リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第32話 部屋割りは割と重要

 

 

 

 

 

何だかんだ色々とあった、主にジルヴェスが自身の存在意義に悩む長い時間があったわけだが、そんなことは関係なしに一行を乗せた車は目的地に着いた。

 

「わぁい、着いたー!」

 

シャルルは車が止まると同時にドアを開け、飛び降りる。

そして、喜びを表すようにそう叫んだ。

 

「シャル、ちゃんと荷物持ってね」

 

そんなシャルルに苦笑いを浮かべながらなのはは注意するようにそう言った。

シャルルは、「えへ、すいません」と言いつつ、トコトコと車のところまで戻って自分の荷物を取る。

 

「シャル、もう少し落ち着こうな」

「うぅ……」

 

そんなシャルルの様子を見たジルヴェスが苦笑と共に漏らした呟きにシャルルは顔を赤らめて、俯いてしまった。

 

「じゃあ、とりあえず荷物を部屋に置きに行きましょ」

 

そして、アリサの声かけで彼らは、この旅行で泊まる宿へと足を向ける。シャルルも頭を2、3度振って気持ちを切り替え、ついていく。

ちなみに、彼らが泊まるという宿は山奥の隠れた宿であり、その存在自体知っているのはそれこそ全国でも一握りの限られた者たちだけというほどの所である。

とは言え、その事実を知っているのはこの中ではアリサとすずかの2人だけなのだが。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぇぇ…………」

 

彼らに割り当てられた部屋へと着くとシャルルは圧倒されたようにため息を()いていた。

 

「すごいわよね、ここ。私も初めて来たときは驚いたわよ」

 

見るもの見るものにその都度反応を示しているシャルルを微笑ましげに見詰めながらアリサは彼女に話しかける。

 

「はい……あっ、お部屋から満開の桜が見れるんですね……!」

 

シャルルはアリサの言葉に頷きながら部屋を見回し、そして窓の外の桜を見て、そう言葉にする。シャルルは行きの道中で散々桜を見たというのに全く飽きた様子もなく、変わらずに感動を覚えていた。

そして彼女の言う通り、その部屋からは一面に満開の桜が見え、また、まだ今は時間ではないが朝方になると山の向こう側に朝陽が昇ってくるのが見える。

 

「そうよ。この部屋は最高よ。桜がただ見れるだけじゃなくて、部屋風呂としてはちょっと小さいけど露天風呂もあるし、どうしてかは分からないけどちょっとした娯楽を楽しめる部屋まであるもの」

「ロテン風呂、ですか?」

 

シャルルは聞き慣れない言葉に首を傾げている。

 

「露天風呂っていうのは、お風呂がお風呂場にあたる部屋にあるんじゃなくて、屋根の無いような場所にあって、空とか、周りの景色とかを楽しみながら入れるお風呂のことだよ」

 

そんなシャルルになのはが軽く「露天風呂」について説明をしている。

 

「へぇ、そんなものがあるんですか。地球ってすごいところなんですね」

「シャルルと一緒に出掛けると楽しいわね。いつだって何にでも反応してくれるし」

 

シャルルの呟きを聞きながら、アリサは彼女に向けてそう言った。

 

「その言い方はなんかバカにされてる気分です!」

 

ただ、そのアリサの言葉にシャルルは頬を膨らませて可愛らしく怒ってみせる。

 

「……別にバカになんてしてないわよ。ただ、シャルルは素直だと思ってるだけよ」

「ホントですか?」

 

疑り深くアリサを見詰めながらシャルルは問いの言葉を重ねる。

 

「も、もちろんよ……」

 

アリサは少し気まずげに視線を外しつつ肯定の答えを返す。

 

「…………なら良いですけど……」

 

シャルルはとりあえず納得した。

 

「いや、シャルは時々抜けてるからな、そう思われても仕方ないぞ……」

 

けれど、そこで話を()めずにジルヴェスはポツリとシャルルにとって気になる言葉を呟く。

ジルヴェスはそれまでの居心地の悪さからくるストレスで、つい意地の悪いことを言ってしまったのだった。

 

「うぅ…………ジルヴェスさん、ひどいですよ……」

 

シャルルはジルヴェスの言うことを否定することも出来ず、ションボリしてしまう。

 

「あ、いや、シャルのそういうところ嫌いじゃないけどな」

「ホントですか!じゃあ、許します」

 

それを見て、ジルヴェスは慌ててフォロー(?)を入れたのだが、その効果は彼の想像を遥かに超えるものであったようで、途端にシャルルはご機嫌になる。

 

「………………シャルは素直過ぎないか……?」

 

そして、ジルヴェスはシャルルには聞こえないくらいの音量で呟きを漏らした。

 

