リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第12話 ヒーローは少女のピンチに現れる

こうして、ジルヴェスは地球に一人残されることとなった。そして、少し考え込んだ。

 

「(これからどうするかな………そう言えばこの世界の海鳴市で、フェイトさんとあの『白い悪魔』が出逢ったって話だったな。そして、『闇の書』事件が起こったのもその町なんだよな…………これはもう行くしかないよな?)」

 

と、ちょっとした好奇心が湧いて、行ってみたくなるのは、やっぱりジルヴェスも年ごろの男子、仕方のないことだろう。

やはり、管理局の「エースたち」が住んでいた町だ。彼女たちの意外な一面を垣間見ることがあるかもしれないし、ないかもしれない(確実に後者ではあるが……)。ただ、見てみるだけでも面白いだろうというのは確かである。

だから彼は、海鳴市に行くことに決めた。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

時は1週間少し遡る。

 

「あれ、通信だ。誰からだろう…?」

 

なのはが仕事を終え、くつろいでいると通信が入った。

 

『なのはちゃん、元気してるか?』

「はやてちゃん、久しぶり~。私は元気だよ。それにしても何時(いつ)振りかな」

 

通信をしてきた相手は意外にもはやてであり、なのはは驚きと嬉しさとで割とテンションが上がっていた。

 

『せやなぁ、春くらいに会ったっきりやないかな』

「でも、そんなもんかぁ。それで何か話があるのかな」

 

わくわくしているのを隠そうともせず、はやてに話の続きを催促した。

 

『せやった、話っちゅうのは何でもなくて、単にこの夏、地球に帰省せえへんかっちゅうだけの話や』

「あっ、ごめん。私、お母さんからこの日には帰って来てって言われて休暇とっちゃってるんだ……来週から再来週まで1週間いるつもりだけど……」

 

けれどはやての提案を聞くと一転、心底残念そうに、そして申し訳なさそうに、なのはは断りを入れた。

 

『そうかぁ。残念やな……まぁ、日頃会えへんからお母さんの言うこと聞いてあげた方がええしな』

「うん。ごめんね。夏の間日帰りとかならどこか行けると思うから、また別の機会にどこか行こう」

『分かったわ。それじゃ、また今度な』

「うん、バイバイ」

 

そう言って二人は通信を切った。

 

◇◇◇

 

今日、「エース」が地球に戻っているとは露ほども思っていないジルヴェスは完全に油断していた。海鳴市に着くと手近にあった喫茶店[翠屋]に入った。

 

「コーヒーを一つ」

「かしこまりました」

 

コーヒーを注文し、これから何しようか考えながら何気なく店内を見回しているとちょうど誰かが店内へ入ってきた。店に来客があることは当たり前のことであるから本来、態々(わざわざ)気に留めるほどのことではないのだが、その来客を席に案内している「店員」の姿に見覚えがあった。

 

「あれは、高町なのはか……?何をしているんだ、こんなところで?」

 

ジルヴェスは、喫茶店の店員なんぞをやっている「エースオブエース」の姿に驚きを隠せないでいた。

しばらく、なのはのことを見ていると不意に彼女と目が合った。

するとすぐさま、なのはは一旦カウンターに戻ってコーヒーを淹れると、どういうわけかジルヴェスの方にやって来た。

彼は何事かと内心身構えていた。

 

「おまたせしました」

「……ありがとうございます」

「…………うん。やっぱり」

 

けれど、コーヒーを給仕したなのはは、少しの間ジルヴェスを見るだけだった。そして、何かを確信したような表情を浮かべて去って行った。

 

「今のは何だったんだ……?」

 

意味の分からないなのはの行動にジルヴェスは、ただただ戸惑うばかりであった。

 

◇◇◇

 

「(やっぱり、彼は訓練校で見たあの子だ。機会があれば、とは思ってたけど、こんなところで機会が廻ってくるとは思ってなかったな。でも、どう声をかけようかな…?)」

 

