リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第108話 憧れる視線

 

 

 

「そうだ、ジルヴェスって今仕事は何やってるの?」

 

店内に入り、注文まで済ませると、なのはは思い出したように訊ねてきた。

 

「以前と変わらず特捜隊の任務ですよ」

 

実際にはその特捜隊の任務としてはやての護衛をしているわけだが、それを言うことはしない。

 

「でも何で気になったんですか?」

「だって、六課に来る前のときは全然休日がないみたいで忙しそうにしてたのに、今日はジルヴェス来たから不思議に思って」

 

なかなか鋭いなのはにジルヴェスはどう答えたものかと少しばかり思案する。

 

「…………それはですね、六課に帯同させてもらったおかげで階級が上がりまして、それで休みたいときに休めるようになったんですよ。で、今日ははやてさんがしつこく誘ってきたのでとりあえず来てみたわけです」

 

ジルヴェスはスラスラと嘘を並べてなのはをはぐらかす。

 

「へぇ、そうなんだ」

 

なのははそれなりにジルヴェスの言葉を信じていた。

 

「まぁ、理由が何にせよ、来たからには楽しもうね」

 

そして、彼女らしい言葉をジルヴェスへかけた。

 

「そうですね」

 

ジルヴェスは何とかはぐらかせたようだと一息吐いた。

その後色々と話をしていると、いきなりジルヴェスが立ち上がる。

 

「あれ、どうしたの?」

 

それを不思議に思ったなのははジルヴェスの顔を見て訊ねる。

 

「いえ、お手洗いに行こうと思いまして」

「あ、ごめん…………」

 

そして返ってきた答えになのはは少し顔を赤らめて俯かせる。

ジルヴェスは余計なことを言わぬ内に行ってしまおうとそそくさと歩き出した。

 

「…………なんか、さっきから誰かに見られてる気が……」

 

ジルヴェスが居なくなって、なのははそんなことを呟きながらキョロキョロと辺りを見回し始めた。そうは目立たぬように、ではあるが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルヴェスが席を立つ少し前、店内のとあるテーブル席には一組の親子が座っていた。

 

「さっきからどこ見てるの?」

 

母親らしき女性が、娘とおぼしき少女に訊く。

 

「ほら、あそこに高町空尉がいるの」

「本当ね」

「話し掛けに行っちゃダメかな」

 

少女は母親にとりあえず訊ねてみた。

 

「でも、誰かと一緒にいるみたいだから止めておいた方がいいと思うわよ」

「えー、こんな機会もうないのに…………」

 

しかし、返ってくる答えはやはり自重しろというもので、少女は肩を落としてがっかりしていた。

 

「あっ、高町空尉が一人になった」

「ダメよ、って全く……」

 

けれど、なのはが一人になったのを見ると母親の制止も聞かずに駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あの子、かな?」

 

なのはが辺りを見回していると、こちらの方へ駆けてくる少女が目に留まった。その子が先ほどからの視線の持ち主か、と思い至りなのはは笑顔を浮かべる。

 

「あ、あの、高町空尉ですよね?管理局の」

 

目の前の少女は興奮した様子でなのはへ声をかける。

 

「うん。そうだよ」

「わぁ……あ、あの私はアンネって言います!」

「アンネちゃんか、良い名前だね」

 

そう言いながらなのはは和やかな表情を崩さない。

 

「私、高町空尉の記事を読んで、管理局員ってカッコいいなって思ったんです」

 

そして、アンネという少女は目を輝かせて話している。

 

「ありがとう。じゃあ、将来は管理局に入るのかな」

「いいえ……私には魔法は使えないからただの憧れでしかないです…………」

 

しかし、なのはの問いに対して、少女は悲しげにポツリと呟いた。

 

「諦めるのはまだ早いよ」

 

なのはは目の前の少女の頭を撫でながら優しく語りかける。

 

「もしかしたら、アンネちゃんの憧れた管理局員とは少し違っちゃうかもしれないけど、管理局には魔法を使えない人もたくさん居て、その人たちはそれぞれが魔法とは違う特技を持っているんだ。そして、それを使って頑張ってくれているから私たちも仕事が出来るんだよ。だからね、何も魔法が使えなくったって局員になることは出来るんだよ」

 

なのはは、そうは言いながらも言うほど簡単なことでらないことは分かっていたが、目の前の少女の抱く眩いまでの夢を、彼女が(はな)から諦めてしまっているのが、どうしても納得出来なかったのだ。

 

「……私、頑張って出来ること増やして、絶対に管理局員になります。そして、高町空尉と一緒にお仕事したいです」

 

