リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~   作:台風一過

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第41話 大好きな人

 

「それにしても、あの2人は何を話してるのかしらね」

 

すずかの操舵で湖を進むために、ジルヴェスたちのボートから一定の距離を保った範囲でしか、すずかたちのボートは動かない。

だから、離れたところに止まるボートに目を向けつつ、アリサは興味津々に呟く。

 

「きっと、仲良くなって帰ってくると思うよ、ふふふ」

 

そして、すずかは楽しげに笑うだけだった。

 

「………………なのはさんとジルヴェスさんって今でもとても仲が良いですよね……」

「あれ、シャルちゃん心配?」

「な、何がですか!?」

 

ニコニコしながら顔を覗き込んでくるすずかの視線から逃れるようにそっぽを向くシャルルだったが、顔を真っ赤にしているのはアリサにもすずかにもバレバレだった。

 

「んーと、大好きな人が取られちゃうのが、かな?」

「べ、別にジルヴェスさんが取られちゃうとかそんなことは…………」

 

そして、シャルルの呟きにアリサとすずかはニヤニヤとした笑みを浮かべて、へぇと頷いている。

 

「な、何ですか……?」

 

彼女たちの浮かべる笑いにシャルルは都合の悪さを感じていた。

 

「ううん、何でもないよ?」

「嘘です!その顔は絶対になんかあります!」

「シャルル、あんた本当にいいの?聞いたらきっと後悔するわよ」

 

はぐらかそうとするすずかを問い詰めようとすると、横からアリサが確認するように問ってきた。

 

「良いですよ。すずかさんとアリサさんの反応の方が気になりますもん」

 

さぁ言ってくださいとシャルルは構える。

 

「じゃあ言うけど……あたしたちは、あんたはなのはのことが大好きだと思ってたわけよ」

「そうですよ?なのはさんのこと大好きです」

 

当たり前じゃないですか、何言ってるんですか?という目を、シャルルはしている。

 

「そうね。でも、さっきすずかが大好きな人を取られちゃうかもよ、って言ったときにはジルヴェスの名前が出てきてたわよ?」

 

で、どうなのよ?とアリサは目で訴えかけている。

 

「はわっ…………」

 

アリサの言いたいことを理解すると、シャルルは恥ずかしさから突然立ち上がった。

 

「うぁっ」

 

しかし、ここはボートの上。

そんな不安定なところで急に立ち上がったものだからシャルルは体勢を崩し、フラフラして、そのままバッシャーンと音を立てて湖に墜落した。

 

「シャルちゃん?」

「シャルル大丈夫?」

 

アリサとすずかは慌ててシャルルに声をかけるが、突然湖に落ちて混乱しているシャルルには全く聞こえていなかった。もっと言えばシャルルは溺れていたりする。

 

「シャルちゃん待ってて」

 

すずかはそうシャルルに声をかけると着ていたアウターや靴、靴下など人前で脱げる範囲で着ていた服を全て脱ぎ始めた。

 

「ちょっとあんた何やってんのよ?」

 

それを見てアリサが訊く。

 

「何ってシャルちゃん助けなきゃいけないから」

「ダメよ。今飛び込んであんたまで溺れたらどうするのよ!?あたしじゃ、あんたたち2人を助けるなんて出来ないわよ?」

「でも、私運動には自信あるから」

「プールと同じじゃないのよ?」

 

アリサはすずかが心配で彼女が水に入ろうとするのを何とか止めようとするが、今こうしている内も、シャルルが助けを求めているのは変わらず、どうしたらいいか迷っていた。

 

「…………あれ?」

 

だが、そのとき、なんとなく違和感を感じた。

それは周囲から切り取られたような、写真のネガみたいな空間の中に取り込まれたような、そんな感覚。

そして、アリサもすずかもこの感覚を知っていた。

もう何年も前、なのはが魔法少女しているのを間近で見たあの日と同じ感覚。

 

「これは、結界ってこと?」

 

アリサの呟き通り、今この湖を結界が覆っていた。

 

「じゃあ……」

 

そして、アリサが何事かに思い至って先ほどまで3人で見詰めていた()()()の方に目をやると、案の定ジルヴェスとなのはがこちらに向かって翔んできていた。

 

「シャル、大丈夫か?」

「大丈夫?」

 

そして、シャルルのすぐ真上に浮遊したまま止まって、2人は彼女に手を差し伸べる。

 

「……わぷっ…………」

 

シャルルはなんとか、伸ばされた手を掴んだ。

 

「……よいしょっ」

 

そして、ジルヴェスはそのままシャルルを引き上げると、彼女のことを両手で抱えた。もっと言うとお姫様抱っこをした。

 

「はわわ……」

 

それに気付くとシャルルは恥ずかし過ぎて、視線をあちこちさ迷わせている。

 

「…………ふふふ……」

 

