リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第107話 苦手なものは苦手

 

 

「…………さてと、まずはどこに行こうかな……」

 

半ば追い払われるようなかたちではやてたちの元を離れたジルヴェスであったが適当に歩き回りながらこれからどうするかを考えていた。

 

「…………おっ、これなんか良さそうだな」

 

そして、とあるアトラクションの前で立ち止まり吟味する。

 

「次はここにしようよ」

「いいですね」

「え、ここ……?」

 

すると、背後からどこか聞き覚えのある声が聞こえてくる。

軽く後ろを振り返り、考えていた通りの人物であることを確認して、ジルヴェスは今度は彼女たちの背後に回って声をかけた。

 

「なのはさん、やっぱりお化け屋敷苦手ですよね」

「うわっ」

 

だが、突然かけられた声になのはは声を上げて驚いていた。

 

「あれ、ジルヴェスさんだ」

「本当だ、お兄ちゃんだ」

 

そして、残るヴィヴィオとシャルルもジルヴェスの姿を確認して、意外そうに、嬉しそうに彼を見ている。

 

「じ、ジルヴェス、驚かさないでよ……」

 

なのはは非難がましい目で彼を見てからポツリと呟いた。

 

「それにしても、ジルヴェスさんってはやてさんと居ましたよね?」

「あー、何て言うか追い払われた」

 

ジルヴェスはシャルルの問い掛けに苦笑いをしながら答える。

 

「何かしたんですか?」

「いや、そんな怒らせるようなことしたわけじゃないからな」

 

どうなんですか?と、彼を見てくる視線に、別にやましいことはないはずなのに、ジルヴェスは若干慌てた様子で否定の言葉を発する。

 

「冗談ですよ………………ジルヴェスさんはそういうことしません……」

「何か言った?」

「いえ、何も」

 

ジルヴェスは何か言われた気がしたのだが、そのようなことはないというシャルルの言葉に頷かないわけにはいかなかった。

 

「まぁ、いいや。それで、次はここにするんですか?」

 

明らさまに顔を引きつらせているなのはに意地悪く問い掛けるジルヴェス。

 

「え、いや、私としては----」

「えー、今度はこれ行きたいよ!」

 

そして、なのはが否定しようとすると、ヴィヴィオが駄々っ子のようにだめ押しをかけてくる。

 

「私は、なのはさんが一人で待ってると言うならそこまで無理に行く気はないですけど…………」

 

そして、シャルルは少しズルい言い方をしてなのはの出方を窺う。

 

「それは、申し訳ないけど、私こういうの苦手だから……」

 

しかし、なのははもごもごと言って拒絶を表しているのだが、その様はいつもの威厳など見る影もなかった。

 

「なのはさんって、何でお化け屋敷が怖いんですか?」

 

唐突にそう問うジルヴェスだが、その言外には「人間相手には絶対に遠慮しなければ、気後れすることもないのに」という随分と失礼な意味合いが含まれていたりするのだが、今はそれを問い(ただ)す心の余裕がなのはにはなかった。

 

「……だ、だって、お化けには魔法が利かないから……」

 

そして、なのはから返ってきた答えにジルヴェスもシャルルも、さらにはヴィヴィオまでもが絶句している。

 

「……あー、確かに…………」

「でも、そんななのはさんも可愛いです」

 

しばらくの沈黙の後、ジルヴェスは軽い同意を示し、シャルルは妙に親近感を抱いていた。

 

「ヴィヴィオとシャル、お化け屋敷どうしても行きたいか?」

 

そんな中、ジルヴェスは徐にヴィヴィオの方に向き直りそう訊ねた。

 

「うん……面白そうだから……」

 

ヴィヴィオは何となく言いづらそうにしながら答える。

 

「別に、なのはさんが行きたくないというなら行かなくても……」

 

また、そう言って、行かなくても構わないという意思表示をしてはいるものの、シャルルのアトラクションへと向ける目は、何がなんでも行きたいという人のそれであった。

 

「じゃあさ、俺がなのはさんと外で待ってるから、シャルとヴィヴィオとで行ってこいよ。シャルも俺がなのはさんと待ってれば心配ないだろ?」

 

