リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
『いよいよ、戦技競技会が行われる。皆これまでの訓練の成果を存分に発揮してほしい!』
訓練場に整列した訓練生を前に、教官が威勢よく言った。
◇◇◇
「いよいよだね」
「そうね」
「模擬戦は最後だからそれまではそれぞれ頑張ろうね!」
「何言ってるのよ当たり前じゃない」
そんな会話をしてスバルとティアナの二人はそれぞれの競技のフィールドに向かった。
◇◇◇
「よーし、ジルヴェス。今日は暴れ回るぞ!」
「いや、そういう趣旨じゃねぇから」
「お堅いな~。そんなこと言わずにやりたいようにやりゃいいのによ」
「……まぁ、そうだな」
「ま、模擬戦もあるんだ。無理はすんなよ?」
「当たり前だ」
イライアスとジルヴェスの二人もそれだけ話して、それぞれのフィールドに向かった。
◇◆◇◆◇
この戦技競技会は各戦闘タイプごとにA~D、4つの小班に分かれ、A~Dそれぞれがチームとなる。また、各戦闘タイプごとに3競技を行い成績に応じて点数が与えられる。そして、それらの合計得点で順位をつける、というものである。
要は、陸士訓練校の運動会といったところの行事なのだ。
ちなみに、イライアスはA、スバルはB、ジルヴェスとティアナはDである。これは、個人の総合成績の順位でイライアスが1位、ジルヴェスが4位、ティアナが5位、スバルが7位であることを反映している。
◇◇◇
「まずは、『壁抜き』だね……」
近接格闘班の第1競技は通称「壁抜き」。これは、パンチ、蹴りを問わず自身の体(デバイス含む)と強化系の魔法のみで、一列に並んだ壁を何枚まで一撃でぶち抜けるのか、ということを競う、言ってしまえば単なる脳筋競技である。訓練校らしいと言えばらしい競技でもある。
並べられた壁は全部で50枚。1枚抜くと1点で、50枚全てをぶち抜くと、コンプリートボーナスを含め合計100点を獲得出来る。
「ティアも頑張るって言ってたもんね。私も負けてられない!」
そう言って、気合いを入れ直して競技者の立ち位置へと向かう。
「ふぅ。全部ぶち抜けたら100点ゲット………全部ぶち抜かないとダメだよね。ティアとも競争してるんだから。ティアは絶対に満点をとってくるもんね」
その言葉は彼女のティアナに対する信用の証であろう。また、その呟きで自らを鼓舞しているのかもしれない。そして、スバルは呟いたと同時に構えをとった。
「行きます!でぇぇっやぁっ!」
その掛け声とともに、スバルは振りかぶり、そして正拳突きを繰り出す。
ドカンッ、という音がしたかと思うと、設置された「壁」が手前からどんどん粉々に砕けていく。そして、その衝撃はみるみるうちに伝わっていった。
『き、記録50枚…!』
記録をとっていた教官は、まさかの結果に動揺を隠しきれないでいた。
というのも、スバルたちの一期前に30枚の壁をぶち「抜いた」訓練生がいたために、今期は枚数を増やし、50枚の壁を設置していた。しかし、教官たちはあくまでも念のためのつもりで設置していたのだが、スバルはいとも容易く壁を「砕いた」。それも50枚すべてを───
周囲の訓練生もすごいものを見たという感じで次々スバルに声を掛けていた。
◇◇◇
その頃、射撃班も初めの競技を開始していた。
「私の初めの競技は『動体射撃』ね」
「動体射撃」は文字どおり、移動するターゲットを狙い撃つ競技で、ターゲットは15。撃てる弾数も15であり、なるべく多くのターゲットを撃ち墜とすことを目的としている。
動体の軌道と速度を読む力、そして正確にターゲットを狙う精度が求められる競技である。
1つのターゲットを墜とすと3点獲得出来、15個全てのターゲットを撃破すると合計100点を得られる。
「……落ち着いてやれば大丈夫…あたしなら出来る……」
そう呟き自分を鼓舞して競技者の立ち位置へ。
『では、始め!』
「はいっ」
教官の合図でターゲットが動き始める。その速度は人が歩くくらいのものから自動車ほどの速度で動くものまちまちである。この競技は簡単そうに見えてかなり難しいのである。
「まずは、比較的遅いターゲットから……」
ティアナはセオリー通りに速度の遅いターゲットから狙っていく。その目は真っ直ぐにターゲットを見据え、焦りはない。
着実にターゲットを撃ち墜として残るは高速で動くターゲット5つとなった。
「……弾を追っちゃダメ。軌道を読まないと…あたしには出来る…」
そう、心を落ち着かせて残りのターゲットにも狙いすます。そのまま、銃口を一発一発動かしながら三発連続で引き金を引いて、3つのターゲットを墜とす。
「あとは、2つ……」
残り2つとなっても気を弛めず、集中を保つ。そして、もう1度引き金を引いてターゲットを撃ち墜とし、ターゲットは残り1つに。
「これで最後ね」
そう呟くと同時に引き金を引く。放たれた弾は真っ直ぐに進み、最後のターゲットを捉えた。
「よしっ」
『記録は15。オールクリア!』
ティアナは堅実な射撃で15のターゲット全てを撃破した。とは言え、最後の方のターゲットの速度はかなりのもので、オールクリアはなかなかできないことであるからティアナの腕はかなりのものである。
「まぁ、こんなところかしらね。スバルも100点取ったみたいだし、あたしも負けていられないもの」
だがしかし、近接格闘班の競技区画に視線を向けているティアナは、ただ当たり前のことをしたまでという感情を湛えた表情をしていた。
ここまで読んでいただきありがとうございます