リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
数日が経ったある日
「へぇ、こんなもんあるんだな」
朝起きてみると何やら騒がしく、その人だかりのもとに向かったところでジルヴェスは感心するような、驚いたような、そんな声音でイライアスに話しかけた。
「そりゃそうだろ。ここだって学校なんだから成績くらいは出すさ。ところで俺らはどれくらいだ? 1位かな、さすがにそれはないか……」
「……イライアスと一緒だとそれがありそうだからこわい。まぁ、俺は成績なんかには興味ないけどな」
バカバカしい、そんな言葉が続きそうな言い方をジルヴェスはする。
「まぁまぁそんなこと言わずに見に行こうぜ」
と、言うが早いかイライアスは成績が見れる位置まで移動する。すると…
「うそだろ………さすがにあり得ないだろ」
と、何かにショックを受けているかのような様子でいる。
「どうしたんだ、イライアス?」
「ジルヴェス、自分で見てみろ」
イライアスの様子を不思議に思ったジルヴェスが訊ねてみると、自分で確認するように言われる。そこで、彼も自分で見てみることに。
「マジか…」
そして、彼もまた驚きを露にした。
「信じられないよな? だって1位だぞ、1位」
そう、1位なのだ。
ジルヴェスは正直信じられず、夢オチではないかと思って色々してみたが、どうやら現実であることを認めなくてはいけないようだった。
実を言えばジルヴェスは内心、先日の訓練の一件で自分だけでなく、コンビとしても評価が落ちているのではないかと考えていた。
彼自身は成績に関心はさしてなかったが、イライアスがそういうものを気にするため、自分のせいで成績を落としてしまうのはなるべく避けたかった。
「……なんか嬉しそうだな。ジルヴェス、実はお前も1位がとれて嬉しいんだろ? 成績なんかに興味ないなんて白々しい嘘をつきやがって」
ジルヴェスがほっとしたような表情を浮かべているのを見て、イライアスはそれを茶化す。
「別に、1位だったのが嬉しいわけじゃないけど、でもやっぱり評価してもらえるってことは嬉しいからな。それにこの前の訓練でしくったから、それでイライアスの足を引っ張るのは悪いからさ」
「別に、そんなこと気にすんな。お前が何を恐れてるのかも分かってる。時間をかけていいんだよ。それにさ、ちょっとしくっても1位なんだ、もっと気楽に行こうぜ」
「ああ、そうだな」
イライアスの言い方には多分に語弊があるように感じられたが、ジルヴェスは指摘するのは止めた。
「わたしたち、どれくらいかな」
一方その頃、スバルとティアナも成績の確認にやって来ていた。
「そうね、どっかの誰かさんのせいで出遅れたけど、最近は怒られてないし、まあまあいいとは思うんだけど…でも、見えない…」
ティアナが背伸びして、人だかりの後ろから見ようとするも、当然見ることは叶わない。
「あ、わたしここからでも見えるよ。ちょっと待ってね」
そう言ってスバルは、目を凝らしてみる。
「…………32号室、総合3位!」
「………やった。総合3位、これならトップも狙える!」
ティアナはスバルの言葉を聞いて喜ぶ。本当はもっとその嬉しさを表したいところだったが、周りの目を気にするティアナは言葉にするだけだった。それが限界だった。
「だね」
「頑張ったかいがあったわ。あんたもよかったじゃない」
「うん!ランスターさんが色々と教えてくれたからだよ。ありがとう!」
「…これからも、この調子で頑張りましょ」
二人がこれまでの成果を感じ喜び、そしてこれからのことに気持ちを向けていると、ある一角から話し声が聞こえた。
『………………あの子、士官学校も空隊も落ちてるんでしょ? 格下の陸士部隊ならトップ取れると思ってるのかしらね。しかも、相方は陸士士官のお嬢だしね。あの子たち、恥ずかしくないのかしらね』
それはまるでティアナとスバルのことを言っているように聞こえて、ティアナは腹を立てていた。
「ちょ────」
「ランスターさん、行こう」
ティアナが陰口のようなものを叩いている少女たちのもとに行こうとしたところで、スバルに腕を掴まれた。
「ねぇ、今の聞こえたでしょ?」
「ううん、何も。いいから行こう」
そして、腕力でスバルに勝てないティアナはそのままスバルに連れられその場を後にした。
