リリカルなのはStrikerS ~悪魔と魔王と罪の記憶~ 作:台風一過
「…………戻るか」
ジルヴェスはガジェットを殲滅すると来た道を戻り、先ほどガジェットと遭遇した部屋へと戻ることにした。
「……まだハルトさんは戻ってきてないか」
そして、中に入るとハルトが居ないことを確認した。
「とりあえず、先に色々と調査しておく方が効率がいいな」
そう呟くと、先ほどはガジェットへの対応で見ることの叶わなかった部屋の内部をよくよく観察し始めた。
「…………これは……」
そして、そこであるものを発見した。
「……まさか……いや、あり得ない……」
彼が見付けたものは一見しただけでは大したものには見えない、ありふれた、ただの布きれ。しかし、その価値を知るものが見ればそれはそこに在るはずがないもの。本来ならば厳重に保管されているはずのもの。
「……でも、確か…………」
だが、そこでジルヴェスは何かを思い出した。
「……そうだ。以前、カリムさんが言ってたじゃないか。
「ジルヴェス、戻っていたのか」
ジルヴェスが思考の海に沈む前に、ハルトの声で現実世界に引き止められた。
「はい。さっき」
ジルヴェスは至って冷静に、ハルトに怪しまれないように、彼が見付けたその布を回収した。
「そうか。何かあったか?」
そのジルヴェスの動作にハルトは全く気付いていないようだった。
「いえ、ハルトさんが来る前に少し調べてみましたが、これといって有用な情報は得られませんでした」
「そうか…………となると、今回は外したようだな……」
そう言ってハルトは舌打ちする。
「とりあえず、もう少し探索してみましょう。ここからは二手に分かれてしまう方が良い気がします」
「ああ、そうだな。じゃあ、30分後にここに集合。何も無ければ今回は悔しいが撤退だ」
「了解です」
彼らは再びその部屋を出ていった。
「…………あそこに、
ジルヴェスは研究所内を移動しながら思案する。
「……しかも、ここを放棄
そして、どこか悔しそうに呟く。
「何とか情報を集めて、教会に報告しなくちゃいけないな」
しばらく探索を続けていると、研究所のメインルームとおぼしき部屋に行き当たった。
「……ここのコンピュータに何かしらの情報が残ってないか……?」
わずかな望みをかけてジルヴェスはそのコンピュータを起動した。
『やあ、ごきげんよう。これを見てくれているのは、管理局の人かな?それとも聖王教会の騎士の人かな?』
すると、コンピュータのメインモニターに白衣を来た男が映し出された。
「………………その両方だよ……」
ジルヴェスは誰に言うでもなく呟いた。
『まぁ、これは録画だから答えてもらっても僕には分からないんだけどね。それにしても、君たちがガジェットとか呼んでる僕のオモチャは気に入ってくれたかな?なかなか良いだろう?特にAMFを展開させるのに苦労したんだ』
『ドクター、喋り過ぎでは?』
『良いじゃないか。少しくらい情報をあげないと可哀想だろう?』
「……くそっ…………」
ジルヴェスは男の言葉に苦々しい表情を浮かべる。
『あと、そこのラボは仕方なく破棄したけど、まだまだ他にもラボは持ってるから痛くも痒くもないよ。せいぜい頑張って、残りのラボ探しでもしていてくれたまえ』
そう言い、くははは、という独特な笑い声を上げて映像の男は録画の停止ボタンを押した。
そして、そこで映像は終わり、画面は黒く何も映さなくなった。
「ちっ……これだと、このコンピュータにも大した情報は残されてないな……」
期待せずにコンピュータを操作するも、案の定有用な情報は何も残ってはいなかった。
「これじゃ情報が少なすぎる……」
ジルヴェスは悔しそうに呟きながら佇んでいる。
『おい、ジルヴェス、今どこにいる?』
と、そこへハルトから通信が入った。約束の30分が経ったようだった。
「すいません、今戻ります」
ジルヴェスはそう言って、移動を始めた。
「ジルヴェスお疲れ」
「はい。ハルトさんもお疲れ様です」
隊舎へと戻ると、ハルトはジルヴェスに労いの言葉をかける。ジルヴェスもそれに呼応するかたちで返事をする。
「いつも通り、俺が報告書仕上げますから、ハルトさんは上がってもらって大丈夫ですよ」
「そうか?いつも悪いな」
ハルトは申し訳なさそうにしながらも、ジルヴェスの言葉に甘える。
「いえ、自分でやると決めたことですから」
ジルヴェスは気にしないでくれと言うと早速報告書を書き出した。
「ジルヴェス、ご苦労だな」
「!クライスナー部隊長」
すると、すぐにジルヴェスに声をかける者が現れた。
ジルヴェスは顔を見る前に立ち上がり、そして、声の主を呼ぶ。
「そんな堅苦しい呼び方しないでいい」
「……はい……ヴェルさん」
「そう言えば、今日は外の世界に行ってきたんだったな。どうだった?」
ジルヴェスに声をかけた、ジークヴェルトは今日の彼の任務のことを訊ねる。
「そうですね、自分たちが行った時点ですでに破棄されていたようで、これといった成果は上げられませんでした。しかし、あの研究所で例のガジェットドローンの一部が製造されていたようです」
「そうか。やはりな……」
ジークヴェルトは悪い方へ想定していた通りの答えが返ってきたのか、少し頭を抱えているようだった。
「また、研究所内のコンピュータに残された映像データで、あそこ以外にも多数のラボを所有しているという主旨の話を聞かされました。それで、相談なのですが、しばらく捜査隊の通常任務から離れて、こちらの捜査に専念しても良いでしょうか?」
ジルヴェスはわがままを言っているのは重々承知で、ジークヴェルトに打診した。
「……そうだな………………確かあいつが隊を立ち上げる準備をしていたな…………」
何やらジークヴェルトが呟いているが、ジルヴェスには内容までは聞こえていなかった。
「…………よし。とりあえず、この件はお前に任せる。そのために必要な装備については相談してくれ。基本的に渡航や情報収集に当たっての行動に関する事前報告は要らない」
「分かりました。隊には迷惑をかけますが、よろしくお願いします」
「ああ」
ジークヴェルトはジルヴェスに返事すると、去っていった。
ジルヴェスはこの日の報告書を書き上げると、ハルトの部屋にまで来ていた。
「ハルトさん、今良いですか?」
「あ、ジルヴェスか?良いぞ」
失礼します、と言いながらジルヴェスは部屋の中に入る。
「どうかしたか?」
「諸事情で、俺が捜査隊の通常任務から外れるので、しばらくハルトさんとのコンビも解消になります。なので、その挨拶に来ました」
「そうか。残念だ。お前とはコンビでやりやすかったんだけどな」
「すいません」
ハルトの残念そうな言葉にジルヴェスは頭を下げる。
「いや、謝るな。通常任務から外れてやりたいことがあるんだろ?俺も一度通常任務から外してもらったことがあるから、その重要性も分かってる。だから気にするな。むしろ、何か手伝ってほしいことがあれば言ってくれ。出来る範囲でサポートする」
ハルトはジルヴェスの肩を叩いて、彼を鼓舞してくれていた。
「ありがとうございます。これからもよろしくお願いします」
ジルヴェスは一礼してから部屋を出ていった。
ここまで読んでいただきありがとうございますm(__)m
徐々に徐々に、機動六課が発足しそうなにおいがしてきましたね。