リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
夜になって、なのはとはやて、フェイトの3人は同じ部屋で寝る支度をしていた。
「でも、ホントにびっくりしたよ。二人とも急に来るんだもん」
なのはは思い出したように二人に話しかけた。
「いや、なのはちゃんを驚かそう、思うたんよ。まぁ、実際にはうちらの方が驚かされてしもうたんやけどな」
「ホントホント。まさかジルヴェスくんがいるなんて思わなかったよ」
はやてが苦笑を浮かべながら言った言葉にフェイトも頷き同意を示す。
「私も初めお店で見たときびっくりしたの。ジルヴェスのことはちょっと前から気になってて一度話をしておきたいと思ってたからね」
「へぇ、なのはちゃんジルヴェスのこと、気になっとったんやぁ」
はやてはニヤッとしながらなのはに話を振る。
「あっ、ち、違うよ。そう意味じゃなくて!」
なのはは慌ててそれを否定する。
「そう言えば、この前話したとき、はやてに気になってる男の子がいるって話をしたけどもしかしてジルヴェスくんのこと?」
そのときフェイトが二人の会話を聞いていて、ふと思い出した。そして、それをはやてに問いかける。
「あかん、覚えとったか……そんなことより」
はやては、まずいという表情で話題を変えようとする。
「え、はやてちゃんホントなの?」
が、しかし、なのはがそれを許さなかった。
「や、そういうことやのうて、弟みたいなもんやから心配になるって言うただけやんか」
「はやて、ジルヴェスくんとはどういう関係なの?私、実はずっと気になってたんだけど……」
フェイトはずっと持っていた疑問を解消しようと訊ねた。
「んー、せやな……あいつも古代ベルカの使い手やからカリムを通しての知り合いっちゅうとこやな」
少し考えるような仕草をしてそれに答える。そのはやての答えになのははふと疑問を抱いた。
「え?古代ベルカ式なの?」
「そうやけど。どうかしたんか?」
「訓練校で見たときに使ってたのが、近代ベルカだった気がしたから……」
「ああ、そのことか。それは、訓練校なんかで純正ベルカを使ってみ?下手に目立ってしまうやんか。せやから極力純正は使うなってカリムが言ったんよ」
なのはの疑問に、はやてが何てことはないとでも言うように答えた。
「そうかぁ。でも、だからか……」
「何がや?」
さらに、なのはの呟きに反応するはやて。
「いや、ジルヴェス、筋がいいなって思ってたからさ。何でだろって」
「ああ、そういうことか。でも、なのはちゃん、ホント驚いたで、ジルヴェスに上手く心開かせたみたいやから。相当粘ったんとちゃう?」
納得いった様子のはやては再び話を戻すようにジルヴェスのなのはに対する態度に触れた。
「だって、ほっとけなかったんだもん。それに、ジルヴェスは私のこと助けてくれたし……」
なのはは少しばかり子供っぽく話す。
「ジルヴェスくんが何かしたの?」
フェイトは、ジルヴェスがなのはの何を助けたのかに興味を持った。
「うん、外行ってたらナンパさんに遭っちゃって。困ってたらジルヴェスが助けてくれたの。私よりも年下だけど、あのときのジルヴェスはカッコよかったなぁ……」
そのときのことを思い出しているのか遠くを見るような目をしていた。
「やっぱり、なのはナンパされてたんだ」
「え?やっぱり、ってどういうこと?」
「いや、うちらでなのはちゃんはナンパされとるんちゃうかなって話をしとったんよ」
「ちょっと心配だった」
フェイトはそう言いながら、うんうんと頷く。
「にしても、ジルヴェスが人助けか…あいつも変わろうとしとったんかな」
はやては真面目な顔してポツリと呟いた。
「うん。ジルヴェスも今のままじゃダメだって思ってたみたいだよ」
「うち、あいつの人付き合いが心配やったから良かったわ。なのはちゃんありがとうな。フェイトちゃんも」
「別に私は何もしてないよ」
「私もだよ」
「ううん、二人とものおかげや」
「なんか、はやてちゃん、ジルヴェスのお姉ちゃんみたいだね」
なのははジルヴェスを心配するはやてを見てそう思った。