「………トップも狙える、ね……悪いがそれは無理だよな、ジルヴェス?」
イライアスはニヤっとした笑みを浮かべながらそんなことを言う。
「どうしてだ?」
ジルヴェスは唐突な言葉に面を食らっている。
「いや、だってトップは俺らだからだ。そして、俺はトップを譲る気は全くない!」
「そうは言うが、成績に興味のない俺が頑張れば俺らの成績を落とすなんて楽勝だぞ?」
そして、今度はジルヴェスがニヤっとしたえ笑みを浮かべる番だった。
「…………お願いだからそんなことで頑張らないでください」
「ははは、冗談だよ」
「ならいいんだが…」
「んじゃ、そろそろ行くか」
「そうだな」
互いにそれで満足したのか、二人はさっさとその場を離れていった。
「言われっぱなしなんてダメじゃない! 間違ったことを言われた。それは正さなきゃいけないもの」
そこそこ進んだところでティアナはスバルの手を振りほどいて、強く言った。
「うーん、わたしはそうは思わないかな。だって、あんなのただの憎まれ口の類でしょ? 相手するだけ馬鹿らしいよ。それに、ずっこけコンビの成績がよくて頭にきてただけだと思うし……」
だが、スバルはティアナの強い口調にも、いつもならたじろぐのに、このときばかりは一切動揺せずに食ってかかる。
「誰がずっこけコンビよ? 誰が?」
だが、スバルの言葉の一部が聞き捨てならなかったのか、ティアナは凄む。
「そ、それはわたしだけの責任。だけど、ランスターさん、あの子たちが言ってたようなことなんて、思ってないでしょ?」
「…………さぁ、どうかしらね」
ティアナの反応はそっけなく、はぐらかすようなものだったが、スバルはそれを肯定だと受け取った。
「………………ランスターさん、本当は士官学校とか、空隊に入りたかった。でもダメだった。まぁ、陸士部隊なら楽勝、そんなことを思ってここに入ってきたの?そんな気持ちでこれまで訓練してきたわけじゃないよね?」
「……なんでそんなことあんたに言わなきゃいけないのよ」
「教えて、ランスターさん。今は仮とは言えコンビなんだもん。だから、私はランスターさんの努力してる姿を見てきた。その姿を私は凄いな、って思ったし、尊敬もしてる。だから、あの子たちの話は違うんだって分かる。それに、私にはパートナーであるランスターさんのプライドを守る役目がある……………と思うんだけど」
最後、自信がなくなってしまったのか、尻すぼみになってはいたが、スバルは彼女の正直な気持ちをティアナにぶつけた。
「……………落第は事実よ。両方とも落ちてあたしはここにいる」
ティアナは諦めたように語り出した。
「けど、今いるここをそんな風に卑下するほど腐ってないっ。そりゃ、いつかは空にあがるだけの実力を付けたいとは思ってるわよ。でも、今はちゃんと誇りを持ってここにいる。あたしの今の目標はここをトップで卒業して、陸戦Aランクまではまっすぐに駆け上がることだもの」
そして言い切ったとき、ティアナの表情は心なしか清々しいものに見えた。
「じゃあさ、証明していこうよ。陸戦でもすごいところ見せてさ! そしたらみんな認めてくれる、むしろ頼られたりするかも!」
「………はぁ、アホらしいわね、まったく。そんな甘くはないわよ。でも、実力で黙らせればいいってのはそうだわ。気にしないようにするわ」
ティアナはスバルの言葉に苦笑を浮かべていた。
「ホントに!?」
「ホントよ。でも、あんたお嬢だったのね」
「まぁね………そうだ! シューティングアーツやらない?」
まるで良いことを思い付いた、とでも言うように表情を輝かせてティアナに問いかけた。
「えー? いいわよ、そんなの」
しかし、ティアナはめんどうだといった感情丸出しで拒否した。
「基本のパンチとキックだけでもいいから~」
「だから、馴れ合う気はないんだって言ってるでしょ」
尚も食い下がるスバルに、ティアナも少し戸惑っていた。
「馴れ合いじゃないよ。自分の知らないことをやってみる知的好奇心を満たすための経験と学習だよ! で、基本の構えはこうでね───」
「って、人の言うこと聞きなさいよ! …………はぁ、仕方ないちょっとだけよ?」
結局、ティアナが折れる形となってしまった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m