リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
毎度更新が遅くてすいません……
コンコン
ジルヴェスは小気味良いノックの音の後、扉を開けて部屋へ入った。
「おお、ジルヴェス、早速来たな」
「失礼します。お久しぶりです、ヴェルさん」
ジルヴェスは部屋へ入るとジークヴェルトに向け、一礼する。
「まぁ、座ってくれ」
着席を促すジークヴェルトの言葉で、ジルヴェスは腰を下ろす。
「最近、調子はどうだ?」
「そうですね、上々といったところでしょうか。可もなく不可もなく」
「そうか。それじゃあ、最近は楽しいか?」
先の質問には案の定差し障りのない答えを返すジルヴェスに、ジークヴェルトは少し質問の方向を変えた。
「まぁ、楽しいですかね……こう言ってはなんですが、あまり任務らしい任務というわけではないですから」
ジルヴェスは苦笑を浮かべながら答えている。
「確かにそうだが、気は抜くなよ?」
「分かってます」
ジークヴェルトは「そうか」と呟くと、少しばかり姿勢を正す。
「ジルヴェス、最近何か変わったことはあるか?」
その質問は、はやてから訊くことを頼まれていたもの。
様子の変になったジルヴェスを心配した彼女が聞きたかったこと。
「そうですね、特にこれと言ってはないですよ」
けれど、ジルヴェスはジークヴェルトにも本当のところは話さない。
「本当だな?」
「……ええ」
ジークヴェルトからの確認の一言にもジルヴェスは動じることはなかった。
「そうか。ならいいんだ」
そしてジークヴェルトはそう言って、食い下がるようなことはしなかった。ただ、何かしら厄介事にジルヴェスが片足を突っ込んでいることは見てとれたから一応それなりの準備はしておこうと決めた。
「ところでなんだが、随分前にジルヴェスはウィンザー家の生き残りを探してくれと、俺に頼んでいたよな」
「…………はい」
唐突に話を変えたジークヴェルトの言葉に、先ほどまでとはうって変わって、真剣な面持ちのジルヴェス。
「もし、その娘が見付かったと言ったらお前はどうする?」
ジークヴェルトに掛けられた言葉に、ジルヴェスははっと息を呑む。
「見付かったんですか……?」
まさか、という表情を浮かべながら、ジルヴェスはジークヴェルトに訊ねる。
「ああ」
そして、短く返されるジークヴェルトの返事に、ジルヴェスはゆっくりと息を吐きながら、じっと目を閉じる。
「…………その娘は、どこに居ますか?」
しばらくして、彼は
「その前に私の質問に答えてくれ」
しかし、自分を落ち着かせるようとしていたが、明らかに焦った様子の彼にジークヴェルトはそう言って答えようとはしない。
「…………俺は……その娘に会って…………」
「会ってどうする?お前が家族を殺した犯人とでも言うつもりか?」
さらに、ジークヴェルトはジルヴェスを冷たく突き放すような言葉を選んだようだった。
「……それはいけないことですか?俺はその娘に贖罪をしなくちゃいけないんです」
「…………なぁ、俺はそうは思わないんだよ。確かにお前は過去に取り返しのつかない罪を犯した。だが、今はこうして全てを悔いて、今を懸命に生きているじゃないか。お前のそのやり方は、今お前が持っているものを全て壊して、さらにお前自身の身をもを滅ぼすものだ。俺はそんなお前を見過ごすわけにはいかない」
ジークヴェルトはジルヴェスを心配している。
だからこそ、自身を破滅に追い込みかねないジルヴェスのやり方を認めたくなかったのだった。
出来ることなら、もっと平和的な解決に導いてやりたいと思っていた。そのような結末を迎えてもいいのではないか、それだけの資格ならジルヴェスは有しているはずだと、ジークヴェルトはそう考えていた。
「……ヴェルさん、その娘は今の俺が知ってる人なんですね?だからそうやって俺を説得して俺が勝手なことをしないようにする」
「……………………」
ジークヴェルトはジルヴェスの指摘に言葉を返せないのか、黙っている。
「でも、ヴェルさん、それは無駄ですよ。だって、初めから俺に勝手させる気がないのなら、わざわざ俺にそのことを話す必要がありません。それに、その娘が俺の知り合いなのだとしたら、それを俺は知っておかなくてはいけません。彼女がふとしたときに知ってしまうより、俺が自分から打ち明ける方が相手を傷付けずに済むはずです。どちらにせよ相手を傷付けてしまうのであれば、その傷口は浅ければ浅いだけいい」
「……本当に聞くんだな?」
ジークヴェルトはジルヴェスの本気を感じて、仕方ないというように、最終確認をしてきた。
そして、ジルヴェスはジークヴェルトの問いに頷く。
「…………その娘は、管理局武装隊に所属している。名前は、シャルル・ウィンザー」
「え……?」
しかし、ジークヴェルトの口から告げられたその名を聞いて、ジルヴェスは言葉を失った。
自身がかつて自らの手で殺めた一族の生き残りが、自分の知り合いであることは覚悟していた。とは言え、そこまで身近な少女だとは思ってもみなかったのだ。
ただ、それと同時にどうしてか納得してしまった。
シャルルと、なのはを通じて初めて会ったあの日、初めて会った気がしなかったのは何故か。
彼女がファミリーネームを口にしなかったとき、どうしてそれを直感的に訊ねてはいけないと思ったのか。
そして、ゆりかごを出たあのときに、シャルルがジルヴェスの魔法を見て、あれほどまでに取り乱したのはどうしてか。
それらを納得すると同時に、無性に怖くなってきた。
先ほどジークヴェルトに対しては、自分から彼女に自身の罪を明かすなどと大口を叩いておきながら、いざその相手がシャルルだと知って、今の彼女との関係を壊したくないという思いが胸を占め始め、彼女に自分が彼女の因縁の相手だと知られることがひどく怖くなったのだ。
だが、それが自分の弱さで、甘えで、わがままであることは、彼自身よく分かっていた。
だからこそ、言葉が出てこない。自分のすべきことが、正しいことが何なのか、すぐに答えが出ない。
「ジルヴェス、俺からの話はこれで終わりだ。まぁ、ゆっくりしていってくれ」
そのときジークヴェルトは、ジルヴェスがショックを受けていることは分かっていたから、そう言って彼を一人にしてくれた。
「……………………」
ジルヴェスは自分がどうするべきなのか、考えていた。
「…………あの子が一人。ふふふ、これはまたとないチャンス」
ジルヴェスがジークヴェルトの言葉に衝撃を受け、心ここにあらずといった具合に特捜隊の隊舎を出るのを影から監視する人物が。
彼女は先日遊園地で、シャルルとぶつかっていた女性。
そして、ジルヴェスが警戒しているエレン・アクィナスその人であった。
しかし、その容姿は遊園地で遭遇したときとは全くもって異なっていた。そんな短時間で人の容姿など変わるものではない、恐らく魔法を使っているのだろうが、その容姿はどことなく、ある少女のものに似ているようであった。
「心を強く揺さぶれさえすれば、あの子の心は私の思いのままに操れる」
何か秘策でもあるのだろう、彼女は自信をみなぎらせている。
「夜天の書?笑わせないで欲しいわね。あれはどんな名前を得ても結局は闇の書。どんなに取り繕ったところで、過去の罪悪が消えるわけじゃない。いいえ、消してなるものですか。過去の全ての被害者の怨みを背負って、せいぜい苦しみなさい、八神はやて」
そして、エレンは激しい憎悪をその顔に浮かべ、ジルヴェスの目の前に行くタイミングを図っていた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
なかなか筆が進まず、更新が遅くなりました……