リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第2話 自主トレと異変

 

「ねぇ、ナカジマさん」

「え、どうかした、ランスターさん?」

 

部屋で休んでいると突然声をかけられ、スバルは怪訝な顔をしている。

 

「自主トレするわよ。あと、あんたに拒否権はないから」

「え? 急にどうしたの?」

 

そして、さらなる言葉に驚きを隠せない。

 

「全然急なんかじゃないわよ。あのね、あたしはここをトップで上がりたいの。だけど、あんたがどんくさいから私の評価まで下がってる。このこと、分かってる?」

 

ティアナは威圧感たっぷりに、確認するようにスバルに言い放つ。

 

「う……ごめんなさい」

 

それを否定することをスバルは出来ず、萎縮していた。

 

「だけど、別にあんたが全然使えないような人には思えない。確かに物覚えが悪いからどんくさいけど。でも、時間をかければあんたも十分に伸びると思うのよ」

「…………」

 

ティアナは先程までの威圧感を拭い去り、スバルのことを褒める。ただ、口調は厳しいし、若干棘も感じられるが。

スバルも、怒られている感じであることを忘れて、そんな様子のティアナを意外そうな目で見詰めていた。

 

「だから、普通に訓練してるだけだったらあんたはいつまでも成長出来ない。それは私が困るし、あんたももったいないと思うでしょ? だから、自主トレ始めるわよ」

「うん! ……あと、ランスターさんって優しいね」

 

スバルは、ティアナの言葉には彼女の優しさが詰まっているように感じた。

口調はキツいけれど、それはティアナが不器用なのだと考えていた。

だから、自分を貶すような言葉でも、スバルはニコニコしていた。

 

「は? あんた何言ってるのよ」

「別に何でもない」

 

そんなこんなで、二人は自主トレを始めることになった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

「なぁ、ジルヴェス」

「どうした、イライアス?」

 

訓練の最中、イライアスは隣のジルヴェスに答をかける。

 

「訓練さ、つまんなくね?」

「…………」

 

イライアスのその言葉にジルヴェスは言葉を失い、軽く睨みつける。

 

「どうしたんだよ、黙り込んで、こっち睨んでさ」

「いや、お前の言ってることはお前が優秀だから言えることだと思ってな」

 

ジルヴェスは溜め息と共に答えた。

 

「そんなこと言って、お前だって物足りなく感じてるくせによ」

 

イライアスは少し意地悪くそれに返してくる。

 

「……ま、まぁ、今やってる基礎中の基礎はそりゃあ、なぁ……」

 

そして、ジルヴェスは答えに窮してしまう。

 

「ほら、お前だって」

「でも、これから訓練はどんどん本格化するわけだろ? そして、実戦形式の訓練もある。そのときに俺は……」

 

ジルヴェスはどこか、まだ来ぬ未来に不安を抱いていた。

 

「そんときのために俺がいんだよ。だから心配なんか要らねぇって言ってんだろ?」

「あぁ、頼もしい限りだよ」

 

何について話しているのか、何を不安がっているのか、それらは、彼らの会話から窺い知ることは出来ないが、ひとまずジルヴェスの不安は軽減されたようだった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

自主トレを始めて早2ヶ月。スバルはめきめき成長していった。

 

「これで来月分まで予習出来たわけだけど、どう? 問題ないかしら?」

「うんっ。でも、ごめんね、わたしどんくさいから……」

「そうね」

「ガーン……」

 

ティアナに改めて、はっきりと言われ軽くうなだれるスバル。

 

「でも、初めにも言ったけど、あんたなら出来ると思ってるからこうして色々やってるのよ。別にあたし自身のためだからね」

 

ただ、ティアナはそれに続けてフォローを入れた。

その点で、2ヶ月前とは大分変わったのではないだろうか。

 

「うん…ありがとう」

 

スバルは微笑を浮かべて感謝を述べた。

ティアナは、なんだか、その笑顔が眩しく見えてつい目を逸らしてしまった。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

しばらく似たような(イライアスに言わせるとつまらない)訓練が続いたが、徐々にコンビの訓練が減り、戦闘形態ごと、小班の訓練が増えていった。

 

「次、ジルヴェスの番だぞ」

「ああ、分かった」

 

ジルヴェスはデバイスの調子を軽く確かめ、教官に対峙する。

 

「クライン訓練生、先ほど教えた基本は理解しているか?」

「はい。問題ないと思います」

「では、来なさい」

 

そう言って、教官はデバイスを構えた。

今日、指導されているのは、相手に攻め込み、そして相手の得物を相手から遠ざけ相手を丸腰にする技術。

 

「行きます!」

 

そう言って、教官に向かっていく。

教官は訓練ということもあり、ほとんど動きには反応せず、まして基本的に反撃しない。

そして、ジルヴェスは一瞬で教官に肉薄し、初撃を打ち込む。

と、教官に当たる、正にその寸前、ジルヴェスの攻撃は逸れていった。

教官がその攻撃を見切り、避けたわけでも、何かしらの魔法で軌道を逸らしたわけでもない。

ジルヴェスが教官に攻撃を打ち込むとき、何かを思い出したような、そんな表情を浮かべ、教官に攻撃が当たる寸前にジルヴェス自身の意思でその攻撃を逸らしたのを、対峙していた教官は見ていた。

そして、そのときのジルヴェスの顔色は何かに怯えたようで、最悪だった。

 

「クライン訓練生、顔色が悪いようだが、大丈夫か?」

 

教官はジルヴェスの様子のその不自然な変化に違和感を抱いていた。

 

「はい…大丈夫です…」

 

大丈夫、そう答えるジルヴェスであるが、一見してあまり大丈夫そうな様子ではなく、そして、息も荒いままだった。

 

「そうか。でも、少し休んでいなさい」

「分かりました」

 

教官に言われ、ジルヴェスは大人しく言うことを聞いた。

 

◇◇◇

 

「確か彼はジルヴェス・クライン。基礎連係での成績上位者だね。まぁ、相方があの『クライスナー』だからな、当然かな。けど彼も十分素質はあるのに……彼には何かトラウマがあるのかな…? だから、突然動きがおかしくなった。…でも、相手に迫って行く動きにはすごくキレがあったし、考えるよりも先に体が動いてた」

 

この日、ここ、訓練校には視察のために本局から局員がやって来ていた。

そして、ちょうどその時その局員は、ジルヴェスのことを見ていた。

 

「おそらく、戦闘技術も高いんだろうな。もしも、トラウマでその、彼本来の力を、才能を、開花させられなかったりしたらもったいない」

 

そして、彼の持つ資質まで見抜いていた。

 

「いつか、機会があったら話をしてみたいな」

 

彼女(・・)は、ジルヴェスに興味を抱いていた。






ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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