なのはは、接客をしながらジルヴェスのことを考えていた。そしてまた、ジルヴェスの座る席の方を見やると

 

「(あれ、いない。もう帰っちゃったのかな。残念、話をするのはまた次のチャンスかな)」

 

すでに、ジルヴェスは席を立っていた。

 

「なのはー」

「何、お母さん?」

 

ちょうどそのとき、なのはの母は彼女に声をかけてきた。

 

「あなた朝から手伝ってくれてるでしょ。そろそろ休憩していいわよ」

「ホントに?じゃあそうするね」

 

なのははすでにとっている注文だけ裁いて店から出た。

 

「まだ、海鳴にいるかな。もしかしたら帰っちゃったってこともあるし……」

 

そして店を出ると、なのはは折角の自由時間をジルヴェス探しに使い始めた。

しばらく街を歩いていたが一向にジルヴェスの姿は見られない。もうこの辺りには居ないのだろうとあきらめて帰ろうとしていたら、背後から誰かに声をかけられた。

 

「ねぇねぇ、君かわいいね。どう?これから俺たちとどっか遊びに行かない。なんか疲れてるみたいだしお茶とかでもいいけどさ」

 

見るからに、誰がどう見てもナンパだった。

 

「ナンパさん、ですか……。あはは」

 

なのはは困ったなと思いつつ、とりあえず、愛想笑いで返す。

日頃、訓練やら教導やらで忙しいなのは。しかも、ミッドではそこそこ顔も売れている彼女はナンパなんてされ慣れているはずもなく(なのはの実力と残してきた数々の伝説を知っているから憧れはしても手を出そうなんて馬鹿なことを考える人間はいない)、その対応に困っていた。

 

「おいしいケーキのある喫茶店知ってるんだ。行こうよ。楽しいからさ」

 

なのはが愛想笑いで返すものだから脈アリと判断したのか、さらにアプローチをかけてくるナンパ野郎B。しかも、彼らはなのはが拒否しないのをいいことに肩まで抱いている。

そして、そのまま路地裏へと連れて歩いて行く。

 

「…ちょっと、やめて……」

 

さすがにこれ以上は色々と危険なことはなのはでも分かったから何とか抵抗を試みる。

 

「別に遠慮なんて要らないからさ」

「そうそう」

 

しかしナンパ野郎どもは断っても動じず、なのははどうすればいいか分からず視線を宙にさまよわせていた。

 

(高町空尉、話を合わせてくださいよ)

「え?」

「どうかした?」

「い、いえ……」

 

すると、どこからか声が「響いて」きた。けれど、その声はナンパ野郎たちには聞こえていないようだった。

今の声は空耳だったのかとなのはが肩を落としかけたとき、今度は実際に声が聞こえてきた。

 

「なのはさん、ここにいたんですか?探しましたよ?勝手にいなくなるのやめてくださいっていつも言ってるじゃないですか」

 

どこからか、少年が現れたのだった。

 

「…………」

(ほら、何か返事してくださいよ)

(あ、うん)

 

なのはが驚きから黙っているのを見て、少年は言葉を促す。

 

「ごめんね…」

 

なのはは慌てて、けれど落ち着いて、彼の言う通り、話を合わせる。

そして、彼はまるでなのはと親しいかのように振る舞い、ナンパ野郎たちに肩を抱かれているなのはの手を握って引き寄せる。

 

「なんだ、お前?」

 

突然現れ、なのはと親しくする少年にナンパ野郎たちは食ってかかる。

 

「お前たちこそ誰だ?人の連れ掴まえて」

 

彼は、なのはの腰に手を回し、守るようにして、さらに鋭い目を向けて睨みつける。

 

「ちっ、帰んぞ」

「ああ……」

 

何となくではあるが言い様のない恐怖を感じ、勝ち目のないことを悟ったナンパ野郎たちは舌打ちをして去っていった。




ここまで読んでいただきありがとうございます

この回ではやてが登場したわけですが、その口調(主に関西弁)かおかしくても目を瞑っていただけると幸いです
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