そして、なのはから管理局という組織の構造の一端を聞いたアンネは、そこに希望の光を見た気がした。

 

「嬉しいこと言ってくれるね。じゃあ待ってるから。アンネちゃん頑張ってね」

「はい!お邪魔してしまってすいませんでした」

 

アンネはペコリと頭を下げると母親の待つ席へと駆けて行った。

 

「……はぁ~、何だか嬉しくなっちゃうな」

 

その後ろ姿を見詰めながら、なのはは幸せそうな表情を浮かべていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後すぐジルヴェスが戻ってきて、一人ニヤニヤとしていたなのはのことをイジったのは言うまでもない。

 

「……全く、ジルヴェスは意地悪だよ」

 

そして、シャルルからの連絡で彼女たちの元へ移動するその途中、なのはは軽くふて腐れていた。

 

「すいませんでした」

 

ジルヴェスは謝りながらなのはの後ろに続いている。

 

「……別に謝らなくていいよ」

 

なのははボソリと言って、ズンズン歩いていく。ジルヴェスはそれに置いていかれぬよう、彼も歩みを早めた。

 

「なのはさーん!」

 

そして、しばらく歩くとなのはの名を呼ぶ声が聞こえてきた。

 

「あ、シャル、お待たせ」

 

声の方へ行くと、シャルルと、彼女の服の裾をぎゅっと握って涙目なヴィヴィオがいた。

 

「あれ、ヴィヴィオどうしたの?」

「ママ…………怖かったよ……」

 

心配そうに見詰めるなのはの姿を確認したヴィヴィオはなのはに抱き付いて泣き出してしまった。

 

「シャル、あれはどうしたんだ?」

 

それを見ていたジルヴェスはヴィヴィオにではなくシャルルに訊ねた。

 

「あのですね、ヴィヴィオ、お化け屋敷が一体どんなところか知らなかったみたいで、入って初めの仕掛けのところで驚いちゃって。で、段々仕掛けが本格化してくる頃には怖すぎたみたいで腰が抜けちゃってました。でもですね、最後まで私の手はしっかり握っていて、ジルヴェスさんたちの言い付けは守ってました。それが何だか可愛く思えて」

 

恐らく、先ほどまでの泣きそうな顔をして、助けを求めるように視線を送ってくるヴィヴィオの表情を思い出しているのだろう、シャルルは時折「ふぁ……」とか「あぁん」とか言いながら身をくねらせている。

 

「…………シャル、ヴィヴィオが可愛いのは分かったから落ち着け」

 

それをジルヴェスはため息混じりに止めさせた。

 

「はっ。すいません、ジルヴェスさん」

 

ジルヴェスの言葉に我に返ったのか少し恥ずかしそうにえへへと笑っている。

 

「ジルヴェス、シャル、これからどうする?」

 

時間を確認してみるともうそろそろで12時。昼食にはまだ早いが、ここからまた別のものに乗ろうと思うと、今度はその昼食が遅くなりそうなそんな微妙な時間だった。

 

「そうですね、とりあえず他の人たちに連絡してみますか」

 

ジルヴェスはそう言うと、はやて、フェイト、ティアナへと同時に通信を繋げた。

 

『ん、ジルヴェスか。どうした?』

 

通信が繋がるとまずはやてが口を開いた。

 

「そろそろお昼の時間なのでこれからどうするかを決めた方がいいと思うんですけど」

『うちらは今休憩しとるからいつでもどこでも行けるよ』

『私たちも大丈夫です』

『ごめん、私たちはもうちょっとだけ時間かかっちゃうかも』

 

はやてとティアナはいつでも大丈夫だと答え、フェイトはまだ時間がかかるということだった。

 

「そうですか。とりあえず、集合場所だけ決めてそこに全員が揃ったら昼食をどこで摂るかを決めるんでいいですかね」

『せやな』

『いいんじゃない』

 

はやてとティアナはもちろん同意する。

 

『ごめんね、待たせることになっちゃって』

 

フェイトは申し訳なさそうにしている。

 

「いえ、気にしなくて大丈夫ですよ。特に慌てる必要はないですからゆっくりしてください」

『せやで、気にすることないんやから』

 

ジルヴェスとはやての言葉にフェイトはありがとうと呟いた。

その後、集まる場所を話して決め、通信を切った。

 

「と、いうことなので移動しましょう」

 

ジルヴェスはなのはたちを促すように言って歩き出した。

そして、彼女たちもそれに続くようにして歩き出す。

 

 

 






ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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