リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「なのはさん、そう言えば、この模擬戦の勝利条件って何なんですか?」
「シャルはDSAAって知ってる?」
なのははシャルルの疑問に一見関係のなさそうなことを言う。
「ええ。あの魔法戦競技会ですよね」
「うん。一言で言えばあれと同じ」
「ということはクラッシュエミュレータを使っているわけですか」
またもやシャルルは感心したようだった。
「そうだよ。まぁ、自己回復系は使えないから削られたらそのままだけどね」
「じゃあ、割と分かりやすくされているんですね」
「そうだね。ところでシャル、模擬戦の組合せと順番覚えてる?」
「えーと、成績順位での表示なら……」
シャルルは少し自信なさげにそう答えた。
「それで全然いいよ。教えて」
「はい。模擬戦が行われる順に、9位VS13位、4位VS6位、7位VS10位、8位VS12位、1位VS3位、2位VS15位、5位VS11位、14位VS16位ですね」
自信は残念なさそうにしていたが、シャルルは手帳などを確認することなく、落ち着いてスラスラ述べる。
「ありがとう。さっきまでの競技会で満点出してた人は2、3、5、6、7試合目に出てくるね」
「よく覚えてますね、なのはさん」
「シャルだって組合せ覚えてたでしょ?」
「まぁ、そうですけど」
自分はただ機械的に覚えていただけだ、という思いがあり、各生徒の順位や成績にまで注意して見ているなのははやはりすごいということを考えていたりした。
「よく見えるところの方が視察としては良いと思うから移動しよう」
「分かりました、なのはさん」
二人はそう言って移動を始めた。
◇◇◇
『それでは、第2試合に移る。対戦者はそれぞれ位置について準備せよ』
「ふぅ。いよいよか」
第2試合はジルヴェスの試合だ。
「相手は、ケインか……負けられないんだろうな……」
頭に浮かぶのは、しつこく勝てと言ってくる友人の顔。
「だからケインには悪いが、パッと終わらせよう」
彼はそう呟いて、デバイスを構える。
ーーーー結局、ジルヴェスの一方的な展開で模擬戦の第2試合は幕を閉じた。
「ジルヴェス、結局割りと本気で臨んでいるじゃないか」
イライアスはニヤニヤ顔を貼り付けて近付いてくる。
「お前がそう言ったからだろ」
「まぁ、そういう見方も出来るな。でも、実際に戦うのはジルヴェスだからな」
「……そうだな」
ジルヴェスはぶっきらぼうにそう言ってイライアスから離れていった。
「あらら、少し怒らせたかな。でも、勝って、彼女と戦ってもらわないと……そうすればあいつも変わるはずだ」
イライアスは確信を持った口ぶりでそう言った。
当然、その声、その言葉はジルヴェスには聞こえていない。
◇◇◇
その後、順調に試合は消化され、ベスト4が出揃った。
そのメンツはジルヴェス、イライアス、スバル、ティアナの4人である。
対戦カードはイライアス対ティアナ、ジルヴェス対スバルとなった。
「意外です…」
「シャル、何が意外なの?」
「クラインさんとクライスナー訓練生は順当な気もしますし、ランスター訓練生は気迫というか、鬼気迫るものを纏っているので勝ったんだろうなと思います。だけど、ナカジマ訓練生は、正直ここまで来るレベルじゃないというか、他の3人と比べたら見劣りするなって思ったんです」
はっきりとは言葉に出来ないですけど、とシャルルは言葉を続けた。
「へぇ、シャルにはそう見えるんだ」
「何ですか、なのはさん?」
「私はスバルも同じくらい強いと思うけどな。何より頑丈で一撃が重いから」
そう言えるのは、単にこの場でスバルを見たからだけというのが理由ではないようだった。
「それでも……」
「むしろ、4人の中で一番危ないのはランスター訓練生だと思うよ」
「え?」
なのはの言葉は意外だったのかシャルルは首を傾げた。
「シャルは分からないみたいだね。彼女が一番『無理』をしてるよ?」
「『無理』、ですか?」
「うん。なんていうか感情のままに動いてるって感じかな。ペース配分を明らかに乱してる」
「……私にはよく分からないです」
やはり、こういうところでなのはの凄さを見せられてシャルルは何も言い返せないでいる。
「きっと見てれば分かるよ」
「あ、はい」
「…………それにしても、ジルヴェスも無理してるよなぁ………」
「なのはさん、何か言いました?」
「え?ううん。特には」
「………そうですか?」
シャルルは怪訝そうな表情を浮かべながらも一応は納得した。
◇◇◇
「あーあ、運が悪い……結局ここまで来てしまった。けど、確か、ナカジマ訓練生って総合2位だったよな……!じゃあ、適当に流しておけば万事解決じゃないか」
ジルヴェスは良いことを思い出したと、パッと顔を輝かせた。実際には、そうとは分かりづらいほどの表情の変化ではあったが。
「さてと、ナカジマ訓練生は……近接格闘型だったな。……痛そうだ……けどまぁ、上手く当たれば大したことにはならないよな」
という感じで、負ける算段を立てていた。
◇◇◇
「………ふん、どうせ、どうやって負けようかとか考えてるんでしょうね。ほんっとムカつくわね……何なのよ、力があるくせに」
ティアナは考え事をしていたジルヴェスを遠くから睨み付けつつ呟いた。
次はイライアスとの試合な訳だが、ティアナは沸々とジルヴェスへの怒りを高めていた。
「絶対にあんなやつらには負けたくない。それはあたしのプライドが許さないし、何よりここであたしの力を証明出来なきゃダメだから……」
そして、改めて決勝まで進もうと気持ちを入れ直し強い意志を瞳に宿した。
「(ティア……無理しないでね。お兄さんのことは私には分からないからティアにとってどれだけ大切なことなのかも分からない。だけど、今のティアは十分目標に近付けてるよ)」
そんなティアナを心配そうに見詰め、傍らにスバルは立っていた。
「(それに、クライン訓練生はティアが思ってるような嫌な人じゃないとも思うから)」
スバルは静かに、黙り込んでそう考えていた。敢えてティアナに言うようなことはしない。
自分が相手のことをどう感じるか、それは対人関係の中で何よりも大切なことであり、他人から押し付けられるべきものではないことだとスバル自身が思っているからだった。
「(きっと、何か理由があるに違いないよ。もし、模擬戦でティアがそのことに気付いたら、これからスゴく楽しいことが待ってると思うから)」
スバルはそっとティアナの側まで寄る。
「ティア、頑張ろうね」
そして、一言だけそう言って笑って見せた。
「え?そんなの当たり前よ。やる前から言ってるじゃない」
ティアナとしては、唐突にスバルが話しかけてきて軽く動揺していた。
「だからこそ、だよ」
「???」
ティアナはスバルの言いたいことがよく分かっていないようで首を傾げていた。
けれど、その表情は、放つ威圧感は、かなり穏やかなものとなっていた。
スバルがそれを狙ってやったのかは定かでない。
だがしかし、彼女はティアナからしっかりと信頼されるようになった、そうなれたということだろう。
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