リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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かなり時間が飛んで、もう、訓練校は卒業してます。





訓練校卒業編
第31話 桜色の卒業旅行


 

 

 

 

 

「……はぁ………………居心地が……」

 

ジルヴェスは今、車の中なのだが、それは普通の車ではなく 所謂(いわゆる)リムジンというやつで、車内はそれなりに広々としている。

けれど、彼は現在進行形で居心地の悪さを感じていた。

 

「……だってな……」

 

そう言いながらぐるりと車内を見回すと目に入ってくるのは、久し振りの再会にハイテンションで喜びを共有している少女3人と、窓に張り付くように外を眺めている少女の合計4人だった。

実際、車に乗り込む前に待ち合わせ場所に行ったときにはジルヴェスが疎外感を抱くに十分な状況に置かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

----なのはがジルヴェスとシャルルを引き連れて待ち合わせ場所に到着するとすでに約束の相手はその場に居た。

 

『なのは、来たわね』

『なのはちゃん、久し振り』

『アリサちゃん、すずかちゃん、お待たせ』

 

なのははとびきりの笑顔でその2人の元に駆けていく。

ジルヴェスとシャルルのことを忘れて…………。

 

『やっぱり、フェイトとはやては駄目だったか……』

 

なのはと共に来ているジルヴェスたちに一瞬視線をやってアリサは呟いた。

 

『うん……2人とも今の仕事から手を離せないらしくて』

 

なのはもアリサの呟きに首を縦に振る。

 

『そうだよね……でも、2人とはこの前に会ったからそれで満足しないといけないよね。この前はなのはが居なかったわけだし』

 

すずかは自分を納得させるようにして呟いた言葉になのはとアリサは頷いている。

 

『…………あれ、ジルヴェスとシャルルが居る?』

 

そして、突然、ジルヴェスとシャルルの姿を確認したようにアリサは驚きを露にした。さっき、彼らのことを視界に収めていたはずであるのに、だ。

 

『……アリサさん、さっきから居ましたよ、俺ら…………』

『ご、ごめん』

『いえ、別に気にしてませんから……』

 

ジルヴェスはこんな感じになるだろうことは分かっていたからこのときは大して何も思ってはいなかった----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ジルヴェスは朝のことを思い出してため息を吐いた。

 

「…………どうして、俺がここに……」

 

誰に言うわけでもなく(こぼ)した彼の呟きに答える者は当然居ない。

そして再びため息を吐く。

 

「……わぁ、すごい………………ジルヴェスさん、すごいですよ!」

 

そんなジルヴェスの様子はお構いなしに、というか、どちらかというとジルヴェスと共に疎外感を抱いていててもおかしくはないはずのシャルルは車窓に完全に体を向けるように座席に膝立ちして、窓に張り付くように外を眺めている。その様子は初めて見るものに心を奪われた子供そのものといった具合だった。

そして、興奮したようにジルヴェスに話しかけてきている。しかも、視線は窓の外に釘付けなまま、ポンポンと彼の肩を叩いて。

 

「シャル、ちゃんと座ってないと危ないぞ」

「あ、はい……でも、桜綺麗だから……」

 

そう言いながらも、やはり視線は窓の外に向いている。

 

「あ、ああそうだな……桜、綺麗だよな」

 

ジルヴェスはそんなシャルルの様子に若干置いていかれつつ言葉を返す。

 

「はい、綺麗ですよね!ジルヴェスさんは桜を見て感動しませんか?」

「そうだな……正直、あんまり、かな……」

 

ジルヴェスは苦笑いを浮かべ、正直に答える。

本音を言えば、桜自体には趣も感じ、人並みに感動もしてはいるが、現状への戸惑いと、何となく感じる、自分がこの場に居る必要のあるのかという自虐的な疑問で、桜もその他の風景も心から楽しめていないのだった。

 

「えー、もったいないですよ。でも、これからもっとすごいところに行くんですよね、だから、きっとジルヴェスさんも感動しちゃうかもしれませんよ?」

 

ニコニコと弾けるような笑顔をシャルルは浮かべている。

 

「シャルちゃん、桜見るのは初めて?」

 

彼らの会話が聴こえていたのだろう、楽しそうに話をしていた3人の内の一人、紫色の長髪にカチューシャをした、その3人の中では一番落ち着いた雰囲気を纏った少女、月村すずかがシャルルに話しかけた。

 

「はい、すずかさん!誘っていただいてありがとうございます」

「ううん、いいのよ。こういうのは人数が多い方が楽しいんだから」

 

すずかは優しく微笑みかける。

 

「ジルヴェスくんは楽しみじゃない?」

 

そして、今度はジルヴェスに視線を向けて、そう訊ねた。

 

「あ、いや、楽しみではありますけど……」

 

年の近い女性たちの中に自分一人という状況に居心地の悪さを感じている、なんてこと言えるわけもなく、結局、そんな微妙な答えしかジルヴェスは返せないのであった。

 

「そう?せっかくなんだから楽しまないと損だよ」

「そう……ですね……せっかく誘っていただいたわけですしね」

 

ジルヴェスは言い様のない不安を抱えながらもとりあえず、笑顔を返すことだけは出来た。

ただ、ジルヴェスは、どうしてこんな状況にいるのかと、ふとその元凶たる人物に少しばかり非難の視線を送った。

 

