リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第37話 助けを求める少女の叫び (過去回想編)

 

 

 

 

ジルヴェスがレイナに、そしてアイクに自分のことを話してからしばらくが経った。

ジルヴェスがアイクの手伝いをするようになって、この頃にはジルヴェスもアイクたちにすっかり心を開き、日々を楽しく過ごしていた。

特にレイナと過ごす時間は彼の中で特別なものにすらなっていた。

彼はレイナたちのおかげですっかり立ち直っているようだった。

 

『ジルヴェス、今日は隣の街までちょっとおつかいを頼まれてくれないかい?』

 

この日の朝、いつものようにアイクの仕事を手伝うためにアイクの元に行くと、そのように言われた。

ジルヴェスはよろこんでそのおつかいを引き受け隣街へと出向き、今に至る。

 

「意外と早く用事終わっちゃったな」

 

ジルヴェスの呟きの通り、案外おつかいには時間がかからず、すでに彼の足は家へと向いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほら、レイナ急ぎなさい。早くしないとジルヴェスが帰ってきてしまうよ」

「え、嘘。ちょ、ちょっと待って」

 

その頃、レイナたちは何やらジルヴェスには秘密でこそこそと支度をしていた。

 

『もしもし、アイク。私だ』

 

そんな中、アイクに通信が入った。

 

「あ、ナゼルさん。もしかしてもうジルヴェスは帰してしまいましたか?」

『ああ。ちょうど今帰したところだ。まだ早かったかな』

「いえ、ダメならダメで仕方ないですから」

『そうか。それにしても彼はなかなか良い子だな。素質も十分だが、何よりも良い()をしている』

 

アイクにナゼルと呼ばれた通信の相手は楽しげに話をする。

 

「ええ。ジルヴェスは、すごくしっかりしていますよ」

 

アイクもにこやかに相づちを打っている。

 

「お父さん!お話するのも良いけど、今は準備が先でしょ!?」

「おお、ごめんよ。ナゼルさんすいません、今日はこの辺で」

『そうだね、レイナちゃんに叱られちゃうからね』

 

がはは、と一笑いしてナゼルは通信を切った。

 

「急がないと本当にジルヴェスが帰ってきてしまうね」

「そうだよ。もう。驚かせてあげるんだから途中で帰ってきちゃダメなんだよ」

 

レイナは心なしか楽しそうにしている。そして、先ほどから忙しなく動かす手を休めようとはしない。

そんな彼女を父であるアイクは微笑ましげに見詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………そう言えばナゼルさんが街に図書館があるって言ってたな。行ってもいいのかな…………うん、いいよね。すぐに帰ってきなさいとも言われてないし、少しくらいなら……」

 

そう自分を納得させて、ジルヴェスはこの街(隣街)の図書館へと足を運ぶ。

 

「……うわぁ…………」

 

目的の図書館に着くと、意外なその大きさにジルヴェスは息を呑んでいた。

 

「この建物の中の全部に本が並んでるのかぁ……」

 

そして、実際に中を見る前からその瞳を期待で爛々と輝かせている。

 

「よし…………入ろう……」

 

一言呟くと、ジルヴェスは扉を押し開けて中へと足を踏み入れた。

 

「おや、初めて見る顔だね……」

 

すると、入ってすぐのところで初老の男性にそう声を掛けられた。

 

「あ、はい……隣街に住んでいて、今日初めてここに来ました……」

 

ジルヴェスは緊張しながらも失礼のないように言葉を返す。

 

「そうかい。ここは街が小さい割には蔵書も豊富だからね。たくさん見ていくといい」

 

そして、男性はジルヴェスにそれだけ言うと満足したのか、奥の部屋へと行ってしまった。

 

「本はいっぱいあるのか……」

 

ジルヴェスはそう呟くと、本が並ぶ棚へと歩みを進め始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、お父さん」

「何だい?」

「ジル遅いね……」

 

楽しそうに笑ってジルヴェスを待っていたレイナだったが、今は一転して心配するような、寂しそうな、そんな表情を浮かべている。

 

「そうだね、どうしたんだろうか……」

 

実際、ナゼルからジルヴェスが帰ったという連絡を受けてからすでに何時間も経っていた。さすがにアイクも心配を募らせていた。

 

「私、探してきても良い?」

 

心配で居ても立ってもいられなくなったのか、レイナはアイクにそう打診する。

 

「……そう、だね。もしかしたらどこかで迷ってしまっているのかもしれないからね。ただ、気をつけなさい」

「うんっ」

 

アイクはこのとき、何とも言えない、嫌な予感がしていたが、それは気のせいだとレイナを送り出した。いや、送り出してしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジル、どこ……?」

 

レイナは家から駆け出して、ジルヴェスが今日おつかいで行った隣街へ続く道を走っていた。

 

「…………せっかく今日はお祝いをしようと思って準備したのに……今日はジルと出会ってちょうど一年なんだよ……」

 

レイナは妙な胸騒ぎがして、早くジルヴェスを見付けなくてはいけないと焦りを感じていた。

 

「…………ぁ……」

 

けれど、レイナはしばらく走ると、はたと走りを止めていた。

それどころか、その場に立ち(すく)み、足を震わせてすらいた。

そこで彼女が見たのは明らかに害意を持ってこちらへ、もっと言えばレイナの住む街へと向かって闊歩する幾人もの男たちだった。

 

「…………怖い……」

 

そして、レイナはその男たちに言い知れぬ恐怖を感じていた

 

「……おい、そこの嬢ちゃん。ちょっと言いか?」

 

彼女が動けずに居ると、その内の一人がレイナに気付いて、話し掛けてきた。

 

「……………………」

「…………別に怖がらないでくれよ。俺たちただ人を捜してるんだよ。そうだな、ちょうど君くらいの小僧をさ」

 

レイナが何も言えないでいると男たちは彼女に近付いてそう言った。

そして、レイナに向けて一枚の写真を見せた。

 

「…………っ!」

 

それを見て、レイナは危うく大きな声を上げてしまうところだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

----そこに写っていたのは何を隠そう、ジルヴェスだったのだから----

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この少年を知ってるかな?」

「…………ううん。し、知らない……」

「いや、こいつは知ってるな。この小僧を知ってるか?」

 

けれど、レイナは男からの問いかけにも辛うじて「知らない」と返す。しかし、その様子に別の男が不信感を抱いたようで、再び同じ質問が繰り返された。しかも、先ほどよりも威圧的な態度で。レイナは恐怖で泣いてしまいそうだったが、ジルヴェスのことを知っていると言えば、自分が酷い目に遭う、そしてジルヴェスまでも危険な目に遭うと思った。だからどうにか、勇気を振り絞って嘘を吐き続けていた。

 

「…………ふんっ。こいつは簡単には口を割りやしねぇな。ちょっとくらい乱暴にしたって構わない、小僧の居所を聞き出せ」

 

この男たちのリーダーとおぼしき男がそう指示を出すと、周りに居た男たちは下衆な笑いを浮かべ、レイナに一歩一歩近付いてきた。

 

「…………嫌だ……助けて……」

 

先ほどまでよりも濃い恐怖をレイナは感じ、今にも泣き出してしまいそうだった。そして心に浮かぶのはただ一人。

 

「…………助けて、ジル!」

 

レイナが大切に思う少年の笑顔だった。







ここまで読んでいただいてありがとうございます。



今さらながらに気付いたんですけど、この小説のタグに「オリキャラ少なめ」みたいなの付けてたんですけど、何故かたくさんのオリキャラたちがモブ含め出てきているという不思議。
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