リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第22話 少女との出会いは必然か偶然か

「えーと……まず初めの競技は『斬り伏せ』か」

 

ジルヴェスもまた、初めの競技が開始し準備をしていた。

「斬り伏せ」とは、周囲360度から飛んでくる魔弾を自分の持つ武器(デバイス)で破壊していくもの。魔弾を回避することは禁止であり、あくまで攻撃を当てることで被弾を防がなくてはならない。しかも、その魔弾の軌道と発射間隔がなかなか厳しく設定されているため、魔弾に対する反応が素早く、さらには魔弾に対する攻撃に一切の無駄がないことが求められる競技となっている。

計50発の魔弾が飛んでくる。被弾を防いだ弾数が得点となり、全て防ぐと他競技同様、ボーナスを含めて100点を得ることが出来る。

 

「まぁ、普通にやれば100点は行けるな。でも、どうするかな……」

 

ジルヴェスは一人呟きながら暫し思案する。

 

「……けど、イライアスに負けるのはなんか癪だ。全部100点獲ってやる」

 

ジルヴェスは意気込みも新たに競技に向かった。

 

「では、いきます!」

 

ジルヴェスの宣言と同時に魔弾が飛来し始める。

初めに飛来する数発の魔弾は飛来するまでに数秒の間隔を空けていて、いわゆるイージーモードのような感じになっている。当然、ジルヴェスは難なくクリアする。

段々と魔弾の射出間隔が縮まり、更には次の魔弾との角度も広がり連続で破壊していくのが困難になっていく。そういう設定がなされている。

けれど、ジルヴェスは全くもって険しい表情は見せずに競技を続ける。

そんな調子であと4発を残すのみとなった。

 

「ふぅ、あと4つ……」

 

一息つき(そんな暇はないはずなのだが)、集中を高める。そして、ついに魔弾が飛来する。その間隔はないに等しく四方からほぼ同時である。

1発目を普通に斬り、体を回転させ、袈裟懸けで2発目を斬る。さらに、3発目は体をまたも回転させながら左から右へ刀を流し斬る。そして、最後の1発はその流れのまま、返す刀で斬り伏せた。

 

『記録、50発!』

 

記録員はジルヴェスの結果を確認して発表した。

 

「よっし、完璧だな」

 

ジルヴェスも結果を聞き、満足する。

 

◇◇◇

 

第3競技まで終えて、今は少し、いや、かなり遅い昼休憩となっていた。

 

「良かったよ。今回も私を視察に回してもらえて」

 

なのはは上官に陸士訓練校の戦技競技会への視察を打診したときのことを思い出しながらそう呟いた。

 

「高町三尉はそんなにこの競技会を見たかったのですか?」

 

その呟きに反応するようになのはと共に来ていた少女が訊ねた。

 

「うーん、半々ってところかな。でもなんでそう思うの?」

「いえ、高町三尉がとても楽しそうなお顔をなさっていたので」

 

なのはに聞き返されて、その少女はどこか緊張した面持ちで答える。

 

「ねぇ、シャル」

「な、何ですか、高町三尉?」

 

シャルと呼ばれた少女の名はシャルル・ウィンザーという。彼女はなのはの部下にあたるが、特にフェイトにとってのシャーリーのような立場にある。

――とは言え、彼女がなのはの部下になったのには色々と事情があるのだが、ここで話すことではないだろう。

 

「その高町三尉ってやつ止めてって言ってるでしょ?なのはって呼んでって」

 

なのはは少しムスッとした顔で言う。

 

「でも、仕事中ですし……」

 

シャルルは困った顔をしていた。

 

「でもじゃないよ。それに、仕事中って言ったって堅苦しいところじゃないんだから、ね?」

「本当になのはさんって強引ですよね」

「ふぇっ!?」

 

唐突に聞こえた第三者からの言葉になのはは声を上げて驚いた。

 

「こんにちは。本当に来るとは思ってませんでしたよ」

「じ、ジルヴェス?あれ、なんで?」

 

目の前に立つジルヴェスを不思議そうに見詰め、なのはは小首を傾げている。

 

「なんでって、今は昼休憩中ですから少しブラブラしてたんですよ。そしたらなのはさんを見かけたので挨拶に来ました」

「そうなんだ」

「あの……なのはさん。この人は…?」

 

シャルルは恐る恐るといった具合に訊ねた。

 

「初めまして。自分はジルヴェス・クラインです」

 

そして、なのはからの紹介よりも前に、ジルヴェスは自己紹介する。

 

「…は、はい。私は…………シャルルと言います」

 

それを受けてシャルルも自己紹介する。

 

「……シャルルさんですか。なのはさんのところで働いているんですか?」

 

ジルヴェスは、シャルルが彼女の名前だけで、名字を言わなかったことに少し、ほんの少し違和感を抱き、気になりはしたが、何となく、聞いたら何かが壊れてしまう気がして(まだ何も始まってすらいないが……)、差し障りのない言葉を選んだ。

 

「はい。武装隊のなのはさんの隊に配属されています」

「そうなんですか。じゃあ、かなり強いんですね」

「ま、まぁ……そこそこ、程度です」

 

シャルルは謙虚な答えを返す。

 

「そこそこなんかじゃないよ。シャルはホント強いんだから」

「な、なのはさん!買い被り過ぎです」

「そんなことないと思うけどな……」

 

なのはは納得していないという表情をしていた。

 

「そ、そう言えば、クラインさんはどこの所属なんですか?」

 

なのはに褒められて恥ずかしいのか、シャルルは話題を変えようと、ジルヴェスに話を振った。

 

「どこってここですよ」

「訓練校ですか。だったらクラインさんだってすごいじゃないですか。もう、訓練校の教官やっているなんて」

 

シャルルはどうやら誤解しているようだった。

 

「いや、自分はここの『訓練生』、ですよ?」

 

ジルヴェスは、訓練生という部分を強調し、そしてどこか含みを感じさせるように話す。

 

「え?訓練生…?」

「ええ」

「………あっ!そう言えば、見た気がします。『斬り伏せ』だけじゃなくて、『連斬り』と『居合い』でも満点獲ってましたよね?」

 

ジッとジルヴェスの顔を見詰めると、声を上げた。

 

「まぁ、そうですね」

「気付きませんでした……というか、全く訓練生には見えないです。身に纏う雰囲気と言うか…」

「そうですか?でも、評価してもらえてるわけで悪い気はしませんね」

 

ジルヴェスは珍しく照れた様子を見せる。

 

「でも、クラインさんはなのはさんと仲が良いんですね」

「そうですかね。なのはさんですから誰とでもこんな感じじゃないですか?」

「確かにそうかもしれないです」

 

シャルルは、ジルヴェスの言葉に笑みを浮かべながら同意した。

 

「ふ、二人とも。私のことバカにしてない?」

「そんなことないです」

「そうですよ」

 

そう言うジルヴェスとシャルルはどちらもなのはの言葉を否定しているが、その顔は二人ともニヤついていた。

 

「じゃあ、俺そろそろ行かないといけないんで失礼します」

「あ、うん。頑張ってね。模擬戦、しっかり見てるから」

「あ、ありがとうございます。では」

 

ジルヴェスはそう言って、その場を後にした。




読んでいただきありがとうございます。
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