そのジルヴェスの提案に、なのははお化け屋敷に入らなくてよいと真っ先に賛同し、シャルルも行きたかったことは確かで、少しばかり心配そうではあったが、何も反対することはなかった。そして、ヴィヴィオはお目当てのアトラクションに行けるということで無邪気に喜んでいた。

 

「それじゃあ、外に出てきたら連絡してくれな」

「はい」

「ヴィヴィオも、シャルの言うこと聞いて、手を離すなよ?」

「うん!」

 

ジルヴェスは「よし」と言って、ヴィヴィオの頭を撫でる。そして、何故かそのままの流れでついうっかりシャルルの頭も撫でてしまう。

 

「ひゃうっ!」

 

驚いたシャルルは軽く声を上げ、そこでジルヴェスは自分の手の位置に気付いた。

 

「あ、ごめん。つい」

「い、いえ……ちょっとビックリしただけで…………むしろ嬉しいというか……はっ、私何言って。と、とりあえず、私たちはもう行きますね」

 

謝るジルヴェスに、動揺してしまっているシャルルと、なかなかにカオスな状況に陥ったが、すぐにシャルルがヴィヴィオの手をとって逃げるように行列へと歩いていったことで、何とかなった。

 

「ジルヴェス、意外とおっちょこちょいだよね」

 

それを見ていたなのはは苦笑いで呟いた。

 

「みなまで言わないでくださいよ。で、これからどうしますか?」

 

ジルヴェスは結構な人数で出来た目の前の行列を見て、そこそこ待つのだろうな、と考えて、なのはと相談しようと問い掛けた。

 

「うーん、あまり遠くに行かない方がいいだろうしなぁ。どうしよっか。とりあえず、ブラブラして決める?」

 

そう言いながら、ジルヴェスの答えを待たず歩き出す。

とは言えジルヴェスとしても文句を言うつもりもなかったから大人しく彼女の隣に並んだ。

 

「なんか、こうやって遊園地をジルヴェスと歩いてると、前に一緒に来たときのこと思い出すなぁ」

 

しばらく何をするでもなくただ園内を歩いていた、そんな中でなのはは感慨深げに呟いた。

 

「そうですね。あのときはこんな風になのはさんと仲良くさせてもらってるだなんて想像も付かなかったですけどね」

「確かに、ジルヴェス結構変わったもんね。初めて会ったときから」

 

なのはは、うんうんと頷きながら呟く。

 

「まぁ、いつまでも変わらずにいられるということの方が希少だと思いますけどね」

「でも、ジルヴェスだって変わらないところあるよ」

「何ですか?」

 

ジルヴェスからの返しに、なのはは数瞬呼吸を整えるように深呼吸をして、改めてジルヴェスへと向き直って言った。

 

「ずっと、一番大事なことを隠すところ。確かに私たちじゃジルヴェスの助けにはなれないかもしれないよ。でも、話を聞いてみなかったらその判断は出来ないんだよ?まぁ、ジルヴェスが話したくないことを無理矢理聞こうだなんて思ってないから安心して。ただ、とりあえず言っておかないとジルヴェスはいつまでも話してくれなさそうだから言ってみただけなの」

 

そう語るなのはは、その言葉通り問い質そうという類いの思いは持っていないようにジルヴェスからは見えた。

 

「なのはさんは諦めが悪いですね」

 

だからジルヴェスも下手に反発することなどしなかったし、むしろ苦笑いでなのはを見やっている。

 

「それだけが取り柄だからね」

 

なのははどこか自慢するような声音をしている。

そのことにわざわざ触れることもなく、ジルヴェスは相槌を打っていた。

 

「それにしてもなのはさんは変わりませんよね」

「え?」

「ほら、以前行ったときもお化け屋敷ダメで涙目だったじゃないですか」

 

ジルヴェスはそう言いながら自然と笑みが浮かんできていることに気付いた。

 

「そ、それは……怖いものは怖いし……って、そんなことはいいんだよ。今はこれからどうするかを考える方が大事」

 

このままではジルヴェスにイジり倒される未來が見えたなのはは無理矢理に話題を変える。

 

「どうすると言っても特に行きたいところもないですし、だから別にこのままでもいいかなと思ってますが」

「そうしよっか。私も行きたいところないし。じゃあさ、どこかでお茶でもしながら時間潰そうよ」

「いいですね」

 

ジルヴェスとなのはは揃って歩き出した。

 

 

 

 







ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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