リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第39話 少女たちの絆

「ジルヴェス、おはよう」

「おはようございます」

 

夜は明けて、なのはたちが起きてきた。

 

「ジルヴェスくん、おはよう」

「…………はい、おはようございます」

 

そしてもちろんすずかも起きてきて、けれど、昨日の夜に話をしたときのような雰囲気は微塵も感じさせることはなかった。

ただ、ジルヴェスの方には若干戸惑いがあったが。

 

「あれ、ジルヴェスとすずかちゃん何かあったの?」

 

その若干の違和感に鋭くなのはは気付く。

 

「いえ。別にないですよ」

「そう?ならいいけど。そう言えば、朝ごはんは何かな?お腹空いちゃった」

 

なのはは別段気にしていないのか、すぐに違う話題を振る。

 

「んー、そろそろ中居さんが運んできてくれると思うけど」

 

アリサは時計を見ながらそう答える。

 

「そっかぁ、とりあえず顔洗っちゃおうよ」

 

なのはは、そう言ってすずか、アリサ、シャルルを連れて洗面所へ向かった。

 

「………………なのはさんたちを信じてみよう」

 

ジルヴェスは誰に言うわけでもなくそう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「わぁ、美味しそう」

「そうね」

 

しばらくすると待ちに待った朝食が運ばれてきた。

朝食の内容は、ご飯、味噌汁、焼き魚、納豆、漬物、煮物と、the和食といったものだった。

 

「なのはさん、この茶色い豆、みたいなのは何ですか?」

 

シャルルは納豆を指さしてなのはに訊ねている。

 

「それは、納豆って言って、何て言えばいいかな……」

 

そして、そう呟いてなのははジルヴェスに目線を向ける。

 

「いや、俺に言われても困りますけど……」

 

ジルヴェスは苦笑を浮かべる。

 

「だ、だよね……にゃはは。納豆は、好き嫌いが分かれやすい食べ物だけど、一遍食べてみるといいよ」

 

そう言うとなのはは、納豆に醤油を垂らしてかき混ぜ、それをご飯に乗せる。

シャルルもそれを見て、真似するかたちで納豆を食べる用意をした。

 

「…………あむ……もぐもぐ…………うん、美味しいです。私はこれ、好きですよ」

 

そして一口食べるとよく噛んで、そう感想を述べた。

 

「それは良かったよ」

「シャルは逆に嫌いなものないだろ?」

「そう言えばそうかもしれないです」

「それは良いことよ。好き嫌いがなければよく成長できるしね」

 

そう言ってアリサはシャルルに笑顔を向けている。

けれど一方で、すずかは一人、難しい顔をして黙り込んでいた。

 

「すずか?」

 

それに気付いたアリサが彼女の顔を覗き込む。

 

「え、ううん、何でもないよ。ご飯、美味しいよね」

 

すずかは慌てて笑顔を作った。

 

「……そう」

 

アリサは、これは何かあるなと思いはしたが、とりあえずは触れないことに決めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まだ10代も半ばの彼ら、お喋りをしながらだとしてもあっという間に食事は済んでしまう。

 

「美味しかったね」

「ええ。まぁ、もう少し量が欲しかったとは思いますけど」

「にゃはは、ジルヴェスは男の子だね。私は十分だったよ」

 

ジルヴェスの言葉になのはは苦笑を浮かべている。

 

「ところで、今日はどこに行くの?」

 

そこでなのははふと思い出したのか、今日の予定をアリサとすずかに訊ねた。

 

「そうね、あの山の向こうに湖があるから、そこに行こうと思ってたけど」

 

それでいい?とアリサは視線で他の4人に同意を求める。

 

「全然いいよ」

「俺も問題ないですよ」

「うん」

 

なのは、ジルヴェス、すずかはすぐに頷く。

 

「湖ですか…………泳げますかね?」

 

そしてシャルルは一人少しズレたことを言っていた。

 

「まぁ、あそこの湖はきれいだから泳げはするけど……」

 

本当に泳ぐつもり?と、その目がアリサの驚きを物語っていた。

 

