リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第11話 休暇での遠出は計画的に

フェイトとのお食事デートから数日後、ジルヴェスはイライアスと共に地球へとやって来ていた。

 

「ここが地球の東京か………って、別にクラナガンと大差ないじゃんか!結構期待してたってのに!」

 

けれどイライアスは着いて早々、自身の想像と違うことを嘆くように、叫んでいた。

その様子を、周囲の通行人たちは訝しげに見ては、絡まれないようにと目も合わせず足早に去っていく。

 

「まあまあ、落ち着けって。大概の世界の開発された都市は似たようなもんだろ。な?」

 

いい加減、そんな様子のイライアスといることに耐えきれなくなったジルヴェスは、彼を宥めるように声をかけた。

 

「そうだけどさ、何となく知らない世界だと、自分たちの知らない何かがあるんじゃないかって期待するのが普通じゃねぇか?」

「まぁ、俺も何も期待してなかったって言ったら嘘になるけど………」

 

ただ、実はジルヴェスも今回の地球観光を楽しみにしていたところがあり、イライアスの気持ちにも共感出来るところはあった。

 

「だろ?」

「けど、来たばっかですぐに何か新しいものに巡り会うってことの方が珍しい、というか怖いだろ。それに観光してれば何か発見があるかもしんないだろ。早く行こうぜ」

「そうだな。そう言えば、京都だっけ?これから行くのは」

「ああ、そうだぞ。何でもここ日本の歴史が見られる場所らしい」

 

今回の観光で、実際に地球のどこを訪れるのかを計画したのは、実はジルヴェスであった。

とは言え、知り合いに地球の出身者がいたから、その人に頼んでオススメの観光地を教えてもらったのだが。

 

「そうか。『歴史』ね。それはお前の専売特許だもんな」

「ニヤニヤしながら話すな気持ち悪い」

「そうイラつくなって。別に変な意味はないぞ。ただ『歴史』って聞くとお前の家のことが思い浮かぶんだよ」

 

イライアスだからこそ知っている、ジルヴェスの素性。ジルヴェスはそのことを今後も彼と彼の父親以外に知られるつもりはなかった。

 

「はいはいそうですか……とっととしないと新幹線の時間になっちまうぞ」

「分かった。急ごう」

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「(行き先を京都・奈良に決めたのは、地球こと日本に詳しい知り合いに相談した結果だ(決して丸投げなんてしていない)。要は、オススメの観光地をを訊いたら京都と奈良を勧められたんだ。まぁ、地球とは言っても行き先は日本国内に限定することにしたし、日本人以外の地球人に人気のある京都・奈良が初めての日本観光には最適の場所だってことも聞いていたから京都・奈良にした。しかも、日本人にとっても観光したい場所らしいし、期待してもいいよな?)」

 

と、新幹線に乗りながら観光地決めのときのことを思い出していた。

 

「(けど正直な話、転移魔法を使えば一瞬で移動出来るのにな……あの人に『向こうで魔法を使ったらあかんで』と何度も釘をさされたし、面倒だけど、逆にそれを無視したときの方が大変だからな……はぁ。もし、忠告を無視して、それがバレたら…………ブルッ………考えただけで恐ろしい)」

 

………などと、それこそ、怒られそうなことを考えている間にも新幹線は進むわけで気づけば京都まで、あと少しのところまで来ていた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「ふぅ。結構早く着いたな。まずはどこに行くんだ?」

 

新幹線を降りて、駅から出ると、イライアスはジルヴェスに訊ねる。

 

「ああ。まず始めは清水寺に行くのがいいって言われたな。何でも、『清水の舞台から飛び降りるつもりで』っていう言葉があるくらい認知度の高い場所らしい」

「どういう意味なのか俺には分からんが、実際に飛び降りる奴がいたらそいつは頭がイカれてるだろ」

「意味は『思い切って物事を決断すること』だ。しかも、200年ほど昔までで記録の残っている148年間に234人もの人が実際に飛び降りているらしいぞ」

 

イライアスがほんの冗談のつもりで言った、実際に清水の舞台から飛び降りる、それをこれまでに100人以上の人間がやってきたことに驚きを隠せないでいた。

 

「なんでそんなことまで知ってるんだよ?」

 

そして、それ以上に、そんなことを知っているジルヴェスに驚いていた。

 

