのことを遠くから監視するように見詰める人影があった。
「……………………どうしてあんな笑顔を浮かべて過ごしていられるの?…………私はそんなの絶対に認めない」
そして、そう呟く声からは怒りが滲み出ている。
「元犯罪者のくせにのうのうと生きている。
その、感情のままに零れる言葉はまるで呪いでも掛けているかのようであった。
「!」
ジルヴェスは何となく自分たちに向けられた悪意を感じとり、ピクッと反応した。
「ジルヴェス、どうかしたんか?」
その彼の反応に、はやては訝しげな目を向ける。
「あ、いや、何でもないですよ」
ただ、わざわざはやてに不安を感じさせることもないだろうと、つい今しがた感じた悪意について言及することはしなかった。
「ほんまか?」
「ええ」
「……そんならええよ。あ、せや。今思い出したんやけどな、来週なのはちゃんに誘われて遊びに行くんよ。で、あんたも来るか?」
来るか、と訊いてはいるが、答えは求めていない問いかけだった。はやてにしてみればジルヴェスが来るのはもはや規定事項ですらあったからだ。
「何のために俺はここに居るんですかね。当然行く以外に選択肢ないじゃないですか、全く……」
先ほどは悪意を感じとったが、これまで、取り立てて言うほどの問題は起きておらず、さらには遊びに連れて行かれるこの状況にジルヴェスは何とも言えない気持ちになっていた。
「ま、あんたならそう言うと思っとったわ。楽しみにしとき」
そんな彼の気持ちを知る
「…………はぁ……
そしてポツリと呟いた彼の言葉はもちろんはやてには聞こえていなかった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m