リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「それでシャル、どこに行くんだ?」
シャルルに置いて行かれぬよう横に並びながらジルヴェスは彼女に問いかけた。
「それはですね、着いてからのお楽しみです」
そう答えるシャルルはとても楽しそうにしている。
「シャル、楽しそうだな」
「そ、そうですか?」
シャルルはそんなにも表情や雰囲気に自分の感情が表れていたのかと思い、少しばかり恥ずかしさを感じていた。
「ああ、でも楽しいなら何の問題もないからな、いいことだ」
そしてジルヴェスは一人納得したように頷いている。
「そう言えば、こうしてシャルと2人きりで何かするのって久しぶりだな」
ふとジルヴェスは思い出したように呟く。
「それに、シャルと出会ってもう4年か…………あっという間だったな」
さらに思い出に浸ってしまっているのか遠い目をしている。
「……そうですね、もう4年も経つんですね」
彼の呟きに呼応するように、シャルルも回顧するような呟きを漏らした。
「「…………色んなことがあったな(ありましたね)」」
そして2人して同じことを呟いて、お互い顔を見合わせて笑い合った。
「あっ、ジルヴェスさん着きましたよ」
そうこうしている内にシャルルの目的の場所へとやってきていた。
「えーと、この店かな?」
ジルヴェスは少し遠慮気味に目の前の店を指し訊ねる。
「ええ、そうですよ」
「そうなんだ…………なんて言うか、よく食べるな」
シャルルに連れてこられたその店はスイーツの並ぶ甘々とした店だった。
だからジルヴェスはデリカシーには欠けるが、そんなことを言ったのだ。
「あ、甘いものは別ですよ」
その言葉に慌てた様子で言い訳するシャルルに、ジルヴェスは「やっぱり女の子だよな」と思ったりしていた。
「それじゃあ、この店の商品で食べたいのがあったんだ」
ジルヴェスはそう言いつつ、少しばかりの居心地の悪さを感じていた。彼は、この何とも甘い空気が苦手なようだった。
そして、この空気は心なしか、何も店に並ぶ商品だけが発しているだけではないような、そんな気がジルヴェスにはしていた。
言うなればその店へと足を運んでいる客、それ自体から甘い空気が漂ってきているようで。
もっと俗な言い方をするならば、辺りにいるのはいちゃついたカップルばかりだったのだ。
「ええ。この店に美味しそうなパフェが売っていて、ずっと食べたいなって思っていたんですけど、それはカップル限定メニューで…………」
そう言うシャルルは恥ずかしそうにしている。
その恥ずかしさは、食い意地が張っていると思われることに対するものか、はたまた「カップル」というワードを口にしたことに対するものか。
「カップル限定、ね…………それを食べるためにわざわざ俺に頼んだのか。でも、頼むのは俺なんかでいいのか?」
ジルヴェスは一方で納得しつつ、他方では余計なことを考えていた。
「そういう言い方はダメですよ。それに私にはこういう所に一緒に出掛けるような男友達は居ませんから」
そのシャルルの言葉は暗に、休日に会うのはジルヴェスだけだということを意味していた。
「とりあえず注文しちゃいましょう」
シャルルはそう言うとジルヴェスの腕を取って抱き付くように抱え込んだ。
「な、何してんの?」
突然のことにジルヴェスは動揺を隠しきれず、何とも格好悪い様子であった。
「こうしてた方がカップル
そしてシャルルはちっとも悪びれる様子もなく上機嫌にジルヴェスを店のカウンターにまで引っ張って行く。
「いらっしゃいませ。ご注文はいかがいたしましょう」
「えーと、このスペシャルパフェお願いします」
「ふふふ、仲がよろしいですね。かしこまりました。ご注文は以上でしょうか」
「はい」
そのまま会計を済ませると、窓際の2人席に座った。
