リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第29話 目を覚ませばみんなが居る

「………ん、んん……」

「ジルヴェスくん!目、覚ました!?」

 

ジルヴェスが目を開けると目の前にはスバルがいた。

少し、辺りを見渡すとイライアスにシャルル、そして部屋の隅にはティアナがいた。

 

「みんな…訓練は?」

「今日はもう終わってる」

 

だから心配は要らない、とでも言いたげなイライアスを見て、ジルヴェスは安心出来た。

 

「そうか……イライアス、何日経った?」

「5日、だな……」

「思ってたよりマシだな。だが、迷惑かけた。すまない」

「迷惑なんてことはない。……少なくとも俺はな」

 

ジルヴェスの端的な謝罪に、ティアナの方へ視線を向けながらイライアスはそう言った。

 

「ランスター訓練生」

「ティアナでいいわ」

「…………分かった。ティアナ、心配かけて悪かった。それと、怖い思いさせてしまったな…」

「は?何言ってるのよ!何であんたが謝るのよ!別にあたしは心配なんかしてないし、まして気遣われることなんかないわよ!」

 

言葉こそ怒っているようだが、強がっているのは誰の目に見ても明らかだった。

 

「そ、そうか…だが、俺のせいで最後まで戦いきれなかったからな、それだけはせめて謝らせてくれ」

「そんなことないわ……あたしの負けよ。今のあたしじゃあんたには敵わない。あんたのことは何一つ分からない。これまで訓練に対して消極的だった理由は分からない。けど、それだけは、今のあたしじゃ敵わないってことは分かったわ。だから謝ってもらう必要なんかない。でもその代わり、あたしの、あたしたちの自主トレに付き合って色々教えてもらえないかしら。もっとあたしは強くなりたいし、ならなきゃいけないの。謝ってきたあんたに頼んだら、きっと断らないと思う。それでも頼むあたしはズルいわね。でも、だとしてもあたしは今以上に強くなるためにお願いする。私の下らないプライドより、このことは大事なことだから」

 

そう言って、彼女は頭を下げた。

言葉にはしなかったが、もっとジルヴェスのことを知りたいと、今はまだ知らない訓練に消極的だった理由をいつか知りたいと、そう彼女は思っていた。

 

「俺なんかでいいなら構わない。だけど、一つ言いたいことがある。ティアナ、過去に囚われるのはもう止めにしないか?」

「え…?」

「俺はまだティアナのことを何も知らない。だから、説得力もないと思う。でも、今のままじゃきっといつか後悔するから」

 

ティアナはジルヴェスの言葉に、不思議と重みを感じていた。

 

「俺はさ、自分に自信がない、っていうのはちょっと違うか。けど、他人に剣を向けるのが怖かったんだ。そんな俺を見て腹を立ててるティアナが目に留まったとき、素直に羨ましいって思った。あんなに自分に、自分の持つ力に自信を持って、さらに高めようと努力を惜しまない姿が。その姿を見て、そしてスバルに言われて、俺思い出したんだよ。どんな力を持っているのかじゃなくて何のために力を使うのかが重要なんだって。まだ、吹っ切れたわけじゃないけど、気持ちがすごく楽になった。だから、ティアナに感謝しないといけないと思った。でも、模擬戦のときのティアナは何かに囚われてるみたいで嫌な感じがした。だから、俺の思ったことを伝えるためにあんな、あんな酷い魔法を使ったんだ」

 

ジルヴェスはまだティアナを気遣うような表情を浮かべていた。

 

「………あたし、バカね…何も分かってなかったわ」

 

対してティアナは自嘲的な笑みを湛えていた。

 

「これからよろしくな」

「ええ、よろしく」

「ジルヴェスくん、私もよろしくね」

「ああ」

「それじゃあ、あたしたちは戻ってるわね」

 

そう言って、ティアナとスバル、そしてイライアスもそれぞれ部屋に戻って行った。

3人が立ち去り、静かになった病室にはシャルルとジルヴェスの2人だけが残った。

 

「あ、あの……」

 

シャルルは遠慮気味に声をかける。

 

「ああ、シャルルさん悪い。ほったらかしにしてて」

 

彼女に声をかけられ、ジルヴェスはそちらに向き直った。

 

「い、いえ!でも、本当に大丈夫ですか?」

「何が?」

「その、あれだけの大怪我でしたから……」

 

見るからに、心配してます、という雰囲気を纏ってシャルルは答えた。

 

「心配してくれるんだ。ありがとう」

「いえいえ、そんな大したことじゃありません。でも、私のこと覚えていたんですね」

 

シャルルはなんだか、自分のことを覚えていてくれたことが嬉しく感じられた。

 

「そりゃ、覚えてるよ。だってなのはさんの秘蔵っ子でしょ?これからお世話になることだってあるだろうし」

「そんな、秘蔵っ子じゃないですよ。それに、むしろ私の方がクラインさんにお世話になっちゃうと思いますから」

 

冗談めかしたジルヴェスの言葉にシャルルは自然と笑顔を浮かべていた。

 

「…………ほら、やっぱり笑顔が似合う……」

「ふぇっ?ど、どういうことですか!?」

 

突然のジルヴェスの呟きにシャルルは素頓狂な声を上げる。

 

「あ、いや、何でもない。それよりどうしてここに?」

 

ジルヴェスは誤魔化すように違う話を振った。

 

「なのはさんが、心配だけど、仕事をサボれないからって、私を残して帰っちゃったんです」

「なんか、なのはさんらしいな」

「はい、そうですね。それに私は、まだ訓練生なのになのはさんとあんなに仲良さそうにしてるクラインさんがどんな方か気になって……」

「どんな、って、ティアナに言ったような人間だよ、俺は。自分の過去から抜け出すことも出来ない、そんな弱い人間なんだよ」

 

ジルヴェスは記憶の中に意識を飛ばしているようで、その顔はどこか悲しそうだった。

 

「だったら私もですね。私はただのふく……いえ、醜い、黒い感情を持ってるに過ぎませんけど」

「でもきっと、なのはさんがシャルルさんのことを正しく導いてくれるよ」

「クラインさんが、じゃなくてですか?」

 

少し、意地悪しようという程度の口調のシャルルに対し、ジルヴェスは真剣に答えた。

 

「俺は君のことを──」

 

だが、途中で言葉を切ってしまう。

 

「いや、何でもないんだ。俺なんかよりなのはさんの方が頼りになる」

「そうですかね。クラインさん、すごくカッコ良かったですよ。ランスター訓練生を助けたというか、身代わりになったというか。すごく憧れます。機会があれば私にも色々と教えてもらえますか?」

「……もちろん。俺なんかでいいならね」

 

少しの悛恂のあと、ジルヴェスは首を縱に振った。

 

「ありがとうございます。それじゃあ、私も帰ります。目を醒ましてすぐにたくさん喋らせてしまってごめんなさい」

「そんなことないよ。わざわざありがとう。それと、なのはさんによろしく言っておいてもらえるかな?」

「もちろんです。またお邪魔しますね。では」

 

そう言って、シャルルは帰っていった。




ここまで読んでいただいてありがとうございます。
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