「それは聞いてきたからだが…?」

「いやいや、意味はともかく後半の飛び降りた人の数なんてわざわざ調べたとしか思えないんですけど!絶対にお前自分で調べただろ?」

「悪いのか?」

「いや、別にそういうことじゃねぇけど、やっぱり歴史が好きなんだなと思ってな」

「いや、別に。でもやっぱり、予備知識もなしに観光したって面白くないだろ。だから色々と調べてみたらそんな情報を見つけたってわけだ。他にもあるがそれは現地に行ったら披露してやんよ」

「そうか、分かった…………それにしても」

 

ニヤニヤと笑いながらイライアスは言っている。ジルヴェスは正直気持ち悪いとさえ感じていた。

 

「気持ち悪い」

 

そして、ついうっかりポロっと口にしてしまった。

 

「……え?なんで唐突にそんなこと言われてんの、俺?」

「……!あ、すまん間違えた。つい、心の内がポロッと……忘れてくれ。んんっ………で、何が『それにしても』なんだ?」

「………まぁいいや。そのことか?それは、やっぱりジルヴェスに任して正解だったと思ってな。俺は何もしなくてもジルヴェスが案内してくれたり解説してくれたりするから純粋に(楽に)楽しめるぜ」

 

ジルヴェスの軽口はあまり取り合うことはない。それが、この二人のいつものことでもあった。

 

「……………はぁ。全く、お前はいつも俺に仕事させて楽してるよな…ってこれ、前にも言ったな」

「でも、その代わり旅行の手配とかはしっかりやっただろ」

 

だから、お互い様だ、とでも彼は言いたげにしている。

 

「まぁ、そこらへんは感謝してないわけではないがお前も自分で色々調べておくくらいしておけよ」

「はいはい、今度からはそうするよ。ただまぁ、飯の場所はこの俺に任せろ。美味い食い物の店は調べてきた」

 

     ズルッ

ジルヴェスは思わず足を滑らせていた。

 

「どうした?」

 

それに対して、イライアスはなに食わぬ顔をしている。

 

「何で、食い物だけは調べてきてんだよ?」

「やっぱり、美味い物食いたいしな。何でも、京都だったら蕎麦が美味いらしいぞ。ああ、あとお茶……まぁ、観光地のことはジルヴェスが調べているだろうと思ったからな。別に俺が調べる必要はないと思った。それに実際、調べて来てんじゃねぇか」

 

全くもってその通りなのだがなぜか癪に障るのはどうしてだろうか。

 

「まぁ、そんなことどうでもいいだろ。早く行こうぜ」

「………分かったよ」

 

ジルヴェスは内心呆れ果ててはいたが、イライアスの言う通り移動することにした。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

そんな感じで京都観光をした2日間(ちなみに、ジルヴェスたちの地球滞在の予定は4日間である)。つまり、今回の地球(日本)観光の半分を終えたところというわけだ。そして今、彼らがこれから奈良へ向かうというところで、イライアスに通信が入ったために、ジルヴェスは少しの間待っている……というか、待たされている。当のイライアスは向こうで通信中である。

 

「………………はい。了解です」

 

……どうやら話は終わったようで、ジルヴェスのもとに戻ってきた。

 

「それで、今の誰からだ?」

「ジルヴェスすまん!」

 

電話の内容をジルヴェスが訊くと同時、イライアスは両手を顔の前で合わせ、勢いよく体を折って謝った。

 

「!?どうした?」

 

突然のことにジルヴェスは動揺を隠せないでいたが、どうにか、イライアスに事情の説明を求めた。

 

「さっきの通信、親父からでさ、すぐに戻って来いって言われたから俺帰る」

「は?」

 

しかし、イライアスから聞かされた言葉にまたしてもジルヴェスの理解は追い付けずにいた。

 

「いや、なんか今人手が足りないらしくてな。まぁ、察してくれ。んじゃ、そういうことだから悪いが一人で地球観光を満喫してくれ!アデュー」

 

ジルヴェスが一人呆然としている中、イライアスはとっとといなくなっていた。

 

「(え?いつの間にいなくなってた?全く気づかなかったのだが…………それにしてもこれからどうするかな…)」

 

一人残されてしまったジルヴェスはしばらくの間その場に突っ立っていた。




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