「…………ん?ジルヴェス、どうかした?」

 

けれど、彼女はジルヴェスの戸惑いなど知りもせず、首を横に傾げている。

 

「……いえ、何でもないですよ……」

 

そんな様子にジルヴェスはため息を吐いて誤魔化す。

そして、今の状況に至ったその原因を思い返していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

----訓練校を卒業したその日、部屋で荷物の整理をしていると不意に通信が入ってきた。

確認してみると、意外なことに相手はなのはだった。

 

「はい、ジルヴェスです」

『あ、良かった、出てくれた。突然だけどジルヴェス、卒業おめでとう』

「ありがとうございます」

 

なのはからのお祝いの言葉にジルヴェスは画面越しに会釈した。

 

『ううん、どういたしまして』

「それで……どうかされたんですか?」

 

ジルヴェスは、まさかなのはが高々卒業のお祝いのためだけにわざわざ連絡してきたとはさすがに思わず、何事かと、内心不安に思っていたりする。

 

『うん、大したことじゃないんだけど、この春に地球に帰省するんだ。だからジルヴェスも一緒にどうかと思って』

「え……?」

 

訊ねて返ってきた答えはジルヴェスにとっては(いささ)か唐突なもので、彼は驚きを隠せずにいた。

 

『あれ、もしかして都合悪い……?』

 

そして、驚いているジルヴェスの様子になのはは少しずれた心配をしていた。

 

「いえ、そういうわけじゃないんですけど……その、何で俺を誘うんですか?」

 

ジルヴェスはせっかく実家に帰れ、そして地球での友人にも会えるせっかくの機会に、どうしてわざわざ自分なんかを連れていこうとするのか理解出来なかった。だから戸惑っていたのだが、なのはにとってはそんなことすら、考えるまでもないことのようだった。

 

『卒業のお祝いをしたいなって思ったからだけど……』

 

さらに、なのはが言った一言にジルヴェスは戸惑いを消すことはもはや無理だった。

 

「わざわざ、どうしたんですか?」

『…………もしかして迷惑、だったかな……そう、だよね……これから次のお仕事のための準備だもんね……ごめん、邪魔しちゃったね』

 

先ほどから誘う理由を訊ねてばかりいるジルヴェスに、なのはは彼が本当は嫌がっていて、けれど遠慮して言えないのではないかと思った。

だから、彼女は申し訳なさそうな、けれど寂しそうな表情を浮かべて通信を切ろうとした。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

ジルヴェスは慌てて、そんななのはを呼び止める。

 

「別に迷惑だなんて思ってませんって。ただ、せっかくの休暇なのに俺なんかを誘うのはどうしてなのかな、ってそう思っただけですよ」

 

実際、迷惑に思っていないのは事実だったが、本音を言ってしまえば、つい先ほどの寂しそうな姿に罪悪感を抱いてしまったのだった。

しかも、断ればなのはは悲しみそうだったし、なぜだか、なのはのことを悲しませたくないと彼自身思っていたのだった。

 

『……本当に?』

「ええ、本当です」

『良かった……』

 

ほっと安堵のため息を吐くと共に見せた安堵からくる笑顔にジルヴェスは一瞬目を奪われてしまった。

 

「それじゃあ詳しい話を聞かせてもらえますか?」

 

けれど、すぐさま気を入れ直してなのはに話の続きを促した----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………あれ、今思い返して見ても、俺が必要な理由が見当たらない……」

 

ジルヴェス的に、ここに居る理由に思い至れず一人で驚いてしまっていた。かといって、そう自分の中で結論付けたところで、この場から帰ってしまう、などという選択肢はないのだから、ただため息を吐くしか今の彼にやることはなかった。

 

「……なのはさんの考えることはよく分からない……けど、シャルは何であんなに楽しそうにしているんだ?」

 

そして、未だ外の景色に目を輝かせている少女の姿にジルヴェスは首を傾げた。

 

「…………いや、そうか。単純になのはさんと旅行出来るのが嬉しいのか」

 

けれど、すぐにその理由に納得する。

 

「ジルヴェス、あんたさっきからブツブツ何呟いているの?怪しいわよ」

「え!?」

 

ジルヴェスが一人言を言っていると、そんな彼にまたも話かける者が。

不意にかけられた声に、ジルヴェスは驚いて声を上げていた。

そして、その声の(ぬし)を見ると、金髪の気の強そうな少女、アリサ・バニングスだった。

 

「何驚いてるのよ。さっきから何か一人暗い顔して。せっかく楽しい旅行なんだから笑ってなさいよ!それとも何か不満でもあるの?」

 

アリサは少々上から目線の言葉で言ってはいるものの、考え事をしているジルヴェスに彼女なりの気遣いをしているのだった。とは言え、辛気くさい顔をするジルヴェスにイラッとしているのもまた事実ではあったが。

 

「いえ、別に不満はない、ですよ。ただちょっと悩みみたいなものがあっただけです」

 

結局、今度もジルヴェスは居心地が悪い、なんてことは言えずに適当にはぐらかすだけだった。

 

「……そう、ならいいわよ。でも、これから楽しい旅行にするんだからこの旅行の間は悩み事で暗い顔するのはなしよ。分かったわね?」

「はい。すいません、アリサさん」

「謝らなくて、いいわよ。……まったく……」

 

殊勝に謝るジルヴェスにアリサはほんの少し照れていた。








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