リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
第20話 競技会のご案内
『夏期休暇も明け、目前には戦技競技会が迫っている。戦闘のタイプごとに競技が決まっているから、後日まとめて掲示することとする。必ず確認しておくこと。また、成績上位16人には個人での模擬戦を行ってもらうことになる。そちらの方も後日掲示する。以上、質問はあるか?』
教官の話に、質問はないようであった。
『では、解散!』
そして、訓練生たちは競技会について語りながら各々解散していった。
◇◇◇
「ティア、いよいよだね、競技会」
「そうね。このために夏期休暇中もトレーニングして来たんだから」
「うん。だからきっと、模擬戦の選抜に選ばれるよ!」
スバルは力強くそう語った。
「当たり前よ。選ばれて、勝ち残るんだから……」
そして、ティアナは強い意志を宿した目をしていた。
◇◇◇
「おーい、ジルヴェス」
解散して部屋に戻っていると、後ろから声をかけられた。
「何だ、イライアス?気持ち悪い」
「ちょっと、話しかけて返しがそれってひどくね?なぁ……」
「はいはい。悪かったって。で、話って何だ?」
ちょっとしたコントを始めたのはジルヴェスなのに、とっとと本題に入れ、と言わんばかりである。
「いや、そろそろ競技会だなって。ほぼ確実に模擬戦やることになるだろうからそれについて話そうと思ってな」
「模擬戦か…見学出来ないのか?」
ジルヴェスは割と真剣な表情で情けないことを言っている。
「あのさ、体育じゃねぇんだから無理だよ。それに俺ら実際の個人の順位は今は分からないけど、少なくともコンビとしては1位なんだ、せめて4位以下のペアの連中に負けるわけにはいかないだろ」
イライアスは絶対的な自信に裏打ちされた、けれど客観的な意見でジルヴェスをけしかける。
「じゃあ、3位以上にだったら負けてもいいってことか」
「………まぁそうだな……ただ、そもそも、俺らとここの連中とじゃ、格が違うってこと忘れるんじゃないぞ」
けれど、ジルヴェスの揚げ足をとるような物言いにイライアスは何か裏のある、意味深な言葉を返した。
「分かってるけど、適当に流しておくよ。ま、イライアスは優勝してくれ。そうすりゃ面子だって保てるだろ」
「残念だ。お前変わったと思ったんだけどな」
イライアスは期待はずれと言わんばかりに呟いた。
「怖いもんは怖いんだよ。闘ってもしもがあったら、もう遅いんだ……」
ジルヴェスは表情を暗くして、弱音を吐く。
「分かってるよ。ちょっと言ってみただけだって」
「けど、いつまでも怖い、なんて言ってられないからな。頑張ってみようとは思う」
頑張ろうと、決意を新たにするジルヴェス。
「ああ、頑張ってみろよな。お前なら出来るから」
対して、イライアスはジルヴェスをただ励ますだけだった。
◇◇◇
「そう言えば、戦技競技会の日程をなのはさんに知らせるんだったな」
ふとなのはとの約束を思い出して、ジルヴェスは通信を開いた。
「けどこんな時間に連絡して大丈夫かな……」
ジルヴェスは時間帯を気にするが、そんな心配は要らなかった。コールしてすぐに、なのはは出た。
『ジルヴェスどうしたの?』
「仕事中とかじゃありませんでしたか?」
『ううん、大丈夫だよ。私たちも大体ジルヴェスたちと生活時間は同じだからさ』
空隊と訓練校を並べてそう言った。
「そうでしたか」
『まぁ、細かい仕事があったりするところはジルヴェスと違うかもだけど。それで、わざわざ連絡してきてどうしたの?』
挨拶もほどほどに本題に入るのを促した。
「この前、戦技競技会について教えてほしいとおっしゃっていたので」
『ああ。競技会のことか。で、いつあるの?』
「10日後にあります」
『………うんうん。その日なら見に行けるかな』
手帳で予定を確認しながら告げる。
「え、見に来るんですか?」
なのはが来るとは思っていなかったからジルヴェスは驚いていた。
『うん。ダメなのかな……?』
「いや、なのはさんがわざわざ陸士の訓練校にやって来る意味ってあるのかなと思いまして」
『ジルヴェス、陸士を低く見るのは良くないよ。空を翔べるから偉いってわけじゃないんだから』
ジルヴェスの言葉を聞いて、軽くなのはは訂正する。
「すいません。でも、空隊のなのはさんが来るのがよく分からないんです」
『確かに、今は翔べないかもしれないけど、今空隊にいる人だって、半分くらいは初めは陸士だったんだよ?』
「言われてみればそうですね。じゃあ、今のうちから優秀な人材に目星を付けようとしているわけですね?」
ジルヴェスは確認するように、けれど確信を持ってなのはに言葉をかけた。
『まぁね。そんな感じ。でも、ジルヴェスが闘うところを見てみたいっていうのも理由のひとつだけどね。とは言え、ジルヴェスはもうリストに載ってるけど』
「それって言ってもいいんですか?」
『あっ、ダメだよ。今の忘れて。ね、お願い』
なのはは慌てた様子でジルヴェスに頼む。
「まぁ、口外したりはしません。でも、俺はなのはさんが思ってるような人間じゃないですから」
ジルヴェスは気になる物言いで承知した。
当然なのははその言い方が気になったが、グッとこらえて、深く追及することをしなかった。
『じゃあ、競技会のときにね』
「はい。それじゃあ」
そう言って、通信を切った。
「なのはさんが来るのか。じゃあ、頑張らないとな。──って、どうして頑張ろうと思ったんだ…?それに何を頑張るんだ…?」
ジルヴェスも自分の心が見えないようだった。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
この話をあげるときに、前話との切れ目をミスっていたことに気づいたので、前話の最後にほんの少しだけ追加した内容があります。
まぁ、本当にほんの少しだけですけどね……