リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「なのはさん、今日来たがってたのって、クラインさんがいるからじゃないですか?」
シャルルは、ジルヴェスが去ったのを確認してからなのはに問う。そして、その顔はニヤニヤとしていてなんとも意地の悪いものだった。
「し、シャル…?どういう意味かな?」
白々しく今にも口笛を吹きそうなくらいに、なのはははぐらかそうとしていた。
そんなことをすれば肯定しているのと同じだということを一瞬、ほんの一瞬忘れてしまうほどに動揺していた。
実際には少し顔つきが硬くなりほんのちょっと冷や汗を掻いたくらいのものだったが……
「はぐらかすなんてなのはさんらしくないです。二人ともホント仲良さそうですもん」
当然、シャルルにはその少しの動揺も見透かされてしまう。
「そ、そうかな。普通じゃないかな…?」
「まぁ、なのはさんがそう言うなら別にいいですけどね」
シャルルはまったく納得していなかったが、そう言って、この話は終わりという感じで話題を変えた。
「にしても、訓練生でもスゴいんですね」
「え、何が?」
ただ、唐突な話題転換になのははついていけてなかった。
「いえ、色々見ていて感じたんですけど、どの競技も満点獲るのはスゴく難しく設定してますよね?当然ですけど」
「うん、そうだね」
「だから、あの難度設定で満点獲ってる人はスゴいと思うんですよ。しかも、それが何人かいましたし、訓練生のうちからレベル高いなと思って」
シャルルはなのはたち同様、訓練校には短期でしか在籍していなかったから、実際、訓練生の段階での実力というものを知らなかった。
だから、彼女は今日ここで訓練生たちの競技を見て素直にすごいと感じていた。
「確かにそうかも」
「特に、射撃班の人がスゴかったです。15連射で満点獲った、確か……」
「ああ、イライアス・クライスナー訓練生ね」
「なのはさん、名前知ってたんですか?」
なのはから名前が返ってくるとは思っていなかったから驚いていた。
「シャル……一応私たち視察に来てるんだからね?優秀な人材に目星を付けるために」
なのはは呆れたような表情でシャルルを見る。
「そ、そうでした……」
えへへ、と苦笑いを浮かべつつ誤魔化す。
「でも、クライスナー訓練生には手を出せないかなぁ」
「何でですか?」
「シャル知らない?クライスナー部隊長って」
なのはに言われ、シャルルは少し考える。すると、ほどなくしてある人物に思い至った。
「…あっ!『絶対不可侵』の騎士たるあの部隊長ですか?」
「そうそう」
「じゃあ、父親の部隊に行くんですかね」
「うん。そうだろうね」
「あの人の息子ならスゴくて当たり前かぁ。なんだ、なんか肩透かしを食らった気分です」
シャルルはつまらない、という表情を作る。
「そんなこと言わないで。それにシャルの家だって──」
「なのはさん!それは言わない約束です!」
しかし、なのはが何か言おうとすると途端に大声を上げ、それを阻む。
「ご、ごめん…」
「い、いえ。すいません、急に大声出して…」
シャルルは周囲の奇異の目を感じて、少々声のトーンを下げた。
「ううん。それじゃあ、そろそろ昼休憩も終わるから行こうか」
「はい!」
二人は、競技場に向かった。
◇◇◇
『これより、成績上位者による模擬戦を行う。参加者は前へ』
「「「「はいっ」」」」
教官の言葉に、該当する16人が返事をして移動する。
『気付いている者も多いだろうが、本局の部隊の方が何人も視察に来ている。各々自分の持ち味を存分に発揮して、名前を売れるように全力でやること!』
教官のこの言葉に何人かは平静を保ち、また残りの何人かは見るからに戦意を高めていた。
◇◇◇
「そんじゃ、ジルヴェス。決勝でな」
「だから、俺はそこまでいく気はないって言ってんだろ」
いい加減疲れたという表情を浮かべたジルヴェスは面倒だと言わんばかりの口調でイライアスに言葉を返す。
「まぁまぁ、お前もやれば気が変わるさ」
イライアスはこれから起きることが分かっているかのような表情を浮かべ、そんな口調で話していた。
「イライアス、どういう意味なんだ?」
「気にすんな。それと、くれぐれも総合9位以下のやつに負けんなよ?」
それだけ言って、イライアスはどこかに消えた。
「何なんだよ、全く…」
ジルヴェスは意味が分からずしばらくボーッとしていた。
◇◇◇
「……まったく、何様のつもりよ」
「ティア……どうかしたの?ちょっと怖い……」
すぐ側で為されたジルヴェスとイライアスの会話を聞いて(決して盗み聞きしていたわけではない。聴こえてきただけである)、ティアナは憤慨していた。
そして、怒気を含んだ感じで呟いたのをスバルに聞かれ、怯えられ、もとい心配されてしまった。
「いや、何でもないわよ。それより、総合1位のあのコンビにだけは負けたらダメだから」
「コンビでの1位って言うと……あ、クライン訓練生とクライスナー訓練生のコンビだよね。え、何で?」
ティアナの突然の宣告にスバルは戸惑っていた。
「何で、ってムカツクからよ。あいつら、自分たちが優秀だからって周りのことバカにしてるのよ。ああいうのが、あたしは一番嫌いなの。だからスバル、分かった?」
嫌とは言わせない雰囲気を身に纏って問い詰めるティアナ。
「う、うん。でも、あの二人って射撃班と剣撃班それぞれのトップでしょ?」
「それがどうかした?」
「勝てるかな、って…」
相手の技量と自分の技量とを比べ勝ち目が薄いことと、ティアナの威圧するような物言いにスバルはすごく弱気になっていた。
「勝てるか勝てないか、じゃないの。勝つのよ。絶対にあいつらの鼻を明かしてやるんだから」
「うん…やるだけやってみる」
スバルは、ティアナに若干ついていけないと感じつつも、頑張って勝とうと考えるのだった。
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