「きっと楽しいですよ。みなさんも泳ぎましょうよ」

 

そう語るシャルルが楽しそうに笑っているのを見て、4人は和んでいた。

 

「じゃあ、とりあえず準備しちゃおっか」

「そうね」

「ちょっと待って」

 

各々準備しようとしたとき、すずかが声を上げてそれを止めた。

 

「どうかしたの、すずかちゃん?」

「…………その前に私から一つお話させてほしいの」

「何よ、早くしてよね」

「…………うん。あのね、なのはちゃんとアリサちゃんにはもう何年も秘密にしてたことがあるの…………」

 

なのはとアリサは、一体すずかの口からどんな言葉が出てくるのかと興味半分、不安半分といった表情を浮かべている。

 

「……私はね、普通の人間じゃ、ないの。吸血鬼、なの」

 

すずかはそう言い切って、そして堅く目を閉じた。

なのはやアリサの反応を見るのが怖い、というように。

 

「は?何言ってんの?」

 

しかし、そんなアリサの言葉で恐る恐る閉じた瞳を開いて見たのは、呆れたような表情を浮かべるアリサと、いつも通りの笑顔を浮かべるなのはだった。

 

「まさかあんた、あたしたちがそれを知ったらあんたから離れるだなんて思ってないでしょうね?」

 

そして、今度はアリサの表情は軽い憤慨に変わってきた。

 

「言っておくけど、あたしにとってあんたは、月村すずかは、あたしの幼なじみで、いつも一緒に居る大親友なの。それ以上でもそれ以下でもない。それに、さっきあんたは普通の人間じゃないって言ったわよね。そんなこと言ったらなのはだって普通じゃないわよ。常識的に考えて魔法なんてふざけたもの使える人は普通じゃないわ。でも、だからってあたしの中でなのはを見る目が変わったなんてことない。むしろ、なのはが魔法っていう力を使って頑張る姿を見て、あたしは応援しよう、そしてあたし自身頑張ろうって思ったわ。いや、話がズレたわね。要は、なのはが魔法を使えるってことも、すずか、あんたが吸血鬼だってことも、あたしにとっては大差ないってことよ」

「アリサちゃん…………」

 

すずかはアリサの言葉に涙を浮かべていた。

 

「私も、アリサちゃんと同じ、かな。アリサちゃんに言われちゃったけど、私はほら、魔法が使えるし、それに、急にすずかちゃんが吸血鬼だなんて言われてもイマイチ実感沸かないから。でも、すずかちゃんにとってはなかなか言い出せないような重要なことだっていうことは分かるから、言ってくれて嬉しいよ」

「なのはちゃん…………ありがとう……」

 

昨夜、ジルヴェスと話したとき、なのはとアリサなら何の問題もなく受け入れてくれると自信があった。けれど、いざ話をしたら、もし拒絶されたら、という不安が鎌首をもたげ、すずかを襲っていた。それが、彼女たちの言葉ですっかり消え去り、安心感からすずかはポロポロと涙を流していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すずか、落ち着いた?」

 

しばらく泣いていたすずかだったが、さすがに泣き止み落ち着きを取り戻した。

 

「うん、ごめんね。でも、今言わないといけなかったから」

 

そう言ってすずかはまるで、次は君の番だよ、とでも言いたげな瞳でジルヴェスを見ていた。

 

「あたしはさっきも言った通り、そんなこと気にしてないから。それよりも、早く出かけましょうよ」

「……そう、だね。準備しちゃおう」

 

そんな2人の会話が合図になったのか、それぞれ身支度を整え始めた。

 

「………………すずかさん、俺決めましたよ。どうするか」

 

ジルヴェスはすずかが一人になったところを見計らい、そう声をかけた。

 

「……そう。どうするの?」

 

すずかは落ち着いた声音で問いを返す。

 

「俺はなのはさんを信用します。そして、なのはさんに謝ります」

「分かった。だったらそのための機会は私が整えてあげるよ」

「え…………」

「だから安心してね」

 

そう言って、すずかは楽しそうに笑っていた。








ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
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