リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
今日の、剣技格闘班の訓練は、訓練生同士で相手に攻撃を当てるというもの。
『次は、クライン訓練生とルイス訓練生、やってみろ』
そして、とうとうジルヴェスの番がきた。
「ルイス、よろしく」
「あぁ、ジルヴェスこそ。あと、変な遠慮すんなよな」
先日の一件を知っているから、ルイスは気を遣う。
「遠慮じゃない。けど、頑張ってみるよ」
ジルヴェスがそう言ったところで、教官から指示が出た。
『それじゃあ、始め!』
それを受けて二人は動き出す。
ジルヴェスは合図と同時に踏み出し、先日と同様に肉薄する。それをルイスは右に跳んで回避した。そして受身をとり、跳んだ勢いを活かして今度はルイスがジルヴェスに詰め寄ると、ルイスはすれ違いざまに下段の構えから袈裟懸けの要領で斬り上げる。
それをジルヴェスは、剣状のデバイスの峰に当てそこで相手のデバイスを滑らせ、受け流した。そしてそれと同時、ノーモーションで振り返り、ルイスを斬りつけた。ルイスは先の攻撃の勢いを殺しきれず、回避行動がとれなかった。
『…そこまで!』
攻撃が当たったのを確認して、教官は止めた。
『二人とも動きが非常に良かった。特に、クライン訓練生の最後の動きにはキレがあって素晴らしい。ルイス訓練生も、クライン訓練生の初撃の接近を見切り避けたことと、その動きの勢いを利用出来たことは素晴らしい。これからも自信を持って取り組んでもらいたい』
「「はいっ!」」
教官は内心、ジルヴェスがこの前のように攻撃を仕掛けることで心を乱してしまうことを懸念していた。けれど、それは杞憂だったと彼は思って
◇◇◇
「ロードカートリッジっ!でぇやぁぁ!!」
そう叫びながらスバルは滑り出す。
「でけぇのくるぞ、気を付けろ!」
「おうよ!」
サンドバッグを持つ訓練生の男子二人は意を決したように身構え、そして、そのサンドバッグを構える。
ゴンッ
ズサァァァッ
そんな音を立てながら、その訓練生たちはスバルのパンチの反動で後ろに滑っていた。
「「うわぁぁぁっ」」
「いってててて…。ちょっとは手加減しろよな、ナカジマ!」
「あはは、ごめん…」
スバルはというと、えへへ、と笑って謝っている。
「………おっ、まだミッド式との合流まで時間あるな。もう一周やるか」
「あ、じゃあわたしバック持ちやるよー」
「おう、頼むぞ」
スバルたち、近接格闘の班はそのあとしばらく同様のメニューをこなしていた。
◇◇◇
『今週の訓練はここまでっ!なお、週末の休暇中はグラウンド整備が入るため自主トレは全面禁止だ。自主トレしてるやつらもたまには休めよ』
「「「「はいっ」」」」
訓練生たちは威勢の良い声で答えて解散した。
◇◇◇
「………うっ……はぁっ……はぁっ……」
訓練が終わってから、ジルヴェスは周りに誰もいないことを確認して、座り込んだ。
その顔は以前に増して辛そうであった。
「……このままじゃダメなのに…強くなるためにここにいるのに………『あいつ』に顔向け出来ないじゃないかよ…」
彼は何かに苦しんでいるようだった。
◇◆◇◆◇
「あら?アンケート、もう書いてるの?」
この日、訓練の後、アンケートが配られた。その内容は今後の進路について。
「あ、ランスターさんおかえりー」
「提出は来週なんだから今書く必要ないでしょ」
「それはそうなんだけどね、なんか早く出した方が希望が通りやすいかなって…」
えへへ、と笑いながらスバルはアンケートを書き進める。
「………まぁ、提出はするわけだからいつ書いても変わらないわよね。あたしも書いとこ」
それを見て、ティアナも書くことにした。
「……………ジロッ」