その様子を見ていたすずかは一人楽しげに笑っていた。それにアリサは気付いたが、その理由が分かった気がして、何も言うことはしなかった。

 

「それにしてもどうしてボートから落ちたんだ?」

「そ、それは…………」

 

やはりさすがに理由というか、そのときの状況を話すのは恥ずかしいのか、シャルルは俯いて言葉を詰まらせている。

 

「……まさか」

「っ!」

 

何かに気付いたように声を上げたジルヴェスに、シャルルは息を呑んだ。

 

「湖を泳ぎたいからって、ボートから飛び込んだのか?」

「へ?」

 

けれど、ジルヴェスの口から出た問いにシャルルは少しばかり呆れたような表情を浮かべ、そして、状況を知るアリサとすずかはジルヴェスを残念なものを見るような目で眺めていた。

 

「だって朝方泳ぎたいって言ってたろ?だけど、さすがに服を着たままってのは考えものだぞ」

「あぁ……もうそれでいいです…………」

 

割と自分の言ったことを信じている様子のジルヴェスに、シャルルはわざわざ本当のことを言うのも恥ずかしかったから、彼をそのままにしておくことにした。

 

「シャル、今度からは気を付けろよ?心配するんだから」

「はい……すいません……」

 

ただ、ジルヴェスにかけられた心配の言葉に、シャルルは顔を真っ赤にして照れていた。

そして、それを相変わらずすずかとアリサがニヤニヤ顔で眺めているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後、シャルルを元々乗っていたボートに下ろし、(ちなみにそのときシャルルは少し残念そうな表情を浮かべていたが)、ジルヴェスの魔法でシャルルのびしょ濡れの服を乾かすと、ジルヴェスとなのはは自分たちのボートへと戻り、張っていた結界を解いた。そして、スーっとすずかたちのボートの横まで移動してきた。

 

「やっぱああやって翔んだりしてるの見ると、魔法を実感するわね」

「うん。そうだね、ちょっと憧れるかな」

 

魔法を使えない一般人の2人は顔を見合わせて、互いに頷き合っている。

 

「…………魔法は残酷ですよ……」

「ジルヴェス何か言った?」

「いえ、何でもないです」

 

すずかたちの会話にジルヴェスは何事か呟いたようだったが、それをなのはたちに聞かれる気はないようだった。

 

「とりあえず、岸に戻っちゃいましょ」

「そうだね」

「すいません…………」

 

シャルルは申し訳なさそうに頭を下げる。

 

「シャルル、気にしなくていいわよ。ちょっと飽きてきたところだったから」

「……はい」

 

アリサの気遣いをありがたく思いながらシャルルは頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湖から一旦宿まで帰ろうということになって今、山道を歩いているところである。

 

「それで、なのはちゃんと話は出来たの?」

 

その道中、すずかはジルヴェスの横について、他の3人には聞こえないように話しかけてきた。

 

「……まぁ。ただ、なのはさんにはちょっと怒られちゃいましたけどね」

 

その問いにジルヴェスは苦笑いを浮かべつつ答える。

 

「でも、ジルヴェスくん楽しそうだね。やっぱり話して良かったんじゃない?」

 

すずかは微笑を(たた)えて再び問った。

 

「確かに、なのはさんがどう思っているのかとか知れましたし、それに、やっぱりなのはさんたちのこと、俺は大切に思いますから」

「……妬けちゃうな」

 

そして、ジルヴェスから返ってきた言葉を聞いて、そう呟いた。

 

「いや、すずかさんのことも大切に思ってますよ?」

「ううん、そういうことじゃないんだ。気にしないで」

「……はぁ、分かりました」

 

ジルヴェスはすずかの言葉の真意が気になりはしたが、問い(ただ)すようなことはしなかった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、さようなら」

 

ジルヴェスは4人に向かって別れを述べていた。

というのも、訓練校卒業から部隊異動までの数少ない休日を使って、この旅行に参加していたのだが、もう、2日後には部隊異動の日となるため、彼だけ一足早くミッドへ帰るのだった。

 

「じゃあね。あんたも向こうで頑張るのよ」

「はい」

「ジルヴェスくん、楽しかったよ」

「俺もです。良い思い出になりました」

「………………ミッドに帰っても、なのはちゃんのことよろしくね……」

 

そして、すずかはジルヴェスの耳元でそっと囁いた。

 

「え?」

「ふふふ」

「2人とも何話してるの?」

 

何やら秘密の会話をしている2人になのはが割って入る。

 

「何でもないよ。それじゃあ、また今度遊ぼうね」

「……はい」

 

これ以上ここに居ても、すずかたちの玩具(オモチャ)にされる気がして、足早にジルヴェスは去っていった。








ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m


これで、この休暇の話は終わりにしちゃいます。はい
徐々に、「StrikerS」の時間へと近付いていきます
というか、一気に近付くやもしれませんがよろしくお願いします
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