「それで、俺の部屋はどこですか?」

 

こほん、と一つ咳をして、そこで思い出したように自分の部屋に関して訊ねる。というのも、ジルヴェスは彼女たちの荷物も持っていたから、この部屋にまで来ていたのだが、いい加減自分の荷物を置いて一息つきたいと思っていたところだった。

 

「何言ってるのよ、この部屋に決まってるじゃない」

 

けれど、アリサはこいつ大丈夫か?というような表情を浮かべてジルヴェスの問いに答えた。

そして、対するジルヴェスはジルヴェスで、アリサに向けてこいつ大丈夫か?という視線を向けている。

 

「はい?」

 

ジルヴェスは正気かという問いを言葉に込めてアリサに向けて疑問の声にならない声を放つ。

 

「だから、あんたもこの部屋に泊まるのよ」

 

けれど返ってくる言葉は先ほどのものとは何の変化もしないものであった。当然であるが……。

 

「何でですか?」

 

しかし、ジルヴェスとしてはやはりさすがに彼女らと相部屋というのは極力避けたいことであるから、何とかそのための糸口が無いかと食い下がる。

 

「わざわざあんたのためだけに部屋を取るなんてもったいないじゃない」

 

言う人が違えばただのケチな発言であるが、今この場でこう言ったのはご令嬢と言っても差し支えのない少女であり、それが故に何の理由もなくそんなことを言う彼女のその言葉をジルヴェスは全くもって信じていなかった。

 

「……嘘ですね。何を企んでいるんですか?」

 

だから、鎌を掛ける意味合いも込めてそんな問いを投げ掛ける。

 

「何?私の言うことが信じられないわけ?」

「だって、アリサさんがもったいないとかおかしいじゃないですか!」

「それは偏見よ!」

 

ジルヴェスの正直な言葉にアリサは大きな声を上げていた。

 

「……でも、考えてもみてください。みなさんの中に男一人で、しかも同じ部屋だなんて普通おかしいですよ!」

 

このままではいつまで経っても何も変わらないと悟り、ジルヴェスは言いにくかったが、本音の部分を言う。

 

「……でも、せっかく旅行に来てるのに一人だけ違う部屋なんてかわいそうだもの、だから私は気を遣って……」

「…………」

 

ジルヴェスとしては気を遣ってくれるなら、もう少し違うところに遣って欲しいと正直思ったけれど、さすがにそんな言葉をわざわざ気を遣ってくれたという目の前の少女に言うほどジルヴェスはアホでもなかった。

 

「…………余計なお世話だったわね……」

「いや、別にそこまでは……」

 

ジルヴェスの反応にアリサは寂しそうな反応をするものだから、ジルヴェスはまたも罪悪感を抱く羽目に。

 

「アリサ、ジルヴェスくんの言いたいことも分かるし、今回は私たちが悪いよ。拗ねてないでちゃんと謝らなくちゃ」

 

それまで、2人の話を聞いていたすずかは、拗ねてしまったアリサを(いさ)めるように声をかけてきた。

 

「…………そうね。ジルヴェス、ごめん、勝手なことして」

 

そして、すずかの言葉に、アリサは素直にジルヴェスへと謝罪の言葉を述べた。

 

「いえ、別に謝ってもらう必要は…………さっきから俺、文句ばかり言ってますね……すいません」

 

ジルヴェスは自分の今までの行動やら発言を振り返って、何とも不愉快な振る舞いを見せてきたことに気付いて、ジルヴェスも謝罪の言葉を述べた。

 

「そんなことないわよ。さっきの言葉で何でずっとあんたがつまらなそうな顔してたのか分かったわよ。私たちの配慮が足りなかったわ」

 

けれど、謝罪の言葉も、今だけはただ、アリサの胸にぐさりぐさりと刺さるばかりだった。

 

「いえ----」

「はい!謝り合うのもじめじめしちゃうのもこれまでで終わり!せっかくの旅行でしょ?楽しくしなくちゃ。ね、アリサちゃん?」

 

またジルヴェスが何かを言おうとして、けれど、それを遮るようになのはが口を挟んでくる。そして、持ち前の笑顔でそれまでの重々しい空気を吹き飛ばすおまけ付きだった。

 

「そ、そうね。とりあえず、ジルヴェスもこの部屋だからよろしく。幸いにもこの部屋はかなり広いからどうしてもジルヴェスが気になるならそれなりに対策のしようもあると思うわ」

「そう、ですね。気を取り直して楽しみましょう」

 

アリサもジルヴェスも依然として少々ぎこちない様子ではあったが、そう言って笑顔を見せる。

そんな2人になのはも満足そうに微笑んでいた。







ここまで読んでいただきありがとうございます。
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