「まぁ、あいつはうちのこと嫌いみたいやけどな」
「そんなことないと思うよ?むしろ、ジルヴェスくんははやてに心を開いてると思うし」
少し自嘲気味に話すはやてにそんなことはないと、フェイトは言い切る。
「うん。ジルヴェスははやてちゃんのこと慕ってるんじゃないかな?」
それには、なのはも同意する。
「そうかな……まぁ、今はなのはちゃんもフェイトちゃんもおるから大丈夫やな。それにしても、なのはちゃん、ジルヴェスがカッコよく見えたかぁ」
はやては少し前の会話をふと思い出して、なのはをからかう。
「べ、別に深い意味はないの。ただそう見えたってだけで」
「ふぅん。まぁ、なのはちゃんにはユーノくんがおるもんな」
「え?ユーノくん?どうしてユーノくんが出てくるの?ユーノくんはそういうのじゃないよ。良いお友だちだなとは思うし、だから大好きだけど」
はやての言葉にキョトンとした様子でそれをなのはは否定した。
「………ダメや…」
「……さすがにユーノが可哀想だよ…」
はやてとフェイトの二人はなのはへの呆れとユーノへの同情とで、そんななのはに、残念なものを見るような目を向けていた。
「え?え?」
それを受けて、しかしその視線の理由が分からず、ただただなのはは戸惑うばかりだった。
「まぁ、そこがなのはのいいところだよね」
「せやな。なのはちゃんはその天然なところがええねんもんな」
フェイトの言葉にはやてはうんうんと同意を表す。
「二人とも私に分かるように話してよぉ」
「なのはは今のままでいいよ」
「どういうことか分かんないよ?」
なのはは自覚がないから二人の会話が理解出来ないでいた。
◇◆◇◆◇
『――私はジルがどんな運命を背負っているかとか、何者なのかとか、そんなことは気にしないよ。だって私にとってのジルは今、目の前に居るジルだもん。さっき私はジルのことを知らないって言ったけど、知らないならこれから知っていけばいいんだし。それに私はジルの抱えてるものを知りたいって言ったよね。私はジルのことを受け止めるよ。だから、安心して――――――』
そんな言葉と共に少女が笑いかけてきている。
「(………………………………)」
けれど、一瞬にして場面は変わり、辺りには壊れた家屋の残骸、瓦礫などが散乱している光景が広がる。
『――――や、こ、来ないで…………』
そして、先ほど笑いかけてくれていた少女が今度は明らかな恐怖を抱いた瞳でこちらを見て、そして、自分の肩を抱き震えている――――
◇◇◇
「――はぁっ、はぁっ、はぁっ…………」
ジルヴェスは真夜中に突然目を覚まし、飛び起きた。
「……はぁっ……ゆ、夢か…………」
息は上がり、心臓は早鐘を打っている。
「…………少し、外で頭を冷やそう……」
そう呟いて、ジルヴェスは用意された部屋を出て、家の外に向かった。
◇◇◇
「…………なのはさん、か……」
そして、ジルヴェスは夜のそよ風に吹かれながら一人自嘲気味に佇んでいた。
「……思わずレイナのこと思い出して、そして、夢に見てしまった……これも、なのはさんのせい、だよな……なのはさんがあんなこと言うから、レイナと同じことを言うから…………いつか、会うことが赦されるときが来るのかな……会いたい……そして、一言でいいんだ、俺は君に謝りたい……許してくれなくていいんだ。ただ謝りたい…………そのときが来るまで、この仮初めの温もりを味わっていてもいいのかな……教えてくれ、レイナ……」
彼の心は迷っていた。
それはたった今、夢に見てしまったというだけではなくて、そもそも本当の意味でなのはたちに心を開いたわけではなかった。
彼は彼が他人と関わろうとしない本当の、一番の理由を語ってはいない。
そして、
けれど、いつか終わりがくると分かっていて、仮初めの幸せでもいいから、なのはたちと共に一時を過ごしたいと願ってしまってもいた。
ただ、願いながらもやはり迷いはあって、結局その夜、彼は眠ることが出来なかった。
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