もちろん、会計はジルヴェスが持った。当然シャルルは自分で払う気でいたが、彼女が財布を出すより先に支払いまでジルヴェスがやってしまったために色々と言い出せなくなってしまったのだった。とは言え、それがジルヴェスの狙いであるから、彼からすれば何の問題もなかった。
「ジルヴェスさん……ありがとうございます」
お金を払わせてしまったということで、シャルルは申し訳なさそうに頭を下げた。
「別に気にするなよ。というか、あそこでシャルに払わせたら俺が嫌なやつになるからな。自分のためだよ、自分のため」
けれど、ジルヴェスは笑顔でそんなことを言っている。
「やっぱりジルヴェスさんは優しいですね」
対するシャルルはポツリとそう呟いた。
「そんなことより、とりあえず食べたらどうだ?」
ジルヴェスは先ほどから手を着けていない件のパフェを指差し言った。
「そうですね。それじゃあいただきます!」
そしてシャルルはスプーン
「んんー、美味しいです」
「良かったよ」
シャルルは満面の笑みを浮かべて、幸せの境地といった具合だった。
それをジルヴェスは微笑ましげに見詰めている。
「ジルヴェスさんもどうですか」
シャルルはそう訊ねながら、ジルヴェスへと手に持つスプーンを差し出してくる。
それはつまりいわゆる「あーん」というやつで…………
ジルヴェスはそのまま食べるかどうかかなり迷ったが、結局甘んじて受けることに決めた。
見る限り、目の前のシャルルの方が恥ずかしそうにしていたからだ。
「あ、ああ。いただくよ」
そして、ジルヴェスは恐る恐る差し出されたそれをパクついた。
「うん、美味い」
「で、ですよね」
シャルルはやはり恥ずかしさに負けたのか、ぎこちない笑みを浮かべてジルヴェスを見ていた。
「シャル」
「はひっ」
そこで突然名前を呼ばれてシャルルは噛んでいた。それを見てジルヴェスは苦笑いを浮かべている。
「わ、笑わないでください」
シャルルは軽く抗議するような目でジルヴェスを見ながら口を尖らせる。
「ごめんごめん。で、そのスプーン貸して」
ジルヴェスは謝りながら、手を出してそのように要求してきた。
「え、あ、はい」
シャルルはよく分からないまま、ジルヴェスにスプーンを渡す。
「ありがとう。で、これはお返し」
そして、ジルヴェスはそのように言いながら、今度はシャルルに、パフェをすくったスプーンを向けてきた。
その表情はいたずら成功という感じの笑みだった。
ジルヴェスは何か変なスイッチが入ってしまったようだった。
「あぅ…………」
シャルルは恥ずかしさから固まってしまっていた。
本音を言えば素直に食べたい。でも、ここが公共の場であること、そして何より、自分とジルヴェスとは本来恋人でも何でもないという思いが、彼女が踏ん切りを付けるのを躊躇わせていた。
「食べないの?」
そこへ、意地悪くさらにジルヴェスは言葉を重ねる。
「…………いただきます」
そしてシャルルは、どうにでもなれ、くらいの気持ちでパクついた。
「……美味しいな…………でも、ジルヴェスさん意地悪過ぎです」
シャルルは何とも言えない幸福感を覚えながらも、ジルヴェスを非難がましい目で見ていた。
「あー、シャルごめんな」
ジルヴェスはそんなシャルルの様子に今さら罪悪感を抱いたのかそう言って謝った。
「許しません。だから、ジルヴェスさんもこうです」
シャルルは吹っ切れてしまったのか、仕返しと言わんばかりにもう一本あったスプーンを手に取り、ジルヴェスへと差し出す。
ジルヴェスは有無を言わさぬシャルルの雰囲気に、もう食べる他選択肢がなかった。
その後、2人とも頭がどうにかなっていたのかお互いに「あーん」合戦を繰り広げた。
周囲の本物の方々も、2人に触発されたのか甘々な空気をさらに強める。
しかし、その中でも、ジルヴェスとシャルルは一際甘々だった。それはもう見ているこちら側が胸焼けを起こしそうな程に。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
なんか書いていたらジルヴェスとシャルルがいちゃつき始めました(笑)