「……あんた、何見ようとしてんのよ!」
スバルは、ティアナの進路希望に興味津々といった様子で、覗き込むのを隠そうともしない。
「いやぁ、そのぉ、興味があるっていうか、なんというか……」
「そんなのあんたには関係ないでしょうが………はぁ、まったくあんたは。で、そういうあんたの希望は何なのよ?」
「………あっ、取らないで!」
ティアナは仕返しとばかりに、一瞬の隙をついてスバルのアンケートを取り上げ、そして読み上げ出す。
「えぇっと、………『在校中はティアナ・ランスター訓練生とのコンビを希望します』?ちょっと、やめてよ。ぞっとするじゃない。で、希望は……『卒業後は災害担当、将来的には救助隊』、ね………あんたも災害担当志望なわけ?」
「じゃあ、ランスターさんも?」
「まぁね、陸士部隊の中じゃ門戸が広いわりには昇進機会に恵まれてるところだからね」
「わたしは人助けができるんだったらどの部署でもいいんだけどね、災害担当とか救助隊は魔法戦技能をフルに活用できる仕事場だから」
ティアナは自分の力を証明していくために、スバルは自分の力を誰かの助けとするために、理由は違えど、それぞれらしい想いを持っていることに変わりはない。
「そうね」
「そうだ!ランスターさんは今度の週末何か予定あるの?」
スバルは唐突に訊いてきた。
「あたしはいつも通り。帰る家も待ってる家族もいないから」
「じゃあさっ!わたし、お姉ちゃんと遊ぶ約束してるからランスターさんもいっ────」
「冗談やめてよね。あたしは馴れ合う気はないって、何度も言ってるでしょ!?」
ティアナは最後までスバルの言葉を聞かずに断ろうとする。
「そんなこと言わずに!お姉ちゃんも会いたいって言ってるし、半日だけだから。ね?」
「あんたのお姉さんには悪いけどお断りするわ」
◇◇◇
「そうだジルヴェス、アンケートもう書いたか?」
「ああ、書いたがどうした?」
イライアスとジルヴェスもその日に出されたアンケートの話題を話していた。
しかも、この二人はすでに書き上げていた。
「いや、希望はどこなのかと…」
「そうか、希望か。希望は自然保護隊だ」
ジルヴェスは何も面白いことはないぞ、そう言って、真剣な顔をして答えた。
「は?なんで自然保護隊?いくらなんでもそれはないと思ってたぜ。お前、昇進とか活躍とかどうでもいいんだろうとは思ってたが、まさか自然保護隊を選ぶとはな」
ジルヴェスの答えに、イライアスは本気で驚いていた。
「何言ってんだよ。このジルヴェスさん、大の自然好きだぞ」
「いや、何年も一緒にいるが初めて聞いたぞ」
「そうだろうな、今初めて言った」
「……でもいいのか?」
それまでのふざけた雰囲気を拭い去って、イライアスは真剣な表情でジルヴェスに問った。
「何が?」
「何が?って折角陸戦技能を身につけてんだからもっとそれが役立つ部署に行かなくていいのかってことだよ」
「……まぁ、今の俺じゃあ役に立てん……やっぱりまだ過去を振り切ることなんて出来ないからな……」
ジルヴェスは苦い表情で答え、言葉を続ける。
「もっとも、自分を見詰め直して、答えが出たらこっちに戻って来るかもな。それに局のモルモットは勘弁だ」
「はぁ、お前がそれでいいならいいがな。ところでジルヴェス、今度の週末はどっか行くのか?」
イライアスは溜め息を一つ吐いて、話題を変えた。
「ああ、街に出ようかと思ってる。イライアスはどうするんだ?」
「いや、俺は親父に呼ばれてるからな」
「そうか、んじゃ俺は折角の休みを楽しむとしますか」
ジルヴェスは、どう休みを過ごそうかとぼんやりと考え始めた。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m